はじめて障害者雇用に取り組む企業がおさえておくべき7つのポイント

はじめて障害者雇用に取り組む企業がおさえておくべき7つのポイント

2020年03月19日 | 活用案内

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「障害者雇用を進める必要はあるものの、どうやって進めていいのかわからない。」という人事担当者のお話を聞くことがよくあります。はじめて取り組むことは、何がわからないのかもわからないという状態で、戸惑ってしまうのもよくわかります。

しかし、障害者雇用のステップを順番に行っていけば、着実に障害者雇用を行なうことはできます。また、現に多くの企業が、同じように障害者雇用を進めてきています。

障害者雇用率が未達成なときは、早く障害者を雇用しなければ・・・と焦ってしまいますが、わからないままとりあえず進んでみても無駄な労力となってしまうことも少なくありません。

ここでは、障害者雇用を進めるにあたっておさえておくべき7つのポイントを紹介していきます。

1.障害者雇用促進法とは

日本の障害者雇用は、「障害者雇用促進法」(正式名称「障害者の雇用の促進等に関する法律」)に基づいて行われています。この法律では、障害者法定雇用率が定められており、事業主には身体・知的・精神障害の雇用が義務づけられています。

現在の障害者雇用率は2.2%、つまり従業員45.5人に対して1人の障害者を雇用することが定められています。そして、2021年3月までには、この障害者雇用率が2.3%に上がることが決まっています。

最新の令和元年障害者雇用状況の集計結果を見ると、雇用障害者数は56 万 608.5 人、対前年4.8%で、2万5,839.0人増加しています。実雇用率は2.11%、対前年比2.1ポイント上昇しています。法定雇用率達成企業の割合は 48.0%となっており、前年比 2.1 ポイント上昇しています。

障害者雇用率の全体としては上昇傾向が見られますが、民間企業に義務づけられた障害者の雇用率2.2%を達成できていない企業は全体の半数に上り、障害者を1人も雇っていない企業も3万社余りとなっており、その割合は3割ほどを占めています。障害者雇用に取り組んでいる企業と取り組んでいない企業との差がひろがり、ますます二極化している状況が見られます。

業種や規模などさまざまな理由から、障害者雇用の促進が難しい状況にある企業がいることがわかります。

障害者雇用状況の詳細はこちらから
  ↓
令和元年障害者雇用状況の集計結果からみた今後の障害者雇用とは

2.障害者雇用納付金制度と企業名公表

障害者雇用は、事業主が相互に果たしていく社会連帯責任の理念に立ち、事業主間の障害者雇用に伴う経済的負担の調整を図っています。そのため、障害者雇用率に達していない分は障害者雇用納付金としてお金で納めることになっています。

この納付金の金額は、障害者雇用未達成1名につき月50,000円、1年間で60万円です。集められた納付金は、企業が身体障害者、知的障害者又は精神障害者を雇用する場合の作業設備や職場環境を改善するための助成金や、特別の雇用管理や能力開発等を行うなどの経済的な負担を補填するため、雇用を多くしている企業への調整金などに活用されています。

障害者雇用が未達成の企業は障害者雇用納付金を納付しますが、これで終わりではありません。雇用納付金制度は罰金ではないため、障害者雇用納付金を納めたとしても、障害者雇用義務が免除されるわけではありませんので 、法定雇用率に合った障害者雇用を進めることが求められています。

また、障害者雇用の実雇用率の低い企業は、毎年6月1日の障害者雇用状況報告にもとづいて、雇入れ計画命令が出され、2年間で障害者雇用を達成できるように指導されることになります。そして、計画通りにできない場合は、社名公表されることもあります。

障害者雇用納付金制度や企業名公表の詳細はこちらから
  ↓
障害者雇用の企業担当者がおそれる社名公表とは

3.障害者をカウントするための障害者手帳

障害者雇用促進法で雇用義務のある障害者とは、障害者手帳(身体、知的、精神)を保有する人が対象となります。どのような障害者手帳に該当するのかは、それぞれ障害別に「身体障害」は「身体障害者福祉法」、「知的障害」は「知的障害者福祉法」、「精神障害」は「精神保健福祉法」により規定されています。

身体障害者とは

身体障害者福祉法では、「身体上の障害がある18歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう」と定義されています。身体の障害には、視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由、内部障害、難病などが含まれます。

知的障害とは

知的障害者福祉法では、「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」と定義されています。ただし、知的障害者手帳の基準となるものに関しては、どのようなものを知的障害と指すのかを定める規定が見られません。医学、心理学、教育学の領域でそれぞれ定義が定められており、共通した理解が得られていないのが現状です。そのため、知的障害者に交付される療育手帳は、各自治体の基準によって判断されています。

知的機能の水準は、知能指数(IQ)を基準に測定されます。知的障害は、IQ70以下が基準の目安となっています。地域によって知的障害者手帳の名称や等級は異なりますが、基本的には、「最重度」「重度」「中度」「軽度」の4つの区分を設けています。

精神障害とは

精神保健福祉法では「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者」と定めています。

精神障害の種類としては、統合失調症、気分障害、てんかん、発達障害などの多岐にわたります。精神障害者手帳の等級は、1級から3級までの3つの区分に分けられます。1級が一番重く、3級が一番軽い障害の程度となります。

精神障害者手帳には、2年間の有効期限があります。そのため精神障害者を雇用しても更新を行っていないと、手帳を所持していないことになり、障害者としてカウントすることができなくなってしまいます。

精神障害者手帳の詳細は、こちらから
  ↓
精神障害者保健福祉手帳の取得方法や判断基準とは?

4.特例子会社とはどのような制度なのか

日本の障害者雇用は、【1.障害者雇用促進法とは】でもお伝えしてきましたが、「障害者雇用促進法」に基づいて行われています。この法律では、障害者法定雇用率が定められており、事業主には身体・知的・精神障害の雇用が義務づけられています。

しかし、業種や規模などさまざまな理由から、障害者雇用の促進が難しい状況にある企業もあります。そのような場合に、「特例子会社」を設立することがあります。

特例子会社制度は、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立した場合、一定の要件を満たすことによって、その子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなし、実雇用率を算定することができる制度です。つまり、特例子会社で雇用している障害者の雇用率を、親会社(関係会社)の雇用率とみなすことができるのです。

また、特例子会社を設立しなくても、一定の基準を満たすことによって、実雇用率を算定できる方法として、「企業グループ算定特例」と「事業協同組合等算定特例」などの制度もあります。

「特例子会社」を検討する上で考えておきたいメリット・デメリット、設立までの流れと要件については、HRプロのコラムで執筆していますので、詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

「特例子会社」とはどのような制度なのか【前編】~特例子会社の特徴とメリット・デメリット~

「特例子会社」とはどのような制度なのか【後編】~特例子会社の設立までの流れと要件~

5.障害者雇用に関する助成金

障害者の雇用を促進するために、いくつもの助成金制度や優遇措置が設けられています。

例えば、次のようなものがあります。
・特定求職者雇用開発助成金
・障害者トライアル雇用奨励金
・障害者短時間トライアル雇用奨励金
・障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)
・特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)
・障害者職場定着支援奨励金
・障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助者・ジョブコーチ)

たくさんありますので、はじめはすべてを把握することは難しいかもしれませんが、大きく分けると障害者を雇用時に活用する助成金とそうでないものに分類することができます。雇用時に活用できる助成金は、申請できる時期が限られていますので、早めにハローワークなどで確認するとよいでしょう。

助成金の詳細は、こちらから
  ↓
障害者雇用の助成金一覧 特開金、トライアル雇用などの助成金を解説

6.障害者雇用を進める上で必要な5つのステップ

今まで、障害者雇用の制度などの基本的な部分を見てきました。ここでは、実際に障害者雇用に取り組むときに必要な5つのステップについて考えてみます。

障害者雇用は、一般の雇用とは違う難しいもの、何か特別のことと思っている管理部や人事担当者の方にお会いすることがありますが、障害者雇用に十数年携わってきた私から見ると、障害者雇用も一般の雇用もほとんど大きな差はないと感じています。

大切なのは、どのように組織をマネジメントできるのか、人材を活かすことができるのか、ちょっとした配慮やコミュニケーションが適切にできるかどうかです。もちろん障害者雇用を進めていく上で、効率的に進めるステップや秘訣はありますが、組織マネジメントや人材開発の視点があれば大丈夫です。

私が多くの企業を見たり、特例子会社の立ち上げに関わった中で、効果的に障害者雇用を進めるために必要な5つのステップをあげるとすると、次の5つになります。

ステップ1 障害者雇用に関する意思決定をする
ステップ2 社内における障害者理解をはかる
ステップ3 業務の内容を選定する
ステップ4 効果的な採用をおこなう
ステップ5 職場定着のための方法を考える

障害者雇用率を達成する必要に迫られて、いきなりステップ4の採用に進む企業は、まずうまくいきません。まず、どうして自分の企業が障害者雇用に取り組む必要があるのかをよく考えて、経営陣も含めて意思決定を行なうことが必要です。

そして、障害者雇用を進めると決めたのであれば、社内の障害者理解を図ります。障害者雇用は、特定の部署や担当者が担うものではなく、会社全体、組織で行なうものだからです。

これができてはじめて、障害者に担ってもらう業務を切り出したり、採用(実習を含め)活動を行なっていくのです。また、無事に採用できるとホッとしてしまいたくなりますが、障害者雇用も一般の雇用も、雇用してからがスタートです。採用した人材のもつ能力をどのように活かして、活躍してもらえるのかは、人事を担う人の腕にかかっているからです。職場定着のことを意識しながら、雇用された障害者や障害者と一緒に働く社員をサポートしていくことが大事です。

障害者雇用に関するこの5つのステップについては、次の本の中で詳しく解説しています。
  ↓
「はじめての企業でもできる障害者雇用を成功させるための5つのステップ」

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7.障害者雇用をサポートする機関の種類と特徴

ここまで、障害者雇用について知っておいていただきたいポイントを見てきました。たくさんの項目があって大変・・・と思われたかもしれません。

でも、大丈夫です。障害者雇用をサポートしてくれる機関はたくさんあります。企業で基本的なことは決めることが必要ですが、支援機関を活用しながら障害者雇用を進めることができるからです。どの機関を活用するかは、それぞれの企業が求める採用したい人材や必要なことによって異なりますので、以下の機関の特徴などを見ながら、自社にあった機関はどのようなところなのか、検討してください。

ハローワーク

ハローワークは、企業が障害者雇用を進めることができるように、職域開拓、雇用管理、職場環境整備、特例子会社設立等についての相談を受けつけたり、各種助成金の案内などを行います。また、年に数回、障害者の合同面接会を主催しています。

詳細については、こちらで説明しています。
  ↓
ハローワークにおける障害者雇用における役割とは?

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、障害者総合支援法に定められた障害福祉サービスのひとつである「就労移行支援」を提供する事業所のことです。就労移行支援事業所は、障害者で働く意志のある人に、仕事をする上で必要なスキル等を身につける職業訓練のほか、面接対策などを通して就職活動のサポートをしています。

就労移行支援事業所は、2年間の訓練期間中に、働くために必要な知識や能力を身につける職業訓練や企業実習等を行います。

詳細については、こちらで説明しています。
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障害者採用に活用できる就労移行支援事業所とは?

障害者職業センター

障害者の職業的自立を促進・支援するため、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置・運営するセンターです。障害者雇用促進法に基づいて、職業リハビリテーションの実施・助言・援助などを行っています。各都道府県に1ヶ所以上あります。

障害者職業センターでは、障害者本人に対する専門的な職業リハビリテーションサービス、事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談・援助、地域の関係機関に対する助言・援助を実施しています。

詳細については、こちらで説明しています。
  ↓
障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターの違いとは?

障害者就業・生活支援センター(ナカポツ)

「障害者就業・生活支援センター」は地域の福祉を担っていて、各市町村レベルで設置されています。「ナカポツ」と呼ばれることもあります。

「障害者就業・生活支援センター」という名前にあるように、就業及びそれに伴う日常生活の仕事と生活の両方をサポートするセンターとなっています。そのためスタッフは「就労支援員」と「生活支援員」の両方がいて、「就職」「住居」「役所への手続き」などを含めたいろいろな「日常の支援」をサポートしてくれます。

就職を希望する障害者、または在職中の障害者の抱える課題に応じて、雇用及び福祉の関係機関との連携の下、就業面及び生活面の一体的な支援を行うのが特徴です。

詳細については、こちらで説明しています。
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障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターの違いとは?

障害者の訓練機関(国リハ、障害者職業能力開発校)

国立職業リハビリテーションセンターは全国で2ヶ所あり、東日本は所沢、西日本は吉備にあります。障害状況等に応じた職業訓練・職業指導の実施をしています。

また、宿舎もあり、職業訓練とともに生活支援をおこない、修了後は独立した生活を送れるような準備をしています。

詳細については、こちらで説明しています。
  ↓
専門分野のある障害者採用を検討するときの検討に役立つ国立リハ

障害者職業能力開発校は、障害や、能力に適する職業訓練を行なう機関で、都道府県が設置しています。数ヶ月~1年の訓練期間に、それぞれの科で専門的な知識やスキルを学び、就職を目指しています。

例えば、東京障害者職業能力開発校では、次のような科があります。

【3か月間コース】
・就業支援

【6か月間コース】
・職域開発
・調理・清掃サービス
・オフィスワーク

【1年間コース】
・ビジネスアプリ開発
・ビジネス総合事務
・グラフィックDTP
・ものづくり技術
・建築CAD
・製パン
・実務作業

特別支援学校

2007年3月まで盲学校、聾学校、養護学校に区分されていましたが、2007年4月から特別支援学校に一本化されています。特別支援学校には、幼稚部、小学部、中学部、高等部、高等部の専攻科が設けられています。

特別支援学校の高等部では、企業等と連携して現場実習等の就業体験の機会を広げたり、校内実習の改善や企業関係者を講師とした授業の実施などのキャリア教育・職業教育を行っているところが増えています。特に知的障害の高等特別支援学校では、就職率100%を目指すなど、職業訓練に力を入れている傾向が強くなっています。

詳細については、こちらから
  ↓
特別支援学校が取り組む就労にむけたキャリア教育とは

また、上記以外にも、職場定着支援サービスが、2018年4月からスタートしています。これは改正障害者総合支援法に基づくサービスとして、一般就労をしている障害のある方が長く職場に定着できるよう、福祉サービスを提供する事業所がさまざまなサポートをするものです。

詳細については、こちらから
  ↓
2018年からスタートした就労定着支援サービスとは?

まとめ

はじめて障害者雇用に取り組む企業の方におさえておいていただきたい7つのポイントについてお伝えしてきました。「障害者雇用を進める必要はあるものの、どうやって進めていいのかわからない。」ということから、何をすればよいのかがわかったと感じていただければうれしいです。

障害者雇用のステップは難しいものではありませんが、それにはおさえておくべきポイントやステップがあります。これらを着実にこなし、障害者雇用を進めていただきたいと思います。

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