精神障害者を雇用するときに知っておきたい主治医の意見書の取扱い方法

精神障害のある人が就労を考えるときに、症状が安定していて、働くことが可能な状況にあることの証明として「主治医の意見書」というものがあります。この「主治医の意見書」は、ハローワークで求職者登録をするときに必要となりますし、企業で実際に採用する場合にも確認のために提示してもらうことができます。

主治医が書く書類なので、企業側としてはこれがあれば安心と思ってしまいますが、実はそうでもないこともあります・・・。その理由やそもそも「主治医の意見書」とはどういうものなのかなどについて見ていきましょう。

主治医の意見書とは

「主治医の意見書」(以下、意見書)は、ハローワークが医療機関から情報収集するときによく使われる様式です。ハローワークの要領を見ると、意見書には求職者が雇用促進法上の精神障害であるか否かを判断するための参考資料の役割があることがわかります。

雇用促進法上の精神障害であることの判断のためには、「診断名」と「症状が安定し、就労可能な状況にあるか否か」の2点を確認することが必要となります。また、多くのハローワークでは、意見書に対して「今後の就労支援のための参考資料」としての役割も期待しています。

【ハローワークの障害者職業紹介業務取扱要領より】

精神障害者であることの判断の参考とする医師の診断書、意見書等については、「主治医の意見書」(様式4)によるものとするが、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けているものであっても、症状が安定し、就労が可能な状況であるか否かの判断に必要となる場合があるので留意されたい。

特に、症状の安定性や就労の可能性については、医学的リハビリテーション、社会的リハビリテーションの実施等に伴い、変化するものであるので、一度の判断により決定するのではなく、必要に応じて、主治医等に再確認を行うこととされたい。

さらに、これら精神障害者保健福祉手帳、医師の診断書、意見書については、精神障害者の人権上の問題を引き起こすことがないよう十分留意し、当該求職者から提出されるようにし、その提出を強要しないように充分留意されたいこと。

 

ハローワークでは、求職者に職業紹介を行ないますが、精神障害のある方が本当に働いても大丈夫かどうかを医療的な視点から判断する資料となっています。

主治医の意見書が必要になる場合

障害者手帳がない人については、各種助成金を活用する際に、精神障害者に該当することの確認として診断名が記載された文書が必要になります。そのため障害者手帳がないものの、各種助成金を活用するときに意見書が必要になります(障害者手帳がなければ、障害者雇用のカウントには含むことができません)。

ハローワークの職員は、職業紹介を行なう精神障害の方に普段接しているわけではないので、症状が安定し、就労可能な状況にあるかどうかを把握するのは、なかなか難しいことです。そのため障害枠での就労を希望する求職者がいた場合、手帳を所持しているか、医療機関等からの情報提供により、職業紹介の見通しがつけられるかを判断するために必要となっています。

必ずしも医療機関に対し、意見書の提出を求める必要なケースばかりとは限りませんが、ハローワークもたくさんいる求職者の中で、どのようにして就労する準備ができているのかを判断するためには、「主治医の意見書」という形で文章にしてもらうと、安心材料の1つとなっているのではないかと考えます。

ハローワークでも精神障害者が働くことができる判断材料が欲しい

文章で確認をしないと、「症状が安定し、就労が可能な状況」にあるとの判断が難しい、就労可能の意見書があった方が企業も安心するので職業紹介しやすいなど、意見書を求めるハローワーク側の背景には、様々な理由が考えられます。

しかし、「主治医の意見書」を書く医療側の立場からすると、医師の専門領域とは異なることについて尋ねられ、大変書きにくいなどの意見や、ハローワークに出向き、主治医の意見やデイケアでの状況などについて説明したにもかかわらず、意見書の提出を求められたという医療機関の不満もあるようです。

意見書の位置づけをどうするのか、基本的なところから再検討する必要があるかもしれませんが、現状では不明な点があれば、意見を介した情報交換の必要性についてハローワークと協議する等により、合意形成を図っているようです。

なお、ハローワーク要領にもあるように、ハローワークでは、意見書を一度取得したとしても、求職活動や職業紹介、職場定着などの支援過程で、必要に応じて医療機関と情報交換を行うことが求められています。

「主治医の意見書」の意義

障害者雇用促進法による精神障害者の定義は、次のようになっています。
①精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者
②統合失調症、そつうつ病(そう病、うつ病含む)、または、てんかんにかかっている者のうち症状が安定し、就労が可能な状況にある者
とされています。

このため手帳を所持していない場合、精神障害者に該当するか否かを確認するために、意見書などで診断名を確認する必要があります。②の精神障害者であることが確認されると、雇用率の対象にはなりませんが、各種助成金等の対象となります。

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症状が安定し、就労可能な状況にあるかどうかの確認方法

障害者雇用促進法における精神障害者の定義では、「症状が安定し、就労可能な状況にあるもの」とされており、ハローワークで相談する際にも、確認することになっています。

しかし、就労の可能性は、障害者の個人条件だけでなく、労働条件や職場環境、就労支援の実施状況等の環境状況によって大きく変化するので、ある一定の時間しかみることのできない医療の立場から、環境条件も踏まえて、労働能力の観点から判断するのは難しいことです。

ですから、意見書で確認を求めている「症状が安定し、就労が可能な状況」とは、病状等から考え、現時点で、ハローワークでの求職活動を行える状況にあるのか、それとも求職活動よりも治療を優先して考えることが適当な状況にあるのかという医学的な観点からの判断になることを頭に入れておきましょう。

企業の方は、はじめて「主治医の意見書」を見ると、医療側が何らかの推薦をしているように思われる方もいらっしゃるようですが、決して求職票の職務遂行能力やスキルに達しているということの推薦ではありません。あくまで医療的な視点から就労できると判断している事になります。

「主治医の意見書」に書いてある内容の見方

「主治医の意見書」に書いてある内容をみていきましょう。
「主治医の意見書」には、書式が決まっています。

主治医の意見書(様式4)

まず、「2.病名等」には、該当する病名に◯がつけられ、その他の場合には(   )に診断名が記載されています。病名がその他で手帳がない場合には、雇用促進法上の精神障害者には該当しません(雇用率にはカウントできません)。

「3.障害の状態」には、3ヶ月程度の症状について記載されています。双極性障害など症状の特徴によっては、もう少し長い期間について記載されています。場面によって安定度が変化する場合は、そのことも記載されます。

「4.就労に関する事項」では、労働習慣、就労に際しての留意事項、労働能力の程度について記載されています。医療機関でみたり、聞いたりする内容は限定的ですので、デイケアなど情報や直近の職歴など、参考情報がない場合には、医療機関にとっては記載が難しい内容になっています。

デイケアとは

何らかの精神疾患があるものの、入院治療の必要性がないほど精神疾患の病状が回復し、引き続き、通院治療の一環として、日常生活のリズムを整えたり、仲間づくり、地域で生活したりするうえで、必要な技能を身に着けるためのさまざまなプログラム活動などを行う場所です。

デイケアスタッフは、規模によって異なりますが、医師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士、臨床心理士など数名の医療専門スタッフが備えられています。

また、デイケアは集団的ケアの場ですが、それ以外にも、個々人の抱える問題や悩みなどに個別でも対応し、ひとりひとりに合った援助計画を立ててくれます。

 

「4.就労に関する事項」に記載されている病状等から考えて、現時点でハローワークで求職活動を行える状況にあるか、求職活動より治療を優先して考えることが適当な状態にあるのか、医学的な観点から判断して、就労が可能かに◯がされています。

もし、就労の可能性が無と判断される場合には、医療機関では患者さんとよく相談し、現時点では、ハローワークの意見書を記載することを見送り、求職活動まで時間をおくようにすることがあります。

「5.その他参考となる意見」では、本人が力を発揮しやすい場面、周囲の人の望ましい関わり方、苦手な場面や体調を崩すきっかけ、体調崩しかけたときのサイン、体調を崩しそうなときの対処方法、体調維持する工夫など、本人の特徴や病気・障害の対処法という視点から把握している範囲で記載されています。

また、デイケア等の利用状況や、今後、ハローワークが医療機関に連絡を取る場合の窓口や望ましい連絡方法等の留意事項があれば記載されています。

まとめ

「主治医の意見書」について見てきました。「主治医の意見書」は、精神障害の方がハローワークで求職者登録や就職活動を行なうときに必要となります。また、企業で実際に採用する場合にも確認のために提示してもらうことができます。

主治医が書く書類なので、企業側としてはこれがあれば安心と思ってしまいますが、実はそうでもないこともあります・・・。その理由は、就労の可能性は、障害者の個人条件だけでなく、労働条件や職場環境、就労支援の実施状況等の環境状況によって大きく変化するので、ある一定の時間しかみることのできない医療の立場から、環境条件も踏まえて、労働能力の観点から判断するのは難しいことです。

あくまで「主治医の意見書」で確認を求めているのは、「症状が安定し、就労が可能な状況」かを、病状等から考え、職活動を行える状況にあるのか、それとも求職活動よりも治療を優先して考えることが適当な状況にあるのかという医学的な観点からの判断になります。決して求職票の職務遂行能力やスキルに達しているということの推薦ではありません。

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