2026年8月8日更新
障害者雇用に関わっていると、「身体障害者手帳1級」「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳2級」といった情報を目にすることがあります。
では、障害者手帳の「種類」や「等級」は、何を示しているのでしょうか。
採用や雇用管理の場面では、障害者手帳の情報が、法定雇用率の対象確認や障害の状況を理解するための一つの情報になります。
一方で、手帳の種類や等級だけを見て、「この仕事ができる」「この程度の配慮が必要」と判断することはできません。
障害者手帳は、制度上の認定に関する情報です。仕事をする能力や、職場で必要となる配慮をそのまま示すものではありません。
企業では、「制度上、何を確認するのか」と「仕事を任せるために何を確認・判断するのか」を分けて考えることが大切です。
- 障害者手帳の3つの種類と、それぞれの基本的な違い
- 障害者手帳の等級が何を示しているのか
- 障害者手帳の取得・更新の基本的な考え方
- 障害者手帳と法定雇用率の関係
- 企業が手帳の等級と仕事の能力を分けて考える必要がある理由
障害者手帳とは
「障害者手帳」は、一つの制度の名称ではありません。
一般的には、
- 身体障害者手帳
- 療育手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
の3種類を総称して「障害者手帳」と呼んでいます。
それぞれ制度の根拠や対象となる障害、認定方法などが異なります。
手帳を取得することで、障害福祉サービスや税制上の制度、自治体や事業者が提供するサービスなどを利用できる場合があります。
また、企業の障害者雇用では、法定雇用率の対象確認にも関係します。
ただし、「障害がある人=必ず障害者手帳を持っている」というわけではありません。
障害や疾病があっても手帳を取得していない人もいます。また、同じ診断名であっても、手帳の取得状況や等級が同じとは限りません。
障害者手帳には3つの種類がある
障害者手帳には、大きく3つの種類があります。
| 種類 | 主な対象 | 等級・区分 |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 身体の機能に一定以上の障害がある人 | 障害の種類や程度に応じた等級 |
| 療育手帳 | 知的障害があると判定された人 | 自治体により名称・区分が異なる |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 一定程度の精神障害の状態にある人 | 1級~3級 |
身体障害者手帳
身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に基づき、身体の機能に一定以上の障害があると認められた人に交付されます。
対象には、視覚障害、聴覚・平衡機能障害、音声・言語・そしゃく機能障害、肢体不自由、心臓・腎臓・呼吸器などの内部障害などがあります。
身体障害者手帳は原則として更新制度ではありませんが、障害の状態に変化が予想される場合などには、一定期間後に再認定が行われることがあります。
療育手帳
療育手帳は、児童相談所や知的障害者更生相談所などで、知的障害があると判定された人に交付される手帳です。
身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳とは異なり、自治体によって名称や判定基準、障害程度の区分などに違いがあります。
「療育手帳」のほか、「愛の手帳」など別の名称が使われている地域もあります。
そのため、「IQが○○だから必ずこの区分になる」というように、全国共通の数値だけで単純に判断することはできません。知的機能だけでなく、日常生活や社会生活の状況などを含めて判定されます。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定する制度です。
等級は1級から3級まであり、精神疾患の状態と、それに伴う生活能力障害の状態の両面から総合的に判定されます。
精神障害者保健福祉手帳の有効期限は2年間です。継続して手帳を利用する場合には、更新手続きが必要です。
企業の障害者雇用では、「2級と3級では仕事をする能力も違うのか」と考えられることがあります。
しかし、等級がそのまま仕事の能力を示しているわけではありません。
障害者手帳の「等級」は何を示しているのか
障害者手帳を見ると、「1級」「2級」「3級」などの等級が記載されています。
企業の担当者から、
「2級だと仕事を任せるのは難しいのでしょうか」
「3級なら、それほど配慮は必要ないのでしょうか」
と聞かれることがあります。
しかし、このような見方には注意が必要です。
障害者手帳の等級は、企業が仕事の能力を評価するためにつくられた基準ではありません。
手帳の種類によって認定基準は異なりますが、それぞれの制度で定められた基準に基づいて、障害の状態や日常生活・社会生活への影響などが判断されています。
一方、企業が採用や配置、業務を任せる場面で確認したいのは、
- その仕事に必要な能力や経験があるか
- 仕事を進めるうえで、どのような支障が生じる可能性があるか
- 本人自身が対処できることは何か
- 職場でどのような調整や配慮が必要か
- その対応を企業として実施できるか
といった、実際の仕事との関係です。
企業が仕事を任せるための評価軸は、同じではありません。
ここを混同すると、「2級だから難しい」「3級だから大丈夫」というように、等級から仕事の結論を出してしまうことがあります。
しかし、同じ等級でも、得意なこと、苦手なこと、経験してきた仕事、職場環境との相性、仕事上で困る場面、必要な配慮は一人ひとり違います。
手帳の等級は重要な情報の一つですが、それだけで仕事上の判断をすることはできません。
障害者手帳はどのように取得するのか
障害者手帳の申請方法は、3種類すべて同じではありません。
身体障害者手帳では、指定医の診断書・意見書などを用意し、自治体の窓口を通じて申請します。
療育手帳では、児童相談所や知的障害者更生相談所などによる判定が行われます。
精神障害者保健福祉手帳では、医師の診断書による申請のほか、一定の場合には精神障害を支給事由とする障害年金に関する書類を用いて申請する方法もあります。
そのため、「障害者手帳を取得するには、すべて同じ書類や手続きが必要」と考えるのではなく、取得する手帳の種類と、居住する自治体の案内を確認する必要があります。
更新の扱いにも違いがあります。
身体障害者手帳は原則として更新はありませんが、障害の状態によって再認定が行われることがあります。
精神障害者保健福祉手帳は有効期限が2年間で、継続して利用する場合には更新が必要です。
療育手帳については、自治体によって再判定などの運用が異なります。
障害者手帳を持つことで利用できる制度
障害者手帳を持つことで、さまざまな制度やサービスを利用できる場合があります。
例えば、
- 障害福祉サービス
- 税制上の制度
- 自治体独自の支援制度
- 公共交通機関などの割引
- 就労に関する支援
などがあります。
ただし、利用できる制度やサービスは、障害者手帳の種類や等級、自治体、本人の状況などによって異なります。
手帳を持っていれば、すべての支援やサービスを自動的に利用できるというものではありません。
障害者手帳と障害者雇用率の関係
企業にとって、障害者手帳が特に関係する制度の一つが、障害者雇用率制度です。
2026年7月1日から、民間企業の法定雇用率は2.7%となりました。
これに伴い、障害者を1人以上雇用する義務が生じる民間企業の対象範囲は、常時雇用する労働者37.5人以上となっています。
障害者雇用率の算定では、身体障害者、知的障害者、精神障害者が対象になります。
精神障害者については、精神障害者保健福祉手帳の所持者が雇用率算定の対象です。
また、実際の算定方法は、障害の種類や程度、週の所定労働時間などによって異なります。
そのため、「障害者手帳について理解すること」と「障害者雇用率のカウント方法を理解すること」は、分けて整理すると分かりやすくなります。
手帳を持っていることと、合理的配慮の対象であることは同じではない
企業では、障害者手帳と合理的配慮の関係についても混同が起こりやすいところです。
障害者雇用率制度では、対象となる障害者を確認するために手帳などの情報が重要になります。
一方、雇用分野における差別禁止や合理的配慮の対象は、障害者手帳を持っている人だけに限定されているわけではありません。
つまり、雇用率の対象になるかどうかと、仕事をするうえで合理的配慮が必要かどうかは、同じ基準で判断するものではありません。
企業では、この2つを分けて理解しておく必要があります。
企業では「手帳の確認」と「仕事の判断」を分ける
障害者手帳について企業が理解しておきたい重要なポイントは、手帳から分かることと、手帳だけでは分からないことを分けることです。
手帳からは、障害の種類や制度上の等級などを確認できます。また、障害者雇用率制度では、対象者を確認するための重要な情報になります。
一方で、手帳を見ただけでは、
- どの程度仕事ができるのか
- どの業務が向いているのか
- どのくらいの仕事量が適切なのか
- どのような場面で支障が生じるのか
- どのような配慮が必要なのか
までは分かりません。
ここで企業が陥りやすいのが、「障害について詳しく分かれば、仕事の判断もできる」と考えてしまうことです。
しかし、実際の職場で必要なのは、障害についての知識だけではありません。
任せる仕事、本人の能力、仕事上の支障、本人ができる対処、必要な配慮、職場側が対応できる範囲をつなげて考えることが必要です。
手帳は、その判断材料の一部です。手帳そのものを「仕事上の答え」にしないことが重要です。
障害者手帳の情報を、会社の判断につなげる
障害者雇用の担当者や管理職は、手帳の種類や等級を知ったときに、
「この人には、どの程度の配慮が必要なのか」
「この仕事を任せても大丈夫なのか」
と考えることがあります。
しかし、手帳の情報から直接その答えを出そうとすると、判断が難しくなります。
まず分けたいのは、
- 制度上の確認をしているのか
- 仕事を任せるための判断をしているのか
- 合理的配慮について判断しようとしているのか
- 雇用率算定のための確認をしているのか
という「何のための情報なのか」です。
そのうえで、仕事について判断するのであれば、本人の情報だけではなく、担当する業務や職場環境、支援体制などとの関係を見ていく必要があります。
何を判断するために、どの情報が必要なのか。
ここが整理されると、手帳の情報を必要以上に重く見たり、逆に十分に活用できなかったりすることを防ぎやすくなります。
- 手帳の等級から「できる・できない」を決めていないか
- 障害に関する情報と、仕事上の情報を分けて確認しているか
- 配慮について、本人の希望だけでなく業務との関係も見ているか
- 誰が採用・配置・配慮を判断するのか決まっているか
- 判断した内容を、必要な関係者につなげられているか
こうした点が曖昧な場合、障害についての知識を増やすだけでは、現場の迷いは減らないことがあります。
手帳の情報を、誰が、何の判断に使うのか。
そして、その判断を人事・管理職・現場の間でどのようにつなぐのか。
個別の対応を増やす前に、会社として判断の流れを整理することも必要です。
「この仕事を任せてよいのか」
「現場で判断するのか、人事が判断するのか」
「本人の情報を、どう仕事の判断につなげるのか」
こうした迷いが繰り返されている場合は、個別対応を増やす前に、組織のどこで判断が止まっているのかを整理することが重要です。
FAQ|障害者手帳について企業からよくある質問
Q:障害者手帳の等級が重いほど、仕事をするのは難しいのでしょうか
障害者手帳の等級だけから、仕事の難しさを判断することはできません。
手帳の等級は、仕事の能力を直接評価したものではないからです。
企業では、担当する仕事に必要な能力や経験、本人ができること、仕事上で生じる支障、必要な配慮、職場環境などを確認して判断する必要があります。
Q:同じ等級であれば、必要な配慮も同じですか
同じとは限りません。
同じ障害名、同じ手帳の種類、同じ等級であっても、仕事上で困る場面や本人ができる対処、必要な配慮は異なります。
「○級だからこの配慮」と決めるのではなく、実際の仕事や職場環境との関係で確認することが必要です。
Q:障害者手帳を持っていないと、合理的配慮の対象にはならないのでしょうか
障害者手帳を持っている人だけが、合理的配慮の対象になるわけではありません。
雇用分野における障害者差別禁止・合理的配慮の対象は、障害者雇用率の算定対象と同じではなく、障害者手帳の有無だけで限定されていません。
雇用率の対象確認と、合理的配慮の必要性についての判断は、分けて考える必要があります。
Q:精神障害者保健福祉手帳は更新が必要ですか
はい。精神障害者保健福祉手帳の有効期限は2年間で、継続する場合には更新手続きが必要です。
企業が障害者雇用率の算定に関する情報として手帳を確認している場合には、有効期限や更新状況についても適切に確認する必要があります。
Q:企業は手帳の種類や等級を見れば、採用判断できますか
手帳の種類や等級だけで採用判断をすることはできません。
採用では、募集している仕事に必要な能力や経験、その仕事を行ううえで生じる支障、本人ができる対処、必要な配慮、その配慮を企業として実施できるかなどを確認して判断する必要があります。
手帳情報は、こうした判断に必要な情報の一部として位置づけることが大切です。
まとめ|障害者手帳は「制度の情報」と「仕事の判断」を分けて見る
障害者手帳には、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種類があります。
それぞれ対象となる障害、制度の仕組み、認定方法、等級の考え方が異なります。
企業の障害者雇用では、手帳は法定雇用率の対象確認などに関わる重要な情報です。
しかし、手帳の種類や等級だけでは、仕事の能力や職場で必要な配慮までは分かりません。
企業が重要視したいのは、「手帳に何と書いてあるか」だけではなく、「何を判断するために、その情報を見ているのか」を明確にすることです。
制度上の確認と、採用・配置・業務・合理的配慮についての判断を分けることで、手帳の情報を実際の障害者雇用につなげやすくなります。
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