身体障害者手帳はどんな人が申請できる?種類や等級について詳しく解説

身体障害者手帳はどんな人が申請できる?種類や等級について詳しく解説

2024年05月3日 | 障害者雇用に関する法律・制度

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障害者雇用の担当者が理解しておきたい障害者手帳について解説していきます。障害者手帳は、障害別に身体、知的、精神と3つの種類がありますが、今回はこの中の「身体障害者手帳」について解説します。

身体障害者手帳の基本的な概要、手帳をもつことのメリット、手帳取得までのプロセス、注意点などについて紹介していきます。また、手帳に関するよくある疑問などについてもお伝えしていきます。

身体障害者手帳とはどんなもの

身体障害者手帳は、様々な身体障害を持つ人々が公的に認定される際に発行される公式文書となります。この手帳を持っていることにより、障害の種類や程度に応じて障害者本人に多くの福祉サービスや支援が提供されることを可能にします。例えば、交通機関での割引、税金の軽減、優先駐車場の利用、特定の公的支援へのアクセスなど、日常生活や社会生活を支援する多岐にわたるメリットがあります。

身体障害の障害内容とは?

身体障害には、次のような障害が含まれます。

・視覚障害
視覚障害には、視力の低下だけでなく、視野狭窄も含まれます。視野狭窄には、視野全体が狭まる症状と、視野が不規則に狭まる症状があります。

視覚障害の原因は先天的なものと後天的なものがあり、先天的な原因には網膜色素変性症や先天性白内障などがあり、後天的な原因には糖尿病による網膜症や緑内障、加齢黄斑変性などがあります。

・聴覚障害、平衡機能障害
聴覚障害は、聞こえる音のデシベル数によって障害の等級が決定され、デシベル数が高いほど聴力が低く、障害の程度が重いことを示します。耳の構造は外耳、中耳、内耳から成り、障害の位置によって伝音性難聴、感音性難聴、混合性難聴に分類されます。

聴覚障害の原因には、先天的なもの(例:母体の風疹感染)と後天的なもの(例:慢性化膿性中耳炎、老人性難聴)があります。また、平衡機能障害は三半規管の機能障害などにより、起立や歩行時のバランス維持が困難となる症状が見られます。

・音声・言語又はそしゃく機能障害
言葉が話せない、もしくは明瞭でないことは日常生活に影響を及ぼす障害です。 音声・言語やそしゃく機能障害は、日常生活に大きな影響を与える障害です。音声機能障害は、喉頭の欠如や構音器官の障害により発声が困難である状態になります。

言語機能障害は、聴覚障害や失語症により言葉が話せない場合があります。そしゃく障害は、咀嚼(食べ物をかみ砕く行為)や嚥下(飲み込む運動)が困難で、食事摂取に特別な配慮が必要です。

・肢体不自由
肢体不自由は、手や足、体幹に欠損や機能障害があり、日常生活動作に制約が生じる障害です。四肢の場合、指の欠損、上肢や下肢の部分的な機能不全や欠損の程度、及び日常生活や歩行の能力に基づいて障害の等級が定められます。

日本では約436万人の身体障害者の中で、約193万人が肢体不自由で、その原因には先天的な奇形や機能不全、後天的に発生した脳疾患や四肢の切断などが含まれていると言われています。

・内部障害
内部障害は、人体の内部器官の障害で、生命維持や日常生活に大きな影響を及ぼすものです。身体障害の中でも約100万人が該当し、肢体不自由に次いで多い障害者グループとなっています。

増加の原因は、人口の高齢化による影響が大きいと考えられています。内部障害は外見からは判別しにくいため、障害を持つ人への理解がされにくいという問題があります。 心臓の疾患等によるペースメーカーの装着している人や、人工透析の人も含まれます。

・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染は免疫力を低下させ、最終的に後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こします。免疫力の低下により、普段は起こらない感染症にかかりやすくなり、日常生活に影響を与えることがあります。

身体障害の等級とは?

身体障害者手帳には障害の症状や生活への影響から1級から7級までの障害等級が設けられており、それぞれの等級は障害の重さを示しています。等級が高いほど、つまり1級に近いほど障害の程度は重く、障害者が日常生活や職業生活を送る上での制限が大きいことを意味します。

各障害等級の概要は、次のとおりです。
1級: 最も重度の障害を示し、自力での歩行や日常生活の基本的な動作が極めて困難である状態。
2級: 重度の障害であり、常時介助が必要な状態や、重大な機能障害がある。
3級: 中度の障害であり、日常生活において部分的な支援が必要な状態。
4級: 軽度から中度の障害で、一定の制限はあるものの、部分的な自立が可能。
5級: 軽度の障害で、特定の状況下で限定的な支援が必要。
6級: 最も軽度の障害で、日常生活における小さな制限がある。

7級の障害単体では交付の対象とはなりませんが、7級の障害が2つ以上ある場合や、7級のほかに6級以上の障害がある場合に交付の対象となります。

障害等級は、障害のある個人が受けられるサービスの範囲を定めるためにも用いられ、それぞれの等級に応じた支援が行政から提供されています。

身体障害者手帳をもつことのメリット

身体障害者手帳を取得すると、さまざまな割引や福祉サービスを受けることができたり、障害者求人の応募などのメリットを受けることができます。その中のいくつかを見ていきます。

障害者手帳による割引サービス

公共料金の割引や、助成金制度、税金の軽減などを受けることができます。身体障害者手帳を持つことにより受けられる主な料金の割引や助成の一部を紹介します。

・医療費の助成
・博物館、美術館、テーマパークなどの公共施設の割引
・JRやバス・航空運賃などの公共機関の割引
・携帯電話基本料金の割引
・公営住宅の優先入居
・NHK受信料の免除
・所得税や住民税の障害者控除
・自動車税・軽自動車税及び自動車取得税の控除
・身体障害者手帳の場合、車椅子や補聴器など補装具の費用や、住宅リフォーム費用の助成等

公共交通機関を利用する際の運賃割引や、車の駐車料金の免除などが受けられます。さらに、税金の軽減措置が提供され、必要な医療費の割引も受けられることが多く、これによって経済的負担が軽減されます。博物館、美術館、テーマパークなどでは、公共施設の割引が行われたり、障害者本人だけでなく、介助者も障害者割引となるケースがほとんどです。

ただし、身体障害者手帳の等級や所得状況、住んでいる自治体により受けることができるサービスは異なります。詳細は住んでいる自治体のホームページや障害福祉課などの窓口で確認しておくとよいでしょう。

障害福祉サービスや障害者雇用枠で働く

身体障害者手帳は、働くことについてもメリットを受けることができます。障害者雇用は、「障害者雇用促進法」という法律により一定の規模以上の企業は、障害者を一定比率で雇用することが義務付けられています。令和6年度からは、障害者雇用率が2.5%となっています。企業では、障害者手帳を持っている人を雇用することで、障害者雇用率としてカウントすることができるので、企業の雇用義務において重要なものとなっています。

また、働く準備がまだできていない人のためには、「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスなどを活用して、日常生活や社会生活を送っていくために必要な訓練を受けることができます。就労系福祉サービスには、就労移行支援、就労定着支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型があります。

出典:厚生労働省

就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障害者を対象にした訓練や指導を提供するサービスです。履歴書の作成支援、面接対策、職場で必要なスキルの習得など、就職活動全般をサポートします。目的は、利用者が一般の職場で働けるようになることです。

就労継続支援は、障害のある人が働き続けることを支援するためのサービスで2つのタイプがあります。

就労継続支援A型は、障害があるため一般企業での就労が難しい人を対象に、雇用契約に基づく就労の場を提供します。一定の支援を受けながら、安定した収入を得ることができます。

就労継続支援B型は、一般企業での就労が困難な障害を持つ人向けに、就労の機会を提供しますが、A型と異なり雇用契約ではなく、日常生活の一部としての作業活動が中心です。利用者の能力に合わせた作業を行ない、給料の代わりに工賃を受け取ることができます。

そして、就労移行支援や就労継続支援などの福祉サービスを利用して就職した人が就職後に利用できる支援が就労定着支援です。これは、働いた後に企業や利用者との定期面談や業務の調整などを間に入って行うことで長く働くことをサポートする制度となっています。

また、障害福祉サービス以外にも、次のようなところで、障害者の就職の相談をする場所が準備されています。

・ハローワークの特別支援窓口
ハローワークには、障害者専用の窓口が設けられており(地域によってはない場合もあります)、専門の職員が就職活動をサポートします。職業紹介、職業相談、各種手当の案内など、障害者特有のニーズに応じたサービスが提供されます。

・地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、障害者の職業生活全般にわたるサポートを提供しています。職業相談、職業訓練、雇用開拓、職場適応支援など、多面的な支援を行っています。また、企業側に対する障害理解促進や障害者雇用のための情報提供も行っています。

身体障害者手帳取得のプロセス

続いて、身体障害者手帳を取得する具体的な手続きの流れ、申請場所、必要な書類、診断のプロセスを詳しく説明します。

身体障害者手帳の取得プロセスは、障害の種類と程度を公的に認定し、障害者に適切な支援を提供するためのものとなっています。地域によって若干の違いはありますが、基本的な流れについて見ていきます。

1.初期の医療評価
障害者本人が、医師による詳細な医療評価を受けます。この評価は、障害の種類と程度を診断し、手帳発行の基準に必要な医学的根拠を提供します。

2.申請書の提出
評価結果とともに、必要な申請書を地域の市区町村役場の障害者福祉課などの関連部署に提出します。

3.審査プロセス
提出された書類と診断結果は詳細な審査を受け、障害の等級が決定されます。

4.手帳の発行
審査を通過した後、身体障害者手帳が発行され、申請者に交付されます。

身体障害者手帳の申請は、通常、居住地の市区町村役場の障害者福祉課または社会福祉課で行います。具体的な申請場所や窓口は、それぞれの居住地によって異なるため、事前に電話やインターネットで確認するとよいでしょう。

手帳を申請する際には、以下の書類が必要になります。
・申請書: 各市区町村が用意している申請用紙。
・医師の診断書: 障害の状態を詳細に記載した公式の文書。
・身分証明書: 写真付きの身分証明書や健康保険証など。
・写真: 手帳用の証明写真が必要な場合もあります。

これらの書類を用意した上で、所定の窓口に提出し、手続きを進めていきます。診断書は特に重要で、障害の種類と程度を正確に反映する必要があります。診断書の作成には医師の診察が必須であり、この部分が手帳取得の最も重要な要素の一つとなります。

身体障害者手帳取得でよくある誤解

障害者手帳の障害判定については、誤解されている点もあります。そのいくつかを見ていきます。

身体障害者手帳を取得するには、重度の障害が必要

身体障害者手帳は、軽度から重度までのさまざまな障害に対して交付されます。障害の程度だけでなく、日常生活や社会参加に与える影響にも考慮されています。

身体障害者手帳における障害の等級は、1級から6級まで設定されていますが、全ての障害がこの6段階に当てはまるわけではありません。障害等級は、障害の種類とその影響の度合いに応じて決定されるものとなっています。

手帳の申請については医学的評価が必要となり、障害の特性が評価されて、それに応じた等級が割り当てられています。企業の雇用で重要なのは、障害名や障害等級ではなく、働くうえでどのような困難さがあり、それをどのように配慮できるのかを障害当事者とのコミュニケーションをはかることです。

障害があったら、必ず障害者手帳が交付される

身体障害者手帳は、その障害が永続的であると判断される場合に、交付されるものです。つまり、一時的な怪我や病気から回復が見込まれる場合、その間は手帳の交付対象外となることが一般的です。

また、障害の程度が非常に軽微で日常生活や社会生活に支障がない場合も、手帳の発行対象とはなりません。手帳の交付は、障害による生活の質の低下や社会参加の困難さを補うためのものであるため、その基準を満たさない軽度のケースでは適用されません。

身体障害者手帳があれば、あらゆるサービスや特典が受けられる

身体障害者手帳は多くの福祉サービスを受けられやすくなりますが、手帳があるからといって自動的にすべてのサービスが受けられるわけではありません。また、サービスの提供は、地方自治体やサービスの種類によって異なり、条件や資格が定められていることが一般的です。

例えば、特定の補助金や支援プログラムには、障害の種類や程度、経済状況など、追加の条件が設けられている場合があります。そのため手帳を取得した障害者本人やその家族、雇用担当者は、利用可能なサービスとその条件を各関連機関に確認する必要があります。

身体障害者手帳は一生涯有効である

身体障害者手帳には原則有効期限はありませんが、障害の状態や社会環境が変化した場合には、手帳の更新が必要です。

また、身体障害者手帳の申請は、通常3歳以上から可能です。これは多くの障害が幼児期に明確に診断されることが影響しています。しかし、これは一般的なガイドラインであり、特定の条件や障害の早期発見によっては、3歳未満の子どもにも手帳が発行されることがあります。

早期からの支援が必要な場合、医師の診断と詳細な医学的評価をもとに、例外的に手帳が交付されることもあります。また、成人後に障害を持った場合でも、障害の発生時から手帳の申請が可能です。

まとめ

身体障害者手帳の概要、そのメリット、取得プロセス、および障害者手帳に関連する誤解について見てきました。身体障害者手帳は、障害者が直面する多くの障壁を緩和し、職場での平等な機会を提供するための重要なツールとなっています。障害者手帳により、障害者は日常生活の質の向上、就労、社会参加の支援を受けることができます。

企業で障害者雇用を進めるときには、身体障害の特徴などを知り、障害者の雇用プロセスを改善したり、より包摂的な職場環境を実現することが求められます。また、中途障害の従業員がいる場合には、どんなことが困難で、配慮が求められるのかを把握し、適切な対応をすることも必要です。

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参考

社員が中途障害者として職場復帰するときに、どのような配慮が必要?

休職中の社員対応、人事はどのような関わり方をするとよいのか?

動画で解説

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