中途障害者の職場復帰|企業の復職判断・配置・必要な配慮を解説

病気・事故で障害を負った社員の職場復帰|企業が判断すること・必要な配慮

2022年12月26日 | 判断とマネジメントの構造

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

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「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年8月8日更新
病気や事故などによって、採用したときにはなかった障害や継続的な就業上の制約が生じることがあります。

休職を経て、主治医から「職場復帰可能」という診断書が出た。

では、会社はそのまま以前と同じ仕事、同じ勤務時間、同じ職場へ戻せばよいのでしょうか。実際の職場復帰では、ここで判断に迷う企業が少なくありません。

主治医が「職場復帰可能」と判断することと、会社が「この仕事を、この条件で任せられる」と判断することは同じではありません。

職場復帰では、本人の状態だけを見るのではなく、任せる仕事、業務上の支障、安全面、必要な配慮、職場側の受け入れ体制などを確認し、企業として判断する必要があります。

この記事では、病気や事故などによって障害のある状態となった社員が職場復帰するときに、企業が何を確認し、どのように配置・配慮を考えればよいのかを整理します。

この記事でわかること

  • 「復職可能」と「元の仕事ができる」が同じではない理由
  • 企業が職場復帰を判断するときに確認したいこと
  • 元の職場・仕事へ戻すことだけが職場復帰ではない理由
  • 身体障害・精神障害などで配慮を考えるときの基本的な視点
  • 本人・主治医・産業医・人事・現場の役割の違い
  • 復帰後に配慮を見直す必要性
  • 職場復帰を担当者任せにしないための考え方

採用後に病気や事故で障害のある状態となることはある

企業の障害者雇用というと、採用時点ですでに障害者手帳を持っている人を採用する場面がイメージされやすいかもしれません。

しかし実際には、採用後に、

  • 病気や事故によって身体機能に障害が生じる
  • 疾病の治療を続けながら働く必要が生じる
  • メンタルヘルス不調などで休職する
  • その後、障害者手帳を取得する

といったこともあります。

こうした、採用後に障害のある状態となった社員を「中途障害者」と表現することがあります。

企業にとって難しいのは、障害について理解することだけではありません。

それまで担当していた仕事や勤務条件を、「そのまま続けられるのか」「一部を調整すれば続けられるのか」「配置や職務を見直す必要があるのか」を判断する必要が出てきます。

「職場復帰可能」と「元の仕事ができる」は同じではない

休職していた社員から、「主治医から復職してよいと言われました」と診断書が提出されることがあります。

このとき企業が注意したいのは、主治医の「職場復帰可能」という判断だけで、具体的な業務への復帰まで自動的に決まるわけではないという点です。

厚生労働省の職場復帰支援でも、主治医による職場復帰の判断は、日常生活における病状の回復程度をもとに行われていることが多く、必ずしも職場で必要とされる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限らないとされています。

医学的に職場復帰が可能かという判断と、
会社が特定の仕事を任せられるかという判断は、同じではありません。

例えば、日常生活には支障がなくても、

  • 長時間の集中が必要な仕事
  • 重量物を扱う仕事
  • 頻繁な移動が必要な仕事
  • 判断や予定変更が多い仕事
  • 夜勤や不規則な勤務

では、別の確認が必要になることがあります。

一方で、障害や疾病があるからといって、以前の仕事ができないと決めつけることも適切ではありません。本人の状態と、実際に任せる仕事をつなげて確認することが必要です。

企業が職場復帰で確認したいこと

職場復帰の可否を考えるときに、企業が確認したいのは「障害があるかどうか」だけではありません。

大きく分けると、次のような視点があります。

現在の状態

治療の状況や体調、今後の通院・治療の見通しなどを確認します。

ただし、企業が必要以上に病歴や医療情報を集めることが目的ではありません。

仕事を安全に継続するために必要な範囲で情報を確認します。

任せる仕事

職場復帰後に、どの仕事を担当する予定なのかを明確にします。

本人の状態について詳しく確認しても、会社側の仕事が曖昧であれば、「復帰できるか」は判断できません。

  • 業務内容
  • 勤務時間
  • 仕事量
  • 判断の頻度
  • 対人対応
  • 身体的な負荷
  • 安全上のリスク

など、実際の仕事の条件を整理します。

仕事上で生じる支障

障害名や病名ではなく、予定している仕事との関係で何が支障になるのかを確認します。

例えば「疲れやすい」という情報だけではなく、「どの程度の勤務で疲労が強くなるのか」「休憩を入れることで対応できるのか」「翌日の勤務まで影響するのか」など、仕事との関係を見る必要があります。

本人自身で対応できること

本人が自分の状態をどのように管理しているのかも重要です。

通院、服薬、休憩、体調変化への対応、相談するタイミングなど、本人自身でできることと、会社側に必要な対応を分けて考えます。

会社として必要な対応

本人自身の対処だけでは仕事上の支障を十分に減らせない場合には、職場側でどのような調整が必要かを考えます。

重要なのは、「どんな配慮をすればよいか」から考え始めるのではなく、「何が仕事上の支障になっているのか」を先に確認することです。

職場復帰は「元の仕事へそのまま戻すこと」とは限らない

職場復帰というと、「以前と同じ部署に戻す」「以前と同じ仕事を任せる」「以前と同じ勤務時間に戻す」ことだと考えられる場合があります。

もちろん、元の職場・職務へ戻ることが適切なケースもあります。一方で、本人の状態や仕事内容によっては、一定期間の調整や、業務・配置の見直しが必要になる場合もあります。

例えば、

  • 勤務時間を調整する
  • 業務量を一時的に調整する
  • 作業方法や設備を変更する
  • 通院しやすい勤務方法を検討する
  • 安全上のリスクが高い業務を見直す
  • 必要に応じて職務や配置を検討する

などです。

ただし、配慮として仕事を減らせばよいということでもありません。本人が担う役割、業務上必要なこと、配慮によって減らしたい支障を整理しながら検討します。

職場復帰の目的は、「会社に戻すこと」ではなく、仕事を安全かつ継続的に行える状態をつくることです。

身体障害と精神障害では、確認するポイントが異なる

必要な配慮は、障害名だけで一律に決めることはできません。ただし、障害や疾病の状態によって、仕事との関係で確認しやすいポイントには違いがあります。

身体障害の場合

病気や事故などによって身体機能に変化が生じた場合には、

  • 移動や通勤
  • 作業姿勢
  • 設備や作業環境
  • パソコンや機器の操作
  • 視覚・聴覚を使う業務
  • 疲労や治療との両立
  • 安全面

などを、担当する仕事との関係で確認します。

設備や作業方法を変えることで、以前と同じ役割を担える場合もあります。

精神障害やメンタルヘルス不調の場合

精神障害やメンタルヘルス不調では、

  • 勤務時間や生活リズム
  • 仕事量や負荷
  • 集中や判断への影響
  • 対人関係やコミュニケーション
  • 体調変化が起きたときの対応
  • 相談先

などを確認することがあります。

ただし、「精神障害なら勤務時間を短くする」というように、障害名から配慮を決めるものではありません。本人の状態と仕事上の支障に合わせて考えます。

本人・主治医・産業医・人事・現場の役割を混ぜない

職場復帰では、多くの関係者が関わります。

そのため、それぞれから情報が集まっているのに、「結局、誰が復帰を決めるのか」が曖昧になることがあります。

それぞれの役割は同じではありません。

関係者 主に確認・提供すること
本人 復帰の意向、現在の状態、仕事上の困りごと、自分でできる対処など
主治医 治療状況、医学的な回復状態、就業上留意したい事項など
産業医・産業保健スタッフ等 医学的情報と実際の仕事内容をつなぎ、就業上の措置について意見を示す
管理職・現場 実際の仕事内容、職場環境、業務上必要な役割、受け入れ体制など
人事・事業者 各情報を踏まえ、復職・配置・就業上の措置等を会社として判断する

主治医が会社の配置を決めるわけではありません。

現場管理職が医学的判断をするわけでもありません。

本人が希望した働き方が、そのまま企業の決定になるわけでもありません。

本人・医療側は、判断に必要な重要な情報を提供します。
その情報と仕事内容・職場環境をつなぎ、復職・配置・就業上の措置を会社として判断することは、企業側の役割です。

必要なのは、誰か一人に判断を任せることではなく、それぞれの情報を会社の判断につなげる仕組みです。

合理的配慮は「本人の希望をそのまま受け入れること」ではない

職場復帰時には、本人からさまざまな配慮の希望が出ることがあります。

本人の希望や困りごとを確認することは重要です。

ただし、希望された方法をそのまま実施することだけが合理的配慮ではありません。

企業では、

  • 本人は何に困っているのか
  • そのことが仕事にどう影響するのか
  • 希望された方法で支障を減らせるのか
  • 別の方法でも同じ目的を実現できないか
  • 企業として継続的に実施できるか

などを確認して、本人との対話を通じて対応を検討します。また、病気や事故によって障害のある状態となった社員が、必ずしも障害者手帳を持っているとは限りません。

雇用分野における合理的配慮は、障害者手帳の有無だけで対象を判断するものではありません。

配慮は職場復帰時に決めて終わりではない

職場復帰の時点では、「この条件なら働けそう」と考えていた場合でも、実際に仕事を始めると想定していなかった課題が見つかることがあります。

そのため、職場復帰後は、

  • 勤務状況
  • 業務遂行の状況
  • 体調の変化
  • 実施している配慮が機能しているか
  • 本人・現場双方に新たな負担が生じていないか

などを確認します。

状況に応じて、「配慮を継続する」「少し変更する」「段階的に減らす」「別の方法を検討する」などの見直しが必要になります。

職場復帰は、復帰日を決めて終了するのではなく、復帰後の仕事の状況を確認して調整していくところまで含めて考えることが重要です。

問題は「どんな配慮をするか」だけではない

中途障害者の職場復帰について、「どのような配慮をすればよいですか」という相談は多くあります。

もちろん、勤務時間、業務量、設備、配置など、具体的な対応を検討することは必要です。しかし、現場の迷いが繰り返される企業では、配慮メニューが不足していることだけが問題とは限りません。

例えば、

  • 主治医の診断書を誰が仕事の判断に読み替えるのか
  • 復職の可否を誰が決めるのか
  • 元の仕事へ戻すか、配置を変えるかを誰が判断するのか
  • 配慮の内容・範囲を誰が決めるのか
  • 復帰後に誰が状況を確認し、いつ見直すのか

が曖昧だと、判断が人事や管理職個人に集中します。

その結果、「医師が復職可能と言っているので戻すしかない」「現場が不安なので復帰させられない」「本人が希望しているので断れない」というように、一つの情報だけで判断しやすくなります。

職場復帰は、配慮の問題であると同時に、会社の判断設計の問題でもあります。

社内で確認しておきたいポイント

病気・事故後の職場復帰を検討するときの確認ポイント

  • 主治医の「復職可能」だけで、具体的な仕事への復帰を決めていないか
  • 復帰後に任せる仕事と、必要な業務遂行能力を整理しているか
  • 本人の状態だけでなく、仕事上で生じる支障を確認しているか
  • 本人ができる対処と、会社が行う配慮を分けているか
  • 復職・配置・配慮を誰が判断するのか決まっているか
  • 復帰後に誰が状況を確認し、いつ配慮を見直すのか決まっているか

こうした点が曖昧な場合、配慮の種類を増やすだけでは、現場の迷いは減らないことがあります。

必要なのは、どの情報を使い、何を判断し、誰が決めるのかを会社として整理することです。

復職の情報はそろった。でも、会社の判断で止まっていませんか
職場復帰では、本人の意向、主治医の診断書、産業医の意見、現場の状況など、さまざまな情報が集まります。

「この仕事に戻してよいのか」
「配置を変える必要があるのか」
「どこまで配慮するのか」
「人事・管理職・現場の誰が決めるのか」

情報は集まっているのに結論が出ない場合、個別ケースへの対応を増やす前に、組織のどこで判断が止まっているのかを整理することが重要です。

FAQ|病気・事故後の職場復帰について企業からよくある質問

Q:主治医から「復職可能」と診断されれば、会社は復職させる必要がありますか

主治医の意見は、職場復帰を検討するうえで重要な情報です。

ただし、主治医の「復職可能」という判断が、特定の職場・職務で必要な業務遂行能力まで回復していることをそのまま意味するとは限りません。

企業では、主治医や産業医等の意見、本人の意向、実際の仕事内容、職場側の状況などを踏まえて、職場復帰の可否や就業上の措置を判断します。

Q:職場復帰では、元の部署・元の仕事に戻す必要がありますか

必ずしも以前と全く同じ条件に戻すことだけが選択肢ではありません。

本人の状態や仕事との適合を確認し、必要に応じて勤務時間、業務内容、作業方法、職場環境、配置などを検討します。

一方で、障害があることだけを理由に安易に職務を変更するのではなく、何が仕事上の支障になっているのかを確認することが重要です。

Q:職場復帰時には、どのような配慮が考えられますか

例えば、勤務時間や業務量の調整、通院への配慮、設備・作業方法の変更、相談先の設定、配置や職務の検討などがあります。

ただし、障害名ごとに決まった配慮を行うのではありません。

本人が実際にどの仕事で何に困るのかを確認し、必要な対応を検討します。

Q:本人が希望した配慮は、すべて実施する必要がありますか

本人の希望は重要な情報ですが、希望された方法をそのまますべて実施するという考え方ではありません。

本人の困りごと、仕事への影響、配慮の効果、企業の実施可能性、代替手段などを確認し、本人との対話を通じて対応を検討します。

Q:障害者手帳を持っていない社員にも合理的配慮は必要ですか

合理的配慮の対象は、障害者手帳を持っている人だけに限定されているわけではありません。

手帳の有無だけを見るのではなく、仕事をするうえで障害による支障が生じているか、その支障を減らすためにどのような対応が必要かを確認することが重要です。

Q:復職後の配慮は、いつまで続ければよいのでしょうか

一律の期間で決めるものではありません。

復帰後の勤務状況、業務遂行、本人の状態、配慮の効果などを確認し、必要に応じて継続・変更・終了を検討します。

あらかじめ見直す時期や確認する担当者を決めておくと、配慮が固定化したり、逆に必要な配慮が突然なくなったりすることを防ぎやすくなります。

まとめ|職場復帰は「復職可能」の診断だけで決めない

病気や事故などによって障害のある状態となった社員が職場復帰するとき、主治医の「職場復帰可能」という意見は重要な判断材料です。

しかし、それだけで、「元の仕事に戻せる」「以前と同じ勤務ができる」「配慮は不要」と判断することはできません。

企業が確認したいのは、

  • 現在の状態
  • 復帰後に任せる仕事
  • 仕事上で生じる支障
  • 本人自身ができる対処
  • 会社として必要な配慮
  • 安全かつ継続的に働ける条件

です。

そして、本人、主治医、産業医等、現場、人事が持っている情報をつなぎ、復職・配置・就業上の措置を誰が判断するのかを明確にする必要があります。

職場復帰は、「どの配慮をするか」だけの問題ではありません。

どの情報をもとに、何を判断し、誰が決め、いつ見直すのか。この流れを会社として整理することが、本人にとっても現場にとっても、継続しやすい職場復帰につながります。

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参考資料

※職場復帰の判断や就業上の措置は、本人の状態、仕事内容、就業規則、社内体制等によって異なります。実際の対応では、主治医・産業医等の意見を踏まえ、必要に応じて専門家へ確認してください。

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