障害者の就労支援を行なう機関は、名前や役割が似ており、どのように違いがあるのかがわかりにくいことがあります。今回は、障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターの違いについて見ていきたいと思います。
障害者職業センターとは?
障害者の職業的自立を促進・支援するため、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置・運営するセンターです。障害者雇用促進法に基づいて、職業リハビリテーションの実施・助言・援助などを行っています。
障害者職業総合センター・広域障害者職業センター・地域障害者職業センターの3種類があります。このうち「(地域)障害者職業センター」は、都道府県ごとにあり、障害者の就労に関する様々な支援を行なっています。職業センターには、障害者職業カウンセラーや配置型ジョブコーチ等が配置されており、障害者雇用の専門的な役割を果たしています。
障害者職業センターでは、障害者本人に対する専門的な職業リハビリテーションサービス、事業主に対する障害者の雇用管理に関する相談・援助、地域の関係機関に対する助言・援助を実施しています。
その他にも、ハローワーク(公共職業安定所)、障害者就業・生活支援センターとの密接な連携のもと、就職や職場復帰を目指す障害のある方、障害者雇用を検討している或いは雇用している事業主の方、障害のある方の就労を支援する関係機関の方に対して、支援・サービスを提供しています。
障害者職業センターを活用できる対象者
- 就職をめざしている障害者、在職中の障害者
- 障害者雇用を考えている事業主、障害者雇用に取り組んでいる事業主
- 障害者の就労支援を行う支援機関等
障害者職業センターの提供するサービス・役割
障害者職業センターで行っている主なサービス・役割について見ていきましょう。
1. 障害者へのサービス
相談や各種検査、作業などを通じて、今後の就職や職場定着に向けた進め方を相談しています。 就職に向けて準備を整えるための職業準備支援を実施しています。
障害者一人ひとりのニーズに応じて、職業評価、職業指導、職業準備訓練及び職場適応援助等の各種の職業リハビリテーションを実施します。
- 職業評価
- 職業準備支援
- 知的障害者・重度知的障害者の判定
- 職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業
就職の希望などを把握した上で、職業能力等を評価し、それらを基に就職して職場に適応するために必要な支援内容・方法等を含む、個人の状況に応じた職業リハビリテーション計画を策定。
ハローワークにおける職業紹介、ジョブコーチ支援等の就職に向かう次の段階に着実に移行させるため、センター内での作業体験、職業準備講習、社会生活技能訓練を通じて、基本的な労働習慣の体得、作業遂行力の向上、コミュニケーション能力・対人対応力の向上を支援。
障害者雇用率制度、障害者雇用納付金制度などの雇用対策上の知的障害者・重度知的障害者の判定。
職業的重度判定とは、知的障害者手帳の障害程度がA・重度と判定されている人のほか、障害者職業センターで「重度知的障害者」と判定された人が含まれます。「重度知的障害者」と判定されると、障害者雇用率のカウントがダブルカウントになります。
知的障害者手帳の有無や判定内容、障害者年金の判定とは全く別の基準で、「障害者雇用促進法上の知的障害者」「障害者雇用促進法上の重度知的障害者」と認定されています。そのため職業的重度判定と認定されると、障害者を雇用する企業にとっては、ダブルカウントで雇用できることになります。
職業的重度判定を受けることは、いつもでもできるわけではありません。雇用する前に職業的重度判定を受けていることが必要になります。判定をする職業センターも時期によっては、非常に混み合いますので、十分余裕をもって判定してもらうようにすることが大切です。
障害者の円滑な就職及び職場適応を図るため、事業所にジョブコーチを派遣し、障害者及び事業主に対して、雇用の前後を通じて障害特性を踏まえた直接的、専門的な援助を実施。
2. 障害者と事業主双方へのサービス
職場に適応できるように職場にジョブコーチを派遣しています。また、うつ病等により休職している精神障害者を対象に職場復帰に向けた支援(リワーク支援)を実施しています。
- 精神障害者総合雇用支援
精神障害者及び事業主に対して、主治医等の医療関係者との連携の下、精神障害者の新規雇入れ、職場復帰、雇用継続のための様々な支援ニーズに対して、専門的・総合的な支援を実施。
3. 事業主へのサービス
障害者の雇用管理に関する相談・支援を実施しています。 また、障害者雇用に関する理解を深めていただくための雇用管理サポート講習会を実施しています。
- 事業主に対する相談・援助
障害者の雇用に関する事業主のニーズや雇用管理上の課題を分析し、事業主支援計画を作成し、雇用管理に関する専門的な助言、援助を実施。
4. 関係機関へのサービス
各支援機関の効果的な職業リハビリテーションサービス実施のための助言・援助を行っています。 効果的な職業リハビリテーションサービスに必要な知識・技術の習得のための就業支援基礎研修を行っています。
- 地域における職業リハビリテーションのネットワークの醸成
- 地域の関係機関に対する職業リハビリテーションに関する助言・援助等の実施
障害者就業・生活支援センター、障害者雇用支援センター等からの依頼に応じ、職業評価等をはじめとする技術的、専門的事項についての援助を実施。
また、医療、保健、福祉、教育分野の関係機関に対し、職業リハビリテーション推進フォーラム等を通じて、職業リハビリテーションに関する共通認識を醸成し、地域における就労支援のネットワークを形成。
障害者就業・生活支援センターその他の関係機関に対する職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言・援助を行うほか、関係機関の職員等の知識・技術等の向上に資するため、マニュアルの作成及び実務研修等を実施。
障害者就業・生活支援センターとは?
「障害者就業・生活支援センター」は地域の福祉を担っていて、各市町村レベルで設置されいます。
「障害者就業・生活支援センター」という名前にあるように、就業及びそれに伴う日常生活の仕事と生活の両方をサポートするセンターとなっています。そのためここには「就労支援員」と「生活支援員」がいて、「就職」「住居」「役所への手続き」など様々な「日常の支援」を行っています。就職を希望する障害者、または在職中の障害者の抱える課題に応じて、雇用及び福祉の関係機関との連携の下、就業面及び生活面の一体的な支援を行うのが特徴です。
障害者就業・生活支援センターを活用できる対象者
- 就職を希望する障害者
- 在職中の障害者
障害者就業・生活支援センターの提供するサービス・役割
障害者の身近な地域において、就業面と生活面の一体的な相談・支援を行っています。
就業面での支援
就業に関する相談支援
- 就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)
- 就職活動の支援
- 職場定着に向けた支援
障害のある方それぞれの障害特性を踏まえた雇用管理についての事業所に対する助言
関係機関との連絡調整
生活面での支援
日常生活・地域生活に関する助言
- 生活習慣の形成、健康管理、金銭管理等の日常生活の自己管理に関する助言
- 住居、年金、余暇活動など地域生活、生活設計に関する助言
- 関係機関との連絡調整
動画での解説はこちらから
まとめ
障害者職業センターは、求職中・在職中の障害者に対する支援を中心に行なっており、障害者本人だけでなく、障害者を受け入れる企業や、連携機関への支援も行なっています。
一方、障害者就業・生活支援センターは、障害者本人の支援を中心に行なっています。こちらは就労に関わることだけではなく、生活や行政への手続きなど、日常の支援に関わる様々なことに対応します。
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