2026年8月4日更新
障害者採用を進めようとすると、ハローワーク、就労移行支援事業所、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなど、さまざまな支援機関の名前が出てきます。
しかし、名称を見ただけでは、それぞれの違いや、どこへ何を相談すればよいのか分かりにくいものです。
「求人を出したい」「職場実習を受け入れたい」「応募者の訓練状況を知りたい」「採用後の定着支援を依頼したい」では、相談先の候補が異なります。
また、支援機関へ相談すれば、採用活動をすべて任せられるわけではありません。
障害者採用で支援機関を活用するときは、機関名から選ぶのではなく、自社が何を支援してほしいのかを整理し、目的に合った相談先を選ぶことが重要です。
- 障害者採用で活用できる主な支援機関
- 企業の目的に合った支援機関の選び方
- 求人紹介、職場実習、定着支援の相談先
- 支援機関へ相談する前に企業が整理すること
- 外部支援へ採用判断を任せきりにしない理由
障害者採用で活用できる支援機関とは
障害者雇用に関わる支援機関には、それぞれ異なる役割があります。
企業が採用時に関わることの多い機関として、次のようなものがあります。
- ハローワーク
- 就労移行支援事業所
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
- 特別支援学校
- 障害者職業能力開発校などの職業訓練機関
求人紹介を行う機関もあれば、就職に向けた訓練、職場実習、職場適応、雇用管理の相談などを行う機関もあります。
同じ名称の機関であっても、地域、運営主体、利用者層、企業との連携実績によって、対応できる内容が異なる場合があります。
そのため、「障害者雇用について相談したい」と漠然と問い合わせるだけでは、自社が必要とする支援につながらないことがあります。
支援機関は、企業の目的に合わせて選ぶ
支援機関を探す前に、企業側で「何を依頼したいのか」を整理します。
たとえば、
- 求人を求職者へ届けたい
- 自社の仕事に合う人材と出会いたい
- 職場実習を受け入れたい
- 応募者が訓練中にどのように仕事をしているか確認したい
- 採用後の職場定着を支援してほしい
- 雇用管理や職場環境について相談したい
では、相談する目的が異なります。
一つの支援機関ですべてを解決しようとするのではなく、採用の段階や課題に応じて、複数の機関と連携することもあります。
求人を紹介してほしいとき
障害者求人の受付や職業紹介について相談するときは、ハローワークが代表的な窓口です。
ハローワークでは、障害のある求職者への職業相談や職業紹介だけでなく、企業からの求人受付や、障害者雇用に関する相談も行っています。
ただし、求人を出せば、自動的に自社に合う人材を紹介してもらえるわけではありません。
支援する側が求人を求職者へ案内するためには、
- どのような仕事を任せるのか
- どのような経験や能力が必要なのか
- 勤務時間や雇用条件はどうなっているか
- どのような受け入れ体制があるのか
が具体的になっている必要があります。
就労移行支援事業所や特別支援学校なども、利用者や生徒の就職支援を通じて、企業見学や職場実習につながる場合があります。
ただし、すべての支援機関が職業紹介を行っているわけではありません。
求人紹介を依頼したいのか、求人情報を利用者へ案内してほしいのか、実習を通じて接点をつくりたいのかを分けて考えることが大切です。
職場実習を受け入れたいとき
職場実習を検討するときは、就労移行支援事業所、特別支援学校、職業訓練機関、障害者就業・生活支援センターなどが関わる場合があります。
ただし、実習を受け入れること自体を目的にしないことが重要です。
企業側では、事前に、
- 何を確認するための実習なのか
- 採用後に任せる予定の仕事は何か
- 企業と本人がそれぞれ何を確認するのか
を整理しておく必要があります。
支援機関によって、実習を希望する人の経験、訓練内容、就職時期、必要な支援は異なります。
自社の仕事内容と合わない実習を行っても、採用判断にはつながりにくくなります。そのため、実習を受け入れる前に、何を確認するための実習なのかを企業側で整理しておく必要があります。
応募者の訓練状況や働き方を確認したいとき
就労移行支援事業所、特別支援学校、職業訓練機関などでは、本人が訓練や実習に取り組む様子を把握している場合があります。
採用前には、本人の同意を前提に、
- 経験してきた作業
- 仕事の覚え方や進め方
- 分かりやすい指示方法
- 質問や相談の方法
- 継続して働くために必要な支援
などを確認できることがあります。
ただし、訓練施設でできていることが、自社でも同じようにできるとは限りません。
訓練環境と企業の職場では、仕事の量、求める成果、指示する人、時間、周囲との連携などが異なります。
支援者から「この仕事ができます」と聞くだけで判断するのではなく、自社で予定している仕事との関係から確認する必要があります。
また、支援者の評価だけでなく、応募者本人が自分の経験や必要な支援をどのように捉えているのかも確認します。
採用後の定着支援を依頼したいとき
採用後の職場定着については、本人が利用していた就労移行支援事業所、就労定着支援事業所、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センターのジョブコーチなどが関わる場合があります。
支援内容には、
- 本人との面談
- 企業と本人の間の状況確認
- 職場で困っていることの整理
- 仕事の教え方や職場環境に関する助言
- 就業面と生活面の関係機関との連携
などがあります。
ただし、どの機関が、いつまで、どの程度関われるのかは異なります。
採用後に問題が起きてから支援先を探すのではなく、採用前に、
- 採用後も支援を継続できるか
- 企業から相談できる内容は何か
- 本人、企業、支援者がどのように連絡を取るか
を確認しておくことが重要です。
支援機関が定期的に関わっていても、企業内の上司や担当者の役割がなくなるわけではありません。
外部支援から得た情報を、職場で誰が受け取り、誰が判断するのかを決めておく必要があります。
雇用管理や職場環境について相談したいとき
「どのような仕事を任せればよいか分からない」「採用した社員への指示方法に迷っている」「職場定着に課題がある」といった企業側の相談には、ハローワークや地域障害者職業センターなどが対応しています。
地域障害者職業センターでは、障害者の職業評価や職業準備支援だけでなく、企業に対する雇用管理の相談・援助や、ジョブコーチによる支援も行っています。
障害者就業・生活支援センターも、本人への就業面・生活面の支援に加えて、企業からの雇用管理や職場定着に関する相談に対応しています。
ただし、一般的な助言を受けることと、自社の組織内で役割や判断の流れを設計することは別です。
支援機関から助言を受けても、
- 誰が仕事を教えるのか
- 配慮の可否を誰が判断するのか
- 現場で困ったときに誰へ相談するのか
- 対応をいつ見直すのか
は、企業側で決める必要があります。
支援機関に採用判断を任せない
支援者は、応募者の訓練状況、得意なこと、困りやすい場面など、多くの情報を把握している場合があります。
そのため、企業は支援者の意見を採用判断の材料として活用できます。
しかし、最終的に採用し、仕事を任せ、雇用管理を行うのは企業です。
「支援機関が大丈夫だと言ったから採用する」「支援者が難しいと言ったから不採用にする」という判断では、自社の仕事との適合を確認したことにはなりません。
企業が確認する必要があるのは、
- 自社で任せる仕事に必要な能力は何か
- どのような方法であれば能力を発揮できるか
- 必要な配慮を企業として実施できるか
- 採用後にどのような役割を期待するか
という点です。
支援機関は、企業の代わりに採用を決める相手ではなく、企業と本人が適切に判断するための情報や支援をつなぐ相手と考えます。
支援機関へ相談する前に企業が整理すること
支援機関との連携がうまくいかないとき、支援機関の情報不足だけが原因とは限りません。
企業側からの依頼が曖昧な場合もあります。
たとえば、「よい人がいたら紹介してください」とだけ伝えても、何をもって「よい人」とするのかは分かりません。
相談前には、少なくとも次の点を整理します。
- 採用後に任せる予定の仕事
- 仕事で求める成果や役割
- 必ず必要な経験や能力
- 企業側で調整できる働き方や環境
- 支援機関に依頼したいこと
- 採用後に企業内で担当する人
どの機関と、どのように連携するかは、仕事内容、勤務地、採用する人材、地域の支援資源によって異なります。
機関の一覧から選ぶだけでなく、自社の採用目的と受け入れ体制に合わせて組み合わせる必要があります。
- 支援機関へ依頼したいことを説明できる
- 採用後に任せる仕事が具体的になっている
- 求人紹介と定着支援を分けて考えている
- 支援者の情報だけで採用判断をしていない
- 採用後に企業内で対応する担当者が決まっている
当てはまらない項目がある場合、相談先を増やす前に、自社の採用目的と支援機関へ求める役割を整理する必要があります。
支援機関には、それぞれ得意とする支援や、関わっている求職者がいます。
しかし、支援機関の一覧を知るだけでは、自社に合う採用ルートは決まりません。
任せる仕事、求める人材、採用後の受け入れ体制、支援機関へ依頼したいことをつなげて考える必要があります。
30分相談では、現在の採用状況や仕事内容を伺い、どの段階で、どのような外部支援が必要なのかを一緒に整理します。
求人・採用・配属・定着のどこにズレがあるのかを全体から見直したい企業には、「採用・定着のズレ見える化マップ」をご案内しています。
障害者採用の支援機関に関するよくある質問
Q:初めて障害者を採用するときは、どこへ相談すればよいですか
求人の出し方や職業紹介について相談したい場合は、ハローワークが代表的な窓口です。
一方、仕事の設計、職場実習、雇用管理、職場適応など、相談したい内容によっては、就労移行支援事業所や地域障害者職業センターなど、別の機関が適している場合があります。
まず、自社が何に困っているのかを整理したうえで相談先を選びます。
Q:支援機関なら、どこでも応募者を紹介してくれますか
すべての支援機関が職業紹介を行っているわけではありません。
求人の受付や職業紹介を行う機関もあれば、訓練、実習、定着支援、企業への助言を中心とする機関もあります。
求人を紹介してほしいのか、利用者へ求人を案内してほしいのか、実習を受け入れたいのかを明確にして確認します。
Q:支援者から、応募者の障害や体調について聞いてもよいですか
支援者から本人に関する情報を共有してもらう場合は、本人の同意と、共有する目的・範囲の確認が必要です。
診断名や生活状況を広く聞くのではなく、予定している仕事を進めるために必要な情報を確認します。
Q:採用後の対応は、支援機関へ任せてもよいですか
支援機関に面談や職場定着の支援を依頼できる場合はありますが、企業の雇用管理を代わりに行うものではありません。
日常的な仕事の指示、評価、配慮の判断、相談対応は、企業内でも役割を決める必要があります。
Q:複数の支援機関と連携してもよいですか
採用段階や支援の目的によって、複数の機関が関わる場合があります。
ただし、連携先を増やすだけでは情報共有が複雑になります。
それぞれに何を依頼するのか、誰が企業側の窓口になるのかを整理しておくことが重要です。
まとめ
障害者採用で活用できる支援機関には、それぞれ異なる役割があります。
重要なのは、機関名を覚えることではありません。
- 求人を紹介してほしいのか
- 職場実習を受け入れたいのか
- 応募者の訓練状況を確認したいのか
- 採用後の定着支援を依頼したいのか
- 雇用管理や職場環境について相談したいのか
を明確にし、目的に合った相談先を選ぶことです。
また、支援機関へ相談する前に、企業側でも、任せる仕事、求める人材、雇用条件、受け入れ体制を整理する必要があります。
支援機関は採用や雇用管理を丸ごと任せる相手ではありません。
本人と企業が適切に判断し、採用後の働き方を整えるための情報や支援をつなぐ相手として活用することが大切です。
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