障害者採用の進め方|仕事設計・募集・面接・採用判断

障害者採用の進め方|仕事設計から募集・面接・採用判断まで

2024年06月20日 | 採用活動

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

登録者限定レポート
「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年8月3日更新
障害者採用を始めたものの、「求人を出しても応募が集まらない」「面接で何を確認すればよいのかわからない」「採用した後に任せる仕事が見つからない」と悩む企業は少なくありません。

これらは、それぞれ別の問題に見えます。しかし実際には、採用目的、仕事内容、採用基準、選考方法、配属先への引き継ぎが一つの流れとして設計されていないことから起きている場合があります。

障害者採用は、求人を出すことや、応募者を探すことから始めるものではありません。

まず会社として、何のために採用するのか、どの仕事を任せるのか、何を基準に評価するのかを決めます。そのうえで、募集、面接、職場実習、採用判断、配属先への引き継ぎをつなげていくことが重要です。

障害者採用では、「誰を採るか」の前に、「何を任せ、どう判断するか」を決める必要があります。

この記事でわかること

  • 障害者採用を始める前に会社で決めること
  • 仕事設計から採用判断までの基本的な流れ
  • 採用面接で確認すべきことの考え方
  • 面接だけで判断しにくい場合の対応
  • 採用後のミスマッチを防ぐための確認視点

障害者採用は「どの障害者を採用するか」から考えない

障害者採用を始めるとき、「身体障害者を採用したい」「精神障害者は受け入れが難しい」「この障害であれば、この仕事が向いているのではないか」と、障害種別から考えることがあります。

しかし、同じ障害名や障害者手帳の等級であっても、経験、能力、得意なこと、仕事の進め方、必要な配慮は一人ひとり異なります。

障害名だけでは、その人が自社の仕事を遂行できるかどうかは判断できません。

先に確認する必要があるのは、次の点です。

  • どのような仕事を任せるのか
  • その仕事で求める成果は何か
  • 仕事を進めるために必要な能力は何か
  • どのような職場環境で働くのか
  • 指示、質問、相談はどのように行われるのか

仕事内容と職場環境が明確になって初めて、応募者の経験や能力が仕事に合っているか、どのような場面で支障が生じる可能性があるか、どのような配慮が必要かを具体的に確認できます。

障害者採用を始める前に会社で決めること

採用する目的と必要人数を確認する

最初に確認したいのは、会社が障害者雇用に取り組む目的です。

法定雇用率を達成することは、企業にとって必要な対応です。ただし、「人数を満たすこと」だけを目的にすると、採用すること自体がゴールになりやすくなります。

その結果、採用後に仕事や配属先を探したり、本人に合わせて周囲から業務を集めたりすることになります。

採用活動を始める前に、少なくとも次の点を社内で共有しておく必要があります。

  • 今回の採用で何を実現したいのか
  • どの部門の、どの業務を担ってもらうのか
  • 採用後にどのような役割を期待するのか
  • 誰が採用と受け入れの判断をするのか

目的が曖昧なままでは、人事と配属部署で採用に対する期待がずれてしまいます。

任せる仕事と配属先を決める

「よい人がいたら、その人に合う仕事を考える」という進め方だけでは、採用後に仕事が見つからない可能性があります。

仕事を完全に固定する必要はありませんが、少なくとも採用前に、中心となる業務と配属先の候補を整理しておくことが必要です。

仕事内容を整理するときは、業務名だけでなく、実際の進め方まで確認します。

たとえば「事務補助」という職種名だけでは、仕事の実態はわかりません。

  • 一人で進める仕事が多いのか
  • 複数の担当者から指示を受けるのか
  • 優先順位の変更が頻繁にあるのか
  • 電話や来客への対応があるのか
  • 正確性と処理速度のどちらを重視するのか
  • 繁忙期に業務量がどの程度変わるのか

ここまで整理すると、応募者に仕事を具体的に説明しやすくなり、本人も必要な配慮や不安な場面を伝えやすくなります。

仕事に必要な能力と採用基準を明確にする

採用基準が曖昧な場合、面接官によって評価が変わります。

ある面接官は「受け答えがしっかりしていた」と評価し、別の面接官は「障害への対応が難しそうだ」と判断することがあります。

これでは、仕事に必要な能力ではなく、面接官の印象や障害に対する不安によって採用判断が左右されます。

採用前に、次の項目を分けて整理しておきます。

  • 仕事を行ううえで必ず必要な能力
  • 入社後に習得できる能力
  • 環境や指示方法を調整すれば補える部分
  • 今回の職場では変更することが難しい条件

採用選考は、応募者の適性と能力を、予定している職務との関係から確認するものです。

面接を担当する人が複数いる場合も、人数を増やすだけでなく、共通の質問項目と評価基準を持つことが重要です。

実施可能な配慮と受け入れ体制を確認する

合理的配慮については、本人の希望を聞くだけでなく、予定している仕事や職場環境との関係から検討します。

たとえば、「口頭で複数の指示を受けることが難しい」という場合でも、必要な対応は仕事によって変わります。

業務指示を一つずつ出せるのか、文字でも確認できるのか、指示を出す人を整理できるのかによって、実施可能性は異なります。

採用担当者が「対応できる」と判断しても、実際に対応する配属先が継続できなければ、採用後に行き違いが起きます。

採用を決める前に、

  • 誰が対応するのか
  • どの場面で対応が必要なのか
  • 通常の業務運営の中で継続できるのか
  • 判断に迷ったときは誰へ相談するのか

を、配属予定部署と確認しておく必要があります。

募集・採用時にも、障害のある応募者が能力を適切に示せるよう、必要な合理的配慮を検討することが求められます。

詳しくは、厚生労働省の「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」も確認してください。

障害者採用を進める7つのステップ

1.採用方針と社内の役割を共有する

採用活動を始める前に、人事、配属予定部署、必要に応じて経営層や労務部門が、採用の目的と進め方を共有します。

誰が求人を作成し、誰が仕事内容を説明し、誰が配慮の実施可能性を判断し、誰が最終的な採用判断をするのかを決めておきます。

2.仕事内容と採用基準を決める

実際に任せる仕事、必要な能力、期待する成果、仕事の進め方を整理します。

障害の有無にかかわらず必要となる条件と、環境調整によって対応できる条件を混同しないことが大切です。

3.求人内容と募集方法を決める

求人票には、職種名だけでなく、具体的な仕事内容、勤務条件、職場環境、求める経験や能力を示します。

仕事内容が曖昧な求人では、応募者は自分に合う仕事かどうかを判断できません。また、採用後に求人内容と実際の仕事が違うという問題にもつながります。

ハローワーク、就労移行支援事業所、特別支援学校、人材紹介会社など、採用したい人材や地域に応じて募集方法も検討します。

4.応募者が能力を示せる選考方法を整える

応募者から、面接方法や採用試験について配慮の申し出があった場合は、どのような場面で支障があるのかを確認し、必要な方法を話し合います。

たとえば、面接場所への移動、情報の提示方法、筆談、支援者の同席、試験時間などが検討対象になることがあります。

合理的配慮は、採用基準を下げることではありません。応募者が本来の能力を示せる選考方法を整え、そのうえで職務に必要な適性と能力を評価します。

5.面接で仕事との接点を確認する

障害者採用面接の目的は、障害名や診断内容を詳しく聞くことではありません。

企業が予定している仕事を説明したうえで、次の点を確認します。

  • これまでの仕事や訓練で経験したこと
  • 得意な仕事と苦手な仕事
  • 仕事を覚えるときに分かりやすい方法
  • 仕事上で支障が生じやすい場面
  • 困ったときに本人が行っている対処
  • 必要な配慮と、その理由
  • 質問や相談を行いやすい方法

障害の状況を確認する場合も、仕事をするうえでの能力や適性、合理的配慮の検討に必要な範囲で行い、確認する目的を本人へ説明します。

6.必要に応じて職場実習を行う

面接だけでは、実際の仕事の進め方や職場環境との相性を判断しにくい場合があります。

その場合は、職場実習や職場体験などを活用する方法があります。ただし、実習を行えば自動的に採用のミスマッチを防げるわけではありません。

実習前に、

  • 何を確認するための実習なのか
  • どの仕事を行ってもらうのか
  • どのような基準で評価するのか
  • 誰が指示や振り返りを担当するのか

を決めておきます。

「真面目だった」「一生懸命だった」という印象だけでなく、仕事の正確性、理解の仕方、質問の方法、疲労の変化、環境や指示方法を調整したときの変化などを確認します。

実習は企業が応募者を評価するだけでなく、本人が仕事内容や職場環境を確認する機会でもあります。

7.採用判断と配属先への引き継ぎを行う

採用判断では、面接や実習で得た情報を、あらかじめ決めた採用基準に沿って整理します。

人柄がよい、支援機関から推薦された、面接で受け答えができたという理由だけで判断するのではなく、予定している仕事との適合を確認します。

採用が決まった後は、配属先へ配慮事項だけを伝えるのでは不十分です。

  • これまでの経験とできること
  • 任せる予定の仕事
  • 期待する役割と成果
  • 仕事を覚えやすい方法
  • 困りやすい場面と本人の対処方法
  • 会社として実施する配慮
  • 質問や相談を受ける人
  • 配慮を見直すときの判断者

を整理し、本人のプライバシーと同意に配慮しながら、必要な人へ共有します。

障害者採用で起きやすい3つの行き違い

採用してから任せる仕事を探している

採用人数を優先し、採用後に仕事を探すと、配属先には「受け入れてから仕事を考えてほしい」という依頼が届きます。

その結果、既存社員から仕事を少しずつ集める、補助的な業務だけを任せる、業務量や評価基準を決められないという問題が起きやすくなります。

採用前に仕事を完全に固定する必要はありませんが、中心となる業務と期待する役割は決めておく必要があります。

配慮事項だけを確認している

「必要な配慮はありますか」と質問しても、企業側が仕事内容や職場環境を説明していなければ、応募者も何を伝えればよいか判断できません。

配慮は、本人だけの情報では決まりません。本人の状態、予定している仕事、職場環境、企業側の実施方法を結びつけて検討します。

人事と配属先で採用基準が異なる

人事は採用できると判断していても、配属先は業務遂行が難しいと考えている場合があります。反対に、配属先が漠然とした不安から、実施可能な配慮まで難しいと判断していることもあります。

この行き違いは、どちらかの理解不足だけで起きているとは限りません。

仕事内容、採用基準、配慮の実施可能性を、人事と配属先が同じ情報をもとに検討する仕組みが必要です。

採用後の定着は、採用前の設計から始まっている

採用後に起きる問題のすべてを、採用前に予測することはできません。実際に働き始めてから分かることもあり、仕事や配慮を見直すことも必要です。

しかし、採用前に仕事内容が決まっていない、採用基準が共有されていない、配属先が採用判断に関わっていない状態では、入社後の問題が現場へ集中します。

現場で対応が止まったとき、「管理職の理解が足りない」「本人の自己管理ができていない」と考える前に、採用段階で何を確認し、誰が判断していたのかを振り返る必要があります。

障害者採用の成功は、採用人数だけでは測れません。

採用した人が役割を持ち、仕事を通じて組織に貢献できる状態をつくるためには、採用前から仕事、配慮、判断、情報共有をつなげて設計することが重要です。

自社の採用プロセスを確認してみましょう

  • 求人を出す前に、任せる仕事と配属先が決まっている
  • 人事と配属部署で、採用基準を共有している
  • 企業側から、仕事内容と職場環境を具体的に説明できる
  • 必要な配慮を、仕事との関係から確認している
  • 面接や実習の情報を、採用判断と配属準備に活かしている

当てはまらない項目が複数ある場合、採用担当者の面接スキルだけでなく、採用プロセス全体を見直す必要があるかもしれません。

採用活動を始める前に、仕事と判断の流れを整理しませんか

求人、面接、配慮、配属を別々に考えると、採用後に現場へ判断が集中します。

「任せる仕事が決まらない」「採用基準がそろわない」「配属先との調整が進まない」と感じている場合は、現在の採用プロセスを一緒に整理します。

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障害者採用に関するよくある質問

Q:どの障害種別を採用するか、先に決めたほうがよいですか

障害種別だけで採用対象を決めるのではなく、先に任せる仕事と必要な能力を整理します。

同じ障害名であっても、経験、能力、仕事の進め方、必要な配慮は異なります。障害名ではなく、本人と予定している仕事との関係から判断することが重要です。

Q:採用面接で障害について聞いてはいけないのでしょうか

一切聞いてはいけないということではありません。仕事をするうえでの能力や適性を確認するため、または合理的配慮を検討するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しながら確認します。

質問するときは、仕事内容を説明し、「仕事上の支障や必要な配慮を確認するため」と目的を伝えることが大切です。

一方、仕事の適性や能力に関係のない家族、出生地、思想・信条などを質問することは、公正な採用選考の観点から避ける必要があります。

Q:希望された合理的配慮は、すべて実施する必要がありますか

本人から希望を聞いたうえで、支障となっている事情、予定している仕事、配慮の方法、企業側の負担などを確認し、本人と話し合って決めます。

希望された方法をそのまま実施することだけが合理的配慮ではありません。目的を確認し、別の方法で支障を減らせるかを検討する場合もあります。

Q:配属予定部署は、どの段階から採用に関わるべきですか

少なくとも、仕事内容、必要な能力、配慮の実施可能性を決める段階から関わることが望まれます。

採用決定後に初めて配属先へ伝えると、任せる仕事や対応する人が決まらず、現場に判断が集中しやすくなります。

Q:面接だけで採用判断が難しい場合はどうすればよいですか

職場実習や職場体験などを活用し、実際の仕事や職場環境との関係を確認する方法があります。

ただし、実習の目的や評価項目を決めずに行うと、人柄や印象だけで判断することになります。予定している仕事に必要な能力、指示の理解、質問方法、継続可能性など、確認する項目を事前に整理します。

まとめ

障害者採用では、求人を出す前の準備が、その後の募集、面接、採用判断、定着に影響します。

先に決める必要があるのは、「どの障害者を採用するか」ではありません。

  • なぜ採用するのか
  • どの仕事を任せるのか
  • 何を基準に評価するのか
  • どのような配慮を実施できるのか
  • 人事と配属先がどのように役割を分担するのか

を会社として整理することが重要です。

障害者採用は、人事担当者だけで完結する業務ではありません。

募集、選考、職場実習、採用判断、配属先への引き継ぎを一つの流れとして設計することで、採用後に仕事や配慮の判断が現場へ集中することを防ぎやすくなります。

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