精神・発達障害の職場定着|企業が見直す5つのズレ

精神・発達障害のある社員が職場に定着しない理由|企業が見直す5つのズレ

2025年03月3日 | 判断とマネジメントの構造

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障害者雇用を組織の力に変える5日間

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「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年8月30日更新

精神障害や発達障害のある社員を採用したものの、数か月後に不調や離職につながってしまう。定期的に面談を行い、必要な配慮もしているのに、本人との認識が合わず、管理職や周囲の負担が増えている。

このような状況が起きると、「本人の体調が安定しなかった」「障害特性と仕事が合わなかった」「現場の理解が足りなかった」と考えがちです。

もちろん、体調や障害特性、職場環境が影響することはあります。しかし、職場定着の問題は、採用後に突然始まったとは限りません。

求人票で伝えた仕事内容、面接で確認したこと、本人が想定していた働き方、配属後に任せた業務、管理職が期待していた成果。それぞれの間に少しずつズレがあり、入社後に表面化している場合があります。

精神・発達障害のある社員の職場定着を考えるときに必要なのは、面談や配慮を増やすことだけではありません。採用から配属、仕事、期待、情報共有、判断する人までを振り返り、本人と会社の間にどのようなズレが生じているのかを見ることが重要です。

この記事では、精神・発達障害のある社員の職場定着を妨げやすい5つのズレから、企業が見直したいポイントを整理します。

この記事でわかること
  • 職場定着の問題を、本人だけに求めない方がよい理由
  • 採用から定着までに起きやすい5つのズレ
  • 面談や配慮を増やしても改善しない理由
  • 人事・管理職・支援機関の役割の考え方
  • 「在籍している」だけではない職場定着の見方

職場定着の問題は、採用後に突然始まるわけではない

精神障害や発達障害のある社員が不調になったり、離職を考えるようになったりすると、企業は入社後の職場対応を見直そうとします。

定期面談を増やす、業務量を減らす、管理職から声をかける、支援機関へ相談する。こうした対応が必要な場合もあります。

しかし、採用時から生じていたズレを確認しないまま、入社後の対応だけを増やしても、根本的な問題が残ることがあります。

例えば、求人では「事務補助」と説明していたものの、実際には複数の依頼を整理し、自分で優先順位を判断する必要があったとします。

本人は定型的な仕事を想定していた一方、管理職は状況に応じて判断しながら仕事を進めることを期待していたのであれば、働き始めた時点ですでに認識がずれています。

不調や離職は入社後に見える形になりますが、その背景には、求人、面接、仕事、配属、評価などの接続部分に生じたズレが隠れていることがあります。

精神・発達障害のある社員の職場定着を妨げる5つのズレ

精神障害と発達障害は異なります。また、同じ診断名でも、本人の能力、経験、働き方、必要な配慮はさまざまです。

そのため、「精神障害だから定着しにくい」「発達障害だからこの仕事が合わない」と、障害名だけから原因を判断することはできません。

ここでは、本人と仕事、本人と会社、現場と人事などの間にどのようなズレが生じているのかを見ていきます。

1.求人・面接で伝えた内容と、実際の仕事のズレ

求人票や面接で説明した仕事内容と、配属後に実際に任せる仕事が違っていれば、本人は「聞いていた仕事と違う」と感じます。

一方、現場では「これくらいは事務補助に含まれる」「仕事なのだから、状況に応じて対応するのは当然」と考え、ズレそのものに気づいていないことがあります。

特に、「事務補助」「軽作業」「サポート業務」といった表現だけでは、実際にどこまで自分で判断するのか、複数の依頼が重なったときにどう対応するのか、周囲とどの程度調整する必要があるのかまでは伝わりません。

採用時には仕事の名称だけでなく、具体的に何をするのか、どのような場面で判断が必要なのか、周囲とどの程度連携するのかまで、できる範囲で認識をそろえることが重要です。

また、入社後に仕事内容が変わること自体が問題なのではありません。仕事が変わったときに、「何が変わったのか」「これから何を期待するのか」が改めて共有されているかを見る必要があります。

2.本人の能力・希望と、会社が用意した役割のズレ

会社は「安定してできる仕事を任せたい」と考え、定型的な仕事を用意することがあります。しかし、本人はこれまでの経験や専門性を活かしたいと考えているかもしれません。

反対に、本人は手順がある程度決まった仕事を想定しているのに、会社は徐々に仕事の幅を広げ、臨機応変な対応まで担ってほしいと考えている場合もあります。

ここで大切なのは、「本人がやりたい仕事」と「会社が用意した仕事」のどちらかに合わせることではありません。

本人が経験してきたこと、現在できること、希望していることと、会社が必要としている役割を見ながら、どこに接点があるのかを考えます。

本人にできる仕事を探すだけでなく、会社として何を任せたいのかを明確にすることも、定着を考えるうえで欠かせません。

役割が曖昧なままでは、入社後に仕事を増やすときも、減らすときも、その判断が場当たり的になりやすくなります。

3.配慮と、仕事で求めることのズレ

採用時に配慮事項を確認していても、本人にどのような役割や成果を期待しているのかが曖昧なままになっていることがあります。

管理職が「障害がある社員に、どこまで仕事を求めてよいのかわからない」と感じると、注意やフィードバックを控えたり、本人が困らないように周囲が仕事を引き取ったりすることがあります。

その結果、本人は自分に何を期待されているのか分からなくなり、周囲には仕事が増えます。配慮しているはずなのに、本人も現場も働きにくくなることがあります。

合理的配慮を行うことと、仕事上の役割や期待を示すことは別の話です。

勤務時間や指示方法などを調整する場合でも、担当する仕事、期限、品質、報告方法まで曖昧にする必要はありません。

会社として調整することと、本人に仕事として求めることを分けて考えることで、配慮と仕事の境界が見えやすくなります。

4.本人と管理職の認識・コミュニケーションのズレ

管理職は「説明した」と思っていても、本人は何を優先すればよいか分かっていないことがあります。

反対に、本人は困っていることを伝えたつもりでも、管理職は一時的な相談や希望として受け取り、「対応が必要なこと」とは認識していない場合があります。

「言った」「聞いていない」という問題に見えても、実際には、何を確認するのか、どのタイミングで確認するのか、誰へ相談するのかが決まっていないことがあります。

例えば、優先する仕事、仕事の完了基準、途中で確認するタイミング、予定どおり進まないときの相談先などが共有されていれば、本人も管理職も次にどう動けばよいか判断しやすくなります。

精神・発達障害のある社員への対応では、本人の話を丁寧に聞くことが重視されます。それ自体は大切ですが、話を聞くだけで仕事上の認識がそろうわけではありません。

対話を、気持ちを受け止めるだけの場にせず、「今、仕事で何が起きているのか」「次に何をするのか」「誰が何を判断するのか」を確認する場として使うことも必要です。

5.人事・現場・支援機関の役割のズレ

不調や業務上の問題が起きたとき、管理職、人事、障害者雇用担当者、産業保健スタッフ、支援機関などの誰が何を担うのかが曖昧だと、相談はされても判断が進まないことがあります。

管理職は「人事に相談したから、あとは対応してもらえる」と考え、人事は「日々の仕事については現場で判断してほしい」と考える。支援機関へ相談しても、最終的には企業が決めなければならない仕事や評価の問題が残ることがあります。

支援機関は、本人の状態や必要な支援を整理したり、本人が企業へ伝えにくいことを共有したりするうえで重要な存在です。

一方、誰にどの仕事を任せるのか、どのように指示・評価するのか、職場でどのような対応を行うのか、雇用上どのような判断をするのかは、企業側で考える必要があります。

重要なのは、支援機関へ任せることでも、企業だけで抱えることでもありません。誰が何を確認し、どこから誰が判断するのかを分けておくことです。

面談や配慮を増やしても、職場定着につながらないことがある

職場定着に課題があると、面談を増やす、業務量を減らす、管理職研修を行う、支援機関との連携を増やすなど、さまざまな対応が考えられます。

こうした取り組み自体が間違っているわけではありません。

問題は、「何がずれているのか」が分からないまま対応だけを増やすことです。面談では毎回同じ話をし、本人の仕事は少しずつ減り、管理職の対応時間だけが増えていくことがあります。

例えば、仕事が進まない原因が本人の能力ではなく、複数の指示の優先順位が分からないことにあるなら、業務量を減らすだけでは解決しません。

本人と管理職で期待する役割が違うのであれば、体調について面談するだけでなく、「どの仕事を、どの水準まで担うのか」という認識をそろえる必要があります。

対応策を増やす前に、採用、仕事、期待、配慮、情報共有、管理体制のどこにズレがあるのかを見ることが先です。

職場定着を「在籍していること」だけで判断しない

職場定着というと、「離職せずに何年働いているか」が注目されます。勤続期間や定着率は重要な指標です。

しかし、会社に在籍しているだけで、雇用がうまくいっているとは限りません。

本人に任せる仕事がほとんどなくなっている、何を評価されているのか分からない、周囲が本人の仕事を引き取り続けている、管理職だけが対応を抱えている。その状態を長く続けることが、必ずしも望ましい定着とはいえません。

反対に、本人が役割を理解し、自分の仕事を担えている。必要な調整を受けながら仕事の幅を広げられている。問題が起きたときには管理職だけで抱えず、組織として判断できる。

このように、本人が働き続けられることと、会社側も無理なく雇用を続けられることの両方を見る必要があります。

職場定着とは、本人を職場へ一方的に合わせることでも、職場がすべてを受け入れることでもありません。本人と会社の双方が継続できる接点をつくることです。

自社の職場定着ではどうでしょうか
  • 採用時に伝えた仕事と、現在任せている仕事は大きくずれていませんか
  • 本人は、会社から何を期待されているか理解できていますか
  • 配慮することと、仕事として求めることを分けて説明できますか
  • 管理職が対応や判断を一人で抱えていませんか
  • 在籍期間だけでなく、本人の役割と現場の持続可能性を見ていますか
複数の項目で答えに迷う場合は、本人への対応を増やす前に、採用から配属・定着までのどこで認識や判断がずれているのかを確認してみるとよいでしょう。
定着しない理由を、採用後の対応だけで終わらせないために
面談や配慮を増やしても定着につながらない場合、問題は入社後だけにあるとは限りません。採用時に伝えた仕事、実際に任せている役割、本人と会社の期待、現場の受入体制、情報共有や判断の間に、少しずつズレが生じていることがあります。
「障害者採用・定着のズレマップ」では、求人や面接だけを見るのではなく、採用前から配属・定着までを一つの流れとして確認し、どこで認識や設計がつながっていないのか、次に何を見直す必要があるのかを整理します。

精神・発達障害のある社員の職場定着についてよくある質問

Q:精神・発達障害のある社員が職場に定着しない主な原因は何ですか

本人の体調や障害特性だけでなく、実際の仕事内容、本人と会社が期待していること、配慮と仕事の境界、管理職との情報共有、社内の役割分担など、複数の要素が関係します。

一つの原因だけを探すよりも、採用から現在までを振り返り、どこで本人と会社、あるいは社内の関係者同士の認識がずれているのかを見ることが重要です。

Q:定期面談を増やせば、定着しやすくなりますか

面談の回数を増やすだけで、職場定着につながるとは限りません。

重要なのは、面談で何を確認するのか、確認した内容を誰が判断するのか、その結果を仕事や配慮へどう反映するのかがつながっていることです。

体調や気持ちだけでなく、仕事の進み方、現在困っていること、本人と管理職の認識に違いがないかなども確認します。

Q:仕事を減らせば、定着しやすくなりますか

本人の状態や仕事への影響によっては、一時的に業務量や仕事内容を調整する必要がある場合があります。

ただし、なぜ仕事を減らすのかが曖昧なまま、本人の担当業務を減らし続けると、役割そのものがなくなってしまうことがあります。

何を調整するのか、その調整によって何を改善したいのかを確認し、必要に応じて見直していくことが重要です。

Q:本人と管理職の意見が違うときは、どちらを優先すればよいですか

どちらかの意見をそのまま採用するのではなく、それぞれが何を見ているのかを分けて確認します。

本人は体調や仕事の負担を見ている一方、管理職は納期や周囲との業務分担を見ているかもしれません。見ている事実や判断の前提が違えば、同じ状況でも結論が変わります。

まず、現在の仕事で何が起きているのかを共有し、そのうえで会社として何を判断する必要があるのかを整理します。

Q:支援機関にはどこまで相談できますか

本人の状態や生活面の状況、本人が企業へ伝えにくいこと、職場で必要となる支援などについて、支援機関と連携できることがあります。

一方、任せる仕事、業務上の指示や評価、職場での役割、雇用上の判断などは企業側で考える必要があります。

支援機関へ任せるのでも、企業だけで抱えるのでもなく、それぞれが担う範囲を分けて連携することが重要です。

まとめ|職場定着は、本人への対応ではなく「つながり」から見る

精神・発達障害のある社員が職場に定着しないとき、本人への配慮や面談を増やすだけでは改善しないことがあります。

採用時に伝えた仕事と実際の仕事、本人の希望と会社が期待する役割、配慮と仕事上の期待、本人と管理職の認識、人事・現場・支援機関の役割。それぞれの間に小さなズレが生じ、それが重なることで働きにくさにつながっている場合があります。

定着しない原因を本人の体調や障害特性だけに求めると、会社側の仕事や採用、情報共有、判断の問題が見えなくなります。一方で、本人の希望をすべて受け入れれば定着するわけでもありません。

大切なのは、本人と会社のどちらかを変えることではなく、仕事、期待、配慮、情報、判断する人がどのようにつながっているのかを見ることです。

本人が役割を持って働き続けられ、会社側も過度な負担を抱えず雇用を続けられる。その接点をつくることが、持続可能な職場定着につながります。

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職場定着で起きているズレは、採用後の対応だけでなく、仕事の入口、情報共有、判断基準、役割分担にもつながっています。自社で特に気になるところから確認してみてください。
採用時に伝えた仕事と実際に任せる仕事がずれている、本人と会社で期待する役割が違うと感じる場合に、仕事の入口から整理するための記事です。

面談や報告はしているのに、担当者が変わると経緯が分からない、同じ確認を繰り返している場合に、情報の残し方から考えます。

どこまで仕事を求めるのか、どこまで調整するのかなど、管理職や担当者によって判断が変わるときに確認したい視点です。

管理職、人事、障害者雇用担当者などの間で相談はしているのに判断が進まない場合に、誰がどこまで決めるのかを整理します。

参考資料・一次情報

「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」厚生労働省

「ともに働く職場へ~事例から学ぶ 発達障害者雇用のポイント~」独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構

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