障害者雇用が多くの会社で進められています。
企業には障害者雇用をすることを求める障害者雇用促進法があり、それに基づいて企業では障害者を2.3%雇用する必要があるからです。また、障害者雇用促進法の改正によって、平成30年4月から雇用率の算定に精神障害者が加わりました。
障害者雇用は、身体、知的障害と進められてきましたが、平成18年から精神障害者も障害者雇用のカウントに加えられたこと、また雇用率の算定になったことで、精神障害者の雇用が増えています。
一方で、精神障害者と一緒に働くことでストレスを感じるという声もよく聞かれます。
現状の障害者雇用の状況について知るとともに、どのような対応ができるのかを考えてみたいと思います。
障害者雇用の雇用状況
民間企業で働く障害者は56万608.5人、障害者雇用状況は、年々増加しており、過去最多を更新しています。
障害別にみると、身体障害者は35万4,134.0人(対前年比2.3%増)、知的障害者は 12万8,383.0人(同6.0%増)、精神障害者は7万8,091.5人(同15.9%増)と、いずれも前年より増加していますが、特に、精神障害の雇用数は大きく伸びています。
精神障害者の大幅な増加は、平成30年4月に雇用義務化の対象に加えられたことや、障害者雇用が進み、他の障害種別の採用が厳しくなっていること、精神障害として就職を希望する人が増えてきていることなどが理由と考えられます。
また、ハローワークの障害者職業紹介状況を見ても、就職件数、新規求職申込み件数が伸びているのがわかります。
職業紹介状況を比較してみると、10年前の平成20年度と、平成30年度を比較すると、全数はおよそ2.3倍、そして障害種別で見ると5倍以上となっています。
また、全体に見る就職割合の半数は、精神障害が占めています。このような状況下から、障害者雇用が企業で進められるときに、まず精神障害の方と一緒に働く可能性になることが非常に高いということを、まず覚えておいていただきたいと思います。
出典:厚生労働省
精神障害者と一緒に働いている・・・、でも困っている
「障害者雇用が企業の中で必要なことは、ある程度理解しているし、障害者雇用の状況を見て、精神障害者が増えているのもわかる。しかし、一緒に働いていると、理解し難い言動があったり、仕事の遂行力に課題があり、困っている・・・」という意見をいただくことがあります。
このような場面に直面したとき、どのようにしたらよいのでしょうか。いくつかの方法を見ていきます。
組織の障害者雇用の方針を聞いてみる
まず、会社としての障害者雇用の考え方や方針を聞いてみることができるでしょう。
障害者雇用を行っていると言っても、企業の社風や考え方、経営層の考え方によって、障害者雇用の取り組み方は大きく異なるものです。
障害者雇用率を達成することが重要視されていれば、障害者を週30時間働くこと(障害者は、週30時間以上働くことで1カウントになります。また、短時間勤務の場合には、週20時間以上働くことで0.5カウントになります。)を目標に雇用することが多いですし、障害の有無に関係なく同じように活躍の場を広げているということを重視しているのであれば、一般の社員と同じような勤務時間や仕事内容を求めることもあります。
あなたの会社の障害者雇用がどのような方針で進めているのかを、まず確認してみましょう。
また、多くの職場では、新たに障害者を雇用する場合、一緒に働く部門や社員に障害者雇用についての研修や理解を深めるための情報共有の場を持つようにしています。そうすることによって、一緒に働く職場の社員が不安を感じないように、また障害特性や接し方を学ぶことができるようにするためです。
もし、そのような場がなく、現場で一緒に働く社員が困っているのであれば、人事部や管理部などにそのような場を設けてほしいと依頼することもできるでしょう。
体制づくりやフィードバックする仕組みづくりを提案する
現場の社員の負担感を伝えたり、不公平感を抱かせないような方法を検討することを提案することもできます。
例えば、次のような方法をとっている企業もあります。
・人員配置に余裕をもたせ、精神障害のある社員が休んでしまった場合でも特定の社員や周囲に負担にならないような体制をとる。
・現場で働く場合でも、所属は人事部や管理部等にし、直接業務に関わらない研修やメンタルのための面談は人事部等が行なう。
・一緒に働く社員の困り感、悩みを人事部、管理部等でヒアリングし、対策等をフィードバックしてもらう。
精神障害の特徴を知り、理解を深める
精神障害の特徴を知り、理解を深めることも大切です。
精神障害の場合、慢性的な疾患であることが多く、服薬や定期的な通院を継続しながら、
職場での配慮や定期的な通院をすることによって、働くことができる人が多くなっています。
精神障害で雇用されることの多い障害の主な症状や、通院・服薬について見ていきます。
統合失調症
主な症状
発症初期や調子を崩した際に現れやすい症状として、幻覚、妄想、思考の混乱などが見られる。慢性的な症状としては、意欲の低下、感情や表情がないことが見られる。
発症の特徴
10代~30代の若い世代で発症することが多い。
通院・服薬
服薬による治療が中心で、症状が改善された後も継続する必要がある。
気分障害
主な症状
気分障害は、うつ病や双極性障害の総称で、うつ状態では、憂鬱、悲観、絶望感、自己を責める、興味や関心がなくなる、考えがまとまらない、判断や決断ができない、集中力に欠けるなどの思考や意欲の変化と、不眠や熟睡できない、疲れやすい、食欲低下、頭痛などの身体症状が見られることがある。
躁状態では、気分の高ぶり、イライラ感、飛躍した考えなどの思考面の症状や、落ち着きがない、口数が多い、外出や電話を頻繁にする、浪費などの行動面の症状、不眠、食欲が増すなどの身体面の症状が見られる。
発症の特徴
うつ病は、一生のうちに15人に1人はかかると言われるほど、頻度の高い疾患である。双極性障害はうつ病よりも頻度が低いが、双極性障害は、躁状態とうつ状態が交互にある障害で、躁状態の時には、周囲の人も本人も気づかないことが多く、むしろ仕事ができるくらいのハイ状態の人もいる。
通院・服薬
うつ病では、服薬と休養による治療が基本となる。双極性障害は、服薬による治療が中心となる。どちらも一定期間の服薬を継続する必要がある。
てんかん
主な症状
さまざまな要因による慢性的な脳の疾患で、てんかん発作は脳の神経が一時的に激しく活動することにより起こる。
発作には、部分発作と全般発作があり、部分発作は、脳のある部分から始まる発作で、意識が保たれたままであったり、徐々に意識が消失したり、全身のけいれんに進展する。
また、全般発作は、発作のはじめから、脳全体で神経が激しく活動するため、意識が最初からなくなることが多いという特徴がある。
発症の特徴
3歳以下の発病が最も多く、8割が18歳以前に発病すると言われているが、大人になってから発病する人もいる。
服薬・通院
個々人の状態に応じた薬を選択し、継続的な服薬をする。
動画での解説はこちらから
まとめ
精神障害者と一緒に働くことでストレスを感じるという声は、残念ながら、障害者雇用をしている企業でよく聞かれることです。
企業では、障害者雇用を行なうことが法律で定められていますが、しかし、だからといって、一緒に働く社員の人が働きにくかったり、負担感が多い状態は、会社にとっても望ましいものではありません。
そのような時には、我慢をせずに課題を洗い出し、それに向けた解決策を考えることが大切です。会社としての障害者雇用の方針を聞いてみることや、人事部や管理部に体制づくりやフィードバックする仕組みづくりを提案することもできるでしょう。
また、職場の中でも障害に対する理解を深めることも大切です。正しい障害知識をもち、必要な合理的配慮を示しつつも、当事者に働いていることを意識させるような働きかけも必要です。
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