2026年8月8日更新
精神障害者保健福祉手帳について、「どのような人が申請できるのか」「診断を受けたら、すぐ申請できるのか」「1級・2級・3級は何を基準に決まるのか」「更新は必要なのか」と疑問を持つ人は少なくありません。
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定する制度です。ただし、診断名だけで交付や等級が決まるわけではありません。診断書による申請では、精神疾患の状態だけでなく、日常生活や社会生活への影響なども含めて総合的に判定されます。
また、精神障害者保健福祉手帳には2年間の有効期限があり、継続して利用する場合には更新が必要です。
企業の障害者雇用では、精神障害者を雇用率に算定する際にも手帳が関係します。そのため、本人だけでなく、人事・障害者雇用担当者も制度の基本を理解しておく必要があります。
この記事では、精神障害者保健福祉手帳の対象、申請方法、判定基準、等級、更新と障害者雇用との関係を整理します。
- 精神障害者保健福祉手帳とはどのような制度なのか
- どのような場合に手帳を申請できるのか
- 初診日から6か月という申請要件の意味
- 診断書と障害年金関係書類による申請方法
- 1級・2級・3級がどのように判定されるのか
- 手帳の有効期限と更新・等級変更
- 精神障害者保健福祉手帳と障害者雇用率の関係
精神障害者保健福祉手帳とは
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にある人を対象とした制度です。
手帳の交付を受けることで、障害の程度や自治体などの条件に応じて、税制上の制度、福祉サービス、自治体や事業者が提供する各種サービスなどを利用できる場合があります。
また、企業の障害者雇用では、障害者雇用率制度上の「精神障害者」として算定する際に、精神障害者保健福祉手帳の所持が関係します。
手帳の等級は、
- 1級
- 2級
- 3級
の3段階です。
ただし、等級は仕事をする能力の高低を示すものではありません。
まずは、手帳制度として何を認定しているのかを理解することが重要です。
精神障害者保健福祉手帳の対象となる人
精神障害者保健福祉手帳は、精神障害のために長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある人が対象となる制度です。
判定基準では、例えば、
- 統合失調症
- 気分(感情)障害
- てんかん
- 器質性精神障害
- 発達障害
- その他の精神疾患
などについて、精神疾患の状態と日常生活・社会生活への影響などを確認します。
ただし、「この診断名なら必ず精神障害者保健福祉手帳を取得できる」というものではありません。同じ診断名であっても、精神疾患の状態や日常生活・社会生活への影響は一人ひとり異なるためです。
また、精神障害者保健福祉手帳制度では、知的障害そのものは対象に含まれません。知的障害については、療育手帳など別の制度があります。
診断を受けてから、いつ精神障害者保健福祉手帳を申請できるのか
精神障害者保健福祉手帳について、「精神科で診断を受けたら、すぐ申請できますか」という疑問があります。
診断書を用いて申請する場合、手帳の申請に使用する診断書は、精神疾患について初めて医師の診療を受けた日から6か月を経過した日以後に作成されたものである必要があります。
つまり、診断書による申請では、初診直後に精神障害者保健福祉手帳を申請するわけではありません。
ここでいう「初診日」は、現在通院している病院への初診日とは限りません。同じ精神疾患について以前に別の医療機関で診療を受けていた場合には、その前の医療機関で初めて診療を受けた日が関係することがあります。
そのため、申請を検討するときは、現在の主治医や自治体の担当窓口に確認するとよいでしょう。
精神障害者保健福祉手帳の申請方法
精神障害者保健福祉手帳の申請は、居住する市区町村の担当窓口を通じて行うのが一般的です。
制度上は、主に次の2つの方法があります。
1.医師の診断書を使って申請する
一つは、精神障害の診断または治療に従事する医師が作成した診断書を用いる方法です。診断書は、初診日から6か月を経過した日以後に作成されたものを使用します。
診断書には、病名だけではなく、
- 発病から現在までの病歴
- 治療の経過
- 現在の精神疾患の状態
- 日常生活・社会生活の状況
など、等級判定に必要な情報が記載されます。
なお、診断書を作成する医師は精神科医に限られるわけではありません。精神障害の診断または治療に従事している医師であれば、対象となる場合があります。
2.障害年金などの書類を使って申請する
精神障害を支給事由とする障害年金などを現在受給している場合には、医師の診断書ではなく、年金証書などの関係書類を用いて申請できる場合があります。
この場合は、対象となる年金の種類や必要書類について確認が必要です。
「精神障害者保健福祉手帳を申請するには、必ず診断書が必要」とは限らない点に注意してください。
申請時に必要となるその他の書類
申請書、本人の写真など、手続きに必要となる書類があります。
具体的な必要書類や提出方法については、自治体によって案内が異なる場合があるため、実際の申請では居住する市区町村の担当窓口で最新情報を確認してください。
精神障害者保健福祉手帳の等級はどうやって決まるのか
精神障害者保健福祉手帳の等級は、単に診断名や症状の有無だけを見て決めるものではありません。
厚生労働省の判定基準では、
- 精神疾患の存在を確認する
- 精神疾患(機能障害)の状態を確認する
- 能力障害(活動制限)の状態を確認する
- 精神障害の程度を総合的に判定する
という考え方が示されています。
特に重要なのが、精神疾患(機能障害)の状態と、能力障害(活動制限)の状態の両方を見るという点です。
精神疾患の状態と、日常生活・社会生活への影響などを確認し、総合的に判定されます。
そのため、同じ診断名であっても、必ず同じ等級になるわけではありません。
能力障害では、日常生活や社会生活の状態も確認される
精神障害者保健福祉手帳の判定では、日常生活や社会生活にどの程度の制限があるかも確認されます。
判定基準では、例えば、
- 食事や身辺の清潔保持などの日常生活
- 金銭管理や買い物
- 通院や服薬
- 意思伝達や対人関係
- 安全保持や危機への対応
- 社会的な手続きや公共施設の利用
- 社会参加や社会生活
などの状態が確認されます。
ただし、これらの項目のうち「何項目該当すれば○級」という単純な判定ではありません。精神疾患の状態と能力障害の状態をあわせて、精神障害の程度が総合的に判断されます。
1級・2級・3級の基本的な違い
精神障害者保健福祉手帳には1級から3級まであります。
制度上の基本的な考え方を整理すると、次のようになります。
| 等級 | 制度上の基本的な考え方 |
|---|---|
| 1級 | 精神障害によって、日常生活を行うことが困難な程度 |
| 2級 | 日常生活が著しい制限を受ける、または著しい制限を加えることを必要とする程度 |
| 3級 | 日常生活または社会生活が制限を受ける、または制限を加えることを必要とする程度 |
ここでは制度全体を理解するために概要のみを示しています。
2級と3級の詳しい違いや、企業が採用時に等級をどのように捉えればよいかについては、関連記事で別に整理しています。
手帳の等級は、仕事の能力を示すものではない
企業の人事担当者が精神障害者保健福祉手帳を見ると、「2級なら仕事を任せるのは難しいのではないか」「3級なら、それほど配慮は必要ないのではないか」と考えてしまうことがあります。
しかし、精神障害者保健福祉手帳の等級は、企業での職務遂行能力を評価するための基準ではありません。手帳制度が確認しているのは、精神疾患の状態や日常生活・社会生活への影響です。
一方、企業が採用・配置で確認したいのは、
- 担当する仕事に必要な能力や経験があるか
- 仕事上のどの場面で支障が生じるのか
- 本人自身ができる対処は何か
- どのような配慮が必要なのか
- その配慮を職場で実施できるか
といった、仕事との関係です。
企業が仕事を任せるための評価軸は、同じではありません。
この記事では制度としての判定基準までを扱い、仕事能力や採用・配置の判断については別の記事で詳しく整理しています。
精神障害者保健福祉手帳の有効期限は2年間
精神障害者保健福祉手帳には有効期限があります。有効期限は、交付日から2年が経過する日の属する月の末日までです。
継続して手帳を利用する場合には、更新のための申請が必要です。更新申請は、手帳に記載されている有効期限が到来する日の3か月前から行うことができます。
身体障害者手帳のように原則として更新のない制度とは異なるため、注意が必要です。
更新時に等級が変わることもある
精神障害者保健福祉手帳は、更新すれば必ず同じ等級で継続されるというものではありません。
更新時には、精神障害の状態について改めて認定が行われます。
その結果、
- 同じ等級で更新される
- 等級が変更される
- 手帳の交付対象ではなくなる
ことがあります。
また、有効期限内であっても、精神障害の状態に変化があった場合には、障害等級の変更申請ができる場合があります。
手帳の等級は、一度決まれば生涯固定されるものではありません。
精神障害者保健福祉手帳と障害者雇用率の関係
企業にとって精神障害者保健福祉手帳が特に関係するのが、障害者雇用率制度です。
2026年7月1日から、民間企業の法定雇用率は2.7%となっています。
障害者雇用率制度で精神障害者として算定されるのは、精神障害者保健福祉手帳を所持している人です。
つまり、「精神疾患の診断を受けている」「精神科に通院している」「メンタルヘルス不調で休職している」ということだけで、障害者雇用率上の精神障害者として算定されるわけではありません。
精神障害者保健福祉手帳の所持が重要になります。
また、手帳には有効期限があります。企業が障害者雇用率の算定に必要な情報として手帳を確認している場合には、有効期限についても適切に確認する必要があります。
ただし、手帳を更新するかどうかは本人が判断するものです。企業側が障害者雇用率の都合だけで更新を前提にするのではなく、制度上必要な確認と本人の意思を分けて考えることが重要です。
手帳の更新と、雇用継続・配慮の判断は分ける
精神障害者保健福祉手帳が更新されなかった場合、「障害者雇用ではなくなるので、働き方も変える必要があるのか」と考えることがあります。
しかし、ここでは2つの判断を分ける必要があります。
一つは、障害者雇用率制度上、どのように算定するのかという制度上の確認です。
もう一つは、現在の仕事を続けられるのか、どのような配慮が必要なのかという仕事上の判断です。
これらは同じではありません。
手帳の更新状況が変わったからといって、それだけで本人の仕事能力や必要な配慮が変わるわけではありません。企業では、制度上の確認と、実際の仕事・配慮についての判断を分けて整理する必要があります。
社内で確認しておきたいポイント
- 精神疾患の診断と、障害者雇用率上の対象確認を混同していないか
- 手帳の有効期限を、必要な範囲で確認できているか
- 手帳の等級だけから仕事の可否を判断していないか
- 手帳の更新と、仕事を続けられるかという判断を分けているか
- 雇用率算定のための情報と、配慮を検討するための情報を分けているか
- 手帳情報を扱う目的や、社内で共有する範囲が整理されているか
制度を正しく理解することは必要です。
ただし、手帳の有無や等級だけで、採用・配置・配慮の結論を出すことはできません。
制度上、何を確認するのか。そして、仕事について、何を別に判断するのか。
この2つを分けることで、精神障害者保健福祉手帳の情報を企業実務につなげやすくなります。
「どの配慮が必要なのか」
「どこまで会社として対応するのか」
「人事・管理職・現場の誰が判断するのか」
こうした迷いが繰り返されている場合は、個別ケースへの対応を増やす前に、自社のどこから見直す必要があるのかを整理することが重要です。
FAQ|精神障害者保健福祉手帳の申請・更新について
Q:精神障害の診断を受ければ、すぐ手帳を申請できますか
診断書を用いて申請する場合は、すぐに申請することはできません。
申請に用いる診断書は、精神疾患について初めて医師の診療を受けた日から6か月を経過した日以後に作成されたものである必要があります。
Q:精神障害者保健福祉手帳の申請には必ず診断書が必要ですか
必ずしも診断書だけが申請方法ではありません。
精神障害を支給事由とする障害年金などを受給している場合には、一定の年金関係書類を用いて申請できる場合があります。
具体的な必要書類は自治体の担当窓口で確認してください。
Q:精神障害者保健福祉手帳は何級までありますか
1級、2級、3級の3段階です。
精神疾患の状態と能力障害の状態などを確認して、精神障害の程度が総合的に判定されます。
Q:同じ病気なら、同じ等級になりますか
同じとは限りません。
等級は診断名だけで決まるのではなく、精神疾患の状態や、日常生活・社会生活にどの程度の影響があるかなども含めて総合的に判定されます。
Q:精神障害者保健福祉手帳は更新が必要ですか
はい。精神障害者保健福祉手帳の有効期限は2年間です。継続して手帳を利用する場合には更新申請が必要です。
更新申請は、有効期限が到来する日の3か月前から行うことができます。
Q:更新すると必ず同じ等級になりますか
必ず同じ等級になるとは限りません。
更新時の精神障害の状態によって、同じ等級で継続される場合もあれば、等級が変更されたり、手帳の交付対象ではなくなったりする場合があります。
Q:手帳を更新しなかったら、合理的配慮も受けられなくなりますか
手帳を更新しなかったことだけで、合理的配慮の対象外になるとは限りません。
障害者雇用率の算定対象と、雇用分野における合理的配慮の対象は同じものではありません。
雇用率の確認と、仕事上で必要な配慮の検討は分けて考える必要があります。
まとめ|精神障害者保健福祉手帳は「申請・判定・更新」を分けて理解する
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定する制度です。
診断書による申請では、精神疾患について初めて医師の診療を受けた日から6か月を経過した日以後の診断書が必要になります。
また、精神障害を支給事由とする障害年金などを受給している場合には、年金関係書類による申請方法もあります。
等級は1級から3級まであり、診断名だけではなく、精神疾患(機能障害)の状態と、能力障害(活動制限)の状態などを確認して総合的に判定されます。
さらに、精神障害者保健福祉手帳には2年間の有効期限があり、継続して利用する場合には更新が必要です。
企業にとっては、手帳が障害者雇用率制度に関係する重要な情報である一方、手帳の等級や更新状況は、仕事能力そのものを示すものではありません。制度上の確認と、採用・配置・合理的配慮についての判断を分けることが重要です。
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参考資料
- 厚生労働省「障害者手帳について」
- 厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について」
- 厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」
- 厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の診断書の記入に当たって留意すべき事項について」
- 厚生労働省「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行規則」
※申請方法や必要書類、窓口等は自治体によって異なる場合があります。実際に申請・更新する際には、居住する自治体および厚生労働省の最新情報をご確認ください。
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