職場における職場定着と生活支援のバランスについての考え方

障害者が職場で安定的に働くためには、生活支援がとても大きな意味を持っています。職場では、上司や先輩社員、同僚が新しく入った社員にその会社のルールや仕事内容を教えることは一般的です。障害者が入社してくるときにも同じように行っているでしょう。

しかし、時として障害者の雇用のときには、仕事や職場に直接関係することだけでなく、生活面での支援が必要となることがあります。それは、生活面における就職以前の状況(在宅、福祉施設への入所・通所、特別支援学校への通学等)とのギャップがあり、時として安定した就労を行なうことに大きな問題を生む要因となることがあるからです。

私たちの周りを見ても、仕事はもちろん大切ですが、取り巻く社会は職場だけではなく、家族、友人、趣味を共有する社会、買い物など、自分でやりたいことを満たすための社会、様々な要素によって構成されています。そして、職場以外の様々な事柄が、仕事にも影響を及ぼすことがあります。

企業としてのスタンスを決める

障害者にとっても同様に、職場は占める割合は大きいものとなりますが、生活を構成する複数ある要素のうちの1つにすぎません。ですから、たとえ1つの要素である職場の状況が安定していたとしても、他の要素が不安定な状況であれば、職場での状況にも大きく影響し、結果として、職場定着が困難になることもあります。

例えば、家庭における問題や、相談しにくい悩みごと、金銭トラブル、未経験なことや新しいことへの対応などがこれに当たります。そこで、職場での定着を目的とした生活支援が必要になります。

とはいっても、会社が雇用している障害者にどこまで直接的に関わるかは、その企業の考え方やスタンスが大きく関係してきます。多くの会社では、仕事に関すること、就業時間内のことには責任をもつものの、職場以外のことについて(生活面や家庭のこと)は、支援機関に任せる方針をとっています。(中には、生活面の支援も企業で行なうところもあります。)

職場以外の生活面での課題がでてきたときに、どのように対応するのかについて、企業での方針を決めておくことは大切です。

職場において生活支援が必要になるとき

障害者を雇用していると、障害者の生活支援が必要になるときが、急に起こることがよくあります。また、状況に応じて発生した課題(困難)に対して、その都度対処していくことが必要になるため、臨機応変さと地域資源に関する豊富な情報と知識が必要になってきます。

そのため問題が大きくならないうちに何らかの課題がありそうだと気づくことや普段から連携機関と連絡をとっておくことが大切になります。生活支援の内容については、職場において支援が必要なことと、生活全般において支援が必要になることに分けることができます。

とは言え、問題にはつながりがあり、職場のこと、生活のことと分類することが難しい場合もありますが、明確に生活面に関わることに関しては、連携機関などにつなぐことができるでしょう。

仕事に直接かかわる内容について

仕事に直接関わる生活支援の内容とは、職場での仕事に直接的に影響したり、職場において課題が明らかな場合を指します。職場におけるふさわしい身だしなみができない、清潔感がない、欠勤・遅刻の頻度が高いことなどが該当します。

どのようなことがあるのか、見てみましょう。

就職している障害者に支援が必要な事例

常習的な遅刻・欠勤

原因として考えられることは、生活リズムの乱れや、夜更かし、時間の組み立てに関する困難、家庭環境、通勤時間の問題等です。支援方法としては、状況の把握(ヒアリング、面談など)を行い、支援機関や家庭の協力を得ることです。

身だしなみ(清潔感の欠如等)

適切な身だしなみに対する認識・経験不足や家庭環境、こだわり等により、適切な身だしなみができていないことがあります。支援方法としては、具体的な身だしなみの整え方の方法(髭剃り、洗顔、整髪等)について、本人と話し合いをします。改善が見られないようであれば、支援機関を通して、家庭(保護者)へ協力(入浴、洗顔、更衣、洗濯等に関することについて)を行なうとよいでしょう。

昼食の過剰摂取、不摂取、栄養バランスの欠如

原因として考えられることは、家庭における状況把握の欠如、物理的に支援困難な家庭の状況、欲求(食欲)の制御困難な状況などが考えられます。

家族と一緒に住んでいる場合には、家族も生活が難しい状況にあったり、支援が必要になっていることが予想されますので、生活関連の支援機関と連携をとるとよいでしょう。また、一人暮らしをしているときなどは、具体的な打開策の提示(仕出し弁当の注文など)ができるかもしれません。

どちらにしても生活支援を担当している支援機関に連絡をとり、家庭状況の確認・把握を早めに行ないます。

作業中の集中力不足、居眠り等

原因として考えられることは、SNS等による夜更かし、仕事に対する意欲低下などが考えられます。支援方法としては、仕事に対するあるべき姿を本人と確認するとともに、家庭状況や体調、服薬状況などについてのヒアリングを行ないます。「働く」ための生活のリズムをどのように整えるべきかを考えることもできるでしょう。

何回かの面談や指導で解決できるようであれば、それで対応しますが、なかなか改善が見られない場合には、就労支援機関や医療機関、生活支援機関と連携をとることができるでしょう。服薬をしている場合には、薬が変わったことによる影響の場合も多く見られます。

職場での他害、物損等

原因として考えられることは、感情コントロールの不足、コミュニケーションの問題(人間関係)、余暇のとり方が適切でない場合に起こります。支援方法としては、本人からヒアリングを行って状況把握をするとともに、職場での人間関係、SSTの活用、余暇の状況把握などを行ない、何が原因となっているかについて検討することができます。

例えば、職場で遅刻が問題となっている場合、どのような支援ができるのでしょうか。

「遅刻しないように」と注意するだけで大丈夫なようであれば問題はないのですが、遅刻することの原因がわかれば、それに対応することも必要になってきます。遅刻の原因が「寝坊」であれば、自分で目覚ましをセットすることや、家族と同居しているのであれば起こしてもらうことができるでしょう。

また、寝坊の原因として生活のリズムが崩れていたり、何かの原因(SNSやゲームなど)夜更かししているのであれば、ある程度の制限やきまりをつくることもできるかもしれませんし、家庭環境によるものであるならば、家族を含めて生活環境の改善が必要になることもあるでしょう。

一見すると「遅刻」として現れることの背景には、いろいろな要因が関係していることが少なくなく、このような場合には家庭環境に踏み入った支援が必要になる場合が少なくありません。

このような場合には、見えている事柄がどのようなことによって起こっているのか、どの部分に対して支援が必要かということを知るために、本人から状況について面談を行ない、ヒアリングすることが必要です。また、目の前で起きている事柄をスムーズに解決すること、その根本的な原因にアプローチするということも必要になります。

企業だけで支援を行なっていくのには限界がありますので、このような場合には支援機関と連携をとって早めに対処していきます。また、職場でフォローすること、支援機関でフォローすることを、コミュニケーションをとりながら合意形成していくことが大切です。

安定的に働き続けるために大切なこと

働き続けるため、継続的な就職を行なうためには、生活に関わる部分が大きく影響してきます。もちろん職場での業務や人間関係なども大切ですが、それに加え生活の構築も必要になってきます。

休みの日の過ごし方

仕事を続けるうえで、休みの日の過ごし方は大きな要素になります。私たちも生活のために仕事をしますが、きっと週末には違った楽しみがあったりすることがあるでしょう。

働いた対価として得たお金でほしいものを購入したり、自分の余暇のために使うことも大切な社会経験ですし、また、働き続けるためのモチベーションにつながることもあります。また、仕事で疲れていても、休日に友だちと会ったり、家族と過ごしたりすることによってリフレッシュすることもできるでしょう。

就職する前に障害者が所属してきた機関(学校、福祉施設、デイケア等)では、余暇活動が準備されており、自分で余暇を探すという必要性はありませんでした。もちろん自分で、自分なりの休日を楽しむこともありますが、社会経験の少ない障害者の中には余暇に関しても経験不足ということが少なくありません。そのため、就職してからも、職場に多くのことを求めてしまい「つまらない」「友人ができない」等の理由が課題になることもあります。

また、障害者本人が余暇活動を楽しむときでも、金銭のトラブルや、仕事に支障をきたさない範囲、交友関係等に関する問題などについても課題が出てくることがあります。インターネットに関するトラブルも増加していたり、犯罪や契約トラブルなどが生じる場合もありますので、このような傾向が見られたらすぐに支援機関との連携をとって、対応しましょう。

生活支援に関わる連携機関をもつ

安定的な就労を行なうためには、時として生活支援が必要になってきます。生活支援に関するサポートは増えてきており、多様なニーズに応えられるように整備されていますので、生活支援に関わる支援機関を上手に活用していきましょう。

しかし、状況によっては、専門的な知識・対応が必要になるため、1つの機関で完結することが難しく、他の機関や家族等との連携が求められることもあります。また、いろいろな種類の支援機関がありますが、サポートする内容もさまざまです。

実際にどのような生活支援機関があるのかについて、主な機関と、その機関がサポートする内容について見ていきたいと思います。

生活支援に関わる機関

各市町村福祉窓口

 
各市町村の福祉窓口は、福祉サービス全般の相談に対応しています。障害者手帳や障害者基礎年金に関する相談、住まいの問題(グループホーム等)などの総合窓口となっています。

都道府県・指定都市の社会福祉協議会

 
社会福祉協議会は、主に権利擁護に関する相談窓口となっています。障害者本人の判断能力欠如によるトラブルや、日常的な生活において困難が生じる場合に、成年後見人制度の活用などを検討する際の窓口となっています。

各種福祉サービスに関する相談や、「日常生活自立支援事業」に関する問合せ等に対応します。

全国社会福祉協議会
(※窓口業務は市町村の社会福祉協議会で実施しています)

消費生活センター

消費生活センターは、商品やサービスに関わる単発のトラブルや軽微なトラブルに対して対応するとともに、悪徳商法への対応やクーリングオフの方法などを紹介してくれます。土日祝日等については、国民生活センターでも電話相談を行っています。中には、本人、保護者が消費者金融などでお金を借りて、その電話が企業にかかってくることも珍しいことではありません。そんなときには、支援機関と連携をとって対応するようにしましょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、就業支援全般に対応しています。生活支援員による直接的な支援や地域資源との連携による支援を行ないます。

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障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターの違いとは?

地域活動支援センター

地域活動支援センターは、旧法における精神障害者地域生活支援センターです。主に病院と連携している場合が多く、退院促進や地域移行(生活、住まいなど)を支援しています。障害者総合支援法においては「地域生活支援事業」として位置付けられており、すべての障害者の支援を行うこととされています。

保健所

保健所は、精神保健福祉センターとの連携のもと、緊急・処遇困難な相談への対応や、通院医療費助成制度等の社会復帰や福祉サービスに関する相談、デイケアの開催、家族支援等を行っています。地域によっては、保健所と福祉事務所が統合されており「保健福祉センター」という名称が使用されているところもあります。

その他地域の福祉事業所

その他には、地域の作業所や法定施設、特別支援学校といった障害者が就職する前に所属していた機関もあります。このような機関は、障害者本人に関する情報をたくさん持っているので重要な連携機関となることが多くあります。また、余暇の活動場所となることも多いようです。

まとめ

職場における職場定着と生活支援のバランスについての考え方について見てきました。

職場では、その会社のルールや仕事内容を教えることは一般的です。障害者が入社してくるときにも同じように行ないます。しかし、時として障害者の雇用のときには、仕事や職場に直接関係することだけでなく、生活面での支援が必要となることがあります

職場において生活支援が必要になるときのいくつかのポイントや、どのような生活支援機関があるのかについて、主な機関と、その機関がサポートする内容について説明してきましたので、いつもと違うと感じたときには早めに連携をとるようにしましょう。

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