精神・発達障害者を初めて雇用する企業へ|採用前に決める7項目

精神・発達障害者を初めて雇用する企業が、採用前に決めておく7つのこと

2018年09月26日 | 採用活動, 障害別の特性・配慮

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

登録者限定レポート
「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年8月1日更新
精神障害や発達障害のある人を初めて雇用することになったとき、企業からは次のような声が聞かれます。

「面接では、何を確認すればよいのか」
「配属先には、障害についてどこまで説明すればよいのか」
「仕事は一つずつ指示したほうがよいのか」
「体調を崩したとき、誰が対応すればよいのか」
「現場から不安の声が出たら、どうすればよいのか」

初めての障害者雇用では、障害特性や配慮方法を詳しく学ぼうとする企業が少なくありません。もちろん、基本的な知識は必要です。しかし、知識を増やすだけでは、実際の職場で迷いがなくなるとは限りません。

採用後に問題になりやすいのは、「何を任せるのか」「どこまで配慮するのか」「誰が指示し、誰が相談を受けるのか」「不調や欠勤が生じたとき、誰が判断するのか」が決まっていないことです。

最初に結論をお伝えすると、精神・発達障害者を初めて雇用する企業が採用前に行うべきことは、障害特性を一律に覚えることではありません。任せる仕事、期待する役割、必要な配慮、情報共有の範囲、日常の指示・相談体制、不調時の判断の流れを、本人と確認しながら組織として整理しておくことが重要です。

この記事でわかること

  • 初めて精神・発達障害者を雇用する企業が、採用前に決めておきたいこと
  • 面接で確認する内容と、障害情報を詳しく聞くことの違い
  • 配属先へ共有する情報の考え方
  • 業務指示、相談、合理的配慮に関する役割分担
  • 欠勤や不調が生じたときに、管理職任せにしないための準備

初めての雇用では、障害特性より先に「仕事と体制」を整理する

初めて精神障害や発達障害のある人を採用する企業では、「うつ病の人にはどう接するか」「ASDの人には、どのように指示するか」と、障害名ごとの対応を調べることがあります。

しかし、同じ診断名でも、仕事への影響、得意なこと、苦手なこと、必要な配慮は異なります。また、職場で起きる問題は、本人の障害特性だけで決まるものではありません。

精神障害者保健福祉手帳の等級についても、同じように考える必要があります。

手帳2級であることは、仕事上の能力や必要な配慮の内容を、そのまま示すものではありません。

等級だけで「雇用が難しい」「特別な準備が必要」と判断するのではなく、本人の経験、予定している仕事への影響、必要な配慮、企業側の受け入れ体制を個別に確認します。

例えば、次のような状態では、本人だけでなく、配属先の管理職や社員も対応に迷います。

  • 求人で説明した仕事と、入社後に任せる仕事が異なる
  • 本人へ期待する役割や成果が明確になっていない
  • 複数の社員が異なる指示を出している
  • 配慮することと、本人に求めることが整理されていない
  • 相談担当者はいるが、業務上の判断ができない
  • 欠勤や不調が生じた際の共有先が決まっていない

このような問題は、障害特性の知識だけでは解決できません。

初めての雇用だからこそ、採用前から仕事と役割、判断の流れを整理しておくことが必要です。

精神・発達障害者を初めて雇用する企業が、採用前に決めておく7つのこと

1.なぜ雇用し、どのような役割を任せるのか

最初に確認したいのは、その人を採用して、どのような仕事を担ってもらうのかという点です。

「法定雇用率を達成するため」「障害者を雇用する必要があるため」という採用目的だけでは、配属後に本人へ何を期待するのかが曖昧になります。

採用前に、次の内容を整理します。

  • 担当してもらう業務
  • その業務が組織の中で果たす役割
  • 入社時に求める能力や経験
  • 入社後に習得してもらう内容
  • 本人に期待する成果や行動
  • 将来的に広げる可能性がある業務

障害者雇用だからといって、補助的な仕事だけを用意する必要はありません。

一方で、仕事の内容を明確にしないまま採用し、入社後に「できそうな仕事を探す」という状態になると、本人の能力を活かしにくくなり、配属先にも判断が集中します。

2.求人で伝える仕事と、実際に任せる仕事を一致させる

求人票には「事務補助」「軽作業」「社内業務」などと書かれていても、実際の仕事にはさまざまな条件があります。

例えば、事務職でも、決められたデータを入力する仕事と、複数の依頼を調整しながら進める仕事では、必要な能力や判断が異なります。

採用前には、職種名だけでなく、次の内容を確認します。

  • 具体的な作業内容
  • 一日に扱う仕事の種類と量
  • 優先順位を自分で判断する必要があるか
  • 予定変更や突発的な依頼がどの程度あるか
  • 電話、接客、他部署との調整があるか
  • 仕事の期限と完了基準
  • 静かさ、音、人の動きなどの職場環境

可能であれば、職場見学、業務説明、実習などを通じて、本人と企業の双方が実際の仕事を確認します。

採用時の説明と入社後の仕事に大きな違いがあると、「想定していた仕事と違う」というズレが生じます。

3.面接では、病名よりも仕事との接点を確認する

面接で障害や症状について詳しく聞けば、採用後の問題を防げるとは限りません。

企業が確認したいのは、診断そのものではなく、本人の能力や経験が仕事と合っているか、働くうえでどのような支障があり、どのような調整が必要かという点です。

例えば、次の内容を確認します。

  • これまで経験した仕事や得意な業務
  • 苦手になりやすい仕事や職場環境
  • 仕事を覚えやすい説明方法
  • 複数の仕事を受けたときの管理方法
  • 困ったときに相談しやすい方法
  • 通院など、勤務上あらかじめ確認が必要なこと
  • 本人が希望する合理的配慮
  • 支援機関を利用している場合の連携方法

募集・採用時にも、障害によって面接や選考で支障が生じているという申出があった場合、企業は本人と話し合い、実施可能な合理的配慮を検討します。

例えば、本人から希望がある場合には、静かな面接場所、質問を理解するための時間、支援者の同席、職場見学などを検討できます。

ただし、特定の配慮をすべての応募者に一律に行うのではなく、本人がどのような場面で困るのかを確認して決めます。

4.配属先へ何を、誰に、どこまで共有するか

採用が決まると、配属先から「障害について詳しく教えてほしい」と言われることがあります。

しかし、診断名、病歴、治療状況などの情報を、必要以上に広く共有することは適切ではありません。

配属先で必要なのは、本人の個人的な情報を詳しく知ることではなく、仕事を進めるために必要な情報です。

例えば、次の内容を整理します。

  • 本人に任せる仕事
  • 仕事上、困りやすい場面
  • 有効な指示や確認の方法
  • 会社として行う配慮
  • 本人に求める行動や報告
  • 困ったときの相談先
  • 不調時に確認する連絡方法

共有する際には、誰に、何の目的で、どこまで伝えるのかを本人へ説明し、意思を確認します。

配属先全員に診断名を伝えなくても、管理職や業務上必要な社員に、「依頼は期限と優先順位を明確にする」「予定変更は理由と次の行動を伝える」など、仕事上必要な対応を共有することはできます。

また、社員研修では、個人を特定する情報とは分けて、障害者雇用、合理的配慮、職場でのコミュニケーションについて一般的な知識を共有します。

5.業務指示、相談、人事判断を誰が担うか

「相談担当者を一人決めれば安心」と考えることがありますが、一人にすべてを集めると、その担当者が不在のときに対応できなくなります。

また、日常的な業務指示、本人からの相談、配慮の判断、評価や配置の判断は、それぞれ役割が異なります。

採用前に、次の担当を整理します。

  • 日常の業務指示を行う人
  • 仕事の進捗を確認する人
  • 本人から相談を受ける人
  • 相談担当者が不在の場合の代替者
  • 合理的配慮について人事と検討する人
  • 評価や配置について判断する人
  • 必要に応じて連携する外部支援機関

複数の社員が指示を出す場合には、誰の指示を優先するのか、指示が重なったときに誰へ確認するのかも決めます。

大切なのは、関わる人を一人に限定することではありません。本人が迷ったときに確認でき、管理職も一人で判断を抱え込まない体制をつくることです。

6.配慮することと、仕事として求めることを分ける

合理的配慮を行うことと、本人に仕事上の役割を求めないことは同じではありません。

会社として、次のような調整を行う場合があります。

  • 依頼内容を口頭だけでなく、文字でも示す
  • 優先順位、期限、完了基準を具体的に伝える
  • 大きな仕事を必要に応じて工程に分ける
  • 途中確認や相談のタイミングを決める
  • 通院や体調を踏まえて勤務時間を調整する
  • 集中しやすい座席や作業環境を検討する

一方で、本人にも、次のような行動を求めることができます。

  • 決められた方法で業務を確認する
  • 期限や優先順位がわからない場合は相談する
  • 約束したタイミングで進捗を報告する
  • 欠勤や遅刻の際に決めた方法で連絡する
  • 仕事上の問題について、本人も振り返りに参加する

「障害があるから注意してはいけない」「配慮しているから成果を求められない」と考える必要はありません。

会社が調整することと、本人に求める役割を分け、双方が確認できる形にすることが重要です。

7.不調、欠勤、業務上の変化が起きたときの流れを決める

入社時には順調に働いていても、しばらくして遅刻や欠勤が増えたり、仕事の進み方に変化が見られたりすることがあります。

そのとき、管理職が病状を判断したり、本人の生活や服薬を細かく管理したりする必要はありません。

職場では、まず確認できる事実を整理します。

  • 遅刻や欠勤が、いつからどの程度増えているか
  • 仕事の速度やミスに、どのような変化があるか
  • 業務量、指示、職場環境に変化がなかったか
  • 本人が仕事上困っていることはあるか
  • 現在の配慮が、実際に機能しているか

そのうえで、本人と話し合い、必要に応じて人事、産業保健スタッフ、支援機関などと連携します。

採用前には、次の流れを決めておくとよいでしょう。

  • 遅刻や欠勤時の連絡先と連絡方法
  • 管理職から本人へ声をかける目安
  • 人事へ共有する条件
  • 一時的に調整できる勤務時間や業務
  • 調整を行う期間
  • 調整後に見直す時期と担当者

不調が起きてから、その場にいる管理職だけで対応方法を考えるのではなく、会社として判断の流れを準備しておくことが必要です。

入社後は、決めた内容が機能しているかを見直す

採用前に準備した内容が、そのまま長期間使えるとは限りません。

実際に働き始めると、面接ではわからなかった得意なことや、仕事上の負担が見えてきます。

入社直後から過度に確認を繰り返す必要はありませんが、最初の数週間から数か月は、次の点を定期的に確認します。

  • 本人が仕事内容と期待される役割を理解しているか
  • 業務量や難易度が適切か
  • 指示を出す人や相談先が明確か
  • 本人に必要な情報が届いているか
  • 配属先の管理職や社員が判断に迷っていないか
  • 現在の配慮が仕事の遂行につながっているか
  • 配慮や業務内容を見直す必要があるか

本人だけではなく、配属先の管理職や社員の状況も確認します。

「本人にどう接すればよいかわからない」「どこまで注意してよいのかわからない」といった迷いがある場合、個人の経験に任せず、人事と前提をそろえる必要があります。

採用前の準備を確認する7つの質問

精神・発達障害者を初めて雇用する前に、次の項目を確認してください。

  • 本人へ任せる具体的な仕事と役割が決まっているか
  • 求人や面接で説明した内容と、実際の仕事が一致しているか
  • 本人に確認する配慮事項と、仕事上の期待を分けているか
  • 配属先へ共有する情報の範囲について、本人と確認しているか
  • 業務指示、相談、人事判断を行う担当者が決まっているか
  • 遅刻、欠勤、不調時の連絡と共有の流れが決まっているか
  • 入社後に仕事や配慮を見直す時期を決めているか

複数の項目で答えに迷う場合、採用することだけでなく、雇用後に誰が何を判断するかを整理する必要があります。

よくある質問

Q:精神障害者の雇用は、ほかの障害者雇用より難しいのでしょうか

障害種別だけで、採用や雇用管理の難しさを決めることはできません。

同じ精神障害でも、仕事への影響、本人の対処方法、必要な配慮は異なります。また、職場で起きる問題は、本人の障害特性だけでなく、仕事内容、業務量、指示方法、相談体制にも左右されます。

「精神障害者だから難しい」と考えるのではなく、予定している仕事と本人の経験・対処方法、企業側の受け入れ体制を個別に確認することが重要です。

Q:面接では、病名や症状について詳しく聞くべきですか

病名や症状を詳しく知ること自体を、面接の目的にする必要はありません。

企業が確認したいのは、本人の能力や経験が仕事と合っているか、働くうえでどのような支障があり、どのような配慮が必要かという点です。

質問する際には、採用判断や入社後の業務に必要な内容へ絞り、質問の目的が本人にわかるようにします。

Q:精神障害者保健福祉手帳2級の場合、特別な準備が必要ですか

手帳2級という理由だけで、一律に特別な仕事や対応を用意する必要はありません。手帳の等級は、日常生活や社会生活への影響を含めて総合的に判定されたものであり、仕事上の能力や必要な配慮が全員同じであることを示すものではありません。

採用前には、等級だけで判断せず、本人へ任せる仕事、仕事上で支障となる場面、本人が行っている対処、希望する配慮、企業内の相談・判断体制を確認します。

重要なのは、「2級だから何をするか」ではなく、「この仕事を続けるために、本人と企業が何を確認しておくか」を整理することです。

Q:配属先の社員全員に、本人の障害名を伝えたほうがよいですか

必ずしも、全員に障害名を伝える必要はありません。業務上必要な人に、必要な情報を、本人の意思を確認したうえで共有します。

診断名を伝えなくても、具体的な指示方法、相談先、勤務上の配慮など、仕事に必要な内容を共有することはできます。

Q:初めての障害者雇用では、仕事を一つずつ指示したほうがよいですか

すべての人に、常に一つずつ指示する必要はありません。本人が複数の仕事を管理できる範囲や、優先順位を判断できるかを確認します。

必要であれば、優先順位、期限、途中確認を明確にします。本人の能力や仕事の状況を確認せず、一律に仕事を制限しないことも重要です。

Q:相談担当者を一人決めれば、受け入れ体制として十分ですか

一人の担当者だけに対応を任せると、不在時に相談できない、担当者が判断を抱え込むといった問題が起きます。

日常の業務指示、本人からの相談、配慮の判断、評価や配置の判断を分け、それぞれの担当と共有先を決めます。

Q:採用前に、すべての配慮を決めておく必要がありますか

採用前に、すべてを確定することはできません。実際に働き始めてから見えてくることもあります。

ただし、誰が本人と確認し、誰が配慮を判断し、いつ見直すのかという流れは、採用前に決めておく必要があります。

Q:本人が体調を崩した場合、管理職が生活や服薬を確認するべきですか

管理職が、本人の診断や治療を管理する必要はありません。

まず、欠勤、遅刻、業務の進み方など、職場で確認できる事実と仕事への影響を整理します。

勤務上の調整が必要な場合は本人と確認し、必要に応じて人事、産業保健スタッフ、支援機関などと連携します。

まとめ

精神・発達障害者を初めて雇用するとき、障害特性や配慮方法を学ぶことは必要です。しかし、知識だけで受け入れがうまく進むわけではありません。

採用前に整理したいのは、本人へ任せる仕事、期待する役割、必要な配慮、配属先へ共有する内容、業務指示と相談の担当者、不調時の連絡と判断の流れです。

また、合理的配慮を行うことと、本人に仕事上の役割を求めないことは同じではありません。会社が調整することと、本人に求める行動を分け、双方が確認できる状態をつくります。

初めての雇用では、採用担当者や配属先の管理職が、目の前の出来事へ一つずつ対応しようとしがちです。

しかし、問題が起きるたびに個人が判断する体制では、本人も管理職も働きにくくなります。

採用する前から、誰が何を確認し、どの段階で誰と判断するのかを組織として準備しておくことが、雇用後の安定した運用につながります。

初めての雇用で、何を決めておくべきか整理しませんか
採用や配属が決まってから、現場で一つずつ対応を考えると、管理職や障害者雇用担当者へ判断が集中します。
任せる業務、合理的配慮、情報共有、指示・相談の担当者、不調時の対応など、採用前から整理しておきたいことがあります。
30分相談では、現在の採用状況や社内体制を伺い、雇用前に確認しておきたい課題と、次に整理すべきことを一緒に確認します。

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