精神・発達障害者が職場に定着しない理由|企業が見直す5つのズレ

精神・発達障害者が職場に定着しないのはなぜ?企業が見直すべき5つのズレ

2025年03月3日 | 判断とマネジメントの構造

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障害者雇用を組織の力に変える5日間

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「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年8月1日更新
精神障害や発達障害のある社員を採用したものの、数か月後に不調や離職につながってしまう。定期的に面談を行い、必要な配慮もしているのに、本人との認識が合わず、管理職や周囲の負担が増えている。

このような状況が起きると、「本人の体調が安定しなかった」「障害特性と仕事が合わなかった」「現場の理解が足りなかった」と考えがちです。

もちろん、体調や障害特性、職場の理解が影響することはあります。しかし、職場定着の問題は、採用後に突然始まったとは限りません。

求人票で伝えた仕事内容、面接で確認した配慮、本人が想定していた働き方、配属後に任せた業務、管理職が期待していた成果。それぞれの間に少しずつズレがあり、雇用後に表面化している場合があります。

結論から言うと、精神・発達障害者の職場定着で必要なのは、面談や配慮を増やすことだけではありません。採用から配属、業務、評価、相談体制までを振り返り、本人と会社の間にどのようなズレが生じているのかを整理することが重要です。

この記事でわかること

  • 精神・発達障害者が職場に定着しない原因を、本人だけに求めてはいけない理由
  • 採用から雇用後までに起きやすい5つのズレ
  • 面談や配慮を増やしても定着につながらないケース
  • 人事、管理職、支援機関の役割の考え方
  • 自社の職場定着で確認すべきポイント

職場定着の問題は、採用後に突然始まるわけではない

精神障害や発達障害のある社員が不調になったり離職したりすると、採用後の職場対応に原因があると考えられやすくなります。

そのため、定期面談を増やす、業務量を減らす、管理職から声をかける、支援機関へ相談するといった対応が取られます。

これらの対応が必要な場合もあります。しかし、採用時から生じているズレを確認しないまま、雇用後の対応だけを増やしても、根本的な問題は解消されません。

例えば、求人票では「事務補助」と説明していたものの、実際には複数の依頼を整理し、優先順位を判断する必要があったとします。

本人は定型的な仕事を想定していた一方、管理職は状況に応じて判断しながら進めることを期待していたのであれば、業務を始めた時点ですでに認識がずれています。

離職や不調は採用後に見える形になりますが、その背景には、求人、面接、業務設計、配属、評価の接続部分に生じた問題があることも少なくありません。

精神・発達障害者の職場定着を妨げる5つのズレ

精神障害と発達障害は異なり、同じ診断名でも本人の能力、働き方、必要な配慮はさまざまです。

そのため、障害名だけから定着しない原因を判断することはできません。本人と仕事、職場環境の関係を見ながら、どこにズレがあるのかを確認する必要があります。

1.求人・面接で伝えた内容と、実際の仕事のズレ

求人票や面接で説明した仕事内容と、配属後に任せる仕事が異なっていると、本人は「聞いていた話と違う」と感じます。

一方、現場では「これくらいは業務の範囲に含まれる」と考えており、問題として認識されていない場合があります。

起きやすいのは、次のようなズレです。

  • 「事務補助」など、仕事内容の表現が抽象的になっている
  • 面接では定型業務を説明したが、実際には判断や調整が必要になる
  • 採用担当者と配属先の管理職で、任せる業務の認識が異なる
  • 職場環境やコミュニケーションの頻度を十分に伝えていない
  • 入社後に仕事内容が変わっても、改めて説明していない

採用時には仕事の名称だけでなく、具体的な作業内容、判断が必要な場面、周囲との連携、業務量の変化なども伝える必要があります。

ただし、面接の会話だけですべてを確認することは難しいため、職場見学、業務体験、実習などを組み合わせることも有効です。

2.本人の能力・希望と、会社が用意した役割のズレ

会社は安定して行える定型業務を任せたいと考えていても、本人はこれまでの経験や専門性を活かしたいと考えている場合があります。

反対に、本人は決められた手順に沿って仕事を進めることを想定していたのに、会社は状況に応じた判断や臨機応変な対応を求めていることもあります。

ここでは、次の内容を分けて確認する必要があります。

  • 本人が経験してきたこと
  • 現在できること
  • 本人が希望していること
  • 会社が必要としていること
  • 配慮や環境調整があればできること

本人が希望している仕事をそのまま用意することが、必ずしも適切とは限りません。一方で、会社が用意した仕事へ一方的に当てはめても、能力を発揮できず、意欲の低下につながります。

本人の能力や希望と、会社が必要とする役割がどこで接続するのかを考えることが重要です。

3.配慮と業務上の期待のズレ

採用時に配慮事項を確認していても、本人に期待する役割や成果が曖昧なままになっていることがあります。

管理職は「障害がある人にどこまで仕事を求めてよいのかわからない」と感じ、注意やフィードバックを控えるようになります。

その結果、仕事を十分に任せられない、周囲が業務を引き取る、本人は何を評価されているのかわからないといった状況が生じます。

合理的配慮は、仕事を求めないことではありません。本人が業務を遂行し、能力を発揮するうえで障壁となっている部分を調整するものです。

そのため、次の2点を分けて伝える必要があります。

  • 会社として調整すること
  • 本人に役割として求めること

勤務時間や指示方法を調整する場合でも、担当する仕事、期限、品質、報告方法まで曖昧にする必要はありません。

配慮と業務上の期待を一緒に整理することで、本人も管理職も、どのように仕事を進めればよいのか判断しやすくなります。

4.本人と管理職の認識・コミュニケーションのズレ

管理職は説明したつもりでも、本人は何を優先すべきか理解できていないことがあります。

本人は困っていることを伝えたつもりでも、管理職は単なる希望や一時的な相談として受け取っている場合があります。

「言った」「聞いていない」という問題に見えても、実際には確認する内容や方法が決まっていないことが原因かもしれません。

職場では、少なくとも次の点を具体的に共有する必要があります。

  • 今、優先する仕事は何か
  • どの状態になれば仕事が完了したといえるか
  • 途中で確認すべきタイミングはいつか
  • 予定どおり進まない場合、誰にどのように相談するか
  • フィードバックをどのような方法で伝えるか

精神・発達障害者への対応では、丁寧に話を聞くことが重視されます。しかし、話を聞くだけでは、仕事上の認識はそろいません。

対話の目的を、気持ちを受け止めることだけでなく、業務上の状況を確認し、次の行動や判断を明確にすることまで含めて考える必要があります。

5.人事・現場・支援機関の役割のズレ

不調や業務上の問題が起きたとき、管理職、人事、障害者雇用担当者、支援機関の誰が対応するのかが決まっていないと、判断が止まります。

管理職は人事が対応すると思い、人事は現場で判断する問題だと考える。支援機関へ相談しても、企業側で決めるべき業務や評価の問題が残る。このような状態では、本人も誰に相談すればよいのかわかりません。

支援機関は、本人の状態や必要な支援を理解し、職場定着を支える重要な存在です。

ただし、企業が支援機関へ雇用管理を任せることはできません。

企業が担うのは、主に次の内容です。

  • 任せる業務を決める
  • 業務上の指示やフィードバックを行う
  • 評価基準を示す
  • 職場環境や配慮を検討する
  • 雇用上の判断を行う

支援機関には、本人の状態の整理、生活面との調整、本人が企業へ伝えにくい内容の共有などについて協力を求めます。

重要なのは、支援機関へ任せることでも、企業だけで抱え込むことでもありません。それぞれの役割を明確にし、必要な情報が適切に共有される状態をつくることです。

面談や配慮を増やしても、定着につながらないことがある

職場定着に課題があると、企業は面談の回数を増やしたり、業務量を減らしたり、管理職研修を実施したりします。

これらの取り組み自体が間違っているわけではありません。

しかし、何がずれているのかを整理しないまま対応を増やすと、面談で同じ話を繰り返す、本人の仕事が減り続ける、管理職の対応時間だけが増えるといった状態になりかねません。

例えば、本人の仕事が進まない原因が、能力不足ではなく、指示の優先順位が不明確なことにあるなら、業務量を減らすだけでは解決しません。

本人と管理職の期待が異なっているのであれば、面談で体調を確認するだけでなく、役割や評価の認識をそろえる必要があります。

対策を決める前に、採用、業務、期待、配慮、コミュニケーション、管理体制のどこに問題があるのかを見極めることが重要です。

職場定着を「在籍していること」だけで判断しない

職場定着では、離職せずに働き続けていることが重視されます。勤続期間や定着率は重要な指標ですが、在籍しているだけで雇用が成功しているとは限りません。

本人に任せる仕事がほとんどない、役割や評価が曖昧なままになっている、管理職や周囲が対応を抱え続けているのであれば、持続可能な定着とはいえません。

職場定着を確認するときには、次のような視点も必要です。

  • 本人が自分の役割を理解しているか
  • 能力や経験に合う仕事を担当しているか
  • 適切なフィードバックを受けられているか
  • 仕事の幅や成長につながる変化があるか
  • 管理職や周囲が過度に抱え込んでいないか
  • 提供している配慮を継続できるか
  • 問題が起きたときに組織で判断できるか

職場定着とは、本人を職場へ一方的に合わせることでも、職場がすべてを受け入れることでもありません。

本人が役割を果たし、会社も無理なく雇用を続けられる接点をつくることです。

自社の職場定着を確認する7つの質問

精神・発達障害者の職場定着について、次の項目を確認してください。

  • 求人票や面接で伝えた業務と、実際に任せている業務は一致しているか
  • 本人が会社から期待されている役割を理解しているか
  • 配慮することと、業務上求めることを分けて説明できているか
  • 仕事の優先順位や完了基準が具体的に共有されているか
  • 管理職が対応や判断を一人で抱えていないか
  • 人事、現場、障害者雇用担当者、支援機関の役割が決まっているか
  • 在籍期間だけでなく、本人の活躍と現場の持続可能性を確認しているか

複数の項目で答えに迷う場合、個別社員への対応を増やす前に、採用から定着までの全体設計を見直す必要があります。

よくある質問

Q:精神・発達障害者が職場に定着しない主な原因は何ですか

本人の体調や障害特性だけでなく、仕事内容、本人と会社の期待、配慮、評価、相談方法、管理体制など、複数の要素が関係しています。

一つの原因を特定しようとするより、採用から雇用後までのどこにズレが生じているのかを確認することが重要です。

Q:定期面談を増やせば、定着しやすくなりますか

面談の回数だけでは、職場定着につながるとは限りません。

面談で何を確認するのか、確認した内容を誰が判断するのか、業務や配慮をどのように変更するのかまで決まっていることが重要です。

体調や気持ちを聞くだけでなく、仕事の進み方、本人と上司の認識、必要な支援について具体的に確認する必要があります。

Q:業務を減らすことは合理的配慮になりますか

体調や障害の状況によっては、一時的に業務量や業務内容を調整することが必要な場合があります。

ただし、役割や評価を曖昧にしたまま、恒常的に仕事を減らし続けることとは分けて考える必要があります。

何を調整するのか、いつまで行うのか、どのような状態になれば見直すのかを整理することが重要です。

Q:支援機関にはどこまで相談できますか

本人の状態、生活面の課題、本人が企業へ伝えにくいこと、職場で必要な支援について相談できます。

一方、任せる業務、指示、評価、職場環境、雇用上の判断は企業が担います。

企業と支援機関のどちらかに任せるのではなく、役割を分けたうえで連携することが必要です。

まとめ

精神・発達障害者の職場定着がうまくいかないとき、本人への配慮や面談を増やすだけでは解決しないことがあります。

採用時に伝えたこと、実際に任せた仕事、本人が期待していた働き方、管理職が求めていた成果、提供している配慮、評価、相談体制の間に、どのようなズレがあるのかを確認することが重要です。

定着しない原因を本人の体調や障害特性だけに求めると、会社側の採用やマネジメントの問題が見えなくなります。一方で、本人の希望をすべて受け入れれば定着するわけでもありません。

職場定着とは、本人が役割を果たし、会社も無理なく雇用を続けられる接点を設計することです。

個別対応を増やす前に、採用、業務、期待、配慮、コミュニケーション、管理体制がどのようにつながっているのかを、組織として見直す必要があります。

職場定着を妨げている「ズレ」を整理しませんか
面談や配慮を増やしても定着につながらない場合、原因は一つではありません。
採用時の説明、実際の業務、本人と会社の期待、配慮、評価、管理体制などが、少しずつずれていることがあります。
「採用・定着のズレ見える化マップ」では、精神・発達障害者の採用・定着で起きている課題を、業務、配慮、期待値、管理体制、組織文化の視点から整理し、自社が次に見直すべきことを明らかにします。

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