精神障害や発達障害のある人をはじめて雇用するときに知っておきたい雇用管理Q&A

障害者法定雇用率に精神障害者が含まれるようになり、精神障害や発達障害の人材採用についての問い合わせが多くなってきました。障害者法定雇用率は今後も引き上げが予想され、精神障害や発達障害の雇用はますます進んでいくと思われます。しかし、はじめて「精神障害者」「発達障害者」の人材を採用することに不安や心配を抱える企業や事業所は少なくありません。

ここでは、精神障害や発達障害のある人をはじめて雇用するときに直面する課題についてのQ&Aを紹介しています。採用前の採用面接、配属先への説明や、採用後の業務指示の仕方、休みがちになった場合の対応について説明しています。

面接ではどんな配慮をすればよいか

ある会社が、精神・発達障害のある方の採用を考えており、募集を行いました。近々面接予定です。一般の健常者と同様の面接方法で大丈夫なのでしょうか。何か配慮することはあるのでしょうか。

就労支援機関の職員などの同席を認めるなどの配慮があると安心です。精神・発達障害はそれぞれの障害特性や必要な配慮が異なっています。そのため、精神・発達障害のある方と面接官の意思疎通を助け、また、障害特性を面接官によく知ってもらうために、面接時に就労支援機関の職員などの同席を認めている事例があります。

面接に同席者の例

・ハローワークの職員
・障害者職業センターの職員
・障害者就業・生活支援センターの職員
・ジョブコーチ
・本人の出身学校の教職員
・障害者福祉施設の職員
・障害者を支援するNPO法人の職員
・本人の家族
・人材紹介会社の職員

同席者は、障害の特性や配慮事項・支援内容の説明、面接における本人の受け答えの補足などの役割を担うことが多くあります。

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面接時にできるその他の配慮の例

・静かな環境の整った会議室で面接を実施した。
・支援機関の職員から事前に本人の障害特性を確認しておき、面接時に過度な
負担がかからないよう配慮した。
・緊張している様子の方には、面接の中断を認めており、時間を空けて本人が落ち
着いてから面接を再開している。
・本人や保護者などの不安解消のため、本人だけでなく、保護者・就労支援機関の
担当も一緒に職場見学や勤務内容の説明を実施した。

精神障害や発達障害の採用者が決まった配属先に、どのように説明すればよいか

採用面接を経て精神障害や発達障害の採用者が入社してきます。会社で円滑に受け入れるためには、職場においてどのような受け入れの準備をしておくとよいでしょうか。

周囲の社員の理解を得るために研修会や情報共有を行う

まず、社員向けに研修会や勉強会などを開催し、事前に障害の特性などとともに、本人に対する接し方などを本人のプライバシーに配慮した上で、情報共有しましよう。

障害者がその能力を発揮し、円滑に仕事をするためには、障害特性や障害者当人が働くに当たってどのような支障を感じているか、どのような接し方が必要かといったことについて周囲の理解を得ることが大切です。

実は、障害者本人の受け入れとともに考えていかなければならないのが、健常者社員へのフォローです。普段ほとんど精神障害者や発達障害者と接した機会がなければ、仕事はどれくらいできるのか、どのように接したらよいのか、業務指示はどのようにしたらよいのか・・・など、受け入れることに不安がいっぱいだからです。

はじめて精神障害者や発達障害者を採用して、雇用が長続きしない結果となる理由の1つとして、社員への障害者雇用の理解不足や組織として取り組む体制が整っていないことが多くあります。障害者本人への配慮も必要ですが、一緒に働く社員への配慮も同時に行っていく必要があります。

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説明する内容の例

精神障害

・具体的に配慮が必要な事柄や仕事上関係する障害特性について
・体調不良になった際の初期動作、連絡体制、倒れた際の誘導などについて
・対応上のポイント(コミュニケーションが苦手であることを踏まえて接してほしいことや、疲れやすいためフォローしてほしいこと、危険が及ぶ業務は必ず2人で行うこと等)について

発達障害

・必要最低限の障害特性(作業の習得には時間がかからないが、コミュニケーシ
ョン能力に困難を抱えていることなど)
・本人のできること、できないこと
・対応上の留意点(例:指示、注意するときは穏やかに話すこと、一つずつ指示を出す
ことなど)
・昼休憩時などの関わり方の留意点

障害者本人の上司、配属先の社員、業務上関係する部署の社員などはもちろんですが、社員全体にも障害特性などを理解する機会をつくることができれば、障害者雇用を会社全体で行っているという雰囲気をつくりやすくなります。障害者雇用は【○○部の仕事】ではなく、【会社全体、組織全体で取り組むこと】という認識を培っていくことが大切です。

本人の特性や必要な配慮事項などについては、直接関係する社員を中心に行うとよいでしょう。個人情報も含まれてきますので、本人の意思を確認した上で行うようにします。多くの就労支援機関では、自己取扱説明書やナビゲーションブックなどを活用して、障害者自身が、自身の特徴やセールスポイント、障害特性、職業上の課題、事業所に配慮をお願いすることなどをまとめているので、これらを見ることもできるでしょう。

業務の説明や指示をする際に、留意しておいたほうがよい点とは

精神障害手帳を持っている社員が入社しました。あなたは、その人の配属先の上司となりました。あなたが障害者の上司となったのははじめてです。業務を遂行してもらう上で、注意することや、接する上でのポイントなどはどのようなことがあるのでしょうか。

業務を端的に示す

業務の優先順位、目標、業務指示、スケジュールなどを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順を分かりやすくしたマニュアルを作成するなどの対応を行いましょう。

ストレスに弱い、言われないと気づかない

精神障害のある方には、曖昧な状況にストレスを感じやすく、また、工夫・応用が苦手なことが多くあります。

また、発達障害者で、例えば自閉症の方の中には、いわゆる暗黙のルールの理解が苦手であったり、言葉を文字どおりに受け取る傾向があります。このようなときには、作業の流れや手順を決めて、できるだけ具体的かつ簡潔な指示を出すような配慮を行うようにしましょう。

配慮例(精神障害)

【業務の優先順位を明確にする】
・毎日、作業内容が変わることから、次にやるべき仕事、いつまでに終わらせるかなど細かい内容について、その都度指示している。
・ホワイトボードなどにより個人別にその日や週ごとの作業を掲示している。

【作業手順をマニュアル化する】
・写真などを活用したマニュアルを作成し、目につきやすい箇所に掲示している。
・使用する機械に番号を貼り付ける。清掃箇所により使う用具を色分けしている。
・マニュアルをポケットに入れられるカード型にし、いつでもチェックできるようにしている。

配慮例(発達障害)

【業務指示を明確にする】
・口頭で、「午前中はこの仕事をしてください」と時間を区切って指示したり、「Aが終了したら、次はBです」と業務の完結を持って区切ることや、「きれいになったら次のものを洗う」ではなく、「10回洗ったら次のものを洗う」など、具体的な時間や回数などで作業方法を指示している。
・各部署の指導担当者が普段から情報交換をして、本人に対する指示の出し方に統一性を持たせている。

【スケジュールを明確にする】
・ホワイトボードにその日のスケジュールを貼り出している。
・予定の変更があれば、わかった時点ですぐに伝えて、気持ちの切り替えができるようにする。

仕事に慣れたと思っていたら、会社を休みがちになってきた

採用されて職場にもなれた様子で、仕事も順調にしているように見えていた精神障害手帳所持している社員が、最近休みがちになってきました。しかし、原因を考えても見当たりません。一体何があったのでしょう。

担当者を決める

仕事の様子を見ていると、複数の社員から指示があり、業務が円滑にいっていなかったようです。いろいろな人が違った指示をだすことによって、混乱することがあります。業務指導や相談に関しては、担当者を定めて行うとよいでしょう。

障害者が円滑に仕事していくために、業務指導や相談に関し企業内の様々な立場の人を担当者として選任している事例があります。このように担当者を決めることにより、障害者が働く上で支障になっている状況をお互いに認識したり、支障になっている状況を解決するためには、どのような接し方が適切かといった内容に対応することができます。

担当者の例

・本人の上司、同僚、同年代、同じ障害のある先輩社員
・総務・人事部などの人事担当者、就業場所の責任者
・障害者職業生活相談員
・ジョブコーチ

担当者はできるだけ、障害者社員と同じ業務や部内で働いており、業務に精通していて、すぐに質問できる人がよいでしょう。担当者として役職者や管理職をたてる場合には、会議や来客で不在にするときには、サブの担当者からのサポートを受けられる体制をとっておくと、障害者社員本人にとっても安心できます。

担当のあり方、指導・相談の仕方の例

【担当のあり方の例】
・複数の者から指示をすると本人が混乱するため、担当者のみが指導を行っている。
・業務対応を行う者(現場の上司)と相談対応を行う者(人事担当者)を分けている。

【指導・相談の対応例】
・定期的に本人と面談したり日誌交換を行いながら、仕事の悩みや体調などについて把握したり、仕事のフィードバックを行うようにしている。

【質問の仕方の例】
× 「何かあったら連絡して」 ※ 当事者からすると、「何かあったら」のときが、わからない。そのために連絡することができない。

○「『困ったことがありますか』と声をかけるので、あれば言ってください。なければありませんと言ってください。」

最近ミスが増えてきていることへの対処方法

障害者社員が入社して半年が経ちました。順調に働いていましたが、最近ミスが増えてきました。本人もミスを気にしているようです。また、仕事にも集中できてない様子です。

生活リズムを見直す

出退勤時刻・休憩・休暇に関し、通院・体調状況を確認し、それに合わせた調整ができるかもしれません。個々の障害のある方の障害特性によっては、通常の時間に出勤することが困難であったり(通勤ラッシュ時間帯の交通機関に乗れないなど)、体調に波があることや通院・服薬を要することがありますが、その場合は個々の障害のある方の状況に合わせて適切な配慮を行うことが必要です。

配慮例

【出退勤時刻に関し、配慮している例】
・通勤ラッシュを避けられるよう、出退勤時間を決めている。
・一人のほうが落ち着いて作業ができるという申出があったため、出退勤時間を1時間早めている。

【休憩に関し、体調に配慮している例】
・積極的な休憩の取得、時間をずらしての休憩、休憩時間の延長を認めている。
・規定の休み時間以外にも休憩を認めている。通常、昼休みの60分休憩だが、本人の希望に応じて、昼時間に45分と午後に15分と休憩を分割して取れるようにしている。

【休暇に関し、通院・体調に配慮している例】
・通院日などを考慮してシフトを作成し、また、通院日には休暇を認めている。
・体調不良時の欠勤連絡は緊張が伴うとのことなので、本人の担当者に個別に連絡してもよいこととしている(TEL連絡ではなく、メール連絡も可にする)。
・有給休暇を1時間単位で取得可能にしている。

【その他の例】
・本人が不調に気づきやすいように、体調、睡眠、服薬の簡単なチェックリスト形式の記録帳を活用している。

体 調今日の体調はどうですか?良い・普通・悪い
服 薬決められた時間に薬を飲みましたか?飲んだ・飲んでない
睡 眠昨日はよく眠れましたか?よく眠れた・眠れなかった


    

まとめ

精神障害や発達障害のある人をはじめて雇用するときに直面する課題についてのQ&Aを紹介してきました。採用前の採用面接、配属先への説明や、採用後の業務指示の仕方、休みがちになった場合の対応について、なんとなくイメージができたでしょうか。

しかし、これらはあくまでも一例です。雇用する企業の状況は、それぞれ企業や事業所によって異なります。同じ企業でも事業所によっては、だいぶ雰囲気や環境も違ったものになります。現在あるリソースの中で、どのようにしたら障害者が活躍できるのか、現在いる社員の方が協力してくれるのか、組織として障害者雇用をどのように進めるのかをぜひ考えてください。

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