障害者雇用が難しい3つの理由|企業で判断が止まる構造

障害者雇用が難しい3つの理由|企業で採用・配慮・現場対応が止まる構造

2025年02月6日 | 判断とマネジメントの構造

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

登録者限定レポート
「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年8月28日更新

障害者雇用に取り組む企業から、次のような声を聞くことがあります。

「求人を出しても採用が進まない」「配慮をどこまで行えばよいのか分からない」「現場から、対応が難しいと言われている」「担当者が相談対応に追われている」

こうした状態が続くと、「障害者雇用は難しい」「自社ではうまく進められないのではないか」と感じることがあります。

障害特性や合理的配慮について理解することは必要です。しかし、障害者雇用が難しくなる原因は、知識不足だけではありません。

任せる仕事、配慮を判断する基準、人事・管理職・現場の役割が曖昧なまま、一部の担当者へ個別判断が集中していることが、障害者雇用を難しくしている場合があります。

本人や担当者の努力だけで解決しようとするのではなく、会社として仕事・判断・役割の仕組みを確認することが必要です。

この記事でわかること
  • 企業が障害者雇用を難しいと感じる理由
  • 任せる仕事が決まらないまま採用することで起きる問題
  • 合理的配慮の判断が担当者へ集中する理由
  • 本人側の問題だけで考えると改善しにくい理由
  • 会社として確認したい仕事・情報・判断・役割の視点

障害者雇用が難しいと感じるのはなぜか

障害者雇用で問題が起きたとき、「障害への理解が足りなかった」と考える企業は少なくありません。

もちろん、障害特性や合理的配慮について基本的な知識を持つことは必要です。しかし、研修を行い、担当者が知識を身につけても、現場の迷いが減らないことがあります。

たとえば、

  • この仕事を任せてよいのか分からない
  • 本人からの希望をどこまで受け入れるか決められない
  • 業務量を減らす判断を誰が行うか決まっていない
  • 現場から人事へ相談しても結論が出ない
  • 同じような問題が起きるたびに対応が変わる

という状態です。これは、障害に関する知識だけでは解決できません。

企業として、何の仕事を任せるのか。何を基準に判断するのか。誰がどこまで決めるのか。必要な情報を誰と共有するのか。が整理されていないことが、障害者雇用を難しくしている場合があります。

難しい理由1|任せる仕事が決まらないまま採用を始めている

障害者雇用では、法定雇用率への対応から、採用人数の確保を急ぐ必要がある企業もあります。

もちろん、法定雇用率への対応は企業として必要です。

しかし、「まず採用しなければならない」という状況が先行すると、「何の仕事を任せるのか」「どのような役割を期待するのか」が十分に整理されないまま、採用活動が始まることがあります。

その結果、入社後になってから、「任せられる仕事がない」「どこまで任せればよいか分からない」という問題が表面化しやすくなります。

障害者雇用率を満たすことと、採用した人が組織の中で役割を持って働けることは、同じではありません。

仕事や役割が十分に整理されていないまま採用を進めると、次に「障害者にできそうな仕事を探そう」という考え方になりやすくなります。

すると、

  • ほかの社員が行っている単純作業を集める
  • とりあえず補助的な仕事を任せる
  • 採用した人を見てから仕事を考える

という進め方になりがちです。

しかし、仕事の目的や成果が曖昧なままでは、本人も管理職も、どこまで仕事を進めればよいのか判断できません。

仕事が少なければ、本人が自分の役割を感じにくくなることがあります。反対に、仕事の範囲が曖昧なまま依頼が増えれば、本人が対応しきれなくなることもあります。

そして問題が起きると、「この人には難しかった」「障害特性に合わなかった」と判断されることがあります。

しかし実際には、

  • 仕事の目的が説明されていなかった
  • 完了の基準が決まっていなかった
  • 優先順位が共有されていなかった
  • 誰に質問するか分からなかった

という可能性もあります。

障害者雇用では、本人に合う仕事を探すだけでなく、企業側が仕事を説明・管理できる状態にすることが重要です。

また、仕事内容を考えるときに、「他社では障害者にどのような仕事を任せているのか」を参考にすることがあります。他社事例を知ること自体は参考になりますが、その仕事内容をそのまま自社へ持ち込めばうまくいくとは限りません。

会社によって、必要な仕事、業務の進め方、人員構成、求める成果は異なるからです。

まず考えたいのは、「障害者にできそうな仕事は何か」ではなく、「自社の中で必要とされている仕事は何か」です。

その仕事を整理したうえで、必要な手順や判断、完成基準を確認し、本人の経験や得意なこととの適合を考えていきます。

難しい理由2|配慮の判断基準が共有されていない

障害者雇用では、本人からさまざまな希望や相談が出ることがあります。

たとえば、

  • 勤務時間を調整してほしい
  • 業務量を減らしてほしい
  • 電話対応を外してほしい
  • 静かな場所で働きたい
  • 定期的に面談してほしい

といった内容です。

このとき、現場担当者が一人で「認めるか、認めないか」を判断しようとすると、対応が難しくなります。

本人の希望をすべてそのまま受け入れれば、仕事の役割やほかの社員との分担に影響することがあります。

一方で、「前例がない」「ほかの社員には認めていない」という理由だけで判断すると、本人が仕事を行うために必要な調整まで行われない可能性があります。

合理的配慮は、本人に優しくするか、厳しくするかという問題ではありません。

企業が確認したいのは、

  • 仕事上、どのような支障が起きているのか
  • 本人はどのような対処を行っているのか
  • どのような方法で支障を減らせるのか
  • 仕事の目的や評価基準を維持できるか
  • 会社として継続して実施できるか

といった点です。

こうした確認視点が共有されていなければ、同じ会社でも上司や部署によって結論が変わります。

ある部署では認められたことが、別の部署では認められない。担当者が変わると判断も変わる。この状態では、本人も現場も何を基準に考えればよいのか分かりません。

配慮の難しさは、本人から希望が出ることそのものではなく、会社として確認する視点や判断基準が共有されていないことから生じる場合があります。

難しい理由3|担当者や管理職に判断が集中している

障害者雇用の担当者や直属の管理職が、日常的に多くの相談へ対応している企業があります。

「今日は仕事を減らしたほうがよいか」「この相談を人事へ共有してよいか」「ほかの社員へどこまで説明するか」「本人へ注意してもよいか」「勤務を続けてもらうべきか」

一つひとつは小さな判断に見えても、積み重なると大きな負担になります。担当者が丁寧に対応するほど、その人へ情報と判断が集まることもあります。

その結果、

  • 担当者が休むと対応できない
  • 過去の判断理由が社内に残らない
  • 似た問題が起きるたびに最初から考える
  • 人事と現場のどちらが決めるか曖昧になる
  • 担当者が通常業務を進められなくなる

という状態が起こります。

これは、担当者の能力不足とは限りません。どのような問題を現場で判断するのか。どの段階で管理職や人事へつなぐのか。誰が最終的に決めるのか。が整理されていないことが原因の場合があります。

障害者雇用を特定の担当者の経験や善意だけで支えると、雇用人数が増えたり、担当者が交代したりしたときに運用が続かなくなります。必要なのは、担当者をさらに頑張らせることではなく、判断を個人から組織へ戻すことです。

本人側の問題だけで終わらせると、同じ問題が繰り返される

遅刻や欠勤が増えた。仕事が遅れるようになった。ミスが増えた。相談がなくなった。こうした変化が起きると、本人の体調管理、自己管理、仕事への姿勢に原因を求めることがあります。

もちろん、本人自身が生活や体調を整え、自分なりの対処方法を持つことも必要です。しかし、本人側の問題だけで結論を出すと、職場側で起きている変化を見落とすことがあります。

たとえば、

  • 業務量が急に増えていなかったか
  • 複数の人から異なる指示が出ていなかったか
  • 仕事の優先順位が分かりにくくなっていなかったか
  • 仕事内容や役割が変わっていなかったか
  • 相談しても状況が変わらないと感じていなかったか
  • 担当者や上司が変わっていなかったか

といったことも確認する必要があります。

同じ本人でも、仕事内容、指示方法、判断する範囲、相談先などが変わることで、仕事の進み方が変わることがあります。

だからといって、すべての問題を会社側の責任として考えるわけではありません。

重要なのは、本人を見ることと、仕事や職場の条件を見ることの両方を行うことです。どちらか一方だけを原因にすると、問題の構造を見誤りやすくなります。

障害者雇用を難しくしないために、会社が確認したい4つの視点

障害者雇用を安定させるために、すべての問題を事前に予測することはできません。

重要なのは、問題が起きない会社をつくることではなく、問題が起きたときに確認し、判断し、見直せる状態をつくることです。

そのためには、本人への対応だけでなく、会社側についても確認します。

1.仕事・入口|何を任せ、何を期待するのか

何の仕事を担当するのか。どこまでが本人の役割なのか。どの状態になれば仕事が完了なのか。を整理します。

本人が「できるか」だけを見るのではなく、管理職や現場がその仕事を説明し、確認できる状態になっているかも重要です。

2.情報共有|必要な情報と判断理由が残っているか

本人への配慮や対応方法を、担当者だけが知っている状態では、担当者が変わったときに対応が変わります。

一方で、障害名や個人的な情報を必要以上に共有する必要もありません。

仕事や配慮を実施するために、誰が何を知る必要があるのか。どの判断が行われたのか。なぜその対応になったのか。を整理しておくことが重要です。

3.判断基準|何を基準に決めるのか

配慮、業務量、仕事の変更などを、担当者の感覚だけで決めないようにします。

本人の希望だけでなく、仕事上の支障、本人の対処、仕事への影響、会社として実施できる方法など、何を確認して判断するのかを共有します。

4.役割・権限|誰が、どこまで決めるのか

日常的な相談を受ける人と、業務を変更する人、勤務条件や配置を決める人は、必ずしも同じである必要はありません。

現場で判断できること。管理職へ上げること。人事や会社として判断すること。を分けておくことで、一人の担当者へ判断が集中しにくくなります。

一度決めた対応も、必要に応じて見直す

仕事、配慮、本人の状況、職場の体制は変化します。

一度決めた対応をそのまま続けるのではなく、「今も必要か」「今も有効か」「別の方法の方がよいか」を確認することも必要です。

障害者雇用の難しさが、どこから生じているか確認してみましょう
  • 採用前に、任せる仕事と期待する成果を決めている
  • 配慮を判断するときの確認視点が共有されている
  • 必要な情報と判断理由を残せるようになっている
  • 現場・管理職・人事の役割が分かれている
  • 担当者一人に相談や判断が集中していない
判断に迷う項目が多い場合は、障害特性の知識を増やすだけでなく、仕事・情報共有・判断基準・役割のどこで止まっているのかを確認してみるとよいでしょう。
障害者雇用の難しさが、担当者だけでは解決しにくくなっている方へ
採用、配慮、現場対応で同じ迷いが繰り返される場合、担当者の経験不足だけではなく、任せる仕事、判断基準、役割分担が整理されていないことがあります。
30分相談では、現在起きている状況を伺いながら、「本人への対応」と「会社側で見直したい仕事・判断・役割」を切り分けて整理します。

障害者雇用が難しいと感じる企業からのよくある質問

Q:障害者雇用は、一般の雇用よりも難しいのでしょうか

障害の有無だけで、雇用の難しさが決まるわけではありません。

障害者雇用では配慮や情報共有について確認する場面が増えることがありますが、仕事、評価、相談、役割分担が曖昧であれば、障害のない社員の雇用でも問題は起こります。

障害者雇用をきっかけに、これまで職場内で暗黙に処理していた仕事や判断の曖昧さが見えてくることもあります。

Q:障害理解研修を増やせば、現場の問題は減りますか

障害に関する知識を学ぶことは必要ですが、知識だけですべての判断ができるわけではありません。

現場が迷っているのが、仕事の変更、配慮の範囲、情報共有、役割分担などであれば、会社として判断基準や役割を整理する必要があります。

Q:本人から求められた配慮は、すべて実施する必要がありますか

本人の希望を聞いたうえで、仕事上どのような支障があるのか、本人がどのような対処を行っているのか、どのような方法が考えられるのかを確認します。

本人の希望だけで決めるのでも、前例がないことだけを理由に断るのでもなく、予定している仕事や職場の条件との関係から検討することが重要です。

Q:「障害者に向いている仕事」を先に探した方がよいでしょうか

他社事例や一般的な職種例を参考にすることはできますが、それだけで自社に合う仕事が決まるわけではありません。

まず、自社の中で必要な仕事を確認し、その仕事に必要な手順、判断、完成基準などを整理します。

そのうえで、本人の経験や得意なこととの適合を考える方が、役割を明確にしやすくなります。

Q:障害者雇用の担当者が対応を抱え込んでいる場合、何を見直せばよいですか

担当者が受けている相談や判断を整理し、どこまでを担当者が決め、どの段階で管理職や人事へつなぐのかを確認します。

担当者個人の対応力を高めるだけでなく、会社として判断者と役割分担を決めることが重要です。

まとめ|障害者雇用の難しさを、本人や担当者だけの問題にしない

障害者雇用が難しくなるのは、障害特性への知識が足りないからだけではありません。

  • 任せる仕事が曖昧なまま採用している
  • 配慮を判断する基準が共有されていない
  • 担当者や管理職へ個別判断が集中している

といった組織側の構造が、難しさを生み出している場合があります。

また、仕事上の問題が起きたときに、本人の障害特性や自己管理だけを原因と考えると、仕事や職場側で変化していることを見落とす可能性があります。

障害者雇用を安定させるために必要なのは、すべての問題を起こさないことではありません。

問題が起きたときに、何を確認するのか。何を基準に判断するのか。誰が決めるのか。必要な情報を誰と共有するのか。を会社として整理しておくことです。

障害者雇用の難しさを、本人や担当者の問題として終わらせず、仕事・情報共有・判断基準・役割の設計として捉え直すこと。

それが、特定の担当者だけに頼らず、障害者雇用を組織として進めていくための土台になります。

関連記事

関連記事|障害者雇用の「難しさ」を、組織の仕組みからもう少し深く考える
今回の記事では、障害者雇用が難しくなる背景を、本人の障害特性だけでなく、仕事・判断・役割の構造から整理しました。どこで止まっているのかをもう少し具体的に見たい方は、次の記事もあわせてご覧ください。
「障害者にできそうな仕事」を探す前に、会社として何を任せ、どのような役割を期待するのか。仕事の入口から整理したい方へ。

配慮や業務調整について、担当者や上司によって判断が変わってしまうとき、会社として何を確認し、何を基準に決めるのかを考える視点です。

障害者雇用担当者や直属の上司へ相談・判断が集中している場合に、現場・管理職・人事の役割と判断範囲を整理する視点です。

採用できても定着につながらないとき、本人への支援だけでなく、仕事や現場の運用にどのような問題が起きているのかを確認したい方へ。

スポンサードリンク

現場が動く組織づくりの視点を解説

NewsPicksでのコラムは、制度と現場のあいだの“ズレ”を読み解き、
組織を前へ進めるヒントをお届けします。

0コメント

コメントを提出

メールアドレスが公開されることはありません。