仕事・入口の設計を見直す|採用・役割・働き方の選択肢を増やす

仕事・入口の設計を見直す|「誰を採るか」の前に、仕事・役割・期待を整理する

診断結果|仕事・入口の設計を見直す段階です

今の状況では、問題が起きたあとの対応を増やすよりも、その前に「どんな仕事を任せるのか」「何を期待するのか」「どのような働き方が合うのか」を整理することが、次の一歩になりそうです。

採用がうまくいかないとき、私たちはつい「どんな人を採ればよいか」を考えます。
障害者雇用であれば、
「この障害ならどんな仕事ができるのか」
「この人には何ができるのか」と、
さらに人の側へ意識が向きやすくなります。

しかし、採用は「人」だけを選ぶものではありません。

会社側にも、
「どんな仕事を任せたいのか」
「何を期待しているのか」
「どこまで仕事を固定し、どこから変えられるのか」
という選択があります。

そして、ここで大切なのは、すべての人に同じ採用方法・同じ働き方を当てはめることではありません。
人と仕事の組み合わせに応じて、採用や役割、働き方を柔軟に選べる状態をつくること。
「仕事・入口の設計を見直す」とは、そのための選択肢を増やすことです。

このページでわかること

  • なぜ障害者雇用では仕事を先に考えることが多いのか
  • ジョブ型とメンバーシップ型を二者択一にしなくてよい理由
  • 仕事を明確にすることと、固定することの違い
  • 採用や働き方の選択肢を増やすという考え方
  • 障害者雇用で生まれた柔軟さを、組織全体へ広げる視点

 

「誰を採るか」の前に、会社側の仕事を見てみる

 
採用というと、応募者をどう集めるか、どんな人を選ぶか、どのような能力を求めるか、といった「人」に関する話が中心になります。
もちろん、それは重要です。
ただ、その前に会社側で考えておきたいことがあります。

それは、

  • この仕事は何のためにあるのか
  • どのような役割を担ってもらいたいのか
  • 何を期待しているのか
  • どこまでできれば、その役割を果たしていると考えるのか

という「仕事の側」の整理です。

ここが曖昧なまま人を採用すると、入社したあとになって、
「何を任せればいいのだろう」
「どこまで求めていいのだろう」
「これは本人の課題なのか、会社が調整すべきことなのか」
といった迷いが生まれやすくなります。

その結果、本人への配慮を増やしたり、現場がその都度対応したりすることで解決しようとします。
しかし、もともとの仕事や期待が曖昧なままでは、対応を増やしても根本の迷いは残ります。
 

なぜ障害者雇用では、先に仕事を考えることが多いのか

 
ここで、一つ疑問が生まれます。
日本企業では、採用時点ですべての仕事内容を細かく決めないことも珍しくありません。
特にメンバーシップ型の雇用では、まず会社の一員として採用し、配属後にさまざまな仕事を経験しながら役割を広げていくことがあります。

それなのに、なぜ障害者雇用では、
「採用する前に仕事を整理しましょう」
「任せる業務を明確にしましょう」
と言われることが多いのでしょうか。

理由の一つは、人によっては得意なことと苦手なことの差が比較的大きく、苦手なことを無理にできるようにしようとすると、本人にも周囲にも負荷がかかりやすいからです。

たとえば、

  • 複数の仕事を同時に進めること
  • 頻繁に優先順位が変わること
  • 曖昧な指示から意図を読み取ること
  • 急な予定変更へ対応すること

などに負担を感じやすい人もいます。

その場合、「いろいろ経験しながら慣れてもらう」という方法よりも、仕事内容や役割をある程度明確にし、その人が力を発揮しやすい仕事との組み合わせを考えた方が、お互いに働きやすくなることがあります。

そのため、障害者雇用では、仕事内容を比較的明確にしたジョブ型に近い設計が使われることが多くなります。
 

ただし、「障害者雇用=ジョブ型」ではありません

 
ここは重要です。障害のある人が、すべて仕事を限定した働き方に向いているわけではありません。
幅広い業務を担える人もいますし、異動を経験しながら役割を広げていく人もいます。
一般の社員と同じように、メンバーシップ型の働き方で力を発揮する人もいます。

逆に、障害のない社員でも、
「専門性の高い一つの領域に集中した方が力を発揮する」
「業務範囲を明確にした方が働きやすい」
という人はいます。

つまり、障害があるからジョブ型、障害がないからメンバーシップ型、と分ける必要はありません。
見るべきなのは、その人と仕事との組み合わせです。
 

仕事を明確にすることと、仕事を固定することは違う

 
仕事を整理するというと、
「一度決めたら、その仕事しかさせてはいけないのではないか」
と思われることがあります。

しかし、仕事を明確にすることと、将来まで仕事を固定することは別です。

たとえば、
最初は担当する仕事を絞る。
慣れてきたら、少しずつ仕事を増やす。
得意な分野が見えてきたら、そちらへ役割を広げる。
本人の成長や組織の変化に合わせて、役割そのものを見直す。

こうした設計も可能です。

重要なのは、最初から何でも求めることでも、反対に「この仕事しかできない」と決めつけることでもありません。
今どのような役割を担ってもらうのかを明確にしながら、変化する余地も残しておく。
この二つを両立させることです。
 

「正しい採用方法」を一つに決めなくてもよい

 
ここまで考えると、採用についても一つの方法にこだわる必要はないことが見えてきます。

これまで、
「正社員なら、この働き方」
「この職種なら、この業務は全部できる必要がある」
「採用したら、将来的には異動できることが前提」
としてきた会社でも、本当にすべての人に同じ形が必要なのかは考えてみる余地があります。

たとえば、

  • 最初は業務範囲を限定して採用する
  • 得意な仕事を中心に役割をつくる
  • 仕事を経験しながら段階的に役割を広げる
  • 専門領域を深める働き方を認める
  • フルタイム以外の勤務時間を選べるようにする
  • 一人が担っていた仕事を複数の役割に分ける

など、さまざまな方法があります。

どれか一つが正解なのではありません。
会社が必要としている仕事と、その人が力を発揮しやすい働き方を見ながら、選択できることが重要です。
 

これまでと違う採用を試すことが、組織の選択肢を増やす

 
障害者雇用のために新しい採用方法や仕事の持ち方を考えると、
「障害者だけ特別な働き方をつくっている」ように見えることがあります。

しかし、そこで生まれた仕組みは、必ずしも障害者だけのものではありません。

たとえば、
育児をしながら働く人。
介護と仕事を両立する人。
病気の治療を続けながら働く人。
高い専門性を持ち、一つの領域に集中したい人。
フルタイムとは違う働き方を希望する人。

こうした社員にとっても、働き方や役割の選択肢が増えている組織は働きやすくなります。

つまり、障害者雇用をきっかけに、
「人を既存の仕事に合わせる」だけではなく、「人と仕事の組み合わせを考える」
という発想を持つことが、組織全体の働き方を柔軟にする可能性があります。

障害者雇用だけの特別な制度を増やすのではなく、会社が持っている「働き方の選択肢」を増やしていく。
そのように捉えることもできます。
 

仕事の入口が曖昧だと、その後の判断も曖昧になる

 
仕事や役割が整理されていないことの影響は、採用だけにとどまりません。

たとえば、期待する役割が曖昧であれば、
「どこまで配慮すればよいのか」
を判断することも難しくなります。

求める成果が曖昧なら、
「できているのか、できていないのか」
という評価も人によって変わります。

さらに、何を本人に求め、何を現場が支援し、何を人事が判断するのかも曖昧になっていきます。

つまり、仕事・入口の曖昧さは、その後の情報共有、判断基準、役割分担へ連鎖します。

問題が起きたあとに一つずつ対応する前に、入口の設計を見直す意味はここにあります。
 

まず、自社で考えてみたい3つのこと

 
詳細な職務記述書をいきなり作る必要はありません。

まずは、次の3つを言葉にできるか確認してみてください。

1.この仕事は、何のためにあるのか
作業内容だけでなく、その仕事が組織の中でどのような役割を果たしているのかを考えます。

2.その人に、何を期待しているのか
「この作業をする」だけではなく、どのような状態になれば役割を果たしていると考えるのかを整理します。
3.どこまで固定し、どこから変えられるのか
絶対に必要なことと、本人や状況に合わせて変更できることを分けて考えます。

ここが整理されると、採用だけでなく、配慮や育成、評価についても判断しやすくなります。

自社ではどうでしょうか

・採用する人に期待する役割を、言葉で説明できますか
・「この人にできる仕事」だけでなく、「会社として任せたい仕事」を整理できていますか
・仕事や働き方を、一つの形だけでなく複数の選択肢として考えていますか

一つでも答えにくいものがあれば、「誰を採るか」を考える前に、仕事・入口の設計を見直す余地があります。

 

まとめ|固定された採用から、選べる採用・仕事設計へ

 
仕事・入口の設計を見直す目的は、採用する前にすべての仕事内容を固定することではありません。
また、障害者雇用ではジョブ型が正しく、一般社員にはメンバーシップ型が正しい、という話でもありません。

大切なのは、会社が必要としている仕事と、その人が力を発揮しやすい働き方を組み合わせられるだけの選択肢を持つことです。

これまでとは違う採用方法を考えてみる。
最初は仕事を限定し、後から広げる。
専門性を深める働き方も認める。
勤務時間や役割の持ち方を柔軟にする。

そうした選択肢は、最初は障害者雇用をきっかけに生まれるかもしれません。

しかし、その柔軟さは、障害者だけのものではありません。
障害者雇用をきっかけに、会社がこれまで持っていなかった「働き方の選択肢」を増やしていく。
それも、仕事・入口の設計を見直す意味の一つです。

ほかの視点も確認する

仕事・役割・期待が整理できたら、次に見えてくる課題は会社によって異なります。
今回の診断結果だけでなく、気になる視点があればあわせて確認してみてください。

情報共有|必要な情報と判断理由が残っているか
情報はあるのに「なぜこの対応になったのか」が分からない場合は、情報共有の設計を見直してみてください。
→ 情報共有を見直す
判断基準|何を基準に決めるのか
同じ相談でも担当者や管理職によって答えが変わる場合は、判断するときの基準が関係しているかもしれません。
→ 判断基準を見直す
役割・権限|誰が、どこまで決めるのか
話し合っているのになかなか決まらない場合は、役割や判断する権限を確認してみてください。
→ 役割・権限を見直す