役割・権限を見直す|「誰が決めるか」を明確にする組織設計

役割・権限を見直す|「誰がやるか」だけでなく、「誰が決めるか」を整理する

診断結果|役割・権限を見直す段階です

今の状況では、さらに話し合いを増やすことよりも、「誰が何を判断するのか」「どこまで決めてよいのか」を整理することが、次の一歩になりそうです。

関係者が多くても、最終的に誰が決めるのかが曖昧であれば、判断はなかなか前へ進みません。

本人の話を聞いている。
現場の状況も確認している。
人事にも相談している。
必要に応じて、産業保健スタッフや外部の支援者からも意見を聞いている。

それでも、対応がなかなか決まらないことがあります。

そして最後に出てくるのが、
「で、これは誰が決めるんですか?」という言葉です。

関係者が足りないわけではありません。
話し合いが足りないとも限りません。
問題は、誰が情報を集め、誰が意見を出し、誰が調整し、最後に誰が決めるのか
が整理されていないことにあります。

役割分担というと、「誰が何を担当するか」を決めることだと思われがちです。
しかし、組織の判断を前へ進めるためには、それだけでは足りません。

「誰がやるか」だけでなく、「誰が決めるか」「どこまで決めてよいか」まで整理する。
それが、役割・権限を見直すということです。

このページでわかること

  • 関係者が多いのに判断が進まない理由
  • 「役割」と「権限」を分けて考える意味
  • 判断をすべて上位者へ集めることで起きる問題
  • 相談する人と、最終的に決める人の違い
  • 組織の中で判断を流すために確認したいこと

 

「みんなで考える」と、なぜ決まらなくなるのか

 
障害者雇用では、一つのケースに多くの人が関わることがあります。

本人。
直属の上司。
現場の管理職。
人事担当者。
人事責任者。
産業保健スタッフ。
場合によっては、外部の支援機関や専門家が関わることもあります。

多くの視点から考えること自体は悪いことではありません。
むしろ、一人だけで判断するより、必要な情報や意見を集めやすくなります。
しかし、関係者が増えるほど、別の問題が起こることがあります。

「それは人事で判断することではないでしょうか」
「現場で決めてもらえますか」
「一度、上長に確認した方がよいと思います」
「専門家の意見を聞いてからにしましょう」

こうして判断が、関係者の間を行ったり来たりします。
誰も何もしていないわけではありません。
むしろ、みんなが丁寧に関わっています。

それでも決まらないのは、
関係者がいることと、役割が整理されていることは同じではないからです。

誰が情報を集めるのか。
誰が意見を出すのか。
誰が調整するのか。
そして、最後に誰が決めるのか。

この違いを整理する必要があります。
 

「役割」と「権限」は同じではない

 
担当者が決まっているからといって、その人が判断できるとは限りません。

たとえば、人事担当者が本人と面談をします。
現場の状況も確認します。
必要な情報を整理して、関係者との調整も行います。

しかし最後に、「この内容は私では決められないので、部長に確認します」となることがあります。
この場合、人事担当者には「対応する役割」はありますが、「最終的に決める権限」はありません。
逆に、現場の管理職には、日々の仕事の割り振りや進め方を変更する権限があるかもしれません。

しかし、勤務条件の変更や配置転換については、人事部門の判断が必要になることもあります。
つまり、役割とは「何を担うのか」であり、権限とは「どこまで決められるのか」です。

この二つを分けて考えないと、「担当なのだから決めてください」と言われても決められない。
反対に、「これは上に確認しなければ」と、本来自分で決められることまで上位者へ上げる。
ということが起こります。
 

判断をすべて「上に上げる」と、組織は詰まりやすくなる

 
判断に迷ったとき、「念のため上司に確認する」という対応は珍しくありません。
重要な判断であれば、もちろん必要なことです。

しかし、迷うたびに、担当者から課長へ。
課長から部長へ。
部長から人事責任者へ。
さらに経営層へ。
と判断を上げていると、少数の人に判断が集中します。

判断できる人が忙しければ、対応は止まります。
その人が不在なら、決まりません。

さらに、この状態が続くと、現場や担当者側にも、
「自分で考えても、最後は上が決める」
という感覚が生まれます。
すると、判断できる人が増えるのではなく、むしろ少なくなっていきます。

重要なのは、すべての判断を上位者に集めることではありません。

どの判断までは現場でできるのか、どこから上位者へ上げるのか、その境界を整理することです。

権限を整理するとは、大きな権限を誰かに与えることではなく、
「ここまでは自分で決めてよい」という範囲を明確にすることでもあります。
 

「相談する人」と「決める人」は分けて考える

 
判断するときには、さまざまな人の意見を聞くことがあります。

本人の希望を聞く。
現場の状況を聞く。
産業保健スタッフから専門的な意見を聞く。
外部の支援者から、本人の特性や支援方法について意見を聞く。
こうした情報や意見は、判断するうえで重要です。

しかし、意見を出す人と、最終的に決める人は同じとは限りません。
たとえば、人が希望を伝えることと、その希望をそのまま会社の判断にすることは別です。
専門家から意見をもらうことと、会社としてどのような働き方や業務設計にするかを決めることも別です。

現場から、「この方法なら対応できる」という意見が出ても、
勤務条件など別の権限が関係する場合には、人事の判断が必要になることもあります。

大切なのは、「誰の意見を聞くか」と、
「誰が最終判断をするか」を混同しないことです。

相談する人が増えても、決める人が決まっていなければ、判断は前へ進みません。
 

情報を持っている人と、権限を持っている人が離れすぎていないか

 
もう一つ、組織で起こりやすいのが、
現場をよく知っている人と、決定権を持っている人が離れている状態です。

たとえば、直属の上司は本人の仕事ぶりをよく知っています。

どこで困っているのか。
どの方法なら仕事が進みやすいのか。
周囲への影響はどの程度あるのか。
日々の状況を最もよく見ています。
しかし、その上司にはほとんど判断権限がない。

一方で、最終的に判断する人事責任者は、
制度や会社全体の状況は分かっていても、
現場で何が起きているかを直接は見ていない。

こうした状態では、情報と権限の間に距離ができます。

だからこそ、「情報共有」が重要になります。
判断する人へ必要な情報が届いているか。

そして逆に、現場に任せられる判断まで、不必要に上位者へ集めていないか。
この両方を見る必要があります。
 

「責任者を一人決める」だけでは解決しない

 
役割・権限が曖昧なら、「では、責任者を一人決めましょう」と思うかもしれません。
しかし、障害者雇用で発生する判断は一種類ではありません。

たとえば、
日常の業務の進め方を変える。
仕事の分担を調整する。
配慮内容を見直す。
勤務時間について検討する。
配置を変更する。
人事評価を行う。
これらを、すべて同じ人が決める必要はありません。

むしろ、一人の責任者へ判断を集中させれば、
先ほどと同じように、その人が組織のボトルネックになる可能性があります。

必要なのは、「誰が責任者か」だけを決めることではなく、
判断するテーマごとに、誰がどこまで決めるのかを整理することです。

日常的な業務調整は現場管理職。
一定の範囲を超える配慮は人事と相談。
勤務条件に関わる判断は別の権限者。
というように、判断の内容によって役割が違うこともあります。

大切なのは、個別企業に共通する一つの正解を探すことではありません。

自社の組織や業務に合わせて、
「この判断は誰がするのか」
が分かる状態をつくることです。
 

まず整理したい3つのこと

 
すべての役割や権限を一度に細かく決める必要はありません。
まずは、実際に判断が止まりやすい場面について、次の3つを確認してみます。

1.誰が情報を集めるのか
本人への確認。
現場の状況確認。
過去の対応。
必要に応じた専門家からの意見。

判断するために必要な情報を、誰が集めるのかを明確にします。

2.誰が意見を出すのか
情報を集める人と、意見を出す人は同じとは限りません。

本人。
直属の上司。
人事。
専門職。

それぞれの立場から、何について意見を求めるのかを整理します。

3.誰が最終的に決めるのか
そして最後に、

「誰が決めるのか」

を確認します。

さらに重要なのは、

「その人はどこまで決めてよいのか」

まで明確にすることです。
これが分からなければ、担当者は毎回、

「これは自分で決めてよいのでしょうか」

と確認し続けることになります。

自社ではどうでしょうか

・困りごとが起きたとき、最終的に誰が判断するのか分かりますか
・担当者は「どこまで自分で決めてよいか」を理解していますか
・現場管理職と人事の判断範囲は整理されていますか
・意見を出す人と、最終判断をする人が混同されていませんか
・特定の人に判断が集中していませんか

答えにくいものがあれば、関係者を増やす前に、「誰が何を決めるのか」を見直す余地があります。

 

判断が止まるとき、人ではなく構造を見る

 
判断がなかなか進まないと、
「あの担当者は判断力がない」
「現場が責任を持とうとしない」
「人事が何も決めてくれない」
と、人の問題として捉えたくなることがあります。

もちろん、個人の知識や経験が影響することもあります。

しかし、
何を決めるべきなのかが曖昧。
誰が決めるのかが曖昧。
どこまで決めてよいのかが曖昧。
という状態であれば、判断できないのは自然なことです。

必要なのは、「もっと主体的に判断してください」と求めることだけではありません。
判断できるように、役割と権限を設計することです。

誰か一人の判断力に頼るのではなく、必要な情報と判断基準を使って、
適切な人が適切な範囲で決められる状態をつくる。
それが、判断が流れる組織につながります。
 

まとめ|「誰がやるか」だけでなく、「誰が決めるか」を整理する

 
障害者雇用では、多くの人が丁寧に関わっているのに、なかなか対応が決まらないことがあります。

そのとき、
「もっと話し合おう」
「専門家にも相談しよう」
「上司にも確認しよう」
と関係者を増やすだけでは、解決しないことがあります。

必要なのは、
誰が情報を集めるのか。
誰が意見を出すのか。
誰が調整するのか。
誰が最終的に決めるのか。
そして、どこまでその人が決めてよいのか。
を整理することです。

役割分担とは、作業を分けることだけではありません。
判断する責任と権限を、組織の中に配置することでもあります。

仕事が整理されている。
必要な情報が共有されている。
何を基準に考えるのかが分かっている。
そして、誰が決めるのかが分かっている。
ここまでそろって、判断は組織の中を流れやすくなります。

「誰が決めるのか分からない」という問題は、
障害者雇用だけで起きるものではありません。

障害者雇用という、個別の判断が多く求められる場面を通して、
もともと組織の中にあった役割や権限の曖昧さが見えてくることがあります。

だからこそ、個人の判断力だけに頼るのではなく、
誰が、何を、どこまで決めるのか。
そこまで含めて組織を設計していくことが大切です。

4つの視点をつなげて考える

判断が流れるためには、「役割・権限」だけを整えればよいわけではありません。
仕事、情報、判断基準、役割・権限は、それぞれ別の問題ではなく、組織の判断を支える一つのつながりとして考えることができます。

仕事・入口|何を任せ、何を期待するのか
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