障害者雇用では、障害者雇用促進法に基づき、障害者雇用率が定められています。しかし、障害者雇用を進めることが難しいと認められる業種については、障害者雇用率に対して、一定の除外率に相当する割合を雇用することが免除されるようにされてきました。
ここでは、障害者雇用の除外率制度とはどのようなものなのか、また、近年の除外率に対する考え方や現在の除外率について見ていきます。
障害者雇用の除外率制度について
障害者雇用促進法では、障害者の職業の安定をはかるために、法定雇用率が設定されています。現在の民間事業主の法定雇用率は、2.3%です。
しかし、業種によっては、障害会社雇用が難しい分野もあります。そのため、障害者の雇用が一般的に難しいと認められる業種では、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除する制度(障害者の雇用義務を軽減)が設けられています。
除外率の高い業種としては、次のようなものがあげられています。
・船員等による船舶運航等の事業 80%
・幼稚園、幼保連携型認定こども園 60%
・道路旅客運送業、小学校 55%
・石炭・亜炭鉱業 50%
・特別支援学校 45%
現在の除外率は、次の通りです。
出典:除外率設定業種及び除外率(厚生労働省)
障害者雇用除外率の計算方法
例えば、除外率 40%の業種に属する労働者数 1,000 人の事業所の場合について考えてみましょう。
除外率なし
除外率なしの場合には、1,000 人×2.3%=23 人となり、雇用義務数は23人となります。
除外率あり
除外率ありの場合には、 (1,000 人-400 人)×2.3%=13.8人となり、雇用義務数は13人となります。
除外率なしの場合と比べると、雇用義務は 23 人から13 人に軽減されることになります。
近年の除外率に対する考え方
障害者雇用の除外率制度については、ノーマライゼーションの観点から、平成14年法改正により、平成16年4月に廃止とされました。経過措置として、当分の間、除外率設定業種ごとに除外率を設定するとされていますが、廃止の方向で段階的に除外率を引き下げ、縮小することとされています。
このような経緯もあり、除外率は平成16年4月と平成22年7月に、それぞれ、一律に10ポイントの引下げを実施してきました。その経緯は、以下の表の通りです。
出典:除外率設定業種及び除外率(厚生労働省)
除外率設定業種の実雇用率推移について
除外率設定業種の実雇用率推移は、実雇用率を見ると、概ね上昇していることがわかります。これは、障害者雇用を進めていくことが社会的に認知されていることの影響や、企業ごとの努力のためと考えられます。
出典:除外率設定業種及び除外率(厚生労働省)
除外率設定業種の障害者雇用
除外率が設定されている業種でも障害者雇用は進んでいます。除外率が設定されている企業では、どのような障害者雇用が行われているのでしょうか。
Peach Aviation株式会社
Peach Aviationは 平成24(2012)年3月に就航したLCC (ローコストキャリア)です。もともと、航空運送事業会社として以前から国籍、性別、年齢、経歴、スキルなど、多様な人材が活躍していることもあり、ダイバーシティには力が注がれていました。
障害者社員の雇用については、専任部署である「ほなやろ課」のもとで、採用、育成、合理的配慮検討、業務の切り出しと調整、理解啓発研修の実施(社内・社外)、障害当事者教育、就労移行支援事業所職員への指導研修の実施などを担っているそうです。
専任部署の「ほなやろ課」に所属すると、業務は事務系・清掃系・他部門業務の3つに分類されており、他部門でシステム管理等の仕事をしているケースもあるそうです。
詳細はこちらから
障害者雇用の理念・ノウハウを全社的メリットに(Peach Aviation株式会社)
出典:障害者雇用リファレンスサービス(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)
学校法人青森山田学園
学校法人青森山田学園は、大学、高等学校、中学校、幼稚園、専門学校等を持つ総合教育機関で、平成30(2018)年4月には創立100周年を迎えています。障害者雇用については、障害のある職員の定年退職や担当者の異動、採用後の職場定着が進まなかった経緯がありましたが、地域の障害者就業・生活支援センターをはじめとしたいろいろな支援機関と連携しながら障害者雇用を進めてきました。
法人本部がある学内では、6人の方が雇用されており、うち2人は大学事務局の事務職員、4人は大学キャンパス内での清掃業務を担当しているそうです。
障害者雇用への取組は大学でも認知、理解されていて、学生や教職員からもあいさつや声がけがあり、仕事に対する評価を受けています。教育機関として「人を理解し、育成する」という方針が学園全体で理解、実践されていることが、障害者雇用を進める上でも役立っているようです。
詳細はこちらから
「人を育てる」から生まれた障害に配慮した雇用管理の取組(学校法人青森山田学園)
出典:障害者雇用リファレンスサービス(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)
動画の解説はこちらから
まとめ
障害者雇用の除外率について見てきました。除外率は、障害会社雇用が難しい業種に設定されているもので、除外率に相当する労働者数を控除する制度(障害者の雇用義務を軽減)が設けられています。
しかし、近年、ノーマライゼーションの方針に基づいて、この除外率は引き下げられ、廃止の方向に進んでいます。現在、除外率が設定されている業種でも、障害者雇用ができないかを検討していく必要がでてきていると言えるでしょう。
除外率が設定されており、障害者雇用が難しいとされている業種でも、障害者雇用にさまざまな工夫をしながら雇用している企業や法人はたくさんあります。雇用が難しいと感じるのであれば、「障害者雇用リファレンスサービス」(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)などを活用して、他の企業の事例などを知ることができます。
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