2027年7月24日更新
「障害者雇用の除外率とは、障害者を雇用しなくてもよい割合なのか」「自社の業種には何%が適用されるのか」「除外率が引き下げられると、必要な雇用人数はどう変わるのか」と疑問を感じている企業担当者も多いでしょう。
除外率制度は、障害者の雇用義務そのものをなくす制度ではありません。法定雇用障害者数を計算するときに、算定の基礎となる労働者数を、業種ごとに定められた割合で減らす仕組みです。
除外率制度は、障害者を雇用しなくてよい制度ではありません。対象となる業種では、除外率を反映して法定雇用障害者数を計算しますが、制度は廃止の方向で段階的に縮小されています。
- 障害者雇用の除外率制度の意味
- 制度が廃止された後も適用が続いている理由
- 現在の除外率設定業種と除外率
- 除外率を反映した法定雇用障害者数の計算方法
- 除外率の縮小に向けて企業が確認すべきこと
障害者雇用の除外率制度とは
障害者雇用促進法では、一定規模以上の企業に対し、法定雇用率以上の障害者を雇用することを義務づけています。一方で、業務の性質から、障害者の就業が一般的に困難と考えられてきた職務が相当程度含まれる業種もあります。
除外率制度は、このような業種について、法定雇用障害者数を算定するときに、一定割合の労働者数を控除する仕組みです。例えば、除外率が20%の業種では、常用労働者の20%に相当する人数を算定の基礎から控除し、残った労働者数に法定雇用率を掛けます。
障害のある社員や特定の職種の社員を、個別に雇用人数から除外する制度ではありません。法定雇用障害者数を計算する基礎となる労働者数を、業種ごとに定められた率で調整する制度です。
そのため、除外率が設定されているからといって、一定人数まで障害者を雇用しなくてよいわけではありません。対象業種に該当する場合も、除外率を反映して算定された人数以上の障害者を雇用する義務があります。
除外率制度は廃止されたのに、なぜ現在も適用されているのか
除外率制度は、ノーマライゼーションの考え方に基づき、2002年の障害者雇用促進法改正によって廃止されることが決まり、2004年4月に制度上は廃止されました。
ただし、除外率を直ちになくすと、対象業種の雇用義務が急激に増え、企業への影響が大きくなることが考えられました。そこで、経過措置として除外率を残し、段階的に引き下げながら縮小することになっています。
つまり、
- 除外率制度は廃止の方針が決まっている
- 現在は廃止に向けた経過措置として適用されている
- 除外率は段階的に引き下げられている
という状態です。
「すでに廃止された制度」と「現在も除外率が適用されている」という説明は、矛盾するものではありません。完全に廃止される時期は現時点で明確に示されていませんが、制度は縮小する方向にあります。
2025年4月に除外率が引き下げられた|30%は20%に変更
2025年4月1日から、すべての除外率設定業種で、除外率が一律10ポイント引き下げられました。
「10ポイント引き下げ」とは、例えば、除外率30%の業種が20%に、20%の業種が10%になるという意味です。これまで除外率が10%以下だった業種は、引き下げ後は除外率制度の対象外となりました。
除外率が引き下げられると、法定雇用障害者数を計算する基礎となる労働者数が増えます。そのため、企業が雇用しなければならない障害者数が増える場合があります。
さらに、2026年7月には、民間企業の法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられました。
除外率設定業種では、現在の除外率と法定雇用率2.7%の両方を反映し、自社が雇用する必要のある人数を確認することが必要です。
現在の除外率設定業種と除外率
2025年4月以降の除外率設定業種と除外率は、次のとおりです。
| 除外率 | 除外率設定業種 |
|---|---|
| 5% | 非鉄金属第一次製錬・精製業、貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く) |
| 10% | 建設業、鉄鋼業、道路貨物運送業、郵便業(信書便事業を含む) |
| 15% | 港湾運送業、警備業 |
| 20% | 鉄道業、医療業、高等教育機関、介護老人保健施設、介護医療院 |
| 25% | 林業(狩猟業を除く) |
| 30% | 金属鉱業、児童福祉事業 |
| 35% | 特別支援学校(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校を除く) |
| 40% | 石炭・亜炭鉱業 |
| 45% | 道路旅客運送業、小学校 |
| 50% | 幼稚園、幼保連携型認定こども園 |
| 70% | 船員等による船舶運航等の事業 |
除外率は、原則として会社全体へ一律に適用されるのではなく、除外率設定業種に該当する事業を行う事業所ごとに適用されます。
同じ企業の中に異なる事業を行う複数の事業所がある場合、事業所によって除外率の適用が異なることがあります。
業種名が似ていても、実際の事業内容や業種区分によって適用の判断が異なる場合があるため、自社が対象になるか分からない場合は、管轄のハローワークへ確認してください。
除外率を反映した法定雇用障害者数の計算方法
除外率が適用される事業所では、次の手順で法定雇用障害者数の算定基礎となる労働者数を計算します。
常用労働者数 × 除外率 = 除外率に相当する労働者数
常用労働者数 - 除外率に相当する労働者数 = 算定基礎となる労働者数
算定基礎となる労働者数 × 法定雇用率2.7% = 法定雇用障害者数
除外率に相当する労働者数を計算したときに1人未満の端数が生じる場合は、その端数を切り捨てます。
また、最後に法定雇用率を掛けて算出した法定雇用障害者数についても、1人未満の端数を切り捨てます。
常用労働者300人、除外率20%の場合
例えば、常用労働者が300人で、除外率20%が適用される場合は、次のように計算します。
300人 - 60人 = 240人
240人 × 2.7% = 6.48人
1人未満の端数を切り捨てるため、法定雇用障害者数は6人です。
除外率が適用されない場合は、
となり、法定雇用障害者数は8人となります。
実際の算定では、短時間労働者の人数や複数事業所の除外率なども関係します。自社の正確な人数は、障害者雇用状況報告書の記入方法を確認するか、管轄のハローワークへ相談してください。
除外率の引き下げで企業に起きること
除外率が引き下げられると、算定の基礎から控除できる労働者数が減ります。
そのため、企業では次のような影響が生じる可能性があります。
- 法定雇用障害者数の算定基礎となる労働者数が増える
- 雇用しなければならない障害者数が増える
- これまで法定雇用率を達成していた企業が未達成になる
- 採用計画や社内の雇用体制を見直す必要が生じる
ただし、実際に必要人数が何人増えるかは、企業の常用労働者数、短時間労働者数、適用される除外率、現在雇用している障害者数によって異なります。
まずは、現在の法定雇用率と除外率を使って、自社の必要人数を正確に確認することが必要です。
除外率がある業種では障害者雇用が難しいのか
除外率が設定されている業種には、安全性、資格、勤務形態、現場環境、緊急対応など、障害者雇用を進めるうえで確認すべき業種固有の条件があります。
しかし、除外率が設定されていることは、その業種に障害者が担える仕事がないことを意味するものではありません。一方で、「どの業種でも同じ方法で採用できる」「事務作業を集めれば雇用できる」と考えることも適切ではありません。
必要なのは、業種全体を見て雇用できるかどうかを判断するのではなく、自社の仕事を、業務、役割、判断範囲、働き方に分けて確認することです。
例えば、現場業務が中心の企業であっても、仕事の中には次のような異なる業務が含まれています。
- 作業前の準備や確認
- 記録やデータ入力
- 品質や安全に関する確認
- 在庫や備品の管理
- 書類の作成や整理
- 関係部署との連絡や調整
これらの業務をすべて障害者向けの仕事として切り出せばよいという意味ではありません。
どの業務を任せる必要があるのか、どのような成果を求めるのか、本人がどこまで判断するのか、周囲とどのように分担するのかをつなげて考える必要があります。
除外率の縮小に向けて企業が確認したい4つの視点
現在の必要人数を正確に確認しているか
過去の法定雇用率や除外率を前提にしたままでは、現在の必要人数とずれている可能性があります。
まず、2025年4月以降の除外率と、2026年7月以降の法定雇用率2.7%を反映して、法定雇用障害者数を確認する必要があります。
現場作業だけを見て雇用は難しいと判断していないか
業種の中心となる仕事だけを見て、「障害者雇用は難しい」と判断している場合があります。
しかし、実際には、一つの仕事が複数の業務や役割から構成されています。現場作業だけでなく、その前後にある準備、確認、記録、管理、調整まで含めて考えることができます。
仕事の進め方を見直す余地がないか
ITやAIの活用、機器の導入、作業手順の見直し、勤務時間の調整、業務の分担などにより、従来とは異なる仕事の担い方が可能になる場合があります。
ただし、単に作業を分解するだけでは仕事として成立しません。業務の目的、求める成果、仕事量、指示や確認の方法まで整理する必要があります。
採用後の判断や支援を現場だけに任せていないか
採用後の業務調整、安全上の判断、合理的配慮、周囲への説明が、配属先の管理職だけに集中すると、現場の負担が大きくなります。
人事、管理職、関係部署の役割を整理し、どのような場合に誰が判断するのかを決めておくことが重要です。
自社の状況を確認する
次の項目に当てはまるものがないか、確認してみてください。
- 現在の除外率と法定雇用率で必要人数を再計算していない
- 除外率があるため、障害者雇用は難しいと考えている
- 採用人数を先に決め、任せる仕事は採用後に探している
- 現場の中心業務以外の仕事や役割を十分に確認していない
- 障害者雇用を人事だけ、または配属現場だけで進めている
- 安全性や合理的配慮を判断する基準が決まっていない
- 除外率が今後さらに縮小した場合の対応方針がない
複数当てはまる場合、自社の仕事、役割、働き方、判断体制を見直すことで、新たな採用の可能性があります。
よくある質問
Q:除外率がある企業は、障害者を雇用しなくてもよいですか
除外率が設定されている企業にも、障害者を雇用する義務があります。
除外率制度は、法定雇用障害者数を計算するときに、算定の基礎となる労働者数を一定割合減らす制度です。雇用義務そのものを免除する制度ではありません。
Q:2025年4月に除外率はどのように変わりましたか
2025年4月1日から、すべての除外率設定業種で除外率が一律10ポイント引き下げられました。
例えば、従来30%だった業種は20%に、20%だった業種は10%になりました。従来の除外率が10%以下だった業種は、除外率制度の対象外になっています。
Q:自社が除外率設定業種に該当するか、どこで確認できますか
除外率は、原則として除外率設定業種に該当する事業を行う事業所ごとに適用されます。
自社の業種区分や適用の有無が分からない場合は、管轄のハローワークへ確認してください。業種名が似ていても、実際の事業内容によって判断が異なる場合があります。
Q:除外率制度は今後なくなるのでしょうか
除外率制度は、廃止の方向で段階的に引き下げ、縮小することとされています。
ただし、完全に廃止される具体的な時期は、現時点では明確に示されていません。企業は現在の制度に対応するとともに、今後さらに除外率が縮小する可能性も踏まえて、障害者雇用の進め方を検討する必要があります。
まとめ
除外率制度は、障害者を雇用しなくてよい制度ではありません。除外率設定業種では、法定雇用障害者数を計算するときに、業種ごとに定められた割合の労働者数を算定基礎から控除します。
除外率制度は2004年に制度上廃止されましたが、現在は経過措置として適用され、廃止の方向で段階的に縮小されています。2025年4月には、すべての除外率設定業種で除外率が10ポイント引き下げられました。
対象企業は、現在の除外率と法定雇用率2.7%を反映し、必要人数を確認することが必要です。
ただし、除外率の引き下げへの対応を、採用人数の確保だけで終わらせると、採用後に仕事が決まらない、管理職に調整が集中する、配慮の判断が曖昧になるといった問題が起こることがあります。
必要人数とともに、自社にどのような仕事があり、何を任せ、誰がどのように判断するのかを整理することが、継続的な障害者雇用につながります。
2025年4月以降の除外率設定業種と除外率、法定雇用率の引き上げを確認できます。
除外率制度の概要、これまでの引き下げ、現在の対象業種を確認できます。
障害者雇用率制度や除外率制度の基本的な考え方が掲載されています。
法定雇用率2.7%の対象企業、障害者の算定方法、未達成時の対応を解説しています。
採用後に仕事や役割が成立しない原因を、組織の進め方から整理しています。
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