2026年7月30日更新
休職中の社員が精神疾患の診断を受けている場合、「障害者雇用率にカウントできるのではないか」と考えることがあります。特に法定雇用率が未達成の企業では、休職者の取扱いを確認したい場面もあるでしょう。
しかし、うつ病や適応障害などの診断を受けていることや、精神疾患を理由に休職していることだけでは、障害者雇用率の算定対象にはなりません。
結論から言えば、有効な精神障害者保健福祉手帳を所持し、常用雇用労働者として計上される条件を満たしている場合には、休職中でも障害者雇用率の算定対象になり得ます。
ただし、雇用率にカウントできるかどうかと、復職できるか、どのような合理的配慮が必要かは、それぞれ別の判断です。
制度上の算定、健康状態に基づく復職判断、職場での配慮を混同しないことが重要です。
- 休職中の精神障害者を雇用率に算定できる条件
- 精神疾患の診断と精神障害者保健福祉手帳の違い
- 休職中でも算定対象になり得る理由
- 手帳の有効期限と更新時の注意点
- 雇用率算定、復職判断、合理的配慮の違い
休職中の精神障害者は雇用率にカウントできるのか
精神疾患によって休職している社員であっても、休職しているという理由だけで、障害者雇用率の算定対象から一律に除外されるわけではありません。
確認する主なポイントは、次の2点です。
- 精神障害者保健福祉手帳を所持しているか
- 常用雇用労働者として計上される状態にあるか
休職中でも雇用関係が継続し、常用雇用労働者として扱われる場合があります。
その社員が有効な精神障害者保健福祉手帳を所持し、必要な条件を満たしていれば、休職中でも雇用障害者として算定対象になり得ます。
ただし、休職制度の内容、雇用契約、所定労働時間などによって個別の確認が必要になる場合があります。判断に迷う場合は、企業内だけで決めず、管轄のハローワークや高齢・障害・求職者雇用支援機構へ確認してください。
精神疾患の診断だけでは算定できない
精神科や心療内科で診断を受けていることと、障害者雇用率制度上の精神障害者として算定できることは同じではありません。
例えば、次のような状況だけでは、精神障害者として雇用率に算定できません。
- うつ病や適応障害などの診断を受けている
- 精神疾患を理由に休職している
- 会社へ医師の診断書を提出している
- 主治医の意見書がある
- 通院や服薬を続けている
医師の診断書や主治医の意見書は、休職、復職、就業上の配慮を検討する際に使われることがあります。しかし、診断書や主治医の意見書だけでは、精神障害者として障害者雇用率に算定することはできません。
精神疾患があることと、雇用率上の算定対象になることは分けて確認する必要があります。
精神障害者保健福祉手帳の確認が必要
精神障害者を障害者雇用率に算定するためには、基本的に精神障害者保健福祉手帳を確認します。
主に確認する項目は、次のとおりです。
- 本人の氏名と生年月日
- 障害等級
- 手帳番号
- 交付日
- 有効期限
- 発行した自治体
確認は、障害者雇用状況報告や納付金申告などを担当する、人事部門の必要最小限の担当者が行います。また、本人に情報の利用目的を説明し、同意を得たうえで確認することが重要です。
手帳の確認方法や保存時の注意点については、次の記事で詳しく解説しています。
障害者雇用で手帳を確認する方法|身体・知的・精神障害別に解説
休職中でも算定対象になり得る理由
休職は、労働者が一定期間仕事を休んでいる状態ですが、直ちに雇用契約が終了するわけではありません。
就業規則に基づいて休職し、会社との雇用関係が継続している場合には、無給であっても常用雇用労働者として計上対象になることがあります。
そのため、
- 休職中である
- 給与が支給されていない
- 現在は実際に勤務していない
という事実だけで、雇用率の算定対象から除外されるとは限りません。
一方で、常用雇用労働者として計上できるかどうかは、雇用契約や所定労働時間なども踏まえて確認する必要があります。
また、障害者雇用状況報告は毎年6月1日時点、障害者雇用納付金等の申告は各月の状況を基に行うため、どの制度のために確認するのかによっても見方が異なります。
個別の算定については、最新の記入要領を確認し、必要に応じて公的機関へ問い合わせることが確実です。
手帳の有効期限と更新状況を確認する
精神障害者保健福祉手帳には有効期限があります。
以前に手帳を確認していても、算定時点で有効期限が切れていれば、そのまま以前の情報を使い続けることはできません。
人事部門では、次の点を確認します。
- 手帳が現在も有効期限内であるか
- 更新後の手帳を確認できているか
- 更新前後の有効期間を確認できるか
- 更新や返却があった場合の連絡先を本人へ伝えているか
- 変更後の情報を適切に記録しているか
ただし、法定雇用率を達成するために、会社が本人へ手帳の取得や更新を強く迫ることは適切ではありません。
会社は制度や利用目的を説明できますが、手帳を取得・更新するかどうかは本人の判断に関わることです。
雇用率への算定と復職できるかどうかは別の判断
休職中の精神障害者については、複数の判断が同時に行われるため、目的を整理する必要があります。
| 確認すること | 判断の目的 | 主な確認情報 |
|---|---|---|
| 雇用率に算定できるか | 制度上の算定・報告 | 手帳、雇用関係、所定労働時間など |
| 復職できるか | 健康状態と就業可能性の判断 | 本人の状態、主治医の意見、産業医の判断、仕事内容など |
| どのような配慮が必要か | 職場で安全かつ継続的に働くための運用 | 本人の困りごと、業務内容、職場環境、相談体制など |
精神障害者保健福祉手帳を所持しているからといって、直ちに復職できるとは限りません。反対に、休職中であることだけを理由に、今後も働けないと判断することも適切ではありません。
雇用率の算定は人事・労務上の制度判断、復職は健康状態と仕事との適合を確認する判断です。それぞれの目的、判断者、必要な情報を分けて整理する必要があります。
合理的配慮は手帳の有無だけで判断しない
合理的配慮の必要性や具体的な内容も、障害者雇用率への算定とは分けて考えます。
手帳を所持していないからといって、仕事上の支障や配慮の必要性がなくなるわけではありません。一方、手帳を所持していても、等級だけを見て具体的な配慮を決めることはできません。
職場での配慮は、本人の申し出や困りごとを確認し、仕事内容や職場環境を踏まえて検討します。
例えば、次のような内容です。
- 復職直後の勤務時間をどうするか
- 担当業務や仕事量をどう調整するか
- 通院時間をどのように確保するか
- 体調が変化したとき、誰へ相談するか
- 配慮をいつ、誰が見直すか
雇用率に算定できるかという制度上の確認だけで終わらず、復職後に現場が継続して対応できる仕組みも必要です。
社内の社員へ手帳の有無を確認したい場合
精神疾患で休職している社員がいるからといって、その社員を選び、障害者雇用率への算定を目的として手帳の所持を個別に尋ねることは慎重に考える必要があります。
採用後の社員から障害に関する情報を把握・確認する場合は、全社員への画一的な呼びかけ、利用目的の明示、本人の同意など、厚生労働省のガイドラインに沿った手続きが必要です。
詳しくは、次の記事で解説しています。
社内の障害者を把握・確認する方法|手帳情報とプライバシーへの配慮
休職中の社員を算定するときに確認したい6つの質問
次の項目を確認してみてください。
- 精神疾患の診断と、雇用率上の算定を混同していないか
- 精神障害者保健福祉手帳を本人の同意を得て確認しているか
- 手帳が算定時点で有効であることを確認しているか
- 休職中も常用雇用労働者として計上される状態にあるか
- 雇用率への算定と復職判断を分けているか
- 配慮や復職支援を、手帳の有無や等級だけで判断していないか
判断に迷う項目がある場合は、雇用率への算定、休職・復職、人事情報の管理を一つの担当者だけで判断せず、それぞれの役割と確認先を整理する必要があります。
休職中の社員を雇用率に算定できるか確認することは、制度上必要な対応です。
一方、障害者雇用を継続するためには、復職判断、業務調整、合理的配慮、人事と現場の役割分担も整理する必要があります。
障害者雇用ドットコムでは、制度対応だけでなく、社員が復職した後も現場で判断が流れる体制づくりを支援しています。
よくある質問
Q:うつ病の診断書があれば障害者雇用率にカウントできますか
診断書だけでは、精神障害者として障害者雇用率に算定することはできません。
精神障害者を算定する場合は、基本的に有効な精神障害者保健福祉手帳を確認する必要があります。
Q:精神障害者保健福祉手帳を持つ社員は、休職中でもカウントできますか
休職中でも、常用雇用労働者として計上される状態にあり、有効な精神障害者保健福祉手帳を確認できる場合は、算定対象になり得ます。
雇用契約や所定労働時間などによって個別の判断が必要になることがあるため、判断に迷う場合はハローワーク等へ確認してください。
Q:手帳の有効期限が切れている場合もカウントできますか
以前に手帳を確認していても、有効期限が切れた情報をそのまま使い続けることはできません。
更新状況と新しい有効期限を確認し、算定対象となる期間を適切に判断する必要があります。
Q:会社から社員へ手帳の取得や更新を勧めてもよいですか
手帳制度や利用目的について情報提供することはできます。
ただし、法定雇用率を達成するために、取得や更新を強く迫ったり、回答しないことによって不利益を与えたりすることは避けます。
Q:雇用率にカウントできない社員には合理的配慮をしなくてもよいですか
雇用率に算定できるかどうかだけで、合理的配慮の必要性を判断するものではありません。
本人の申し出、仕事上の支障、業務内容、職場環境などを踏まえて、必要な配慮を検討します。
まとめ
精神疾患の診断を受けていることや、精神疾患によって休職していることだけでは、障害者雇用率には算定できません。
精神障害者として算定する場合は、基本的に有効な精神障害者保健福祉手帳を確認します。また、休職中でも雇用関係が継続し、常用雇用労働者として計上される場合は、雇用障害者として算定対象になり得ます。
ただし、次の3つは別の判断です。
- 障害者雇用率に算定できるか
- 現在の健康状態で復職できるか
- 復職後にどのような合理的配慮が必要か
手帳を確認できたから復職できるわけではなく、雇用率に算定できないから配慮が不要になるわけでもありません。
制度上の算定、健康状態に基づく復職判断、現場での配慮を分けたうえで、それぞれの情報と判断を適切につなぐことが重要です。
休職者は無給であっても計上対象となる場合があり、精神障害者を雇用率に算定する場合は精神障害者保健福祉手帳の所持が必要です。主治医の意見書だけでは雇用率の算定対象になりません。
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