2026年7月30日更新
障害者雇用の手続きを進めるなかで、本人から障害者手帳の写しを提出してもらうことがあります。
しかし、実際に受け取ると、「どのページを確認すればよいのか」「身体障害、知的障害、精神障害で確認方法は違うのか」「有効期限や等級の変更は、どのように管理すればよいのか」と迷う人事担当者も少なくありません。
結論から言えば、障害者雇用率の算定や行政への報告に必要な確認は、基本的に障害者手帳で行います。
身体障害者は身体障害者手帳、知的障害者は療育手帳や愛の手帳など、精神障害者は精神障害者保健福祉手帳を確認します。
その際は、手帳の種類だけでなく、氏名、障害の程度、交付日、有効期限、再認定や再判定の記載など、制度上必要な項目を確認し、必要最小限の担当者が適切に管理することが重要です。
一方、手帳に書かれている情報だけでは、職場でどのような配慮が必要かまでは分かりません。手帳の確認と、職場で必要な配慮の確認は、目的を分けて考える必要があります。
- 障害者雇用で手帳を確認する理由
- 身体・知的・精神障害別に確認する手帳
- 手帳で確認する主な項目
- 有効期限、更新、等級変更を管理する方法
- 手帳の写しを保存するときの注意点
- 手帳情報と職場で必要な配慮情報の違い
障害者雇用で手帳を確認する理由
企業が障害者手帳を確認する主な目的は、障害者雇用率の算定や行政上の手続きを正確に行うことです。
例えば、次のような場面で確認が必要になります。
- 障害者雇用状況報告を行う
- 法定雇用率を算定する
- 障害者雇用納付金を申告する
- 障害者雇用調整金や報奨金を申請する
手帳を確認する目的は、会社が本人の障害を詳しく調べたり、できる仕事を判断したりすることではありません。制度上の対象となる障害者であることや、算定に必要な区分を確認するために行います。
そのため、利用目的を本人へ説明し、必要な情報だけを確認することが基本です。
手帳の確認と合理的配慮の確認は目的が異なる
障害者手帳の確認と、職場で必要な合理的配慮の確認は、同じものではありません。
手帳で確認するのは、主に次のような制度上の情報です。
- 障害者雇用率の算定対象となるか
- 身体・知的・精神のどの区分に該当するか
- 障害の程度や等級
- 手帳の有効期限や再認定の状況
一方、職場で必要になるのは、次のような仕事上の情報です。
- どのような指示方法が分かりやすいか
- 苦手になりやすい作業や職場環境は何か
- 勤務時間や休憩について必要な配慮はあるか
- 体調が変化したとき、どのように対応するか
- 困ったときの相談先をどうするか
手帳に記載された障害名や等級だけを見ても、本人に必要な配慮は判断できません。
反対に、職場で配慮を受けていることだけで、障害者雇用率の算定対象になるわけでもありません。
手帳情報は制度上の手続きのため、配慮情報は職場で仕事を進めるためのものとして、目的を分けて確認することが重要です。
身体障害者手帳で確認すること
身体障害者であることは、基本的に身体障害者手帳で確認します。
主に確認するのは、次の項目です。
- 本人の氏名と生年月日
- 障害の種類
- 障害等級
- 手帳の交付日
- 手帳番号
- 発行した自治体
- 再認定期日の記載
身体障害者手帳には、障害の状態に応じて再認定の期日が記載されている場合があります。
再認定によって等級が変わった場合や、新しい手帳が交付された場合は、変更後の内容を確認します。
企業が本人の状態を見て独自に等級を判断するものではありません。手帳に記載された内容を基に確認します。
知的障害者の手帳で確認すること
知的障害者であることは、基本的に療育手帳で確認します。
自治体によっては、次のような異なる名称が使われています。
- 療育手帳
- 愛の手帳
- 愛護手帳
- みどりの手帳
名称や障害の程度を示す表記は、自治体によって異なります。
主に確認するのは、次の項目です。
- 本人の氏名と生年月日
- 手帳の名称
- 障害の程度
- 手帳の交付日
- 手帳番号
- 発行した自治体
- 再判定年月などの記載
知的障害の程度を示す記号や表記は自治体ごとに異なるため、企業が記号だけを見て独自に判断しないようにします。
特に、重度知的障害者に該当するかどうかは雇用率の算定にも影響するため、手帳に記載された程度や再判定の内容を確認します。
精神障害者保健福祉手帳で確認すること
精神障害者であることは、精神障害者保健福祉手帳で確認します。
精神障害者保健福祉手帳では、主に次の項目を確認します。
- 本人の氏名と生年月日
- 障害等級
- 手帳の交付日
- 手帳番号
- 有効期限
- 発行した自治体
精神障害者保健福祉手帳には有効期限があります。有効期限が近づいている場合は、本人へ更新の意思を確認し、更新後は新しい手帳の内容を確認します。
更新前後の期間に空白が生じると、雇用率上の算定に影響する場合があります。そのため、有効期限だけでなく、更新後の手帳が確認できているかを管理することが必要です。
診断書や主治医の意見書は、職場での配慮や就業上の対応を検討する際に参考となる場合がありますが、障害者手帳の確認とは目的が異なります。
この記事では、制度上の基本的な確認として、精神障害者保健福祉手帳の確認に範囲を絞ります。
障害種別ごとの手帳を比較
| 障害種別 | 基本的に確認する手帳 | 特に確認すること |
|---|---|---|
| 身体障害 | 身体障害者手帳 | 障害の種類、等級、再認定期日 |
| 知的障害 | 療育手帳、愛の手帳など | 障害の程度、重度区分、再判定の記載 |
| 精神障害 | 精神障害者保健福祉手帳 | 等級、有効期限、更新状況 |
障害者雇用率の算定では、基本的に障害者手帳を確認します。
手帳がない、記載内容だけでは判断できないなど、例外的なケースについては、企業内で独自に判断せず、管轄のハローワークや高齢・障害・求職者雇用支援機構へ個別に確認してください。
手帳で確認する主な項目
手帳の形式や記載場所は、障害種別や自治体によって異なります。
手帳の表紙や顔写真のページだけでは、必要な情報をすべて確認できない場合があります。
少なくとも、次の項目が確認できるページを確認します。
- 氏名
- 生年月日
- 障害の種類
- 障害の程度または等級
- 手帳の交付日
- 手帳番号
- 有効期限
- 再認定期日または再判定年月
- 発行元
精神障害者保健福祉手帳の有効期限や、身体障害者手帳の再認定期日など、手帳の種類によって確認する項目は異なります。
すべての項目がすべての手帳に記載されているわけではないため、手帳の種類に応じて確認します。
有効期限・更新・等級変更を管理する
障害者手帳は、一度確認したら終わりではありません。
手帳の種類や本人の状況によっては、次のような変更が生じることがあります。
- 精神障害者保健福祉手帳の有効期限が到来する
- 身体障害者手帳の再認定が行われる
- 障害等級や障害の程度が変わる
- 新しい手帳が交付される
- 手帳が返却される
企業は、必要以上に頻繁な確認を行うのではなく、有効期限や再認定期日など、確認が必要となる時期を管理します。
本人に対しても、手帳の更新、返却、等級変更があった場合の連絡先をあらかじめ伝えておくとよいでしょう。変更があった場合は、変更後の情報だけでなく、いつ変更されたのかが分かるように記録します。
重度区分は手帳の記載を確認する
重度身体障害者や重度知的障害者に該当するかどうかは、障害者雇用率の算定に影響します。
ただし、企業が本人の様子や仕事内容から、重度かどうかを判断するものではありません。身体障害者手帳の等級や、療育手帳等に記載された障害の程度を確認します。
自治体によって療育手帳の名称や記号が異なるため、判断に迷う場合は、公的機関へ確認します。
また、実際の雇用率上のカウントは、重度区分だけでなく、週所定労働時間などによっても異なります。
詳しいカウント方法は、次の記事で解説しています。
障害者雇用率とは?2.7%の対象企業・計算方法・未達成時の対応
手帳の写しを保存するときの注意点
事業主は、雇用する障害者について、障害者であることを確認できる書類を備え付ける必要があります。
通常は手帳の内容を確認し、制度上必要な項目が分かるページの写しを保存します。
保存するときは、次の点に注意します。
- 必要な項目が確認できるページがそろっているか
- 文字や写真が不鮮明になっていないか
- 有効期限や再認定期日が確認できるか
- 更新前と更新後の経過を確認できるか
- 情報を閲覧できる担当者を必要最小限にしているか
- 保管場所やアクセス権限を決めているか
手帳には、障害に関する重要な個人情報が含まれています。一般の社員情報と同じ共有フォルダーに保存したり、配属先へ手帳の写しそのものを渡したりすることは避けます。
紙で保存する場合も、電子データで保存する場合も、閲覧できる人と利用目的を明確にすることが必要です。
制度対応と現場運用で扱う情報を分ける
手帳情報を適切に管理することは重要ですが、それだけで障害者雇用が円滑に進むわけではありません。
人事部門が手帳を確認していても、配属先に必要な配慮が伝わっていなければ、現場は適切に対応できません。
一方、現場で対応しやすくするために、手帳の写しや障害名、等級などを広く共有する必要もありません。
| 情報の目的 | 主に扱う情報 | 共有する範囲 |
|---|---|---|
| 雇用率算定・行政報告 | 手帳の種類、等級、有効期限など | 人事部門の必要最小限の担当者 |
| 職場での配慮・業務運用 | 指示方法、苦手な環境、相談先、対応方法など | 本人の同意を得たうえで、配属先の上司や必要な担当者 |
手帳情報は人事が適切に管理し、職場で必要な配慮情報は、本人と確認したうえで必要な人へ伝えます。
制度対応と現場運用を別々にするのではなく、どの情報を誰が管理し、誰へつなぐのかを整理しておくことが重要です。
社内の社員へ手帳の有無を確認したい場合
すでに働いている社員の中に、障害者手帳を持つ人がいるか確認したい場合は、障害があると思われる社員を選んで個別に尋ねることは避けます。
採用後の社員へ確認する場合には、全社員への画一的な呼びかけ、利用目的の明示、本人の同意など、別の手順が必要です。
詳しくは、次の記事で解説しています。
社内の障害者を把握・確認する方法|手帳情報とプライバシーへの配慮
手帳の確認体制を見直す7つの質問
次の項目を確認してみてください。
- 手帳を確認する利用目的を本人へ説明しているか
- 障害種別に応じた手帳を確認しているか
- 必要な項目が分かるページの写しを保存しているか
- 有効期限、再認定期日、再判定年月を管理しているか
- 等級や手帳の変更があった場合の連絡先を伝えているか
- 手帳情報を閲覧できる担当者を必要最小限にしているか
- 手帳情報と職場で必要な配慮情報を分けて扱っているか
複数の項目で判断に迷う場合は、手帳を集めることだけでなく、確認、保存、更新、情報共有までの流れを整理する必要があります。
手帳情報は、雇用率算定や行政報告のために必要な情報です。
一方、実際に仕事を進めるためには、本人に必要な配慮、人事と現場の役割分担、判断に迷ったときの相談先も整理する必要があります。
障害者雇用ドットコムでは、制度上の手続きと現場の運用を切り離さず、障害者雇用が継続できる体制づくりを支援しています。
よくある質問
Q:障害者手帳の原本を会社で保管する必要がありますか
通常は、原本で必要な内容を確認し、制度上必要な項目が分かるページの写しを保存します。
原本を会社で長期間預かるのではなく、確認後は本人へ返却します。
Q:手帳の表紙だけをコピーすればよいですか
表紙だけでは、氏名、等級、有効期限、再認定期日などの必要項目を確認できない場合があります。
必要な項目が確認できるすべてのページを確認し、文字が読める状態で保存します。
Q:精神障害者保健福祉手帳の有効期限が切れた場合はどうなりますか
有効期限が切れている期間は、雇用率上の算定に影響する可能性があります。
更新の有無を本人へ確認し、更新された場合は新しい手帳の有効期限を確認します。
Q:手帳の等級を見れば、必要な配慮が分かりますか
手帳の等級だけでは、本人に必要な配慮は分かりません。
具体的な配慮は、本人の仕事内容、職場環境、困りごとなどを確認しながら検討します。
まとめ
障害者雇用率の算定や行政報告に必要な確認は、基本的に障害者手帳で行います。
障害種別ごとに確認する手帳は、次のとおりです。
- 身体障害者は、身体障害者手帳
- 知的障害者は、療育手帳や愛の手帳など
- 精神障害者は、精神障害者保健福祉手帳
手帳を確認する際は、氏名、障害の程度、等級、交付日、有効期限、再認定や再判定の記載など、制度上必要な項目を確認します。
また、手帳の写しは適切に保存し、閲覧できる担当者を必要最小限にすることが重要です。
ただし、手帳を確認しただけでは、現場で必要な配慮は分かりません。
手帳情報は制度上の手続きのために管理し、職場で必要な配慮情報は、本人と確認したうえで必要な上司や担当者へつなぎます。
制度上の確認と現場運用の両方を整理することが、障害者雇用を継続していくための土台になります。
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