社内の障害者を把握・確認する方法|手帳情報とプライバシーへの配慮

社内の障害者雇用状況を確認する方法|手帳情報の把握とプライバシーへの配慮

2017年11月24日 | 障害者雇用に関する法律・制度

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

登録者限定レポート
「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年7月30日更新
障害者雇用状況を確認したところ、法定雇用率が未達成だった。そのようなときに、「社内に障害者手帳を持っている社員がいるかもしれない」と考える企業もあります。

しかし、上司の印象や健康状態から対象となりそうな社員を探し、個別に障害の有無や手帳の所持を尋ねることは適切ではありません。

障害に関する情報は、本人のプライバシーに深く関わる情報です。障害者雇用状況報告などのために確認する場合も、利用目的、確認方法、情報を扱う担当者を明確にする必要があります。

一方で、情報を人事部門だけに留め、配属先に必要な配慮が伝わっていなければ、現場は適切に対応できません。

結論から言えば、採用後に社内の障害者雇用状況を確認する場合は、原則として全社員に同じ方法で申告を呼びかけます。そのうえで、制度上の手続きに必要な手帳情報は必要最小限の担当者が管理し、職場で配慮を実行するために必要な情報は、本人の同意を得て必要な人へつなぐことが重要です。

この記事でわかること

  • 社内の障害者雇用状況を確認する目的
  • 採用後に全社員へ申告を呼びかける方法
  • 社員へ明示する必要がある事項
  • 個人を特定して照会できる場合と避けるべき場合
  • 手帳情報と職場で必要な配慮情報の違い
  • 制度対応と現場運用を両立させる情報共有の考え方

社内の障害者雇用状況を確認する目的

企業が障害に関する情報を把握・確認する主な目的には、次のようなものがあります。

  • 障害者雇用状況報告を行う
  • 障害者雇用率を正確に算定する
  • 障害者雇用納付金を申告する
  • 障害者雇用調整金や報奨金を申請する

一定規模以上の事業主には、毎年6月1日時点の障害者雇用状況を報告する義務があります。

そのため、企業は報告や申告に必要な範囲で、雇用している障害者の人数、障害種別、障害の程度、労働時間などを把握する必要があります。

ただし、制度上の報告に必要だからといって、社員の障害や病気に関する情報を自由に集めてよいわけではありません。

障害者雇用率の算定や行政への報告に必要な情報を確認することと、社員が職場で働くために必要な配慮を確認することは、目的が異なります。

まず、何のために情報を取得するのかを明確にし、その目的に必要な情報だけを適切な手順で確認することが必要です。

採用時と採用後では確認方法が異なる

障害に関する情報を企業が確認する場面は、大きく分けて次の2つです。

  • 採用時から本人が障害を明らかにしている場合
  • 採用後に社内の障害者雇用状況を確認する場合

障害者専用求人への応募など、本人が採用時から障害を明らかにしている場合は、採用決定後に利用目的を説明し、本人の同意を得たうえで必要な情報を確認します。

一方、採用後に確認する場合には、採用後に障害のある状態になった社員や、採用時には明らかにしていなかったものの、採用後に会社へ伝えることを希望する社員が含まれます。

この場合、障害があると思われる社員を探し出すのではなく、原則として全社員を対象に申告を呼びかけます。

採用後は全社員へ同じ方法で呼びかける

採用後に障害者手帳等の所持について申告を呼びかける場合は、雇用する社員全員に情報が届く、画一的な方法で行うことが原則です。

適切な呼びかけ方法

例えば、次のような方法があります。

  • 全社員が利用できる社内システムや掲示板に掲載する
  • 全社員へ一斉にメールを送る
  • 全社員へ社内報や案内文書を配布する
  • 全社員が定期的に確認する掲示板に掲示する
  • 全社員の自宅へ案内文書を郵送する

重要なのは、対象となりそうな人だけではなく、全社員に同じ情報が届くことです。

全社員がメールを利用できない企業であれば、メールだけでは十分ではありません。勤務形態や勤務地を踏まえ、全員に届く方法を組み合わせる必要があります。

避けるべき呼びかけ方法

次のような方法は避けます。

  • 障害のある社員がいそうな部署だけに案内する
  • 特定の社員や集団だけに文書を配布する
  • 一部の社員しか利用しない場所に案内を置く
  • 全社員が利用できないメールや社内システムだけで案内する

「障害がありそう」「通院しているようだ」といった推測をもとに対象者を絞ると、本人のプライバシーを侵害し、会社への不信感を生む可能性があります。

社員への呼びかけで明示する事項

全社員へ申告を呼びかける際は、少なくとも次の内容を明示します。

  • 回答は業務命令ではなく、本人の意思によるものであること
  • 障害者雇用状況報告、納付金の申告、調整金・報奨金の申請などの利用目的
  • 確認する個人情報の内容
  • 取得した情報を毎年度の報告等に利用する場合があること
  • 手帳の有効期限や障害等級の変更を確認する場合があること
  • 手帳の返却や等級変更があった場合の連絡先
  • 情報を取り扱う担当部署と問い合わせ先
  • 回答しなかったことによって不利益が生じないこと

申告した場合に利用できる公的支援や社内支援がある場合は、その内容もあわせて案内するとよいでしょう。

「会社が人数を把握したいから」という説明だけでは、本人は、自分の情報が何のために、どのように使われるのか分かりません。利用目的と利用方法を、本人が理解できる形で明確に説明する必要があります。

障害に関する情報は別の目的から流用しない

企業は、健康管理、休職手続き、税務手続きなど、さまざまな場面で社員の情報を取得しています。

しかし、別の目的で取得した情報を、そのまま障害者雇用状況報告に利用することは避ける必要があります。

例えば、次のような情報だけを根拠に、個別に障害者手帳の所持を尋ねることは適切ではありません。

  • 上司や同僚が受けた印象や職場内のうわさ
  • 上司が個人的な相談で聞いた健康情報
  • 健康診断や企業内診療所の結果
  • 健康保険組合のレセプト情報

所得税の障害者控除に関する書類、休職時の診断書、傷病手当金の手続きで把握した情報についても、個別照会の根拠として利用できるかは慎重に判断する必要があります。

税務、健康管理、休職支援、合理的配慮、障害者雇用状況報告では、それぞれ情報を利用する目的が異なります。

別の目的で取得した情報を障害者雇用状況報告等に利用する場合は、利用目的を改めて説明し、本人の同意を得るための手続きを別に行います。

個人を特定して照会できる場合は限定される

採用後の確認は全社員への呼びかけが原則ですが、限定的に個人を特定して確認できる場合があります。

例えば、本人が自発的に次のような申し出をした場合です。

  • 公的な職業リハビリテーションサービスを利用したい
  • 会社の障害者就労支援制度を利用したい
  • 障害者向けの社内支援の利用を希望している

本人が障害者向けの制度や支援の利用を希望し、そのための情報を自ら提供している場合は、本人を特定して手帳の所持等を確認できることがあります。

個別に照会するときは、次の事項を説明します。

  • なぜ本人へ個別に確認するのか
  • 何の情報を根拠として照会しているのか
  • 取得した情報を何に利用するのか
  • 回答は強制ではないこと

回答を拒否した社員へ繰り返し回答を求めたり、障害者手帳の取得を強要したりしてはいけません。

個別照会が適切か判断に迷う場合は、企業だけで判断せず、労働局、ハローワーク、社会保険労務士、弁護士などへ確認することが安全です。

情報の目的に応じて、担当者と共有範囲を分ける

障害に関する情報は、無条件に職場全体で共有する情報ではありません。ただし、すべての情報を人事部門だけに留めればよいわけでもありません。

大切なのは、何のために取得した情報なのかを整理し、目的に応じて扱う担当者と共有範囲を分けることです。

障害者雇用状況報告や納付金申告のために確認する手帳の有無、障害種別、等級、有効期限などの情報は、原則として、人事部門の中でも申告や報告を担当する必要最小限の者が、本人から直接確認します。

これらは、法定雇用率の算定や制度上の手続きに用いる情報であり、配属先の上司や同僚へそのまま共有する必要はありません。

一方、採用後に職場で必要な配慮を実行するためには、配属先の上司や支援担当者が、仕事上必要な情報を把握しておく必要があります。

例えば、次のような内容です。

  • 指示を出すときに配慮すべきこと
  • 本人が理解しやすい伝え方や確認方法
  • 苦手になりやすい作業や職場環境
  • 勤務時間、休憩、通院に関する配慮
  • 体調が変化したときに見られるサイン
  • 困ったときの相談先や対応方法
  • 本人が力を発揮しやすい仕事の進め方

こうした情報が配属先に伝わっていなければ、現場は必要な配慮を判断できません。

ただし、障害名、手帳の等級、診断内容、医療情報をすべて共有する必要があるわけではありません。

本人に、

  • 何のために共有するのか
  • どの情報を共有するのか
  • 誰まで共有するのか
  • 共有した情報をどのように利用するのか

を説明し、本人の意向と同意を確認したうえで、職場で配慮を実行するために必要な情報に絞って共有します。

制度対応と現場運用の両方から情報の流れを設計する

障害に関する情報を扱う際は、制度上の適切さだけでなく、採用後に現場が無理なく対応できるかという視点も必要です。

制度上の情報管理だけを重視して、必要な情報をすべて人事部門に留めると、配属先は何を配慮すればよいか判断できません。

その結果、必要以上に仕事を減らす、本人の状態を誤解する、問題が起きるたびに人事へ確認するなど、現場の運用が不安定になることがあります。

反対に、現場が対応しやすいようにするという理由で、障害名や手帳情報、診断内容などを広く共有すると、本人のプライバシーを損なう可能性があります。

重要なのは、制度上管理する情報と、職場で配慮を実行するために必要な情報を分けることです。

情報の目的 主に扱う情報 共有する範囲
雇用率算定・行政報告 手帳の有無、障害種別、等級、有効期限など 人事部門の必要最小限の担当者
職場での配慮・業務運用 必要な配慮、指示方法、相談先、対応方法など 本人の同意を得たうえで、配属先の上司や必要な担当者

制度上の情報管理と、現場での配慮を別々に考えるだけでは、障害者雇用はうまく回りません。

人事が制度上必要な情報を適切に管理する。

本人と、職場へ伝える情報の範囲を確認する。

配属先は、必要な配慮と対応方法を理解する。

現場で判断に迷ったときは、人事や支援担当者へ相談できるようにする。

採用後も、仕事や本人の状況に応じて配慮と情報共有の範囲を見直す。

このような情報と判断の流れをあらかじめ設計しておくことが、プライバシーを守りながら、実際に配慮が機能する職場をつくることにつながります。

障害者雇用率を満たすためだけの確認にしない

社内への申告呼びかけは、障害者雇用率を正確に算定するために必要な場合があります。

しかし、社員にとっては、自分の障害に関する情報を会社へ伝えることで、

  • 職場で不利益を受けないか
  • 上司や同僚へ必要以上に知られないか
  • 異動や評価に影響しないか
  • 情報が何に使われるのか

といった不安が生じることがあります。

申告を求めるだけでなく、申告した社員が安心して働ける体制があるかも確認する必要があります。

申告窓口、相談先、配慮を検討する手順、情報共有の範囲が曖昧なままでは、制度上の案内を出しても申告しにくい状態が続きます。

障害者雇用状況の把握は、人数を数える事務手続きであると同時に、企業の情報管理と、社員との信頼関係が問われる場面でもあります。

社内の確認体制を見直す8つの質問

次の項目を確認してみてください。

  • 障害に関する情報を確認する目的が明確になっているか
  • 全社員に同じ内容が届く周知方法になっているか
  • 回答が任意であることを明示しているか
  • 利用目的と取得する情報の範囲を説明しているか
  • 制度上の手帳情報を扱う担当者を必要最小限にしているか
  • 職場で必要な配慮事項を、本人の同意を得て配属先へ伝えているか
  • 人事と現場のどちらが何を判断するか決めているか
  • 採用後に配慮や情報共有の範囲を見直す仕組みがあるか

複数の項目で判断に迷う場合は、社員向けの周知文だけを作るのではなく、情報の取得、保管、共有、利用、更新、相談対応までの流れを整理する必要があります。

制度対応と現場運用が、別々になっていませんか

障害に関する情報の確認では、プライバシーを守ることと、現場が必要な配慮を実行できることの両方が必要です。

障害者雇用ドットコムでは、制度上の手続きだけでなく、人事と現場の役割分担、情報共有、配慮の判断方法まで含めて、障害者雇用が継続できる体制づくりを支援しています。

よくある質問

Q:法定雇用率が未達成なら、社員へ障害の有無を聞いてもよいですか

法定雇用率が未達成であることだけを理由に、障害があると思われる社員を選んで個別に尋ねることは避けます。

採用後に把握・確認する場合は、原則として全社員へ同じ方法で申告を呼びかけ、利用目的や回答が任意であることを明示します。

Q:全社員への申告の呼びかけは業務命令になりますか

回答を強制するものではありません。

障害者雇用状況報告等の利用目的に同意する場合に回答してもらうものであり、回答しなかったことによって不利益が生じないようにする必要があります。

Q:健康診断や診断書の情報から個別に確認してもよいですか

健康診断結果や企業内診療所の診療結果を根拠として、個人を特定し、障害者手帳の所持を尋ねることは適切ではありません。

診断書や税務手続きなど、別の目的で取得した情報についても、そのまま障害者雇用状況報告へ流用するのではなく、目的を区別して扱います。

Q:採用した社員の障害情報は、配属先へすべて伝える必要がありますか

障害名、手帳の等級、診断内容などを、配属先へすべて伝える必要はありません。一方で、配属先が配慮を実行するために必要な情報が何も伝わっていなければ、現場は適切に対応できません。

本人に共有の目的、内容、共有する相手を説明し、同意を得たうえで、指示方法、苦手な環境、相談先など、仕事上必要な情報に絞って伝えます。

Q:職場の全員に配慮事項を共有した方がよいですか

必ずしも職場全員へ共有する必要はありません。

上司、業務指導を行う担当者、相談対応者など、実際に配慮を行うために必要な人へ、必要な内容だけを共有します。

本人の意向を確認しないまま、障害に関する情報を広く共有することは避けます。

まとめ

採用後に社内の障害者雇用状況を確認する場合は、原則として全社員に対し、同じ方法で申告を呼びかけます。

その際は、次の点が重要です。

  • 回答は強制ではないことを明示する
  • 障害者雇用状況報告等の利用目的を説明する
  • 必要な情報だけを本人の同意を得て取得する
  • 障害があると思われる社員だけを対象にしない
  • 健康診断や上司の印象などを個別照会の根拠にしない
  • 制度上の手帳情報を扱う担当者を必要最小限にする
  • 配慮に必要な情報は、本人の同意を得て現場へつなぐ

障害に関する情報の取扱いでは、プライバシーを守ることと、現場が必要な配慮を実行できることの両方が必要です。

制度だけを守って情報が現場へ届かなければ、配慮は機能しません。

一方、現場の対応を優先して情報を広く共有すれば、本人との信頼関係を損なう可能性があります。

制度対応と現場運用を切り離さず、どの情報を誰が管理し、どの情報を誰へつなぐのかを設計することが、障害者雇用を継続していくための土台になります。

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