2026年8月31日更新
仕事や人間関係で同じようなつまずきが続いたり、インターネットで発達障害について調べて自分にも当てはまる部分が多いと感じたりすると、「もしかして、自分は発達障害なのではないか」と考えることがあります。
そのとき、「すぐ専門医を受診した方がよいのか」「どこへ相談すればよいのか」「病院では何を調べるのか」と迷う人もいるでしょう。
発達障害について気になることがあっても、インターネット上のチェックリストなどだけで自己判断することはできません。一方で、「発達障害かもしれないと思ったら、必ずすぐ専門医へ行かなければならない」という単純な話でもありません。
まず大切なのは、「発達障害かどうか」を急いで決めることではなく、今どのようなことで困っていて、生活や仕事にどのような影響が出ているのかを整理することです。
そのうえで、必要に応じて発達障害者支援センターなどの相談機関や、成人の発達障害の診療に対応している医療機関へ相談します。
この記事では、「大人の発達障害かもしれない」と感じたときの相談先、医療機関の探し方、受診前に整理しておきたいこと、診断を受けた後の考え方を整理します。
- 「発達障害かもしれない」と思ったとき、最初に整理したいこと
- 医療機関以外にも相談できる場所があること
- 発達障害の診療に対応する医療機関の探し方
- 受診前に準備しておくとよい情報や資料
- 診断を受けた後、仕事や生活をどう考えるか
「発達障害かもしれない」と思ったら、まず何をすればよい?
発達障害について調べていると、「自分にも当てはまる」と感じる特徴が見つかることがあります。
例えば、人とのやり取りで同じような行き違いが起きる、仕事の優先順位をつけることが難しい、予定変更への対応に強い負担を感じるなど、自分なりに気になることがあるかもしれません。ただし、こうした困りごとがあるからといって、それだけで発達障害と判断することはできません。
まず整理したいのは、診断名ではなく、現在の困りごとです。「発達障害かどうか知りたい」という問いを、「私は今、どのような場面で困っていて、それが生活や仕事にどの程度影響しているのか」という問いへ一度置き換えてみます。
困りごとが整理されると、医療機関へ相談する場合にも、相談機関を利用する場合にも、何について相談したいのかが伝わりやすくなります。
「発達障害かどうか」より、今困っていることを整理する
発達障害情報・支援センターでは、医療・相談機関を利用するときには、現在困っていることをあらかじめ整理してメモしておくことが案内されています。
例えば、「仕事が続かない」というだけではなく、どのような仕事のときに難しさが出るのかを見ると、困りごとが具体的になります。
決められた手順の仕事では問題が少ないものの、複数の仕事を同時に進めると混乱するのかもしれません。仕事内容そのものではなく、上司や同僚との認識のずれが続いている場合もあります。
「人間関係が苦手」という場合も、初対面の人との会話なのか、暗黙の了解を読み取る場面なのか、複数人で調整する場面なのかによって困り方は違います。
こうした状況を整理しておくことは、発達障害の診断を受けるためだけではありません。自分が何に困っているのかが分かると、診断の有無にかかわらず、必要な支援や仕事・生活の工夫を考えやすくなります。
発達障害と似た困りごとがあっても、自己判断では区別できない
大人になってから、「自分は発達障害ではないか」と気づく人もいます。一方で、仕事や生活で見られる困りごとの背景が、必ずしも発達障害とは限りません。
発達障害情報・支援センターでは、成人期の発達障害について、気分や不安などの精神的な不調、ひきこもり、職場不適応などをきっかけに医療機関を受診し、その後に発達特性が確認される場合があることも示されています。
また、発達障害と精神的な不調が重なっている場合もあります。そのため、「この特徴があるから発達障害」「この症状だから別の病気」と、自分で区別しようとする必要はありません。インターネットのチェックリストや体験談は、自分の困りごとを考えるきっかけにはなりますが、診断そのものではありません。
「何の病気なのか」を自分で決めるより、困りごとが続いている場合には、その状況を専門機関へ相談するという考え方が大切です。
相談先は医療機関だけではない
「発達障害かもしれない」と思うと、まず病院を探さなければならないと考えるかもしれません。しかし、相談先は医療機関だけではありません。
発達障害者支援センターは、発達障害のある本人や家族などからの相談に応じ、保健・医療・福祉・教育・労働などの関係機関と連携して支援を行う専門的な機関です。仕事で困っていることについて相談したり、地域で利用できる支援機関や医療機関について情報を得たりできる場合があります。
発達障害者支援センターの支援内容や利用方法は地域によって異なるため、まずは自分の住んでいる地域を担当するセンターへ確認します。また、地域の市区町村、精神保健福祉センターなど、内容によって別の相談窓口につながる場合もあります。
「診断を受けるかどうかまだ決めていないが、今の困りごとについて相談したい」という段階でも、相談できる場所があります。
医療機関を受診したい場合、どう探せばよい?
発達障害について医療機関へ相談したい場合には、成人の発達障害の診療に対応しているかを確認します。
すべての精神科や心療内科が、成人の発達障害の診療を同じように行っているわけではありません。そのため、受診を検討している医療機関のホームページを確認したり、予約時に成人の発達障害について相談できるか問い合わせたりするとよいでしょう。地域によっては、発達障害に対応する医療機関の情報を自治体が公開している場合もあります。
どこへ相談すればよいか分からない場合には、地域の発達障害者支援センターへ問い合わせる方法もあります。発達障害者支援センターでは、地域の相談機関や医療機関について情報提供を受けられる場合があります。
なお、発達障害を専門的に診る医療機関は予約まで時間がかかる場合もあります。「発達障害専門医」という名称だけにこだわるのではなく、自分が困っている内容について相談できる医療機関かどうかを確認することが重要です。
受診前に準備しておくとよいこと
発達障害の診断では、現在の状態だけでなく、これまでどのように生活してきたかという情報も参考になります。
発達障害情報・支援センターでは、医療・相談機関へ行く際に、現在困っていることを整理したメモや、学校・仕事などのおおまかな経過を準備しておくことが勧められています。例えば、学校を卒業した時期、これまでの就職先や勤続期間などを簡単な年表にしておく方法があります。
また、手元にあれば、母子手帳、小学校の通知表、過去の作文、幼少期の様子が分かる資料、以前受けた心理検査の結果などが参考になる場合があります。
ただし、これらの資料がすべてそろっていなければ受診できないという意味ではありません。大切なのは、完璧な資料を用意することではなく、現在の困りごとと、これまでの経過について分かる範囲で整理しておくことです。
母子手帳や通知表がなくても相談できる?
大人になってから発達障害について相談しようとしても、幼少期の資料が残っていないことがあります。親へ確認することが難しい人もいるでしょう。
発達障害の診断では発達歴が重要な情報になりますが、資料がないからといって、自分だけで「受診できない」と判断する必要はありません。
発達障害情報・支援センターでも、幼少期を知る養育者の同伴や過去の資料について「できれば」と案内されています。手元に資料がない場合には、そのことも含めて医療機関や相談機関へ伝えます。
医療機関によって診察の進め方は異なるため、必要なものについては予約時などに確認するとよいでしょう。
発達障害の診断では、何を確認するのか
発達障害の診断は、一つの検査結果だけで決めるものではありません。成人の場合にも、これまでの発達歴、現在見られる特徴、現在どのようなことで困っているのかなどを総合的に確認していきます。
発達障害情報・支援センターでは、詳細な発達歴を聞き取り、現在の発達・行動特性を確認することの重要性が示されています。また、必要に応じて質問紙や評価尺度などが用いられることもあります。
心理検査が行われる場合もありますが、すべての人が同じ検査を受けるわけではありません。「この検査を受ければ発達障害かどうかが分かる」という一つの検査があるわけではなく、医療機関が必要な情報を総合して判断します。
旧来の記事などでは、知能検査、脳波、MRIなど複数の検査を一定の順序で受けるように説明されている場合がありますが、すべての人が同じ検査を同じ流れで受けるものではありません。
どのような確認や検査が必要かは、本人の状況や医療機関によって異なります。
診断を受ければ、困りごとの答えがすべて分かるわけではない
「発達障害と診断されれば、なぜ仕事がうまくいかないのか分かる」「自分に向いている仕事も分かる」と期待することがあります。
診断によって、自分の特徴を理解しやすくなったり、必要な支援や治療について考えやすくなったりすることはあります。一方で、診断名だけから「この仕事が向いている」「この働き方なら大丈夫」と決まるわけではありません。
診断を受けたときの受け止め方も人によって異なります。これまで感じていた困りごとに説明がついたことで安心する人もいれば、診断結果をすぐには受け止めきれなかったり、「本当にそうなのだろうか」と戸惑ったりすることもあります。
診断結果について分からないことや納得できないことがある場合には、一人で結論を出すのではなく、診断した医師から説明を受け、分からない点を確認することが大切です。診断名だけを見るのではなく、自分のどのような特徴や困りごとを踏まえて今後の支援や対応を考えるのかを確認していきます。
同じASDやADHDでも、仕事への影響や得意・不得意、必要な支援は一人ひとり違います。また、同じ本人でも、仕事内容や環境が変われば困る場面が変わることがあります。
診断は「自分はこういう人だ」と決めるための答えではなく、今ある困りごとへの対応を考えるための情報の一つとして捉えるとよいでしょう。
仕事で困っている場合は、診断とは別に「仕事で何が起きているか」を見る
仕事がうまくいかないと、「発達障害だから仕事ができないのではないか」と考えてしまうことがあります。しかし、実際の仕事では、仕事内容、優先順位、指示の出され方、仕事量、周囲との役割分担など、さまざまな条件が関係しています。
例えば、決まった手順では仕事ができても、複数の依頼が重なると優先順位が分からなくなる場合があります。仕事内容そのものではなく、曖昧な指示や頻繁な予定変更が負担になっていることもあります。
診断を受けることと、仕事で何が起きているかを整理することは別です。診断がついても、職場で何を調整する必要があるのかは、実際の仕事との関係から考えます。
また、管理職や会社側が「この社員は発達障害ではないか」と感じている場合にも、会社が診断を推測するのではなく、まず仕事で起きている具体的な事実を確認することが重要です。
- 今、具体的にどのようなことで困っていますか
- その困りごとは、生活や仕事にどの程度影響していますか
- いつ頃から同じような困りごとがありましたか
- 診断を知りたいのか、今の困りごとについて相談したいのか整理できていますか
- 医療機関以外の相談先も確認しましたか
大人の発達障害の相談・受診についてよくある質問
Q:発達障害かもしれないと思ったら、すぐ病院へ行った方がよいですか
必ず「すぐ病院へ行く」という一つの方法だけではありません。生活や仕事で困りごとが続いている場合には、医療機関へ相談することが選択肢になります。
一方、どこへ相談すればよいか分からない場合には、地域の発達障害者支援センターなどへ相談する方法もあります。
まず現在の困りごとを整理し、自分が何について相談したいのかを考えてみるとよいでしょう。
Q:大人の発達障害は何科を受診すればよいですか
成人の発達障害については、精神科などで診療されることがありますが、すべての医療機関が成人の発達障害の診療に対応しているわけではありません。
受診前に、成人の発達障害について相談できるかを医療機関へ確認することをおすすめします。地域の発達障害者支援センターから医療機関の情報を得られる場合もあります。
Q:発達障害者支援センターでは診断してもらえますか
発達障害者支援センターは医療機関ではなく、発達障害に関する相談や支援、関係機関との連携などを行う機関です。
医学的な診断が必要な場合には医療機関につながります。センターの支援内容は地域によって異なるため、詳しくは地域を担当するセンターへ確認してください。
Q:母子手帳や通知表がなくても受診できますか
幼少期の様子が分かる資料は診断の参考になることがありますが、すべての資料がそろっていなければ相談できないという意味ではありません。
資料がない場合には、そのことを医療機関へ伝え、どのような情報が必要かを確認してください。自分で受診を諦める必要はありません。
Q:発達障害と診断されたら、会社に必ず伝えなければなりませんか
診断を受けることと、会社へどの情報を伝えるかは別の問題です。
仕事上の配慮や調整を希望する場合には、会社が必要な対応を検討できるよう、仕事への影響や必要な調整について一定の情報共有が必要になる場合があります。
一方で、診断名を含め、どの情報を誰まで共有する必要があるのかは状況によって異なります。診断を受けたという理由だけで、必要以上に情報を広げるのではなく、仕事上必要な情報は何かという視点から考えることが重要です。
まとめ|診断名を急ぐより、今の困りごとから相談を始める
「自分は発達障害かもしれない」と感じたとき、できるだけ早く診断名を知りたいと思うことがあります。
しかし、インターネット上の情報だけで自己診断することはできません。また、「発達障害かもしれないと思ったら必ず専門医へ行く」という一つの流れだけがあるわけでもありません。
まず、今どのようなことで困っているのか、それが生活や仕事にどのような影響を与えているのかを整理します。
必要に応じて、発達障害者支援センターなどの相談機関へ相談したり、成人の発達障害に対応する医療機関を受診したりすることができます。
受診する場合には、現在の困りごとやこれまでの生活・仕事の経過を整理しておくと、相談しやすくなります。過去の資料が手元にあれば参考になることもあります。
診断を受けた後も、診断名だけで仕事や生活の答えが決まるわけではありません。
診断は、自分を決めるための答えではなく、今ある困りごとを理解し、必要な支援や仕事・生活の工夫を考えるための情報の一つです。
「発達障害かどうか」だけに答えを求めるのではなく、今困っていることから相談を始めることで、自分に必要な次の選択肢を考えやすくなります。
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