発達障害の種類と特徴|ASD・ADHD・SLDの違い

発達障害の種類と特徴|ASD・ADHD・SLDの違いと職場での理解

2024年08月6日 | 障害別の特性・配慮

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「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年8月1日更新
「ASDとADHDは、何が違うのか」
「ミスが多い社員は、ADHDなのか」
「コミュニケーションのずれがあれば、ASDと考えてよいのか」
「発達障害の種類がわかれば、必要な配慮も決まるのか」

発達障害について調べると、ASD、ADHD、LD・SLDなど、さまざまな名称が出てきます。

それぞれの基本的な特徴を知ることは大切です。しかし、職場で見られる一つの行動だけから、社員の障害や特性を判断することはできません。

また、同じ診断名であっても、仕事で困る場面や必要な調整は人によって異なります。

最初に雇用のポイントをお伝えすると、発達障害にはASD、ADHD、SLDなどがありますが、種類を知ることは、社員を診断名で分類するためではありません。一般的な特徴を理解したうえで、どの業務で、どのような条件のときに、何が起き、仕事へどのような影響が出ているのかを確認することが重要です。

この記事でわかること

  • 発達障害の基本的な考え方
  • ASD・ADHD・SLDの特徴と違い
  • それぞれの特性が職場で表れやすい場面
  • 診断名だけで配慮や配置を決められない理由
  • 管理職や人事が確認したい仕事上の視点

発達障害とは何か

発達障害は、物事の受け取り方、注意の向け方、行動の切り替え、読み書きなどに特性が見られ、環境との組み合わせによって、生活や仕事に支障が生じることがある状態です。本人の性格や努力不足、親の育て方によって生じるものではありません。

発達障害にはさまざまな種類があります。この記事では、職場でも相談が多い次の3つを中心に整理します。

  • 自閉スペクトラム症(ASD)
  • 注意欠如・多動症(ADHD)
  • 限局性学習症(SLD)

ただし、同じ障害名であっても、特性の表れ方や仕事への影響は異なります。

複数の特性が重なっている場合もあり、「ASDならこの対応」「ADHDならこの仕事」と一律に決めることはできません。

ASD・ADHD・SLDの違いを一覧で見る

種類 特性が表れやすい領域 職場で困りごとが生じることがある場面
ASD 社会的なやりとり、情報の受け取り方、予定や手順、感覚 曖昧な指示、暗黙の前提、予定変更、対人調整、音や光などの刺激
ADHD 注意の調整、段取り、行動の切り替え、衝動性 複数業務、締切管理、作業の中断、優先順位、会議での発言
SLD 読む、書く、計算するなどの特定領域 長い文書、手書き、転記、数字や桁の確認、限られた時間での読み書き

この表は、診断のためのものではありません。

例えば、仕事の優先順位を決めにくい人が、必ずADHDであるとは限りません。曖昧な指示を理解しにくい人が、必ずASDであるとも限りません。

種類ごとの特徴は、職場で何を確認するかを考えるための基礎知識として捉えます。

ASDとは|職場で起きやすい情報のずれ

ASDは、自閉スペクトラム症と呼ばれます。

社会的なやりとりや情報の受け取り方、予定や手順へのこだわり、感覚の受け取り方などに特性が見られることがあります。

ASDで見られることがある特徴

  • 相手の意図や暗黙の前提を読み取りにくい
  • 曖昧な言葉を、具体的な行動へ置き換えにくい
  • 予定や手順の急な変更に負担を感じる
  • 表情や声の調子から、相手の意図を推測しにくい
  • 音、光、におい、人の動きなどを強く感じる
  • 特定の分野について、高い集中力や詳しい知識を示す

職場で困りごとが生じやすい場面

例えば、次のような場面です。

  • 「適当にまとめて」「早めに対応して」などの曖昧な指示
  • 説明されていない職場の暗黙ルール
  • 予定や優先順位の急な変更
  • 複数の人が異なる指示を出す状況
  • 電話、会話、人の出入りが多い環境
  • 遠回しな注意や、表情だけで意図を伝える場面

ただし、ASDのある人が全員、コミュニケーションを苦手としているわけではありません。

具体的な情報が示されると理解しやすい人、専門分野について正確に説明できる人、決められた手順を丁寧に継続できる人もいます。

重要なのは、「コミュニケーションができるか、できないか」ではなく、どのような情報の伝え方や職場条件で認識のずれが起きるのかを確認することです。

ADHDとは|集中力だけでは説明できない仕事上の難しさ

ADHDは、注意欠如・多動症と呼ばれます。

「集中できない障害」と説明されることがありますが、実際には、注意を向ける対象や持続時間の調整、段取り、行動の開始・停止・切り替えなどに負担が生じることがあります。

ADHDで見られることがある特徴

  • 複数の情報や予定を同時に管理しにくい
  • 作業中に別の刺激へ注意が移りやすい
  • 仕事を始める順番や優先順位を決めにくい
  • 思いついたことをすぐに発言・行動へ移すことがある
  • 作業の途中で別の仕事へ移り、元の仕事を忘れることがある
  • 興味のあることには、長時間集中する場合もある

職場で困りごとが生じやすい場面

  • 複数の締切を同時に管理する
  • 電話や声かけで作業が中断される
  • 優先順位が頻繁に変更される
  • 長時間、単調な確認作業を続ける
  • 作業途中の状態を記録せず、再開位置がわからなくなる
  • 会議中に思いついたことを、すぐ発言する

ADHDのある社員に対して、「もっと集中するように」と伝えるだけでは、問題が解決しにくい場合があります。

どの業務で、何がきっかけとなって作業が止まるのかを確認し、依頼の出し方、タスクの数、中断への対応、進捗確認などを整理する必要があります。

SLDとは|読む・書く・計算する一部に困難が表れる

SLDは、限局性学習症と呼ばれます。

行政資料などでは、学習障害やLDという名称が用いられることもあります。

全体的な理解力に問題があるということではなく、読む、書く、計算するなど、特定の領域に強い困難が表れることがあります。

職場で困りごとが生じやすい場面

  • 長い文章や細かなマニュアルを読む
  • 手書きで記録や報告書を作成する
  • 文書を読みながら、別の書類へ転記する
  • 数字や桁を正確に確認する
  • 口頭説明を聞きながら、同時にメモを取る
  • 限られた時間の中で読み書きを行う

SLDがあるから、文章を理解できない、文書業務ができない、計算を伴う仕事ができないと一律に判断することはできません。

パソコンや読み上げ機能を使う、資料の形式を変える、確認時間を確保するなど、使用する道具や情報の提示方法によって、負担が変わる場合があります。

発達障害の特徴は、重なって表れることがある

ASD、ADHD、SLDの特徴は、必ず一つだけ表れるわけではありません。

例えば、次のような場合があります。

  • ASDとADHDの両方の特性が見られる
  • 感覚刺激への負担と、注意の切り替えにくさが重なる
  • 段取りの難しさと、読み書きの困難が重なる
  • 発達障害の特性に加えて、不安や抑うつが生じている

同じ診断名であっても、特性の強さや組み合わせ、環境との関係は異なります。

そのため、職場が「ASDなのか、ADHDなのか」を判定しようとするのではなく、実際に仕事で起きていることを確認する必要があります。

診断名から、得意な仕事や必要な配慮は決められない

診断名がわかっても、次のことが自動的に決まるわけではありません。

  • できる仕事と、できない仕事
  • 本人に向いている職種や配置
  • コミュニケーション能力
  • 集中力や仕事の正確性
  • 必要な配慮
  • 本人に求める役割
  • 人事評価

例えば、同じASDであっても、曖昧な指示に困る人、急な変更に負担を感じる人、周囲の音に強い負担を感じる人では、必要な確認が異なります。

同じADHDであっても、締切管理、中断後の再開、優先順位、衝動的な発言など、どこに支障が生じるかは同じではありません。

「発達障害だから、この配慮をする」と決めるのではなく、本人の仕事上の状況を確認したうえで、対応を検討します。

職場では「障害名」より、実際の業務場面を確認する

管理職や人事が整理したいのは、診断名だけではありません。

次の4つの視点で確認します。

1.どの業務で起きているか

「仕事全般が苦手」と広く捉えず、具体的な業務へ分けます。

例えば、指示の理解、予定管理、報告、文書作成、顧客対応、会議参加などです。

2.どのような条件で起きるか

同じ業務でも、条件によって状況が変わることがあります。

  • 複数の仕事が重なったとき
  • 急な変更があったとき
  • 口頭指示だけで伝えられたとき
  • 作業中に何度も中断されたとき
  • 周囲の音や人の動きが多いとき

3.仕事へどのような影響があるか

  • ミスややり直しが増える
  • 締切に間に合わない
  • 作業が止まる
  • 本人と周囲の認識がずれる
  • 強い疲労が生じる
  • 周囲の確認や調整が増える

職場で確認できる事実を整理します。

4.どのような方法なら進めやすいか

本人が希望する方法を確認するとともに、会社側も実施可能な選択肢を整理します。

例えば、

  • 指示を具体的な言葉や記録で残す
  • 仕事の優先順位を明確にする
  • 同時に抱える仕事を整理する
  • 途中で確認する時点を決める
  • 作業環境や情報の提示方法を見直す

などが考えられます。

本人の希望をそのまますべて受け入れるというよりも、業務上の支障と会社として実施可能な方法を整理し、本人と確認していきます。

発達障害について職場で起きやすい4つの誤解

ASDのある人は、コミュニケーションができない

コミュニケーションができないのではなく、情報の受け取り方や、前提の理解に違いがある場合があります。

抽象的な指示や遠回しな表現では認識がずれても、具体的な言葉や記録によって伝わりやすくなることがあります。

ADHDのある人は、いつも集中できない

どの場面でも集中できないとは限りません。

業務内容、周囲の刺激、中断の多さ、締切や優先順位の示し方などによって、注意の向けやすさが変わる場合があります。

SLDのある人は、理解力が低い

読む、書く、計算する一部の領域に困難があっても、理解力や仕事全体の能力が低いとは限りません。

口頭説明、図、デジタルツールなど、別の方法では力を発揮できる場合があります。

診断名が同じなら、同じ配慮でよい

同じ診断名でも、仕事への影響や有効な方法は異なります。

診断名から対応を決めるのではなく、本人の状況と業務上の支障を確認します。

自社の理解を確認する7つの質問

次の項目を確認してください。

  • 発達障害の種類を、社員を分類するために使っていないか
  • 一つの行動だけで、ASDやADHDだと推測していないか
  • 診断名から、できる仕事・できない仕事を決めていないか
  • 障害名ではなく、具体的な業務場面を確認しているか
  • 同じ診断名でも、特性の表れ方が異なることを理解しているか
  • 本人の希望と、会社が実施する方法を分けて考えているか
  • 管理職だけで判断せず、人事や必要な役割へ共有できているか

複数の項目で答えに迷う場合、発達障害についての知識だけでなく、職場での確認と判断の流れを整理する必要があります。

よくある質問

Q:発達障害は、ASD・ADHD・SLDの3種類だけですか

発達障害には、ASD、ADHD、SLD以外にも、発達性協調運動症、チック症、吃音など、さまざまなものがあります。

この記事では、職場でも相談が多いASD、ADHD、SLDを中心に説明しています。

Q:ASDとADHDの両方の特徴が見られることはありますか

あります。ASDとADHDの両方の特徴が見られる場合や、読み書きの困難、不安、抑うつなど、ほかの問題が重なっている場合もあります。

職場では、どの診断名に当てはまるかを判断するのではなく、実際の仕事への影響を確認します。

Q:LDとSLDは何が違うのですか

日本の行政や教育分野では、学習障害を示すLDという名称が広く使われてきました。

一方、医療分野では、読む、書く、計算するなどの特定領域に困難が表れる状態を、限局性学習症・SLDと呼ぶことがあります。

使われる名称は異なることがありますが、一部の読み書きや計算の困難だけで、本人の理解力全体を判断しないことが重要です。

Q:診断名がわかれば、本人に向いている仕事もわかりますか

診断名だけで、本人に向いている仕事や配置を決めることはできません。

本人の経験、得意なこと、苦手な場面、仕事への影響、職場環境などを確認する必要があります。

Q:会社が社員に、発達障害かどうかを確認してもよいですか

職場でミスや認識のずれが見られることだけを理由に、「発達障害ではありませんか」と確認することは適切ではありません。

管理職は、職場で起きている具体的な事実と業務への影響を本人へ伝え、仕事を進めるうえで困っていることがないかを確認します。

障害や健康に関する情報は、人事などの適切な担当者と連携し、必要な範囲で取り扱います。

まとめ

発達障害には、ASD、ADHD、SLDなど、さまざまな種類があります。

一般的な特徴を理解することは、本人の行動を診断名で説明するためではありません。仕事で起きている問題を本人の努力不足だけにせず、どのような情報の受け取り方や環境条件が関係しているのかを考えるための基礎知識です。

同じ診断名であっても、特性の表れ方や仕事への影響は異なります。また、複数の特性や別の問題が重なっている場合もあります。

そのため、診断名から配慮、配置、評価を決めるのではなく、

  • どの業務で起きているか
  • どのような条件で起きるか
  • 仕事へどのような影響があるか
  • どの方法なら進めやすいか

を整理することが重要です。

本人の希望を確認しながら、会社側も実施可能な方法を整理し、必要に応じて管理職、人事、障害者雇用担当などが役割を分けて検討します。

発達障害の種類を知ることを、社員を分類するためではなく、職場で確認すべきことを整理する出発点にすることが大切です。

発達障害の知識を、職場で使える判断軸へ変えませんか
ASD、ADHDなどの特徴を知っていても、実際の職場では「本人へ何を確認するのか」「どこまで管理職が判断するのか」に迷うことがあります。
必要なのは、診断名から対応を決めることではなく、職場で起きている事実、仕事への影響、本人の意向、会社として実施可能な方法を整理することです。
「違いを活かすマネジメント研修【導入版】」では、発達障害を含む多様な社員への対応を、管理職個人の経験ではなく、組織で共有できる判断の視点として学びます。

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