発達障害かもしれない社員への対応|管理職が確認したいこと

「発達障害かも」と感じる社員への職場対応|診断を求める前に企業が確認したいこと

2020年06月24日 | よくある悩みと対応ヒント

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

登録者限定レポート
「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年8月31日更新

部下や社員と仕事をしていて、「同じことを何度伝えても繰り返す」「周囲とのコミュニケーションでトラブルが多い」「優先順位をつけることが難しいように見える」といった場面が続くと、「もしかして発達障害なのではないか」と考えることがあります。

インターネットで発達障害の特徴を調べると、本人の言動と当てはまるように見えることもあるでしょう。

しかし、職場で必要なのは、その社員が発達障害かどうかを推測することではありません。

会社が確認する必要があるのは、「発達障害かどうか」ではなく、実際の仕事で何が起きていて、どのような支障が生じているのかです。

仕事の基準が伝わっていないのか、複数の指示が重なっているのか、本人と管理職で完成イメージが違うのか、仕事内容そのものに無理があるのか。まず職場で確認できる事実から整理することで、診断名が分からなくても対応できることはあります。

この記事では、「発達障害かもしれない」と感じる社員がいるときに、企業や管理職がどのように考え、何を確認すればよいのかを整理します。

この記事でわかること
  • 「発達障害かも」と感じたとき、最初に確認したいこと
  • 診断名ではなく、仕事で起きている事実を見る理由
  • 本人との面談で、どのように仕事の問題を伝えるか
  • 診断がなくても職場で見直せること
  • 管理職だけで対応を抱えないための考え方

「発達障害かも」と感じても、会社が診断する必要はない

社員の行動に気になる点が続くと、管理職は理由を知りたくなります。

「なぜ何度説明しても同じことが起きるのか」「なぜ周囲とこれほど認識がずれるのか」が分からない状態は、管理する側にとっても負担になるからです。

その理由を説明してくれそうな言葉として、「発達障害」が浮かぶことがあります。

ただし、職場で見えている一部の行動だけから、その人に発達障害があるかどうかを判断することはできません。

また、会社が知りたい本来の答えは、診断名ではないはずです。

仕事が期限どおりに進まないのであれば、確認したいのは「発達障害だからなのか」ではなく、どの工程で止まっているのかです。周囲とのトラブルが起きているのであれば、問題となった具体的な言動と、それによって仕事にどのような影響が出たのかを確認する必要があります。

「この人は発達障害かもしれない」という仮説より先に、「仕事で何が起きているのか」という事実を見ることが、職場対応の出発点です。

診断名ではなく「仕事で起きていること」に分解する

例えば、「空気が読めない」「こだわりが強い」「コミュニケーションが苦手」といった表現では、職場として何を変えればよいのかが分かりません。

もう少し具体的に見ていきます。

会議で相手の説明が終わる前に発言することが続いているのか、顧客から依頼された範囲を超えて修正を加えてしまうのか、優先順位が変わったときに以前の仕事をそのまま続けてしまうのか。

こうして行動と仕事への影響へ分けると、必要な対応も考えやすくなります。

例えば、優先順位の変更が伝わっていないのであれば、変更時の伝え方を見直すことができます。完成基準がずれているのであれば、見本や期限、確認ポイントを明確にすることができます。

高齢・障害・求職者雇用支援機構の発達障害者雇用マニュアルでも、抽象的な作業指示、報告・連絡・相談、感覚面の影響など、実際の仕事上の場面から支援方法を考える事例が紹介されています。

発達障害の特徴に本人を当てはめるのではなく、具体的な仕事の場面へ分解することが重要です。

本人だけでなく、仕事の出し方にも原因がないか確認する

仕事がうまく進まないと、本人の能力や特性に原因を求めやすくなります。しかし、同じ問題が他の社員にも起きるような仕事の渡し方になっていないかも確認する必要があります。

例えば、「なるべく早く」「状況を見ながら」「いい感じにまとめてください」という指示では、期限や完成基準が明確ではありません。

また、複数の管理職から別々の依頼が入り、誰の仕事を優先するのか決まっていなければ、自分で優先順位を判断する負荷が大きくなります。

本人に発達障害があるかどうかにかかわらず、仕事の基準や指示系統が曖昧であれば、仕事は進みにくくなります。

一方で、仕事の基準を明確にしても同じ問題が続くこともあります。その場合には、どの場面で難しさが残っているのかを改めて確認します。

本人か職場か、どちらか一方を原因と決めるのではなく、「本人と仕事の組み合わせ」で何が起きているのかを見ることが大切です。

本人との面談で「発達障害では?」から話を始めない

管理職が「発達障害かもしれない」と感じていても、本人との面談でいきなり「発達障害ではありませんか」と伝える必要はありません。

話し合うべきなのは、まず仕事上起きていることです。

例えば、何度注意しても締切が守られないのであれば、「最近、3件の業務で期限を過ぎています」と事実を確認します。

そのうえで、期限を把握できていなかったのか、複数の業務が重なったのか、途中で分からなくなったのか、本人がどのように状況を捉えているのかを確認します。

周囲とのコミュニケーションで問題が起きている場合も、「コミュニケーション能力に問題がある」と評価するのではなく、実際に起きた場面と仕事への影響を伝えます。

この方法であれば、本人が発達障害であってもなくても、仕事上必要な話し合いができます。

本人が「困っていない」場合でも、仕事上の問題は話し合える

周囲は困っているのに、本人には困っている様子がないこともあります。この場合、「まず本人に自分の課題を認識してもらう必要がある」と考えると、本人の認識や性格の問題に焦点が移りやすくなります。

しかし、本人が発達障害を自覚しているかどうかと、会社として仕事上必要な指導を行うことは別の話です。

例えば、顧客への対応で問題が続いているのであれば、会社として求める対応基準を伝える必要があります。期限を守る必要がある仕事なら、期限管理について確認する必要があります。

本人が「自分は困っていません」と考えていたとしても、業務上の影響が出ているのであれば、その事実について話し合うことはできます。

本人に「発達障害だと気づいてもらう」ことを目的にするのではなく、仕事を進めるために何を変える必要があるのかを共有することが重要です。

診断名が分からなくても、職場で見直せることはある

「診断がなければ、会社として何もできない」と考える必要はありません。

仕事の期限を具体的にする、完成した状態を共有する、指示が重複しないようにする、優先順位を明確にする、途中の確認ポイントを設定するといった工夫は、診断名が分からなくても検討できます。

本人との面談で、「口頭だけだと確認しにくいので、チャットでも残してほしい」「急な変更があると優先順位が分からなくなる」といった具体的な困りごとが分かることもあります。

その場合には、その方法が仕事上可能か、実際に効果があるかを確認しながら調整できます。

ただし、「発達障害の人には文字で指示する」「複数業務を任せない」と一律に決める必要はありません。

診断名に対応した配慮を選ぶのではなく、仕事上の支障と必要な調整を一つずつ確認します。

注意や指導を避ける必要はない

「発達障害かもしれない」と考えると、注意してよいのか迷う管理職もいます。しかし、業務上必要な基準や改善点を伝えることまで避ける必要はありません。大切なのは、診断名や人格ではなく、仕事上の行動を伝えることです。

「協調性がない」「普通は分かる」「社会人としておかしい」といった評価ではなく、「会議で相手が説明している途中に発言が重なった」「確認せず資料を変更したため、他の担当者がどれが最新版か判断できなくなった」など、具体的に伝えます。

そのうえで、次に期待する行動も示します。配慮することと、仕事の基準を伝えることは対立しません。本人に必要な調整を考えながら、組織として必要な行動や成果も共有することがマネジメントです。

「受診して診断をつけてもらうこと」を職場対応のゴールにしない

職場で対応に困ると、「診断がつけば対応方法が分かるのではないか」と考えることがあります。

しかし、診断がついたとしても、「この仕事をどこまで任せるか」「誰が指示を出すか」「どこまで調整するか」といった会社の判断が自動的に決まるわけではありません。

また、周囲が発達障害を疑っていることだけを理由に、本人へ診断を求めることを職場対応の中心にするのは適切ではありません。

本人自身が仕事や生活上の困難を感じ、専門的な相談を希望している場合には、必要に応じて医療や相談機関について情報提供することは考えられます。

一方、睡眠や体調、精神的な不調など健康面への心配がある場合には、「発達障害ではないか」という推測ではなく、健康上の相談として産業保健スタッフや社内の相談窓口へつなぐ方法もあります。

受診の有無にかかわらず、会社は職場で起きている仕事上の問題を整理し、必要な対応を考える必要があります。

「発達障害かも」という判断を、管理職一人で抱えない

管理職が長期間対応していると、「自分の指導方法が悪いのか」「本人に問題があるのか」と迷い続けることがあります。

こうした状態になったとき、必要なのは管理職が発達障害についてさらに詳しくなり、診断のような判断をすることではありません。

どのような事実が起きているのか、これまで何を伝えたのか、どのような調整を行ったのか、それでも何が続いているのかを整理し、人事などと共有します。健康面の問題が考えられる場合には、産業保健との連携が必要になることもあります。

また、仕事の配置や評価、役割変更など会社としての判断が必要になる場合には、現場管理職だけで決めるのではなく、誰がどこまで判断するのかを明確にする必要があります。

「発達障害かどうか」を一人で考え続けるのではなく、「会社として何を判断する必要があるのか」へ問いを変えることが重要です。

診断が分かった後も、仕事を見る基本は変わらない

その後、本人から発達障害の診断があることを伝えられたり、本人自身が医療機関へ相談して診断につながったりする場合もあります。

その場合でも、診断名だけで対応を決めるわけではありません。同じASDやADHDでも、仕事への影響や必要な調整は一人ひとり異なります。また、同じ本人でも、仕事内容や職場環境が変われば、困る場面が変わることがあります。

厚生労働省の発達障害者支援施策でも、発達障害にはASD、学習障害、ADHDなど複数の領域が含まれることが示されています。

診断名は本人を理解するための情報の一つですが、会社に必要なのは、その情報を実際の仕事と結びつけて考えることです。

「発達障害かも」と感じたとき、自社ではどうでしょうか
  • 診断名ではなく、仕事で起きている具体的な事実を整理していますか
  • 本人だけでなく、仕事の基準や指示の出し方も確認していますか
  • 本人との面談で、性格や障害ではなく仕事への影響を伝えていますか
  • 管理職一人に対応や判断が集中していませんか
  • 受診の有無とは別に、会社として必要な判断を整理していますか
複数の項目で迷う場合は、「本人をどう変えるか」ではなく、「仕事・情報・判断・役割のどこを確認する必要があるか」から整理してみるとよいでしょう。
「この人への対応」だけでなく、管理職が判断できる職場へ
「何度伝えても変わらない」「どこまで注意してよいのか分からない」「発達障害かもしれないが、本人にはどう話せばよいのか」といった問題は、管理職個人の経験だけでは判断しにくいことがあります。
チームを動かすマネジメント研修では、障害者雇用のケースも含め、多様なメンバーが働く職場で、管理職が何を事実として確認し、どこまで現場で判断し、どの段階から人事や専門職と連携するのかを整理します。個人の「接し方」だけではなく、チームとして判断できる状態をつくることを目指します。

「発達障害かも」と感じる社員への対応でよくある質問

Q:「あなたは発達障害ではないですか」と本人に伝えてもよいですか

管理職が職場で見えている行動だけから発達障害かどうかを判断することはできません。そのため、障害名を推測して本人へ伝えることから話を始めるのではなく、まず仕事上起きている具体的な事実と、その影響について話し合います。

本人自身が困難を感じていて相談を希望する場合には、必要に応じて社内の相談窓口や産業保健、外部の相談機関などにつなぐことを検討します。

Q:診断がなければ、会社は何も配慮できないのでしょうか

診断名が分からなくても、期限や完成基準を明確にする、指示の重複を減らす、優先順位を整理するなど、仕事の進め方として見直せることがあります。

一方、障害に基づく合理的配慮について正式な検討が必要な場合には、本人からの申出や状況を踏まえながら個別に確認していく必要があります。すべてを「診断があるかないか」だけで分けないことが重要です。

Q:本人は困っていないと言っていますが、周囲が困っています

本人に困り感がない場合でも、業務への具体的な影響があるのであれば、その事実について話し合うことはできます。

「あなた自身に問題がある」と伝えるのではなく、どの行動によってどのような仕事上の影響が出ているのか、会社として何を求めているのかを具体的に共有します。

Q:何度指導しても同じ問題が続く場合はどうすればよいですか

同じ注意を繰り返す前に、本人がどのように理解しているのか、仕事の基準が具体的だったか、実行できない理由が別にないかを確認します。

それでも問題が続く場合には、管理職一人で対応を抱えず、人事等とこれまでの経過を整理し、仕事の変更、支援、指導など、次に何を判断する必要があるのかを検討します。

Q:本人へ受診を勧めた方がよいのでしょうか

「発達障害かもしれないから診断を受けてほしい」ということを、職場対応の目的にする必要はありません。

本人自身が困難を感じて相談を希望している場合や、健康状態について専門的な確認が必要な場合には、本人の意向を確認しながら産業保健や相談機関などにつなぐことが考えられます。

会社としては、受診の有無とは別に、現在の仕事で何が起きているのかを整理し、必要な対応を検討します。

まとめ|「発達障害かどうか」から「仕事で何が起きているか」へ

社員との仕事で問題が続くと、「もしかして発達障害なのではないか」と考えることがあります。

しかし、会社が発達障害かどうかを判断する必要はありません。

職場で確認するのは、期限が守られない、指示と違う仕事になっている、周囲との情報共有がうまくいかないなど、実際に起きている事実です。

そのうえで、本人がどのように理解しているのか、仕事の基準は明確だったのか、指示や情報共有に問題はなかったのか、仕事の内容や量に無理はないのかを確認します。

必要な注意や指導を避ける必要もありません。ただし、障害名や人格を問題にするのではなく、具体的な行動と仕事への影響、次に期待する行動を伝えます。

「この人は発達障害なのか」という問いを、「この仕事では何が起きていて、会社として何を確認し、何を判断する必要があるのか」という問いへ変える。

それによって、診断名の推測に頼らず、本人にも管理職にも必要な職場対応を考えやすくなります。

関連記事

関連記事|「発達障害かも」と感じた後の職場対応をもう少し深く考える
診断名を推測するのではなく、実際の仕事への影響、伝え方、配置や判断の仕組みから考えるための記事をまとめています。
仕事上の指示や注意が伝わりにくいときに、どのように具体化し、フィードバックすればよいのかを詳しく確認したい方へ。

発達障害やASDについて基本的な特徴を知り、職場でどのような情報のズレが起こりやすいのかを確認したい方へ。

本人への個別対応だけでは問題が解決しないときに、仕事・配置・配慮・判断・役割から全体を見直したい方へ。

管理職によって対応が変わったり、「どこまで対応するか」の判断が人によって異なったりするときに、組織として判断基準を整理する視点を確認できます。

参考資料・一次情報

発達障害者支援施策(厚生労働省)
コミック版5 障害者雇用マニュアル 発達障害者と働く(高齢・障害・求職者雇用支援機構)

スポンサードリンク

現場が動く組織づくりの視点を解説

NewsPicksでのコラムは、制度と現場のあいだの“ズレ”を読み解き、
組織を前へ進めるヒントをお届けします。

0コメント

コメントを提出

メールアドレスが公開されることはありません。