職場における発達障害者のための合理的配慮の具体的な事例

職場で発達障害のある人を受け入れるときに、発達障害の特性については、ある程度知識として学ぶことはできますが、なかなかイメージがわきにくいと言われる担当者の方もいらっしゃいます。

具体的な事例から、どのように合理的配慮を行えるのか見ていきましょう。

発達障害の特性

まず、発達障害の自閉症スペクトラム、ADHD、LDの主な特徴を見ていきましょう。

自閉症スペクトラム

自閉症スペクトラム(ASD)は、“Autism Spectrum Disorder (Disability)” の略で、日本語では自閉症スペクトラムと訳されています。以前の診断基準では、広汎性発達障害と呼ばれており、さらに自閉症、アスペルガー症候群 (AS)、特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)など細かなカテゴリー分けがありました。現在ではそれらを全てまとめて自閉症スペクトラムと呼んでいます。

ASDの人は、社会の様々な場面で人とのコミュニケーションや関わりに難しさが生じることが多くあり、職場においてもコミュニケーションに関する影響が見られます。また、興味や関心が狭い範囲に限られやすく、独特のこだわり行動や振る舞いが見られることもあります。他にも五感などの感覚が人よりとても敏感に感じたり、逆にほとんど感じない分野がある人もいます。「社会性」「コミュニケーション」「想像力」に苦手さがあります。

自閉症スペクトラムの特性や職場の配慮についてはこちらから
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発達障害(自閉症スペクトラム)の障害者と一緒に働くときに知っておきたいポイントとは?

ADHD(注意欠陥多動性障害)

ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、Attention Deficit/Hyperactivity Disorderの略語で、不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状が特性とされています。

ADHDの症状には、自分の注意や行動をコントロールする脳の働き(実行機能)のかたよりが 関係していると考えられており、集中時間の短さ、衝動性、気の散りやすさ、多動性を特徴とする神経行動疾患がみられます。

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発達障害(ADHD:注意欠陥・多動性障害)の障害者と一緒に働くときに知っておきたいポイントとは?

LD(学習障害)

LDはLearning Disorders、Learning Disabilityの略で、学習障害と呼ばれています。全体的には知的な遅れはないものの、読み書き計算など特定の課題の学習に大きな困難がある状態のことを指します。

主にみられる特性は、読字障害(読みの困難)、書字表出障害(書きの困難)算数障害(算数、推論の困難)の3つに分類されます。「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」という5つの能力の全てに困難さがあるわけではなく、一部の能力に困難さが見られることが多いようです。

読む能力はあっても書くのが苦手だったり、他の教科は問題ないのに数がでてくると理解ができないなど、特定分野に偏りが見られることもあります。一見すると苦手さがわかりにくいので、周囲から怠けている、サボっているなどと、誤解されやすいことが多くあります。

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発達障害(LD:学習障害)の障害者と一緒に働くときに知っておきたいポイントとは?

発達障害のある人の職場における苦手さの事例

では、実際に働く職場でどのような苦手さがあるのか、またそれをどのように配慮できるのか見ていきましょう。

自分から質問するのが苦手

【自閉症スペクトラム】
威圧的なタイプの人に苦手感があり、黙り込んでしまうことがあります。また、質問したいことがあっても今聞いて良いのかどうか考えすぎて、聞けなくなってしまうことは仕事をする上での課題と思われます。そこで、自閉症スペクトラムのAさんは、職場では次のように説明し、配慮をお願いしています。

「周囲に気を使いすぎて、何も言えなくなってしまうことがあります。質問するタイミングがつかめないことがありますので、時々声をかけていただくか、メールで質問させていただけると助かります。」

職場でできる配慮としては、質問の時間をあらかじめ決めておく、担当者やリーダーが声をかけて仕事の問題点がないか確認するなどができるでしょう。

威圧的なタイプの人が苦手

【自閉症スペクトラム】
威圧的なタイプの人には弱く、上司との関係で苦労した経験があります。ある特定のタイプ(威圧的、感情の起伏が激しく感情あらわにする)に弱いので、このようなタイプの上司でなければ、特に配慮してもらう必要はありませんが、どのようなタイプの上司の下で働くことになるかわかりません。そこで、自閉症スペクトラムのBさんは、職場では次のように説明し、配慮をお願いしています。

「少ない人数でのコミュニケーションは問題ありません。周囲の空気を読み、相手の気持ちや表情を読むことをやや苦手としています。仕事の指示は穏やかな態度で、具体的にお願いします。」

職場でできる配慮としては、なるべく穏やかな性格の人と一緒に働くことができるのがいいのですが、人事にも関わることなので、なかなか思うように行かない点もあると思います。Bさんが威圧的な態度が苦手なことを一緒に働く同僚たちに伝えるとともに、穏やかな雰囲気で仕事ができるようにみんなで協力することができるでしょう。

あいまいな指示が苦手

【自閉症スペクトラム】
優しく、丁寧に説明してくれる上司の下では問題なく仕事ができていましたが、人事異動で上司が変わった途端に仕事のミスが増加するようになり、上司との関係もうまくいかなくなってしまいました。その理由は、上司の指示が「適当にやっといて」などあいまいだったため、上司の意図を読みきれなかったことにあります。そのため自閉症スペクトラムのCさんは、欲しい配慮として具体的な指示をお願いしています。

「やることが決まっていれば問題なくこなすことができますが、「適当に」などのあいまいな指示では、何をしてよいかわからないことがあります。何をどれぐらい、どうするなど、具体的に指示をしていただけると助かります。」

職場でできる配慮としては、具体的な指示を行なうことです。明確な指示がでていないと、何をやるのかで迷ってしまうことがあります。誰が何回聞いても同じように受け取れるような指示を行なうようにしましょう。

わかりやすく、具体的な指示を希望

【自閉症スペクトラム】
自分の担当業務は確実にこなせますが、仕事の量が急に増えたり、急いで処理を行わなければならない状況になったりすると、慌ててしまうことがあります。また、言われたことを真に受けてしまう特性や、婉曲的な表現は気づきにくい傾向があります。そのため自閉症スペクトラムのDさんは、上司になる人には、次のようにお願いしています。

「暗黙のルールや言外の意味、婉曲的な言い回しには気づかないことがあります、仕事上での注意はストレートに伝えていただくことを希望します。また、伝えていただく際は、大勢の前で注意されるよりは、会議室、別室など、他の人がいない場所で伝えていただけると助かります。」

職場でできる配慮としては、先ほどの例と同じように具体的な指示を行なうことです。雰囲気で察して行動することは苦手ですし、言葉通り真に受けることもありますので、わかりにくい表現は避けるようにします。

手先の細かい作業が苦手

【LD】
小さい頃から手先を使う細かい作業が苦手でした。紐を縛るという作業は最も苦手なことです。文字を書くにも非常に時間がかかってしまいます。小学校に入学して以来、字が汚いと言われ、努力を続けてきたものの思ったようには上達せず、字の汚さを指摘され続けていました。LDのEさんは、細かい作業が苦手さについての理解と配慮をお願いしています。

「不器用で手先を使う細かい作業が、極端に苦手です。手書きの文字がとても汚いと思われるかもしれません。逆にパソコン操作が得意ですので、できる限り手書きをせずにパソコンで作成できればと思います。」

職場でできる配慮としては、何か記録をとるときには、手書きではなく、パソコンなどで代替する方法を提示することができるでしょう。また、細かな作業があるのであれば、別の作業で代わりができるのであれば苦手な作業を減らすことや、どうしても必要なときにはそれをサポートするようなツールや道具を使用して、本人が作業しやすくすることができます。

優先順位のつけ方が苦手

【アスペルガー症候群】
学業は優秀なのですが、就労後に様々な苦労重ねてきました。1つ1つの作業能力には問題がありませんが、以前の職場では、特に優先順位がわかっていないと言われ続けてきました。

それは相手の意図を読み取ることや、先の見通しを持つことが苦手なため、特別な指示がなければ、依頼された順番に作業進めてしまうところに原因があったようです。本人は、後で指摘されるのだったら、最初に明確に指示してくれればよいのにと思った時期もありました。

現在は、自分からも優先順位を確認するように心がけていますが、アスペルガーのFさんは職場では次のように説明し、配慮をお願いしています。

「1つ1つの作業は、正確でスピードも速いと思います。ただ、業務が立て込んでくると、優先順位がつけづらいところがありますので、業務の指示の際には優先順位も指示してくださると助かります。」

職場でできる配慮は、仕事の流れをスケジュール表などで示すこと、何か変更があるときにはわかった時点で早めに伝えることなどができるでしょう。

緊張感が強く、疲れやすい

【ADHD】
就労移行支援事業所を利用し、パソコン操作を習得したので、パソコンスキルは一般的な事務をこなせるレベルにありました。少し心配性のところがあります。入社して担当することになった作業はデータ入力でしたが、間違えて入力してはいけないと非常に緊張しながら慎重に作業終えました。初日は、くたくたに疲れて帰宅しました。疲れやすいという特性があります。そのためADHDのGさんは、仕事に慣れるまでは残業時間の配慮をお願いしています。

「視覚と聴覚に過敏があるせいか、疲れやすいところがあります。そのため慣れるまでは残業考慮していただけると助かります。また、慎重に作業を行っているのですが、午後になると集中力が途切れ、ミスが多くなるようです。ミスを防ぐためにも、午後に数回短い休憩をとらせていただけると助かります。」

職場でできる配慮としては、休憩時間をしっかり取らせることです。作業を続けると集中が途切れ、ミスが多発してしまうようですので、どれ位の時間で休憩をとるとよいのかを一緒に考えると良いかもしれません。また、ミスをしてしまったことで緊張と不安がさらに高まり、余計にミスを頻発するという状況になりがちなので、特にはじめのうちは、ある程度の業務が進んだらダブルチェックを行なうなどできるかもしれません。

まとめ

職場における発達障害者のための合理的配慮の具体的な事例について見てきました。発達障害の特性を知るだけでは、具体的な配慮を示すのは難しいかもしれません。このような事例をいくつか見ていくと、少しずつイメージができるようになりますので、参考にしてみてください。

また、発達障害の特性は説明してきましたが、その特性のあらわれ方は個人個人異なりますので、個別にどのような対応ができるのかを考えていくことが必要です。もちろん本人の言うことを全て聞くことは難しいかもしれませんが、しっかりコミュニケーションをとって、職場の合理的配慮としてできること、難しいことを本人にわかるように伝えていくことは大切です。

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