合理的配慮を障害者に示せなかったときの企業のリスクとは

合理的配慮を障害者に示せなかったときの企業のリスクとは

2021年08月4日 | 障害者雇用に関する法律・制度

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雇用されている企業から合理的配慮が受けられず休職し、雇い止めを受けたとして、発達障害の女性が企業に対して訴訟を起こしました。

企業に求められている合理的配慮とはどのようなものなのでしょうか。また、企業では、どのように合理的配慮を示すことができるのでしょうか。

発達障害の元社員が合理的配慮を受けられなかったことで訴訟

雇用されている企業から合理的配慮が受けられず休職し、雇い止めを受けたとして、発達障害の女性が企業に対して訴訟を起こしました。

発達障害なのに、適切な合理的配慮を受けられず、うつ病で休職したことなどで、雇い止めされたとして、外資系のIT企業「セールスフォース・ドットコム」の日本法人(東京・千代田区)で働いていた40代女性が7月20日、同社を相手取り、地位確認や慰謝料440万円などをもとめる訴訟を東京地裁に起こした。

出典:発達障害の女性、大手IT・セールスフォースを提訴「合理的配慮を受けられず、雇い止めされた」(弁護士ドットコムニュース)

障害者への合理的配慮とは

合理的配慮は、障害がある人とない人の就労機会や待遇を平等に確保し、障害者が能力を発揮するために支障となっている状況を改善したり、調整したりすることです。2016年4月1日から「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)が改正され、施行されている法律により、事業主が障害者への合理的配慮の提供が義務づけられています。

対象となる範囲は、事業所の規模・業種に関わらず、すべての事業主が対象となっています。また、対象となる障害者は、障害者手帳を持っている方に限定されず、いわゆる3障害(身体障害、知的障害、精神障害)以外にも心身の機能に障害があり、長期にわたって職業生活に相当の制限を受け、職業生活を営むことが著しく困難な人も対象となります。

合理的配慮では、事業主に課された3つの義務があります。これらについて見ていきましょう。

雇用に関する障害者差別の禁止

雇用の中で差別をなくす義務があります。障害者であることを理由として、そのほかの人と不当な差別的取扱いをすることが禁止されています。 例えば、募集・採用や賃金、配置や昇進、教育訓練など雇用に関するあらゆる局面で、障害者であることを理由に排除することや不利な条件を設けること、反対に障害のない人を優先することなどは、障害者であることを理由とする差別に該当します。

ただし、次の3点は差別に該当しないとされています。

・積極的な差別是正措置として、障害者を有利に取り扱うこと
・合理的配慮を提供し、労働能力などを適正に評価した結果として障害者ではない人と異なる取扱いをすること
・合理的配慮に応じた措置をとること (結果的に、障害者ではない人と異なる取扱いとなること)

例えば、障害者のみを対象とする求人を行うことや、障害者が研修内容を理解できるように合理的配慮として独自メニューの研修をすることなどは、差別には該当しません。

雇用に関する合理的配慮の提供義務

障害者に対する職場での合理的配慮を提供することが義務化されています。合理的配慮は、障害のある人とない人の就労機会や待遇を平等に確保し、障害者が能力を発揮するうえで支障となっている状況を改善したり、調整したりする必要があります。

障害の種類によっては、就業にどのような支障があり、どのような配慮が必要なのかが、見た目だけではわからない場合があります。また、障害の種類や障害者手帳の等級が同じ場合であっても、一人ひとりの状態や考え方は違うものですし、職場環境などによって求められる配慮も異なります。そのため、取るべき対応は個別性が高いものとなっています。具体的にどのような措置をとるかについては、障害者と事業主とでよく話しあった上で決めることが求められます。

なお、合理的配慮は「過重な負担」にならない範囲で事業主が行うものとされています。

・事業活動への影響の程度
・実現困難度
・費用負担の程度
・企業の規模
・企業の財務状況
・公的支援の有無

これら6項目に「過重な負担」がかかる場合は免除されます。

相談体制の整備・苦情処理、紛争解決の援助

もし、合理的配慮が適切に示されていない場合には、障害者が相談できる体制を整備しておくことも定められています。

相談体制の整備や苦情処理に関する雇用管理上必要な措置としては、相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知することや、相談者のプライバシーを保護するために必要な対応をとること、相談内容を理由として不利益な取扱いを禁止することと、労働者にそれを周知・啓発すること(就業規則、社内報、パンフレット、社内ホームページなど)が含まれます。

企業によって対応は異なりますが、パワハラといった職場の課題を相談できる窓口に、障害に関するものを付加したり、社員専用のイントラネットを活用して態勢を整えたりしているところもあります。

基本的には、障害者である 労働者から苦情の申出を受けたときは、事業主による自主的な解決を図ることが求められています。しかし、解決が難しい場合には、都道府県労働局長が 必要な助言、指導、または勧告をすることができるものとされています。

苦情処理の流れについては、次のようなフローになっています。

出典:障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要(厚生労働省)

事業主には、障害者社員が採用後における合理的配慮に関し相談をしたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いを行ってはならず、このことを働く障害者にも周知するように求めています。

なぜ、企業側と雇用されている障害者の齟齬が生じるのか

障害者の合理的配慮については、企業側と雇用されている障害者の間でよくコミュニケーションをとることが必要です。特に、採用してからしばらくの間は、人事部門の責任者、配属先の部署の責任者、雇用される障害者との定期的な面談の機会を持つほうがよいでしょう。

特に、障害特性としてコミュニケーションの苦手さがある場合には、通常よりも時間をかけてコミュニケーションをとることや、こちらが伝えたことがこちらが意図した通りに伝わっているか、障害者社員の話していることと障害者社員の意図している内容が合っているのかなどを、ていねいに見ていくことも必要です。

今回の訴えでは、発達障害の元社員が職場で求めた合理的配慮が応じられなかったこと、また職場での改善がされず、雇い止めにあったとされています。

訴状などによれば、女性は発達障害の一種「ASD(自閉スペクトラム症)」と「ADHD(注意欠陥多動症候群)」の混合と診断されている。2018年11月、障害者枠で、契約社員として入社し、主にウェブマーケティングの業務に従事した。

入社後、特性に応じた合理的配慮をもとめたものの、直属の上司からは「面倒を見るのは本当は私の役割じゃない」などとして、応じてもらえないことが続いたという。

女性には「口頭指示では理解できないことがある」などの特性がある。会社からもとめられて、そのような特性や必要な配慮(メールなど文字に残るものでの指示など)の説明を入社時、入社後に提出してきたという。

しかし、上司に要請しても守られず、業務内容が明示されないまま働いたことで、混乱を引き起こし、精神的苦痛を受け続けたと主張する。

このような事態の改善を求めて、会社やジョブコーチと面談したが、女性のもとめる状態にはならず、2019年4月には、社内で過呼吸発作を起こすこともあったとした。発達障害の二次障害であるうつ病となり、休職に至ったとされる。

また、体調が回復してきたため、復職を希望したが、今度は退職勧奨を受け、2020年11月 での雇い止めを受けたと主張している。

出典:発達障害の女性、大手IT・セールスフォースを提訴「合理的配慮を受けられず、雇い止めされた」(弁護士ドットコムニュース)

発達障害の合理的配慮を職場で示す時には、次のようなことが合理的配の事例としてあげられています。

【募集及び採用時】
・面接時に、就労支援機関の職員等の同席を認めること。
・ 面接・採用試験について、文字によるやりとりや試験時間の延長等を行うこと。

【採用後】
・ 業務指導や相談に関し、担当者を定めること。
・ 業務指示やスケジュールを明確にし、指示を一つずつ出す、作業手順について図等を活用したマニュアルを作成する等の対応を行うこと。
・ 出退勤時刻・休暇・休憩に関し、通院・体調に配慮すること。
・ 感覚過敏を緩和するため、サングラスの着用や耳栓の使用を認める等の対応を行うこと。
・ 本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること。

企業における合理的配慮は「過重な負担」にならないこととされていますので、発達障害の元社員がどの程度の配慮を求めたのかということなどが、ポイントになってくるのではないかと思います。ただし、今までの情報は、発達障害の元社員の方から見た主張なので、企業側の方から見ると、また違った視点が出てくるかもしれません。

この記事を読んで残念だと感じるのは、発達障害の元社員が改善を求めて会社やジョブコーチと面談しているものの改善されなかったということです。すでに上司との関係は悪くなっていたと思われますが、間に入っている他の社員やジョブコーチがもう少し間を取り持ったり、コーディネートできなかったのかなとも思います。

障害者雇用を企業リスクに変えないために必要なこと

お互いの歩み寄りやコミュニケーションは必要

障害者雇用を法令遵守でおこなっているにも関わらず、このような訴訟で有名になってしまうのは、企業としては絶対に避けたいところです。

組織の中で働いている以上、すべての社員が100%満足できるような状況をつくることは無理です。しかし、それでもできることと、できないことを示し、その中でもお互いの妥協点を探ることはできるでしょう。また、それを理解できていない社員がいるのであれば、それを理解できるように伝えていく、教育していくことも必要でしょう。

そのために普段からよくコミュニケーションをとること、信頼関係を築いておくようにしましょう。

面接や採用前の実習で求められることができるかを確認する

また、面接や採用前の実習などで、障害特性や配慮事項等に関する情報を事前に把握しておくこと、職場で配慮が難しいことが要求されるようであれば、会社でできること、できないことを示しておくことも必要です。

どんなに学歴やスキルがあったとしても、職場に受け入れることに困難さがあるならば、採用したとしても職場定着することはありません。企業側、障害者本人が無理をして働き続けるのは、お互いにとっても辛いものです。ぜひ、面接や実習の時には、求める合理的配慮はどのようなものなのか、会社で対応できるのかを検討しておきましょう。

まとめ

雇用されている企業から合理的配慮が受けられず休職し、雇い止めを受けたとして、発達障害の女性が企業に対して訴訟を起こしたことから、職場の合理的配慮や、合理的配慮を障害者に示せなかったときの企業のリスクについて考えてきました。

まず、できることは、合理的配慮について、企業に求められていることをしっかり把握することです。その上で、雇用している障害者とよくコミュニケーションをとりましょう。組織の中で働いている以上、すべてが思い通りにできるわけでありません。もし、それを理解できていない社員がいるのであれば、それを理解できるように伝えていくことも必要です。

また、面接や採用前の実習などで、障害特性や配慮事項等に関する情報を事前に把握しておくこと、職場で配慮が難しいことが要求されるようであれば、会社でできること、できないことを示しておくことも必要です。

参考

障害者差別解消法改正、企業の障害者雇用にどのように影響する?

合理的配慮に役立つ助成金:障害者相談窓口担当者の配置助成金を解説

企業における障害者差別の禁止と合理的配慮の対応方法

はじめて障害者採用面接をおこなうときにどのようにすればよい?

発達障害者のための職場における合理的配慮の具体的な事例

【障害者】現場で難しい「合理的配慮」の判断基準と対応策とは?

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