精神障害者の就職の現状と働き続けるためにできること

2018年4月、精神障害の雇用が義務化され、法定雇用率が引き上げられました。障害者雇用の大きな転換期を迎えています。現在、障害者雇用の新たな労働力の担い手として期待されているのが、精神障害のある人たちです。しかし、調査結果からは、就職した精神障害者の半数が1年で離職する現実も見えています。

精神障害者を雇用するのは難しいと言われていますが、どうすれば働き続けることができるのか、精神障害者の就職の現状とともに、働き続けるために必要なことについて、考えていきたいと思います。

精神障害者の就職・雇用の現状

ハローワークを通じた障害者の就職件数が9年連続で増加していることが、厚生労働省から発表されました。この調査結果によると、障害者の求職申込みが増えていることがわかります。

新規求職申込件数は202,143件で、対前年度比5.4%の増となり、また、就職件数は97,814件で、対前年度比4.9%の増となった。

このうち、精神障害者の新規求職申込件数は93,701件で、対前年度比9.0%の増となり、また、就職件数は45,064 件で、対前年度比8.9%の増となった。

出所:平成29 年度 障害者の職業紹介状況等(厚生労働省)

就職件数(対前年度差、比)
身体障害者 26,756 件(184 件減、0.7%減)
知的障害者 20,987 件(645 件増、3.2%増)
精神障害者 45,064 件(3,697 件増、8.9%増)
その他の障害者 5,007 件(427 件増、9.3%増)
合 計97,814 件(4,585 件増、4.9%増)

出所:平成29 年度 障害者の職業紹介状況等(厚生労働省)

精神障害者の1年後の職場定着率は約5割

4月1日に法定雇用率が引き上げられ、今、障害者雇用は空前の売り手市場となっています。なかでも精神障害者は就職している人は増加しています。とはいえ、全体の雇用数から言えばまだ少なく、新たな働き手として注目されています。

しかし、懸念されがちなのが、精神障害者の職場定着です。調査結果からは、精神障害者は就職してから同じ職場で1年間働き続けている人の割合は49.3%と、ほかの障害種別と比べても低くなっています。その理由として考えられるのは、当事者である本人の自己理解が足りないこと、企業側がどのような対応をすればよいのかを理解していなかったり、それに対応するノウハウを持っていないことがあげられます。

当事者の自己理解が足りないと思われることには、次のようなことがあります。例えば、自分の作業能力とか、病気の理解、障害特性についての理解です。また、自己理解が少し足りなかったとしても、周囲に困ったときや悩んでいることを相談できればよいのですが、それができずに一人で抱え込んでしまうことも見受けられます。

企業側の立場からみると、今まであまり接したことのない人にとっては、精神障害は他の障害と比べると外からはわかりにくい障害です。周囲の社員も障害があることや障害特性をある程度学んだとしても、なにかちょっとしたトラブルがあったときの初期対応がうまくできなかったために大きなトラブルに発展することも少なくありません。

働き続けるために大切なこと

調査結果やいろいろな話をきいたりすると、精神障害者を雇用するのはやはり難しいのでは・・・と感じられたかもしれません。また、当事者の方は、やはり企業には理解してもらいにくい、継続的に働くことは難しいことなのか・・・と思っているかもしれません。

しかし、働き続けるために大切なことは、とてもシンプルなことです。そのポイントを一緒にいくつかみていきたいと思います。

本人が自己理解を深める

就労支援機関などの訓練機関では、就職にむけた準備を行っていますが、その中で力を入れている1つが自己理解を深めることです。自分の作業能力、病気の理解、障害特性についての理解を深めていきます。

まずは、自己分析シートに事実を記載することから始まります。自分では、このように考えている、こう思っているということを示します。誰かからこのように指摘されたからとか、言われたから・・・ではなく、本当に自分の考えとしてそれが示されているのか、まずじっくり向き合ってみる必要があるでしょう。

これができていないと、表面上はできているように思えても、実習や就職したとき、なにかちょっと自分が考えていたことと違っていると、対応できなくなってしまうケースを良く見かけます。

就職が目的ではなく、「働き続ける」ことを意識する

もちろん就職することは大切なのですが、就職は本人にとっても、企業にとってもスタートであることを意識しておく必要があります。

実習中は、期間が数日~2週間程度と終わりが決まっているので、本人にとっても企業にとっても取り組みやすいものです。しかし、就職すると、それは一定期間のものではなく、継続的なものになってきます。

実習をして採用を決めた企業の方から話をきくと、実習期間中にとても張り切って作業を行っていて、企業側からも高い評価を得ていたのに、就職してからは実習中と違って戸惑っているという声を聞くことが少なくありません。誰でも期限が決まっている、しかもそれが就職できるかどうかを判断するものであれば、多少無理しても頑張ってしまうものです。

ですから、企業側は実習期間中と同じパフォーマンスができるのかをみていく必要がありますし、当事者である本人も実習中に行っている業務が半年後、1年後、3年後もできるのかどうかを考えていく必要があります。

ストレスと上手に向き合う

社会で生きていくには、ストレスが誰にでもかかるものです。しかし、精神障害者の多くはそのストレスとの向き合い方が苦手な人が多くいます。そのため、そのストレスで引き起こされる体調の乱れが起きやすくなり、それが元で生活が崩れたり、勤務が難しくなることが少なくありません。

業務に関する知識とかスキルも大切ですが、どのように病気や障害とつき合いながら、就労を継続していくかということを考えていくことが大切です。

例えば、ある統合失調症の方は、流れの速い仕事について行こうとするなかで、体調を崩してしまいました。仕事に集中しすぎることによって、疲れをためこんでしまう「過集中」になってしまう傾向をもっていたからです。

仕事に集中しているときには、問題がないようにみえるのですが、その集中がとぎれてしまったり、切れたときに一気に疲れが襲ってきて、次のことが何も手につかなくなってしまうような状況になってしまいます。そのため今は、1時間に1回、過集中になる前に休憩を入れるようにしています。

コミュニケーションをとり、お互いの気持ちをしる

前述の過集中になりがちな統合失調症の方の例をみると、周囲からは一見すると、仕事がどんどんできるので、もっと頑張れるのではないかと期待してしまうかもしれません。しかし、無理をしてそのまま続けていくと、しばらくして疲れ果ててしまうことになります。

一時的にどんどん作業をやって、スピードを上げていても、それが続かなければ、ミスがどこかで多く発生することになるかもしれませんし、仕事が続けられない状況になるかもしれません。そんな状況を生み出さないためにも、当事者側も企業側も率直に話して、コミュニケーションをとることが大切です。

お互いによかれと思って、自分の気持ちを明らかにしないまま無理をして行っていた結果、当事者からは企業は自分のことを理解してくれない、企業側からは本人は自己管理(自己理解)ができていないというコミュニケーションの溝ができるケースはとても多くみられます。

自分の立場、考えを自分の中で当たり前だから他の人も同じように考えているだろうと考えるのではなく、相手の立場からも考えることが必要です。また、それを伝えることをする努力をすることもお互い必要です。

「会社としてはそう思うんだ」と当事者が受け止めること、「本人はそういう風に感じてるのか」「こういうのが働きづらいと思っているのか」と受け止めることです。

もしかしたら、結果的には受け入れられないこともあるでしょう。それでも双方のお互いが受け止めようとする気持ち、理解したいという思いを示すことは信頼関係を築く上で避けては通れないことです。

まとめ

精神障害者を雇用するのは難しいと言われていますが、どうすれば働き続けることができるのか、精神障害者の就職の現状とともに、働き続けるために必要なことについて、考えてきました。

障害者が働き続けるうえで大切になると考えるポイントをあげてきました。本人が自己理解を深めること、就職が目的ではなく「働き続ける」ことを意識すること、ストレスと上手に向き合うこと、コミュニケーションをとりお互いの気持ちをしることなどです。これらによって信頼関係を築くことがまず必要です。

そして、配慮を一方的に与えるのではなく、お互いにコミュニケーションを取ることで、働きやすい環境を作っていくことです。そのためには合理的配慮が必要になってくるでしょう。

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