障害者雇用ではどんな仕事が多い?最新データと業務例

障害者雇用ではどんな仕事が多い?最新データと自社に必要な業務の考え方

2022年12月13日 | 企業の障害者雇用

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

登録者限定レポート
「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年7月23日更新
障害者雇用を進めるとき、多くの企業が悩むのが、「どのような仕事を担当してもらえばよいのか」「社内に任せられる仕事があるのか」という点です。

他社ではどのような仕事を任せているのか、障害別に多い職業は何かを知りたいと考える企業も多いでしょう。実際、厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査でも、「会社内に適当な仕事があるか」は、すべての障害種別で、雇用する際の大きな課題として挙げられています。

結論から言えば、実際に多い職業や他社の業務例を知ることは参考になりますが、それを自社で任せる仕事の答えにすることはできません。必要なのは、障害別に向いている仕事を探すことではなく、組織に必要な成果と役割を明らかにし、その役割に合う人材を考えることです。

この記事では、最新データから障害者が実際に従事している職業を確認したうえで、自社で仕事を考えるための視点を解説します。

この記事でわかること

  • 企業が障害者雇用の仕事探しで悩んでいる状況
  • 最新データで割合の高い職業
  • 多い職業と、本人に向いている仕事の違い
  • 組織のボトルネックから役割をつくった企業事例
  • 自社で担当業務を考えるときの視点

障害者雇用では「社内に適当な仕事があるか」が大きな課題

令和5年度障害者雇用実態調査では、「会社内に適当な仕事があるか」が、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者のすべてで、大きな雇用課題として挙げられています。

いずれの障害種別でも、7割を超える企業がこの項目を課題としています。

企業が仕事の確保に悩む背景には、

  • 障害者にどこまでの仕事を任せられるのか分からない
  • 他社で多い仕事しかイメージできない
  • 社内の業務を十分に把握できていない
  • 採用後の指示や評価の方法が見えない
  • 用意した仕事が継続するか不安がある

といった事情があります。

そのため、他社の仕事内容や職業別データを確認すること自体には意味があります。ただし、データが示していることと、そこから判断できることを分けて考える必要があります。

最新データで見る、障害者が実際に従事している職業

令和5年度障害者雇用実態調査を見ると、実際に働いている人の職業には、障害種別によって一定の傾向があります。

身体障害者や精神障害者では事務的職業、知的障害者や発達障害者ではサービスの職業が上位に入っています。

一方、精神障害者では専門的・技術的職業も上位に入っており、障害者雇用の仕事が定型的な補助業務だけではないことも分かります。

多い職業は「その障害に向いている仕事」ではない

このデータを見ると、「身体障害者には事務」「知的障害者には清掃や運搬」「精神障害者には事務」が向いていると解釈したくなるかもしれません。

しかし、このデータは、現在働いている人がどの職業に従事しているかを示したものです。障害別に向いている仕事や、能力を発揮しやすい仕事を示したものではありません。

現在の職業分布には、

  • 企業がこれまで募集してきた職種
  • 従来の障害者雇用で多く採用されてきた業務
  • 企業側が想定してきた障害者像
  • 採用経路や雇用形態
  • 産業や企業規模

なども影響しています。

また、同じ「事務的職業」であっても、情報入力、確認、分析、資料作成、問い合わせ対応では、必要な能力や判断範囲が異なります。職業名や障害名だけで、本人との適合を判断することはできません。

仕事は「職種名」ではなく、組織で果たす役割から見る

障害者雇用の仕事内容を考えるときは、事務、清掃、軽作業といった職種名だけで見るのではなく、その仕事が組織の中でどのような役割を果たすのかを確認します。

例えば、仕事は次のような役割から考えられます。

  • 情報を整理し、必要なときに使える状態にする
  • 製品やデータの品質・正確性を確認する
  • 社内の業務や職場環境の運用を支える
  • 顧客や社員に必要な情報を届ける
  • IT、デザイン、分析などの専門性を活かす

重要なのは、一般的な仕事例の中から選ぶことではありません。

  • 自社で必要とされている成果は何か
  • どの工程や役割に課題があるのか
  • どのような人材が担うと仕事が進みやすくなるのか

を確認することです。

具体的にどの業務を候補として残し、どのように一つの役割へ組み直すかは、企業の業務内容や組織体制によって異なります。

組織のボトルネックから、必要な仕事と人材を考える

会社に必要な仕事から役割をつくった例として、精密板金業を営む株式会社スタックスの取り組みがあります。

スタックスでは、製品の検品と梱包を同じ担当者が行っていたため、作業の流れの中で、傷や変形などの見落としが発生することがありました。

不良品が取引先で見つかると、製品を交換するだけでは終わりません。原因の調査、再発防止策の検討、対策が機能しているかの確認まで必要になります。

つまり、外観検査の精度が、製造工程全体の品質と負担に影響するボトルネックになっていました。そこで、外観検査を独立した役割として捉え直しました。

この仕事は、フルタイム一人分の業務量はありませんでした。加えて、まとめて処理するのではなく、毎日継続して行う必要がありました。

そこで、会社に必要な仕事の条件と、短時間で働きたい人材の条件が合致したことで、短時間の障害者雇用として役割が成立しました。

スタックスの事例は、障害者に任せられる簡単な作業を探した事例ではありません。

製造工程のボトルネックを確認し、会社に必要な成果から役割を設計し、その役割に合う人材を採用した事例です。

採用後は、本人の経験や能力、仕事の習得状況に応じて、測定、組立、工程分析、改善提案などへ担当範囲が広がっています。

この事例から分かるのは、中小企業であっても、品質、効率、生産性などの経営課題から、会社に必要な仕事と人材を考えられるということです。

データや他社事例を、自社の仕事の答えにしない

障害者雇用で多い職業や、他社の成功事例を見ることは、自社の可能性を広げるうえで役立ちます。しかし、「他社がデータ入力をしているから、自社でもデータ入力」「知的障害者には清掃が多いから、清掃を任せる」と仕事内容だけを取り入れても、同じ成果になるとは限りません。

データや事例を見るときは、次の点を確認します。

  • その仕事は、どのような組織課題から生まれたのか
  • どのような成果や価値を生み出しているのか
  • 一つの役割として継続する業務量があるか
  • どのような経験や能力を持つ人材が必要か
  • 誰が指示・相談・判断・評価を担っているか

参考にすべきなのは、仕事の名称ではありません。組織に必要な仕事を見つけ、役割として成立させた考え方です。

自社で担当してもらう仕事を考える3つの視点

組織に必要な成果は何か

まず、仕事の名称ではなく、組織として実現したい状態を確認します。

例えば、品質上の見落としを減らす、専門職が本来の仕事に集中できるようにする、情報管理を改善するといった成果です。

一つの役割として成立するか

仕事の目的、期待する成果、業務量、発生頻度、判断範囲、相談方法を整理します。

フルタイム一人分の仕事がない場合には、短時間勤務や複数業務の組み合わせも考えられます。

どのような人材が必要か

役割を整理したうえで、必要な知識・経験、正確さ、判断範囲、勤務条件を明確にします。その後、本人の経験、能力、希望、必要な合理的配慮とすり合わせます。

業務設計の詳しい進め方は、次の記事で解説しています。

障害者雇用の業務切り出しとは?組織に必要な仕事から業務を設計する方法

考え方を知ることと、自社の業務を選定することは同じではありません。

どの業務を候補として残すのか、どこまでを一つの役割にするのか、どのような人材要件を設定するのかは、企業ごとに異なります。

具体的な業務選定や役割設計については、個別に業務内容と組織体制を確認しながら整理する必要があります。

よくある質問

Q:障害別に向いている仕事はありますか

障害特性についての一般的な傾向は、仕事の進め方や配慮を検討する参考になります。

ただし、同じ障害名でも、経験、能力、希望、働きにくくなる条件は異なります。障害名だけで仕事を決めず、役割に必要な条件と本人の情報を具体的にすり合わせてください。

Q:他社で多い仕事をそのまま取り入れてもよいですか

その仕事が自社にも必要で、継続的な成果につながるのであれば候補になります。

他社で実施されているという理由だけで取り入れると、仕事量が不足したり、役割や評価基準が曖昧になったりすることがあります。

Q:中小企業でも障害者に任せる仕事をつくれますか

企業規模にかかわらず、品質、業務効率、人手不足、情報管理など、自社が抱えている課題から仕事を考えられます。

スタックスのように、フルタイム一人分に満たない業務を短時間勤務と組み合わせる方法もあります。

Q:先に人を採用してから仕事を考えてもよいですか

ケースによります。

特定の業務を担当する人材として採用する場合は、基本的に採用前に、想定する役割、主な業務、必要な能力、勤務条件、指示・評価体制を整理しておく必要があります。

一方、新卒の総合職採用のように、職務を一つに限定せず、複数の部署や業務で経験を積む人材として採用する場合もあります。また、本人の専門性や経験、強みを確認したうえで、採用後に配属先や担当範囲を具体化する場合もあるでしょう。

ただし、この場合も、まったく何も決めずに採用するのではなく、事前に基本条件を、採用前に整理してことをおすすめします。

大切なのは、採用と業務設計の順番を一つに固定することではなく、自社の採用方針に合った形で、組織に必要な役割と本人との適合を確認することです。

まとめ

障害者雇用で実際に多い職業を知ることは、自社で仕事を考える参考になります。ただし、職業別のデータは、現在働いている人の分布を示したものであり、障害別の適職を示すものではありません。

必要なのは、

  • 組織に必要な成果を確認する
  • 成果につながる仕事を見つける
  • 目的・成果・判断範囲を含む役割として設計する
  • 必要な人材要件を明らかにする
  • 本人の経験・能力・希望・配慮とすり合わせる
  • 採用後も役割を見直す

ことです。

スタックスの事例からも分かるように、障害者雇用の仕事は、障害者に任せやすい作業を探すことから始めるものではありません。

組織のボトルネックや経営課題を確認し、会社に必要な仕事と人材を結びつけることが重要です。

自社に必要な仕事と人材を整理したい企業の方へ

障害者雇用コンサルティングでは、実際の業務内容や組織課題を確認しながら、

  • 候補となる業務の選定
  • 組織に必要な成果と役割の整理
  • 業務量・判断範囲・評価基準の確認
  • 採用する人材要件の具体化
  • 採用後の指示・相談・見直し体制

を、自社に合う形で整理します。

まず自社で起きていることを整理したい場合は、30分相談をご利用ください。

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