2026年10月18日更新
障害者雇用を進めようとしたとき、「任せる仕事がない」という壁にぶつかる企業は少なくありません。
各部署に「何かお願いできる仕事はありませんか」と聞いても、「特にない」「簡単な作業なら少し」と言われる。そこで、コピーやファイリング、データ入力などを少しずつ集めて仕事をつくる。
けれど、しばらくすると仕事がなくなったり、本人が毎日のように「次は何をすればいいですか」と聞く状態になったりすることがあります。
このとき、一度見直したいのは「仕事が本当にないのか」ではなく、「どこから仕事を探しているか」です。
障害者雇用で仕事を考えるときは、「障害者にできる仕事」から始めるのではなく、組織の中で必要なのに十分にできていない仕事や役割から考えることが重要です。
- 「任せる仕事がない」と感じやすい理由
- 障害者にできる仕事ではなく、組織から仕事を見る考え方
- 「業務の切り出し」と「役割設計」の違い
- 自社で仕事を考えるときの最初の視点
「障害者にお願いできる仕事はありますか?」では、仕事が出てこないことがある
障害者雇用の担当者になると、最初に各部署へ「障害者雇用でお願いできそうな仕事はありませんか」と聞くことがあります。
この聞き方自体が間違っているわけではありません。ただ、「障害者に任せる仕事」と聞かれた側は、自分が持っている障害者雇用のイメージから仕事を考えやすくなります。
その結果、「簡単な仕事」「ミスが起きにくい仕事」「定型的な作業」といった範囲だけで探すことになり、候補がなかなか出てこないことがあります。
さらに、いくつかの部署から細かな作業を集めても、それぞれが単発の仕事であれば、「その人は会社の中で何を担う人なのか」が見えにくくなります。
仕事を集めることと、役割をつくることは同じではありません。
「仕事がない」と感じた会社で起きていたこと





マンガの中では、最初に「障害者にできる仕事」を探していました。しかし、視点を変えて組織を見ると、後回しになっていた仕事や、特定の社員に負担が集中していた仕事が見えてきました。
ここで大切なのは、障害者雇用を考えないことではありません。
障害者雇用を考える。ただし、障害を仕事設計の起点にしない。
この順番の違いが、見つかる仕事の幅を変えます。
最初に見るのは「人」ではなく「組織」
仕事が見つからないときには、「この人に何ができるか」を考える前に、会社の中で何が起きているかを見てみます。
例えば、必要なのに後回しになっている仕事はないでしょうか。特定の社員だけが抱えている仕事や、本来は専門的な仕事に集中したい社員が、その周辺業務まで担当していることもあります。
また、外注している業務や、担当者によって品質にばらつきがある仕事、今後もっと力を入れたいけれど手が回っていない仕事が見つかることもあります。
探したいのは「余っている仕事」ではなく、「組織に不足している機能」です。
「誰かに渡してもよい仕事」ではなく、「この仕事を誰かが担ってくれたら、組織として助かる」というところから考えると、障害者雇用の仕事の見え方が変わってきます。
「業務の切り出し」だけでなく、「役割」として考える
業務を細かく分けることは、障害者雇用の仕事を考えるうえで有効です。ただし、作業を細かくすることだけが目的になると、単発の雑務を集める形になりやすくなります。
例えば、データ入力という作業があったとしても、「入力できればよい」だけでは、その仕事が組織の中で何のためにあるのかは分かりません。
一方で、「営業担当者が顧客対応に集中できるよう、顧客情報を整理し最新の状態に保つ」という役割として考えると、必要な仕事、その人に期待すること、仕事の広がりが見えやすくなります。
「何をやってもらうか」だけではなく、「何を担ってもらうか」まで考える。
これが、単なる業務の切り出しから役割設計へ進む一つのポイントです。
「障害者にできる仕事を考えない」という意味ではない
ここまで読むと、「結局、組織に必要な仕事の中から、障害者ができる仕事を選ぶのではないか」と感じるかもしれません。
最終的に、その仕事を担える人を採用するという点では同じです。
違うのは、出発点です。
最初から「障害者に何ができるか」と考えると、担当者や現場が持っている障害者像によって、候補となる仕事が限定されます。
一方、先に「会社として何が必要なのか」を明らかにしておけば、その仕事に必要な能力や条件を考えたうえで、それを担える人を探すことができます。
障害から仕事を決めるのではなく、仕事を明確にしてから、人との組み合わせを考える。
雇用では、まず仕事を定義することが重要です。仕事が定義されていなければ、その後に必要となる配慮や調整も考えにくくなります。
- 各部署に聞いても「任せる仕事がない」と言われる
- コピーや入力など、単発の作業を集めて仕事をつくっている
- 本人が「次は何をすればいいですか」と聞くことが多い
- 一方で、社内には後回しになっている仕事や、負担が集中している人がいる
仕事づくりを、もう少し深く考えたい方へ
この記事では、「任せる仕事がない」と感じたときに、最初にどこを見るかまでを整理しました。
実際に自社で進めるときには、見つけた仕事をどこまで任せるのか、どの程度の判断を求めるのか、どのような人材要件にするのか、どんな環境や配慮が必要なのかまで考えていく必要があります。
ここから先は、会社の事業内容や組織、現在雇用している人によって答えが変わります。
よくある質問
Q:障害者雇用では、どのような仕事を任せるとよいですか?
障害名だけで「この仕事が向いている」と決めることはできません。まず会社として必要な仕事や役割を明確にし、その仕事に求められる正確性、スピード、判断、対人対応などを整理したうえで、本人の得意・苦手や必要な環境とすり合わせて考えます。
Q:単純作業を任せるのはよくないのでしょうか?
単純作業そのものが問題なのではありません。その仕事が組織に必要であり、本人が担う役割として意味があるのであれば、十分に価値があります。問題になりやすいのは、「障害者にできそうだから」という理由だけで作業を集め、仕事の目的や役割が曖昧になっている場合です。
Q:各部署から仕事が出てこない場合、どうすればよいですか?
「障害者にお願いできる仕事はありますか」と聞くだけでなく、後回しになっている仕事、負担が集中している仕事、本来業務を圧迫している周辺業務など、組織の困りごとから見ていく方法があります。具体的な設計は企業ごとに異なるため、自社の業務や組織構造に合わせて整理することが必要です。
まとめ|「仕事がない」ではなく、仕事を見る起点を変えてみる
障害者雇用で「任せる仕事がない」と感じたとき、すぐに簡単な仕事を集める必要はありません。
「障害者に何ができるか」から始めるのではなく、会社の中で必要なのに十分にできていないことは何か、誰かに負担が集中していないか、本来もっと力を入れたい仕事はないか、と組織側から見てみます。
すると、「障害者用の仕事」ではなく、会社にとって必要な役割として仕事を考えられるようになります。
障害者雇用を考えないのではありません。障害を、仕事設計の起点にしない。
その視点を持つことが、本人にとっても、組織にとっても意味のある仕事をつくる入口になります。
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