高次脳機能障害の障害者と一緒に働くときに配慮すべき点とは?

高次脳機能障害の障害者と一緒に働くときに配慮すべき点とは?

2017年12月2日 | 障害別の特性・配慮

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高次脳機能障害は、外見からはわかりにくく、症状は個別性が高いことが特徴です。高次脳機能障害の「高次の脳機能」とは、脳の考える機能に相当し、この人間らしさを司る部分が損傷されることによって、記憶力、注意力、感情コントロールの低下などの症状が見られるようになります。

このような症状は、周囲からも本人も見えないため、本人は自分自身に障害があるという自覚を持つことが難しく、周囲の人から誤解を受けやすくなってしまうことが生じます。

今回は、高次脳機能障害とはどのような特性があるのか、また職場でどのような配慮ができるのかについて考えていきます。

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害は、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、この中には失語症、失行症、失認症、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれます。

障害者雇用で高次脳機能障害といわれるときには、支援が必要な障害支援的観点から、認知障害に関する症状がある場合を指すことが一般的なようです。

具体的なイメージとしては、脳の損傷があるものの身体的に麻痺がなく、記憶障害や注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害を主たる要因として、日常生活及び社会生活への適応が難しいことが見られます。高次脳機能障害は、精神障害者保健福祉手帳の交付対象者となっていますので、手帳を持っていれば障害者雇用としてカウントすることができます。

高次脳機能障害の症状

記憶障害

前向性健忘および逆行性健忘があります。健忘は、記憶障害のうち、特に宣言的記憶の障害された状態を指します。宣言的記憶とは、人間の記憶の1つで事実と経験を保持するものとして、意識的に議論したり、宣言(言明)したりするものです。

前向性健忘は、受傷などをした時点以降の記憶が抜け落ちる状態になることを指します。記憶障害回復後の出来事を記憶できないので、新しい情報やエピソードを覚えることができなくなってしまいます。

逆行性健忘は、受傷・発症より昔の記憶が抜け落ちた状態になることを指します。ある時点から過去、昔の記憶がなくなってしまうため、記憶が引き出せない状態になります。特にエピソードや体験に関する記憶がなくなってしまいます。

注意障害

集中困難・注意散漫は、ある刺激に焦点を当てることが困難となり、他の刺激に注意を奪われやすくなります。軽度の注意の持続・維持困難である場合には、長時間注意を持続することが困難になります。

時間の経過とともに、作業や課題の成績が低下します。実際に、作業や課題をこなせるものの、最初はできても集中力が持たない状況になってしまいます。

遂行機能障害

行動して物事を遂行するための計画や実際に実行する時に、なんらかの障害が見られます。

行動の目的・計画の困難さでは、ゴールを設定する前に行動開始してしまうという特徴があります。そのために結果が成り行き任せになったり、衝動的な行動となってしまいます。

また、明確なゴールを設定できないために、行動開始することが困難になり、そのためにモチベーションの欠如や行動の低下につながることがあります。実際に物事を遂行する能力はあるので、スモールステップで具体的な方法で指示されることによって、行動することはできます。

実際に実行することの困難さでは、自分の行動を客観的に見て、行動をコントロールすることが難しくなります。

注意力を持続させて自分と周りの環境を客観的に見るプロセスに困難さがあるので、たとえ前もって何らかの約束などを決めていたとしても、衝動的だったり、即時的に行動することによって失敗することがあります。また、一度失敗してもしばしば同じような選択や行動を行ってしまうという特徴があります。

社会的行動障害

意欲の低下や感情のコントロール、対人関係、依存的行動、過度なこだわりがみられることがあります。

例えば、感情のコントロールでは、イライラした気分が徐々に過剰な感情的反応や攻撃的行動にエスカレートし、一度それが始まると行動をコントロールすることが難しくなります。突然興奮して、大声で怒鳴り散らすなどの行動が見られることがあります。

対人関係の困難さとしては、社会的スキルの認知能力や言語能力に難しさが見られます。会話中の急な話題転換や過度になれなれしい発言や距離感、相手の発言に対する反応、文字通りの解釈や、抽象的な判断の困難さなどが見られます。

過度なこだわりは、予測が立たない状況やその場に応じた対応が求められる時に、認知や行動の転換の障害が生じ、固執することがあります。一方で手順が確立していて、予定通りに行動することによってうまく進めることはできます。それでも、新しい問題に対応することは難しいでしょう。

高次脳機能障害の雇用

同じ職場で働くためには、周囲の社員が高次脳機能障害の主な症状について理解することが必要です。すぐに忘れてしまう、注意散漫、目的にかなった行動ができない、過度なこだわりや意欲の低下などは、障害によるものですので、周囲の合理的配慮が必要です。

また、高次脳機能障害の症状は、個別性が高いので、まず個々人の症状の特徴を把握します。注意が必要なのは、見えない障害ゆえに見た目と実際にできることのギャップが大きいということです。

個々人の症状の特徴や特性を把握することは簡単ではありませんので、高次脳機能障害の支援経験のある就労支援機関等と連携するとよいでしょう。

職場における配慮

仕事や作業の手順をわかりやすく表示する

業務を行っているときでも、今まで何をしていたのか、何のために行動していたのかがわからなくなってしまい、指示されたことと違うことをおこなったり、混乱したりする様子が見られることがあります。

出勤から退勤までの1日の流れを時系列に、どこで、何をするのかを明確にします。業務内容は定型化して、進捗管理表などで管理をしましょう。

また、記憶障害が重い人にとっては同じ場所で同じ作業を行なうことが、毎回初めて行っているのと同じ感覚になることがあります。部屋のレイアウトや道具の置き場なども、初めての人でもわかるような環境づくりをおこなうとよいでしょう。

一時一事の法則を守る

記憶するキャパシティが少ないので、一度にたくさんの情報を与えられると、作業処理の効率が悪くなったり、スピードが落ちてしまったりします。

いくつかのことに同時に注意を向けながら行動することが難しいので、作業の手順を1つずつ行動単位に細分化します。そして、いくつかのことを同時にやらずに1つずつ行なっていきます。

集中力を保てる環境をつくる

注意障害があると、目の前の人の作業が気になって集中できなくなったり、「わかりました」と返事はしても指示を聞きもらしたりすることがあります。作業台を壁に向けるなど、周囲の人が目に入らないように、集中しやすい環境をつくることができます。

また、持続的に集中力が続くことが難しかったり、疲れやすくなるので、こまめに休憩が取れるようなスケジュールを組んだり、1つの行動を小分けにして、できるところから取り組むようにします。

判断することを減らす

いくつかの選択肢がある場合、そこから自分で選んだり、判断することが苦手な場合があります。判断する状況をなるべく減らして、あらかじめ行動する内容を決めておきます。その場で判断する必要がある状況を想定して、作業の組み立てを行なうことができます。

動画の解説はこちらから

まとめ

高次脳機能障害の人と一緒に働くときに、知っておきたいことについてみてきました。

まず、高次脳機能障害の症状は、すぐに忘れてしまう、注意散漫、目的にかなった行動ができない、過度なこだわりや意欲の低下などが見られます。そのため働きやすい環境をつくるためには、周囲の社員が高次脳機能障害の主な症状について理解することが必要です。

見えない障害ゆえに見た目と実際にできることのギャップが大きいので、高次脳機能障害の支援経験のある就労支援機関等と連携してサポートしてもらうとよいでしょう。

職場における配慮としては、仕事や作業の手順をわかりやすく表示することや、一時一事の法則を守ること、集中力を保てる環境をつくること、判断することを減らすことなどが有効的です。

参考記事

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高次脳機能障害で就職・復職を目指すときに知っておきたいこと

高次脳機能障害とはどのような障害?~原因や特徴~

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