高次脳機能障害とはどのような障害?~原因や特徴~

高次脳機能障害は、事故や病気で脳に損傷を受けたために、その後遺症として記憶や注意、社会的行動などの認知機能が低下した状態をいいます。全国で約27万人いると言われており、そのうち働く層にあたる18歳以上65歳未満は少なくとも約7万人と推定されています。

高次脳機能障害は日常生活の中で現れますが、外見や少しの関わりでは障害があると見えにくいため周りの人には理解しにくい障害と言われています。ここでは具体的にどのような障害なのか、原因、特徴などを説明しています。

高次脳機能障害の原因

高次脳機能障害の起こる原因は、主に次のようなものがあります。

外傷性脳損傷

交通事故や転倒、転落などにより脳が直接損傷を受けたり、脳を包んでいる硬膜の外に血が溜まって脳が圧迫されて損傷を受けたために障害が起こります。

脳血管障害

脳の血管が詰まってしまう「脳梗塞」、脳の血管が破裂して起こる「脳出血」、動脈瘤などが破れて脳の表面を中心に出血を生じる「くも膜下出血」が主な原因です。

その他

心肺停止状態が長かったときなどに脳の神経が障害を受ける低酸素脳症や、脳腫瘍などが原因となることもあります。

高次脳機能障害の診断基準とは?

高次脳機能障害に医学的に統一した定義はなく、専門家によっても高次脳機能障害を示す範囲は異なっています。行政的な定義としては「記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害」となっています。

高次脳機能障害の診断基準は、以下のようになっています。

主要症状等

1. 脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。
2. 現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。

検査所見

MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。

除外項目

1. 脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが上記主要症状(Ⅰ-2)を欠く者は除外する。
2. 診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。
3. 先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。

診断

1. Ⅰ~Ⅲをすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。
2. 高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後において行う。
3. 神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。

出所:「高次脳機能障害者支援の手引き」(2008年)厚生労働省

高次脳機能障害にあらわれる特徴

高次脳機能障害には、注意障害、記憶障害、失語症、遂行機能障害、行動と感情の障害などがあります。どのような症状があるのか見ていきましょう。

記憶障害

記憶障害は、脳の海馬が損傷された場合に起こりやすい障害と言われています。損傷を受ける前と比べて、新しいことが覚えにくい、覚えたことを思い出せない、見たことや聞いたことをすぐに忘れてしまう、忘れたことの自覚がない、昨日までできていたことが今日忘れている・できなくなる、過去の記憶の順番に混乱が生じやすいなどの症状が見られます。

注意障害

注意障害は、脳が広範囲に損傷された場合に起こりやすい障害と言われており、1つのことに集中できない、同時に物事をこなせない、他のことに行動を切り替えられないなどの症状が見られます。

注意にはいくつかの機能があり、損傷を受ける前と比べてどの機能が低下しているのかによって対応が変わってきます。いくつかの注意機能と症状のあらわれ方があります。

続ける

・周りの音や声に注意が散りやすくなった
・1つのことに集中できる時間が短くなった

見つける

・目の前にあるのに気づかない

同時にいくつかのことを行う

・何かをしながら、他のことにも注意をむけたり、同時に複数のことを処理することができない

場面を変えたときの対応が

・集中して本を読んでいるときに声をかけても気づかない
・読むのを中断して別のことをしたときに、本を読んでいたことやどこまで読んでいたかを忘れてしまう

遂行機能障害

遂行機能障害は、前頭葉が損傷された場合に起こりやすい障害と言われています。計画を立てて実行するまでの遂行機能にあらわれるので、計画が立てられない、課題や作業を正しい方法で続けられない、実行できても仕上がりに無頓着といったことが起こりやすくなります。

社会的行動障害

子どもっぽくなったり周囲に依存的になるほか、怒りっぽくなる・突然泣き出すなど感情のコントロールに問題をきたす、このほか、周囲への反応が乏しく意欲に欠ける場合もある

失語症

失語症が一般的に左大脳半球が損傷された場合に起こりやすい障害と言われています。話そうとしても言葉が出てこない、相手の言っている言葉の意味が分からない、文章が読めない、文字が書けないなど、「話す」「聞く」「読む」「書く」という言葉によるコミュニケーションの障害があらわれます。

話す

・頭ではわかっているのに言葉が出ない
・言葉を言い間違える
・相手に話を理解してもらえない

聞く

・話をいても理解できない
・わかったつもりでやったら間違えた

読む

・文字や数字を間違える、読めない

書く

・文字を間違える、書けない

半側空間無視

半側空間無視は、脳の頭頂葉が損傷された場合に起こりやすいといわれています。左(または右)側が見えているのに気づかない(見ていない)状態をいいます。

次のような状態が見られます。
・食卓で左半分(または右半分)のおかずだけを食べのこす
・外出時、左(または右)からきた車や人、ものに気づきにくく、時にはぶつかることもある
・数字を読む時、「8」を「3」と読むことがある
・数列を読む時、桁を間違える

行動と感情の障害

行動と感情の障害は前頭葉が損傷された場合に起こりやすい障害と言われています。感情のコントロールや状況に適した行動が行いにくくなります。あらわれ方としては、次のようなことがあります。

・気持ちが沈みがち
・怒りっぽい
・不安になる
・意欲がわかない
・欲しいもの、したいことがあると我慢できない

これらの症状はいずれも認知機能に関わっています。認知機能とは脳の中で理解し考え、決定してどのように行動に移すのかというもので、誰にもそのプロセスを見ることができません。高次脳機能障害が「見えにくいわかりにくい障害」といわれる理由は、この認知機能のためであり、そのため周囲からは理解されにくく、気づきにくい障害となっています。

また、単一的に現れるのではなく複合的に組み合わされてあらわれることもありますし、脳の損傷部位などにより人それぞれ症状の現れ方が異なります。さらに受障している本人がその症状を自覚しにくいことも特徴です

高次脳機能障害は障害者手帳の対象になる

高次脳機能障害があると診断された場合、器質性精神障害として精神障害者保健福祉手帳の交付対象となります。また、脳の損傷によりまひや失語症があるなど身体に障害のある場合は、身体障害者手帳の交付対象にもなります。

高次脳機能障害は器質性精神障害として『精神障害者保健福祉手帳』の交付対象となりますが、交付されるには、市町村等の担当窓口で申請が必要となります。また、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳いずれにおいても、個人の障害の状態等によって判断されるため、申請すれば必ず交付されるものではありません。

障害者手帳については、こちらの記事も参考にしてください
↓  ↓  ↓
精神障害者保健福祉手帳の取得方法や判断基準とは?

発症・受傷前の状態に戻ることはできるのか

リハビリを続ければいつかは発症・受傷前の状態に戻ることができるのかという疑問が出てくるかもしれません。高次脳機能障害はその名のとおり「障害」のため、現状ではリハビリを継続することで症状が大幅に改善することは難しいといえるでしょう。

しかし、周囲の適切なサポートや失われた機能を補う代償手段を獲得することによってできなかったことやできづらかったことができるようになることはできます。

まとめ

高次脳機能障害は日常生活の中で現れるものの、外見や少しの関わりでは障害があると見えにくいため周りの人には理解しにくい障害と言われています。高次脳機能障害が、具体的にどのような障害なのか、原因、特徴などを説明してきました。

脳の中で理解し考え、決定してどのように行動に移すのかという認知機能は、誰にもそのプロセスを見ることができません。高次脳機能障害が「見えにくいわかりにくい障害」といわれる理由は、この認知機能のためであり、そのため周囲からは理解されにくく、気づきにくい障害となっています。

リハビリを継続することで、発症・受傷前の状態に戻ることができるのかという点については、高次脳機能障害はその名のとおり「障害」のため症状が大幅に改善することは難しいといえるでしょう。しかし、周囲の適切なサポートや失われた機能を補う代償手段を獲得することによってできなかったことやできづらかったことができるようになることはできます。

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