障害者の短時間雇用を成功させるための考え方、取り組み方 前編

障害者の短時間雇用を成功させるための考え方、取り組み方~スタックス(川崎)の事例 前編~

2021年08月5日 | 企業の障害者雇用

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障害者雇用が進みつつありますが、短時間での障害者雇用は雇用率に反映されないこともあり、企業にとっては取り組みにくいものの一つとなっています。一方で、20時間未満の雇用について躊躇される企業が多い中で、特に精神障害の方にとっては、長時間の勤務が難しいことも多く、20時間未満の就労を希望される場合も少なくありません。

このような中で、短時間雇用の障害者雇用を受け入れ、はじめは週10時間の雇用からスタートし、現在は25~30時間と勤務時間を長くして雇用されている会社があります。川崎市にある株式会社スタックス(事業内容:精密板金業)さんです。

短時間労働の方を雇用された経緯や、企業にとってどのように短時間雇用を活かせるのか、また社内の理解をどのように進めていかれたのか、代表取締役社長の星野佳史様にお話をお聞きしました。

株式会社スタックス 

事業内容:精密板金業(宇宙・航空関係、医療機器、通信機器、免震台脚(スウェイフット)等の部品製造加工)

従業員 53人、障害のある方 3人(身体、知的、精神)

障害者の方の仕事内容は、製品の出荷検査が主な業務

Q:会社の事業内容について、お聞かせください。

A:精密板金という仕事をしていて、わかりやすく言うと金属加工をしている会社になります。大きさで言うと、大きな物でも両手に乗るサイズ位なので、製造業の中でもサイズ的には小さなものを扱っています。具体的には、宇宙・航空関係の部品や医療機器、通信機器、免震台脚(スウェイフット)など、少し特殊なものを作っています。宇宙・航空関係の部品では、人工衛星に関わるものも含まれます。

事業所は、川崎と勝浦(千葉)、十日町(新潟)にそれぞれあり、製造は勝浦(千葉)、十日町(新潟)が中心に担っており、本社の川崎では管理部門や出荷検査を担っています。本社の出荷検査部門に、障害者の社員が3人います。

当社製品の大半のものは、エンドユーザーが国になるものが多く、仕様についてはかなり厳しいものが要求されます。そのため本社の出荷検査では、かなり力を厚めに人材をあてており、ここに彼らも加わってもらっています。

Q:障害者社員の方はどのような業務をされていらっしゃるのでしょうか。

A:障害者の社員は3人います。

1人目は、知的障害で、勤務して7年目になります。6年目から正社員になりました。彼はもともとフルタイムで働いていたこともありますし、会社としてもフルタイムのパートから責任のある職務についてほしいと思っていました。そこに本人の希望もあり、正社員登用となりました。

主な業務としては、製品の外観検査、傷や汚れ、変形がないかを検査しています。また、測定器具のノギス(寸法を精密に図る機器)を用いて図ることもしています。他にも2人の障害者メンバーがいるので、彼らのリーダー的な役割も果たしています。

2人目は、勤務して4年目の精神障害(発達障害)の手帳がある社員です。短時間雇用からの1日2時間の勤務で週5日からスタートしました。1年半~2年ほどかけて、今の週25時間勤務まで、少しずつ勤務時間を伸ばしてきました。業務は、製品の外観検査、傷や汚れ、変形の検査をしています。また、発達障害の特性を活かして、組立業務も行っています。

3人目は、もう少しで勤務してから4年目になる社員です。手帳の種別は身体障害ですが、高次脳機能障害があります。後天性の障害で、本人の希望もあり、詳しいことはこちらでも把握できていません。歩行が難しかったり、発話が一般の人の半分から3分の1くらいのスピードといったところが見られます。彼も1日2時間、週5日の短時間勤務からスタートし、勤務時間を少しずつ伸ばして、現在、週32.5時間に勤務になりました。

担当業務は、他の2人と同じく製品の外観の検査を行っていますが、前職で大手機械メーカーのエンジニアをしていたので、その経験や知見を活かしてもらえるような業務にも少しずつ関わってもらおうと思っています。そのため社内の製造業の工程分析や、不良品発生の原因分析や、対応策についての提案なども担当してもらっています。ただ、障害の特性上、記憶障害や認知機能の低下が見られるので、その辺も考慮しながら慎重に業務をしてもらっています。

障害者雇用のきっかけは会長の強い思いと就労体験からはじまった

Q:障害者雇用を始められたきっかけをお聞かせください。

A:障害者雇用をはじめたきっかけは、前社長(現会長)が「社会貢献したい」との強い思いがあり、障害者雇用の就労体験の受け入れをしたことです(2020年4月から星野佳史社長が社長に就任)。

8~9年くらい前から社会貢献やCSR活動の一貫として障害者雇用を進めたいという話があったのですが、私としては当社では難しいのではないかと考えていました。CSRとしてということであれば、大企業や余裕のある企業が推進していけばよいと考えていましたし、受け入れるのは体力的にも、また対応できるリーソスと言った面からも厳しいと思っていました。

しかし、会長の強い思いがあり、就労体験の受け入れが始まりました。半ば強引のような形でスタートしましたが、当初は体験ならいいかなと思っていたんです。その中で、就労体験に関わることになり、体験は1人1週間ずつ、1日6時間~7時間働いてもらうという感じで、5人の受け入れをしました。

このときに実習の内容として、どのような業務をしてもらおうかと考えたのですが、このときは、まだ障害者ができることがイメージできなかったことや、やはり障害者が仕事をすることに懐疑的や否定的なところもありましたし、業務に何か影響があっては困るとも思っていました。そこで、一番問題がない作業としては、すでに検品が終わっているものに対して、再検査、再検品をおこなってもらうことを体験としておこなうことにしました。

はじめは数を数えるようなことから体験してもらっていたのですが、1人ずつ実習を受け入れていくうちに、後半になってくると、こちらも慣れてきたこともあり、もう少しできるかな、物足りないんじゃないかなという気がしてきました。そこで、計数だけでなく、傷や変形のチェックもしてもらおうということで作業をプラスしました。もちろんこの工程もすでに検品が終わっているもので、そこで見落としがないような範囲でしてもらっていました。

こちらとしては、業務に間違いが生じないような形でおこなっていたんです。ところが、実習が後半になってきたときに、ある実習生が終わりましたと報告するのと同時に、「検査、検品した中にこんなのが入っていました」って、1個品物を持ってきてくれたんです。それを見ると、確かに当社の品質管理上の基準ではNGに当たるもので、製品にはできないものでしたし、本来入っているはずのないものだったんです。それを見つけ出してくれたことから、私の見方や考え方がちょっと変わるきっかけになりました。

こういう能力があることや、仕事に対する成果があることを実感しましたし、その体験を経て、「もしかしたら障害者雇用ができるかもしれない」という考えもでてきました。

それで、体験就労が5人終わったあとにも、引き続き就労体験の受け入れをおこないました。結果的に1年間で3回ほど就労体験することになり、のべ15人、つまり15週、彼らと一緒に仕事をした経験から、真剣に障害や雇用に取り組むことを考えるようになりました。また、そのタイミングで人手不足などもあり、1人目の知的障害の雇用を受け入れることにつながりました。

就労支援機関との関係づくり

Q:就労機関との連携をされていらっしゃいますが、どのようにして関係づくりをされていらっしゃるんですか。

A:1人目を雇用したときは、就労移行支援事業所から採用しました。そして、1、2年ほどは就労移行支援事業所から定着支援を受けていましたが、支援が移るということで、はじめて公的な就労援助センターとの繋がりができました。

川崎には3つ就労援助センターがあって、大きく分けると北側、真ん中、南側とあります。1人目は、真ん中のセンターとやり取りをしていましたが、その後、他のセンターでも情報共有されていたようで「短時間雇用してみませんか」と声がかかりました。外部の支援機関とは連携をとり、かなり活用させてもらっています。

障害者雇用には、会社の中での居場所が必要

Q:障害者雇用されて、何か変化はありましたか。

A:障害者雇用をはじめたことで少し私の中でも変化がありましたが、当初、考えていたように、社会貢献や福祉の延長線上ではないというところは変わっていません。仕事をしてもらうからには利益に直結する業務に就いてもらうことや、会社にとって必要不可欠な戦力になること、またそうするためには会社に居場所があることが大前提だと思っています。

この居場所があるというのは、みんなが気にかけてくれるような福祉としての居場所ではなくて、社会人として、会社人としての居場所があるという意味です。将来的に本人しかできない業務を担ってもらい、法定雇用率とかは関係なく、組織にいてもらわなければ困る存在になることを目指していきました。

知的の彼を雇用して、3年位たった頃でしょうか。短時間雇用はどうですかと川崎市のほうから声がかかりました。雇用してみて、こちらが思うようにいかないところはたくさんありましたが、それでも想定していたものと全く違っていたかと言うとそういうわけでもなく、時間はかかるものの成長しているのはわかりました。

また、彼の場合は知的のB2なので、コミュニケーションもそれほど問題を感じることもありませんでした。周囲の社員ともうまく溶け込んでいるのを見て、続けていけそうだなと感じていたタイミングのところだったので、短時間雇用の受け入れをすることになりました。

障害者の短時間雇用と業務の関係

Q:短時間雇用の業務については、どのように考えられたのでしょうか。

A:短時間雇用の話を聞いた上で、当社の業務に合うところがありそうだなと感じました。もともと障害者雇用に関係ないところで、当社の業務の文化的な面から、一見すると1つの業務なんですけれど、それを細かく分けて業務を行っているところがありました。それで、短時間雇用と聞いたときに、その細かく分けていることをマトリックスで分けてみようかなと思ったんですね。

そこで業務を4つの区分に分けて精査してみました。一般的によく言われるものですが、次の4つの区分に分けられるものです。

・重要かつ緊急
・重要ではないが緊急
・重要だが緊急ではない
・重要でも緊急でもない

そして、業務を分析したところ、「重要だが緊急ではない」仕事というのが、割と手がついていないということがはっきりわかったんです。それで、この「重要だが緊急ではない」部分に障害者の短時間雇用を当てることができないかなと考えたんです。そもそもこの「重要だが緊急ではない」ものを突き詰めたところ、いつかはやりたいなと思っていたことで、それができると「付加価値を生む仕事」だったり、いつかはやらなければならない仕事で「業務効率化に寄与する仕事」があることに気づきました。

まずは、いつかはやりたいなと思っている「付加価値を生む仕事」という点から考えてみました。一般の製造業だと、製造ロットが何千個、何万個というところもありますが、当社ではワンロットでつくる数というのは、それほど多くありません。1個から数十個、数百個という規模が多いんです。

そのため極力全部を検査するような検査体制をとっていますが、そうは言っても人員をそれほど割けるわけではなく、外観検査業務を専従にすることは難しい状況がありました。それで、最終的には1個1個検品と梱包の兼務体制をとっていました。しかし、検品して包むという工程の中で、どうしても見落としが発生することがあり、最悪の場合には、お取引先に行ってから発見されるということもありました。

当社の場合には、そういうことが発生すると、お詫びと、製品の差し替えで済まないんです。原因の究明と、再発防止策の策定と、しばらくしてから、それがきちんと機能しているかの確認もあり、かなりの見えないコストが掛かっていました。これをどうにかしたいという思いがありました。

製品の傷や異常だけをチェックする人がほしいとは思っていたんですけれど、ボリューム的にはそれほどありません。ずっと誰かが1日中やる量や、毎日発生するわけでもない。でも、それを1週間分まとめてやると、お客さんの納期もあって厳しい。つまり、1日少しずつやることが、業務の流れとしても一番理想だったわけです。そこで、短時間で雇用するということが、ここできれいにハマることになりました。

検品する製品はどんどん変わりますが、やらなければならない業務はなくなりませんし、変な話、やりすぎるということがないんです。可能であれば、2回でも、3回でも検品するほうがいいんです。仕事としてもなくなりづらく、業務を担当する人にとっても「やることないんです」という状況が発生しにくいので、「じゃあ、ここは短時間雇用の1日2時間雇用でやってみよう。むしろ毎日来てほしい。」ということで、短時間雇用が始まりました。

Q:業務の切り出しとして、短時間雇用の業務は難しいと感じられる企業が多い中で、スタックスさんでは、その点はどのようにお考えですか。

A:業務の切り出しについては、私の持論ですけれど、切り出せない業務はないと思っています。すごく極端なことを言えば、キーボードを打つときにも「A」を押す人と「S」を押す人、「D」を押す人と分けることができるわけです。1人がやる一通りの業務は、概念的には当社でもあるんですが、細かく見ればその中にいくつもの工程があります。

その工程が「1から10」に分けられるとすると、本当にその人がやらなければならないことは、「4、5、6」のところの部分で、「1、2、3」と「7~10」の部分は、他の人でもいいよねという部分がでてくるわけです。そこを「4、5、6」だけやらなければならない人がやれば、精度も効率も良くなる。しかし、「1、2、3」と「7~10」を分けてしまおうという考えると、じゃあそれを誰がやるのというところで止まってしまうことがあります。

そこに対して時間が短いけれどできますとか、むしろ短時間で集中したほうがいいなどの考え方をすると、短時間雇用や障害者の業務としてマッチしてくると思います。他の企業の細かい業務については詳しくはわかりませんが、同じような考え方ややり方は、どこの会社でもできることではないかなと感じています。

後半に続く

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