なぜ配慮が必要なのか?わかりにくい障害を配慮する

なぜ配慮が必要なのか?わかりにくい障害を配慮する

2024年12月17日 | 障害別の特性・配慮

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職場にはさまざまな障害を持つ人が働いていますが、その中でも外見からは分かりにくい「見えにくい障害」が存在します。

例えば、発達障害(ASDやADHD)、精神障害(うつ病や双極性障害)、内部障害(心臓病や糖尿病)などがその代表例です。これらの障害は、外見に現れにくいため、周囲から気づかれにくく、当事者が困難を抱えながらも適切なサポートや配慮を受けられないことがあります。

今回は「見えにくい障害」が職場でどのような課題を引き起こすのか、そして具体的な配慮や支援の方法について解説します。

障害の種類と見えにくさ

障害にはさまざまな種類がありますが、大きく分けると「見えやすい障害」と「見えにくい障害」が存在します。身体障害(例えば、車椅子の利用や義肢装具の着用)は、外見から視覚的に分かりやすい場合が多いです。
一方で、発達障害(ASD:自閉スペクトラム症、ADHD:注意欠如・多動症)や精神障害(うつ病、双極性障害など)、さらに内部障害(心臓病、糖尿病、腎臓病などの慢性疾患)は、外見からは障害や困難の状態が分かりにくいことが特徴です。こういった「見えにくい障害」の場合、周囲の人が気づきにくく、障害の特性や困難さが理解されにくいことがあります。
また、見えにくい障害を抱える当事者は、配慮を必要としていても自ら声を上げにくい状況があります。その背景には、以下のような心理的・認識的な要因が関係していることがあります。

理解してもらえないという不安

「理解されないのではないか」と考えて、困っていることを言い出せない
見えにくい障害は、外見上の変化がないため、周囲の人にその困難さを理解してもらうことが難しいと感じることがあります。例えば、業務のミスが発達障害(ADHDなど)によるものだとしても、「努力不足」「怠慢」と誤解されることを恐れ、困っていることを打ち明けられない場合があります。

周囲の目を気にしている

「周囲から違うと見られたくない」「周囲に迷惑をかけたくない」と考えている人もいます。障害をオープンにすることで、周囲から「特別扱いされるのではないか」「違う目で見られるのではないか」という懸念を持つ当事者も少なくありません。

また、「周囲に迷惑をかけたくない」という思いや遠慮から、自分の困難さや必要な配慮を言い出さず、無理をしてしまうこともあります。特に日本の職場文化では、「周囲と足並みを揃える」ことが重視される傾向があり、自己主張することに抵抗を感じやすいことも影響しています。

自身の障害認識ができていない

本人自身が、自分の障害やその特性に気づいていないケースもあります。発達障害や精神障害は、診断されるまで本人も気づかず、「なぜ自分は人と同じようにできないのか?」と悩み続けている場合があります。
また、診断後も障害を受け入れることが難しく、「自分は周囲と同じように働けるはずだ」と無理を重ねてしまうことがあります。障害の自己認識が不十分な場合、そもそも「配慮を求める」という発想に至らないことが多いです。

見えにくい障害により、職場で引き起される課題

見えにくい障害を抱える当事者は、職場でさまざまな困難を感じています。障害の特性や状態が理解されにくいため、周囲とのコミュニケーションや業務遂行に影響が出ることがあります。どのような課題があるのか、具体的に見ていきます。

当事者の悩みや困りごと

・業務指示が曖昧だと理解しづらい(ADHD)
ADHD(注意欠如・多動症)の特性として、物事の優先順位をつけることやタスクの段取りを組むことが苦手な場合があります。業務指示が抽象的であったり、細かい指示が不足していると、「何をどう進めれば良いのか」理解しづらく、結果としてミスや遅延の原因になることがあります。
例えば、「適当にまとめておいて」「急ぎで対応して」などの曖昧な指示は、混乱を招くことになります。具体的な数字や時間などを示すことで、見通しが立てやすくなります。また、プロセスがいくつかある場合には、順番にすることを示すと伝わりやすくなります。
・コミュニケーションが苦手で孤立しやすい(ASD)
ASD(自閉スペクトラム症)を持つ方は、暗黙の了解や曖昧な表現が理解しづらいことがあり、周囲とのコミュニケーションで誤解や齟齬が生じることがあります。適切な指示やサポートがないと、チーム内での連携が取りづらく、孤立してしまうケースも少なくありません。
冗談や間接的な指示が伝わらず、業務のミスや不和の原因となることがあります。例えば 上司や同僚が場の空気を和ませようと冗談を言った際、ASDの特性を持つ方は冗談だと認識できず、言葉通りの意味で受け止めてしまうことがあります。

上司が「そこまで、やらなくてもいいんじゃない?」と冗談めかして言った言葉を真に受け、当事者が本当に作業を止めてしまい、業務が進まなくなってしまうことがあります。周囲は「冗談だと分かるだろう」と思う一方、当事者は指示通りに行動したつもりであり、双方の間に誤解や不信感が生じることになります。
・体調の波があり、集中力や業務遂行に影響が出る(精神障害、内部障害)
精神障害(うつ病や双極性障害など)や内部障害(心臓病、糖尿病などの慢性疾患)では、体調の波があることが特徴です。体調がいい日とそうでない日があり、集中力やパフォーマンスにばらつきが生じやすくなります。「今日は体調が悪い」と言い出せず無理をしてしまい、逆に悪化するケースがある。

企業側の課題

見えにくい障害に対して、企業や職場の周囲が適切に理解・対応できていない場合、次のような課題が生じることがあります。

周囲の社員が「なぜ配慮が必要かわからない」と感じる

見えにくい障害は外見では判断できないため、周囲の社員が「なぜあの人だけ特別扱いされているのか?」と感じてしまうことがあります。その結果、障害を抱える当事者が誤解や偏見の対象となり、人間関係やチームの協力体制に悪影響が及ぶことがあります。

業務の公平性や評価への不安

見えにくい障害を持つ社員に対して業務量の調整や特別な配慮を行う場合、他の社員から「公平ではないのでは?」という不満が出ることがあります。また、障害特性によって業務成果にばらつきが生じる場合、評価をどうすべきか分からず、企業側が適切な人事評価を下せないこともあります。

正しい支援方法や配慮が分からない

見えにくい障害に対する理解や知識が不十分な場合、企業側や管理者は「どこまで支援すれば良いのか」「どのような配慮が必要なのか」が分からず、適切な対応ができないことがあります。支援が不足すれば当事者はさらに困難を抱え、逆に過度な配慮が他の社員との摩擦を生む場合もあります。例えば、 業務環境を改善しようとしても、何が効果的かが分からず対策が進まないという状況になるかもしれません。
見えにくい障害を抱える当事者が職場で活躍するためには、企業側がこうした課題を認識し、当事者の特性に合わせた適切な支援と、周囲の理解促進に取り組むことが不可欠です。障害に対する正しい知識と、柔軟な働き方の導入が、すべての社員にとって働きやすい環境づくりにつながります。

見えにくい障害への具体的な配慮の実例

見えにくい障害の配慮の事例を見ていきます。

発達障害や精神障害の具体的な配慮の実例

タスクを細分化し、視覚的に明確に伝える

ポイントは、大きな業務を小さなタスクに分け、それぞれの内容や期限を明確に示すことです。このようにすることで、作業の優先順位が把握しやすくなります。
具体的には、口頭の指示だけでなく、ToDoリストやフローチャートを使い、タスクを視覚化することが活用しやすいでしょう。
また、指示するときには、「〇〇を進めておいて」ではなく、「〇〇のA部分を●日までに終わらせ、B部分は●日に確認」と細かく伝えていきます。デジタルツール(タスク管理アプリ)を導入し、進捗を一目で分かるようにすることもできます。

コミュニケーション方法を工夫する(文字での指示や確認の徹底)

ポイントは、曖昧な表現や間接的な指示は避け、具体的かつ直接的に伝えることが重要です。口頭で伝えた内容も、文字で補足することで誤解を防ぎます。
具体的には、業務の指示や確認事項は口頭だけでなく、メールやチャットツールを活用し、文書として残すようにします。また、指示した後に「ここまで理解できましたか?」と、確認の時間を設けるようにしましょう。
曖昧な表現(「急いで」「なるべく」)などは使わずに、具体的な期限や優先度、日にちや時間などを明確にを伝えます。

作業環境を調整する(集中しやすい席やツールの提供)

ポイントは、発達障害を抱える方は、外部からの刺激(音や視覚情報)に敏感なことがあります。集中力を維持しやすい環境づくりが重要です。
具体的には、集中しやすい席を提供するために、人通りが少ない場所やパーティションを配置することや、ノイズキャンセリングヘッドホンや間仕切りを活用し、外部の音や視覚的な刺激を軽減することができます。
また、集中力過多になりがちなので、タスクのリマインダーや時間管理ツールを活用し、時間配分をサポートすることもできます。

精神障害や内部障害への配慮

精神障害や内部障害では、体調の波があり、一定のパフォーマンスを維持することが難しいことがあります。そのため、柔軟な働き方や相談しやすい環境づくりに気をつけます。

体調に合わせて柔軟な勤務時間を設定する

ポイントは、体調に波がある場合、柔軟な勤務体制によって当事者の負担を軽減していくことです。具体的には、時差出勤や短時間勤務を導入し、体調が良い時間帯に働けるよう調整できるかもしれません。週の中頃に勤務日数や時間を調整し、業務の進捗を管理するなどしている職場もあります。
また、リモートワークができる体制であれば、リモートワークを許可し、体調に合わせて自宅から働ける環境を整えることもできます。

体調不良時に相談しやすい仕組みを作る

ポイントは、体調不良や困りごとが発生した際に、気兼ねなく相談できる仕組みがあることです。具体的には、定期的な面談を行い、体調や業務負担を確認しておくとよいでしょう。
「困ったときはすぐに相談できる窓口」を設け、上司や人事担当者と連携を図るようにしておきます。また、職場として無理をさせない方針を周知し、必要な休養を取得しやすくしておくことも大切です。

周囲に周知しておく

障害によっては、体調管理が難しい場合があります。しかし、周囲が理解していないと、「怠けている」「手を抜いている」と誤解されることがあります。ポイントは、周囲にも周知してもらい、一緒に働く社員の障害特性や体調管理の難しさを周囲の人に理解してもらうことが大切です。
具体的には、研修や勉強会を通じて、精神障害や内部障害についての知識を共有したり、体調の波や配慮が必要な理由を、当事者の同意を得た上でチームに適切に説明することができます。
見えにくい障害を抱える方に対する具体的な配慮は、特性を理解し、業務内容や環境を調整することが鍵となります。適切な支援によって当事者が安心して業務に取り組むことができ、職場全体の生産性や働きやすさも向上していきます。

まとめ

「見えにくい障害」への理解と適切な配慮は、職場全体の働きやすさと生産性を向上させるための重要な要素です。発達障害や精神障害、内部障害を抱える当事者は、特性や体調の波に合わせたサポートを必要とする一方で、自ら困りごとを伝えにくい現状があります。
企業側が見えにくい障害の特性を理解し、具体的な支援策(業務指示の明確化、柔軟な勤務時間の導入、相談しやすい仕組みの構築など)を取り入れることで、当事者が安心して力を発揮できる環境が整います。また、職場全体で障害についての正しい知識を共有し、周囲の理解を深めることが、誤解や偏見を減らし、共に支え合う職場文化の醸成につながります。
「見えにくい障害」に気づき、適切な配慮を行うことは、当事者だけでなく、一緒に働く社員にとっても理解することで、働きやすい職場に繋がることがあります。そして、企業の柔軟な対応と理解が、組織全体の成長と多様性の推進にも役立ちます。

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