障害者雇用で面接の情報が現場に伝わらない理由

障害者雇用で面接の情報が現場に伝わらない理由

2022年11月8日 | チームで進める障害者雇用

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

登録者限定レポート
「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年7月14日更新

採用面接では、これまでの経験や得意なこと、必要な配慮について丁寧に確認した。ところが、入社後に配属先の管理職から、本人にこんな質問が投げかけられます。

「これまで、どんな仕事をしてきたのですか」「どのくらい仕事を任せてよいのでしょうか」「何か配慮した方がよいことはありますか」本人にとっては、面接ですでに説明したことです。

一方、現場には十分な情報が届いていません。現場に渡されているのは、配慮事項を記載したシートだけということもあります。その結果、本人の経験や能力、仕事への希望は伝わらず、「してはいけないこと」「注意すること」だけが独り歩きしてしまいます。

障害者雇用で採用後のすれ違いが起きる原因は、面接の聞き方だけにあるとは限りません。採用面接で得た情報を、入社後の仕事や役割へつなぐ流れが設計されていないことがあります。

この記事でわかること
  • 採用面接で聞いた情報が、配属先まで届かない理由
  • 配慮事項だけを共有すると、現場がかえって困る理由
  • 本人が何度も説明し直す状態が生まれる背景
  • 採用担当・人事・現場の間で確認しておきたいこと

面接で聞いた情報が、人事の中で止まっている

採用面接は、本人について多くの情報が集まる場です。

どのような仕事を経験してきたのか。何を得意としているのか。どのような環境で力を発揮しやすいのか。働くうえで、どのような困りごとがあるのか。どのような配慮があれば仕事を進められるのか。

面接担当者は、これらを丁寧に確認しています。ところが採用が決まると、その情報が面接担当者の記憶や人事のフォルダの中で止まってしまうことがあります。

現場に届くのは、入社日と氏名、配慮事項を記載したシートだけ。配属先では、本人がどのような仕事をしてきたのか、何を任せる予定なのかがわからないまま、初日を迎えます。

誰かが情報を隠しているわけでも、現場が無関心なわけでもありません。

多くの場合、次のことが決まっていないのです。

  • 面接で得た情報を、誰が整理するのか
  • 何を現場へ伝えるのか
  • いつ、どのような場で伝えるのか
  • 現場からの質問を誰が受けるのか

つまり、情報共有の問題というより、採用から配属までの役割分担の問題です。

配慮事項のシートだけが独り歩きする

障害者雇用では、本人の体調や障害特性、必要な配慮を記載したシートを作成することがあります。

情報を整理すること自体は大切です。しかし、配慮事項だけが現場へ渡されると、本人について伝わる情報が偏ってしまいます。

現場が受け取るのは、

  • 苦手なこと
  • 避けた方がよいこと
  • 注意が必要なこと
  • 特別に対応すること

といった情報です。

一方で、

  • どのような経験があるのか
  • 何ができるのか
  • どのような仕事を任せるのか
  • どこまでの成果を期待するのか
  • どのように仕事を教えるのか

という、雇用や業務に関する情報が抜け落ちていることがあります。

これでは、現場は本人を「一緒に仕事をする社員」として捉える前に、「配慮が必要な人」として受け止めることになります。

本人の能力や経験が見えないまま配慮事項だけが伝われば、現場が戸惑うのも無理はありません。問題は、配慮が共有されたことではありません。配慮と仕事が、切り離された状態で共有されていることです。

本人が何度も説明する「社内営業」が始まる

面接で伝えた内容が現場に届いていなければ、本人は入社後、もう一度説明しなければなりません。

直属の上司に説明する。一緒に働く社員に説明する。人事に状況を伝える。採用担当者に、面接時の話を確認する。
それぞれの部署や担当者を回りながら、自分の経験、能力、困りごと、必要な配慮を説明し直すことになります。

本人が自分から働きかけなければ、関係者がつながらない。これは、本人の説明力やコミュニケーション力で解決すべき問題ではありません。本来、企業側がつないでおくべき情報と関係性を、本人が自分でつなごうとしている状態です。

入社直後から、このような「社内営業」が必要になれば、本人は仕事を覚える前に消耗してしまいます。また、説明する相手によって受け止め方が違えば、「人事から聞いていた話と違う」「本人が後から条件を追加した」といった新たな誤解も生まれます。

すべての情報を現場へ渡せばよいわけではない

ここで注意したいのは、面接で聞いた内容をすべて現場へ渡せばよいわけではないということです。障害特性や配慮事項を社内で共有する場合には、共有する内容と範囲について本人の同意を得る必要があります。

大切なのは、診断名や個人的な事情を広く伝えることではありません。現場が仕事を進めるために必要な情報を整理し、本人と確認したうえで、必要な相手へ伝えることです。

たとえば、現場が知りたいのは、診断名そのものではなく、

  • どのような業務を担当するのか
  • どのような指示の出し方が適しているのか
  • 本人が自分で対応することは何か
  • 周囲に求められる対応は何か
  • 困ったとき、誰に相談すればよいのか

といった、仕事を進めるための情報です。

プライバシーへの配慮と、仕事に必要な情報共有は、どちらか一方を選ぶものではありません。誰に、何を、どこまで伝えるかを、本人と企業が事前に整理することが必要です。

情報共有ではなく、仕事への「変換」が必要

採用面接で得た情報を、そのまま現場へ転送するだけでは十分ではありません。面接で聞いた経験や希望、配慮事項を、入社後の仕事に使える情報へ変換する必要があります。

少なくとも、入社前には次の3点がつながっているかを確認します。

1.本人に何を任せるのか

本人の経験や得意なことが、実際に担当する業務と結びついているか。

採用時に能力や経験を確認していても、配属先で担当する仕事が決まっていなければ、現場は何を任せてよいのかわかりません。

2.現場は何を知る必要があるのか

本人の情報をすべて共有するのではなく、仕事の指示、教育、配慮、体調変化への対応に必要な情報を整理します。

そのうえで、共有する相手と範囲を本人と確認します。

3.判断に迷ったとき、誰に戻すのか

現場で判断してよいことと、人事や採用担当者に確認することが分かれているか。

相談先が決まっていなければ、現場だけで判断するか、本人に直接確認し続けることになります。

この3点がつながっていない状態では、面談やシートを増やしても、同じ場所で情報が止まります。

三者面談をすれば解決するとは限らない

本人、採用担当、人事、配属先の管理職が顔を合わせる場を設けることは有効です。

しかし、関係者を集めるだけで問題が解決するとは限りません。何を決める場なのかが曖昧であれば、本人がもう一度これまでの経緯を説明し、それぞれが話を聞いて終わることがあります。

必要なのは、単なる情報交換ではありません。

  • 担当する仕事
  • 期待する役割
  • 必要な配慮
  • それぞれが担う対応
  • 入社後の相談ルート

をつなげることです。

採用から配属までのどこで情報が止まっているかは、企業によって異なります。

採用担当から人事へ渡っていない会社もあれば、人事から現場へ渡っていない会社もあります。情報は渡っていても、誰が判断するのかが決まっていない会社もあります。

だからこそ、一般的な引き継ぎシートを追加する前に、自社ではどこでバトンが落ちているのかを確認する必要があります。

採用後のすれ違いが、どこで始まっているか整理しませんか
採用面接では丁寧に確認しているのに、配属後に「聞いていない」「話が違う」が起きる場合、個人の伝え方ではなく、採用・配属・業務設計のつながりに問題があるかもしれません。
30分相談では、採用から現場配属までの流れを伺い、情報や判断が止まっている可能性のある場所を一緒に整理します。無理にサービスをご案内することはありません。まず、自社で見直すべき場所を確認したい方にご利用いただけます。

よくある質問

Q:面接で聞いた配慮事項を、配属先へ共有してもよいですか

配慮事項や障害特性を社内で共有する場合は、共有する内容と範囲について本人の同意を得ることが必要です。

診断名や個人的な事情を一律に共有するのではなく、仕事を進めるために誰が何を知る必要があるのかを整理し、本人と確認します。

Q:現場には、どのような情報を伝えるべきですか

配慮事項だけでなく、担当する仕事、本人の経験や得意なこと、指示や教育の方法、期待する役割、困ったときの相談先を伝えることが重要です。

現場が具体的な行動を判断できる情報になっているかを確認します。

Q:本人・人事・現場による三者面談は必要ですか

すべてのケースで必須ではありませんが、認識のずれが大きい場合や、役割分担が曖昧な場合には有効です。

ただし、単に情報を共有するだけでなく、誰が何を担当し、どこまで判断するのかを確認する場として設定する必要があります。

まとめ

障害者雇用で、面接時に聞いた情報が現場へ届いていないことがあります。

特に注意したいのは、配慮事項だけが共有され、本人の経験、能力、担当する仕事、期待する役割が伝わっていない状態です。この状態では、現場は何を任せてよいのかわからず、本人は面接で話したことを何度も説明し直すことになります。

必要なのは、面接情報を保管することではありません。採用時に得た情報を、入社後の業務、役割、配慮、相談ルートへつなげることです。

「聞いていた話と違う」が起きたとき、本人や現場のコミュニケーションだけを問題にする前に、採用から配属までの流れをたどってみてください。

どこで情報のバトンが落ちているのか。それがわかれば、本人の社内営業や現場の善意に頼るのではなく、組織の仕組みとしてつなぎ直すことができます。

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