2026年8月2日更新
障害のある社員の雇用人数が増え、「障害者職業生活相談員を選任する必要がある」と知ったものの、次のような疑問を持つ企業も多いでしょう。
「障害者を何人雇用すると、選任が必要になるのか」
「会社全体ではなく、事業所ごとに考えるのか」
「誰を相談員に選任できるのか」
「資格認定講習は、どこで受けるのか」
「選任後は、どこへ届け出るのか」
「相談員には、どこまで対応を任せればよいのか」
障害者職業生活相談員は、障害のある社員から相談を受け、職業生活全般について必要な指導や調整を行う、制度上の役割です。
ポイントをお伝えすると、常時雇用する障害者が実人数で5人以上いる事業所では、資格要件を満たす労働者の中から障害者職業生活相談員を選任する必要があります。選任事由が生じてから3か月以内に選任し、選任後は遅滞なく、事業所を管轄するハローワークへ届け出ます。
ただし、相談員を一人選任するだけで、社内の相談体制が機能するわけではありません。
相談を受けた後に、誰が事実を確認し、誰が配慮や配置を判断し、どの段階で人事や産業保健スタッフへつなぐのかも、あわせて整理することが重要です。
- 障害者職業生活相談員の選任義務が生じる条件
- 選任期限、届出先、相談員が担う役割
- 相談員として選任できる人の考え方
- 2026年度から始まったオンデマンド資格認定講習
- 相談員を選任した後、社内で整理したい相談・判断体制
障害者職業生活相談員とは
障害者職業生活相談員は、障害のある社員の職業生活全般について相談を受け、必要な指導や支援を行う社内の担当者です。
障害者の雇用の促進等に関する法律により、一定の条件に該当する事業所には、相談員の選任が義務づけられています。
相談員の役割は、本人の悩みを聞くだけではありません。仕事の内容、職場環境、労働条件、人間関係、職場への適応など、働き続けるうえで関係する幅広い内容を扱います。
障害者を5人以上雇用する事業所では選任が必要
常時雇用している障害者の実人数が5人以上いる事業所では、障害者職業生活相談員を選任する必要があります。
ここでいう5人は、障害の程度や労働時間によって換算するのではなく、常時雇用している障害者の実人数で確認します。また、選任義務は、原則として会社全体ではなく、事業所単位で確認します。
例えば、本社と複数の支店がある場合、障害者がどの事業所で働いているのかを確認する必要があります。事業所とは、本店、支店、工場、事務所など、一つの経営組織として一定の独立性を持って活動している場所を指します。
自社が選任義務の対象になるか、人数や事業所の扱いに迷う場合は、事業所を管轄するハローワークへ確認してください。
いつまでに選任し、どこへ届け出るのか
相談員を選任すべき事由が発生した場合、次の流れで対応します。
- 事業所で常時雇用する障害者が5人以上になったことを確認する
- 社内に相談員の資格要件を満たす人がいるか確認する
- 該当者がいない場合は、選任予定者が資格認定講習を受講する
- 選任事由が発生した日から3か月以内に相談員を選任する
- 選任後、遅滞なく事業所を管轄するハローワークへ届け出る
資格を持つ人がすでに社内にいる場合は、改めて資格認定講習を受ける必要はありません。
一方、有資格者がいない場合は、相談員として選任する予定の社員が、資格認定講習を受講する方法があります。
障害者職業生活相談員が担う5つの職務
障害者職業生活相談員は、主に次の内容について、本人から相談を受けたり、必要な指導を行ったりします。
1.仕事の内容や能力開発に関すること
本人の適性を踏まえた職務、能力の向上、仕事の進め方などについて相談を受けます。
ただし、相談員が単独で配置や人事評価を決定するわけではありません。管理職や人事と役割を分けて対応します。
2.作業環境に関すること
施設や設備、座席、作業方法、情報の提示方法など、障害に応じた職場環境の整備について扱います。
3.労働条件や職場生活に関すること
勤務時間、休憩、職場の人間関係、コミュニケーションなど、日常の職場生活に関する相談を受けます。
4.余暇活動に関すること
職場内の行事や余暇活動など、職業生活に関連する内容も制度上の職務に含まれています。
5.そのほか職場適応に関すること
本人が職場で安定して働き、能力を発揮するために必要な相談や調整を扱います。
相談員の役割は広いものの、健康・医療に関する専門判断、配置や処遇の決定、人事制度上の判断まで、すべて一人で担うものではありません。
誰を障害者職業生活相談員に選任できるのか
障害者職業生活相談員は、厚生労働省令で定められた資格要件を満たす労働者の中から選任します。
資格要件を満たす方法には、主に次のようなものがあります。
- 障害者職業生活相談員資格認定講習を修了している
- 障害者の職業生活に関する相談・指導について、定められた実務経験がある
- 制度上認められた資格や経験を有している
すでに資格要件を満たす人が社内にいる場合は、その人を選任できます。
資格要件に該当するか判断しにくい場合は、自己判断せず、管轄のハローワークやJEEDの都道府県支部へ確認します。
2026年度から資格認定講習はオンデマンド方式へ
2026年度から、民間企業等を対象とする障害者職業生活相談員資格認定講習は、資格取得に必要な講習をオンデマンドで受講する方式になりました。
これまでのように、決められた会場へ移動し、2日間続けて講義を受ける負担が軽減されています。受講期間内であれば、事業所などから動画を視聴して学習を進められるため、業務日程を調整しやすくなりました。
一方で、受講できる期間は決まっており、いつでも自由に申し込んで受講できる常設講座ではありません。年度ごとに申込期間と受講期間が設定されるため、最新の日程はJEEDの公式ページで確認します。
オンデマンド講習と任意受講科目の違い
資格認定講習は、次の2つに分かれています。
| 区分 | 内容 | 資格取得との関係 |
|---|---|---|
| オンデマンド講習 | 相談員に必要な基礎的内容を、指定期間内に動画で学習する | 資格取得に必要 |
| 任意受講科目 | 事業所見学、意見交換会などを都道府県支部が実施する | 資格取得の必須要件ではない |
任意受講科目は、オンデマンド講習で得た基礎知識を、実際の職場事例やほかの受講者との意見交換を通して深めたい人に役立ちます。
ただし、任意受講科目へ参加しなくても、オンデマンド講習の修了要件を満たせば、相談員の資格を取得できます。
資格認定講習の申込から修了まで
現在の基本的な流れは、次のとおりです。
- 社内の選任義務と有資格者の有無を確認する
- 事業所の担当者が、JEED研修電子申請サービスから申し込む
- 受講決定通知を確認する
- 指定された受講期間内にオンデマンド講習を受講する
- 全科目の動画視聴と確認テスト、アンケートを完了する
- 受講期間内に修了証書をダウンロードする
- 相談員を正式に選任し、管轄ハローワークへ届け出る
申込みは、受講希望者個人ではなく、事業所の担当者が行います。
申込みが多い場合は、選任義務があるにもかかわらず有資格者がいない事業所などが優先されます。
受講料は無料ですが、オンデマンド受講に必要な通信費や、任意受講科目へ参加する場合の交通費などは、受講者側の負担です。
オンデマンド講習の修了要件
修了証書を受け取るには、オンデマンド講習の受講期間内に、次の要件を満たす必要があります。
- 全科目の動画を視聴し、学習進捗率を100%にする
- 確認テストで100点を取る
- アンケートを提出する
確認テストで100点が必要ですが、これは一度の受験で100点を取らなければならないという意味ではありません。
講習内容を確認しながら、必要な知識を身につけるためのものです。修了要件を満たすと、JEEDのeラーニングシステムから修了証書をダウンロードできます。
ダウンロードできる期間が決まっているため、修了後は忘れずに保存し、事業所でも保管します。
しごとサポーターやジョブコーチとは何が違うのか
障害者雇用には、似た名称の役割がありますが、それぞれ目的が異なります。
| 役割 | 主な位置づけ |
|---|---|
| 障害者職業生活相談員 | 一定の事業所に選任義務があり、職業生活全般の相談・指導を担う |
| 精神・発達障害者しごとサポーター | 精神・発達障害の基礎知識を持ち、同僚として関わる職場の応援者 |
| ジョブコーチ | 本人の職場適応や、職場側の支援方法について専門的に支援する |
| 管理職 | 日常業務、指示、進捗、評価、チーム内の役割分担を管理する |
| 人事・障害者雇用担当 | 配慮、配置、勤務制度、情報共有、社内調整を扱う |
障害者職業生活相談員を選任したからといって、管理職や人事の役割がなくなるわけではありません。
それぞれが何を担当するのかを明確にすることが必要です。
相談員を選任すれば、相談体制は整うのか
障害者職業生活相談員を選任し、ハローワークへ届出を行えば、制度上の対応は進みます。
しかし、相談員がいることと、相談後の対応が進むことは同じではありません。
本人から相談を受けた後に、
- 相談員がどこまで回答してよいのか
- 管理職へ何を共有するのか
- 人事が判断する内容は何か
- 健康に関する内容を産業保健スタッフへつなぐのか
- 配慮を誰が決定するのか
- いつ、何を基準に配慮を見直すのか
- 相談内容をどのように記録するのか
が決まっていなければ、相談員が一人で問題を抱え込むことがあります。
相談員は、すべての問題を一人で解決する担当者ではありません。
本人の相談を受け、必要な役割へつなぎ、職場で対応を進めるための重要な窓口の一つです。
相談員を機能させるために社内で決めたいこと
相談員を選任するときは、資格や届出だけでなく、次の内容も確認します。
- 相談員が受ける相談の範囲
- 管理職、人事、産業保健スタッフへつなぐ基準
- 本人へ相談後の流れをどう説明するか
- 情報共有の目的、対象、範囲
- 配慮や配置を最終的に判断する人
- 相談記録の保管方法
- 実施した対応を見直す時期
- 相談員が異動・退職した場合の後任と引継ぎ
相談員個人の経験や熱意に任せるのではなく、組織の役割として機能できる状態をつくることが重要です。
自社の体制を確認する7つの質問
- 事業所単位で、障害者の実人数を確認しているか
- 相談員の選任期限と届出先を把握しているか
- 社内に資格要件を満たす人がいるか確認しているか
- 相談員の役割を本人、管理職、人事へ説明しているか
- 相談員が一人で判断を抱えていないか
- 人事や産業保健スタッフへつなぐ基準があるか
- 異動・退職時の後任と引継ぎを決めているか
複数の項目で答えに迷う場合、相談員の選任手続きだけでなく、相談後の役割と判断の流れを整理する必要があります。
よくある質問
Q:障害者を5人雇用している場合、相談員の選任は必要ですか
常時雇用している障害者の実人数が5人以上いる事業所では、障害者職業生活相談員の選任が必要です。
障害の程度や労働時間による換算ではなく、実人数で確認します。
Q:選任義務は会社全体の人数で判断しますか
原則として事業所単位で判断します。
本社、支店、工場などがある場合は、障害者がどの事業所で働いているかを確認します。
事業所の扱いに迷う場合は、管轄ハローワークへ確認してください。
Q:資格認定講習を受けなければ相談員になれませんか
資格認定講習の修了以外にも、定められた実務経験や資格要件によって選任できる場合があります。
社内に資格要件を満たす人がいるか確認し、判断が難しい場合はハローワークまたはJEEDへ確認します。
Q:2026年度の資格認定講習は会場で受講しますか
資格取得に必要な講習は、オンデマンド方式で実施されています。
指定された受講期間内に、事業所などから動画を視聴して学習します。
ただし、オンデマンド受講に必要な通信環境が整わない場合に、視聴会場が用意される地域もあります。詳細は各都道府県支部へ確認してください。
Q:任意受講科目を受けなくても資格を取得できますか
任意受講科目は、資格取得の必須要件ではありません。
資格取得に必要なのは、オンデマンド講習を修了し、修了要件を満たすことです。
Q:相談員を選任したら、すべての相談対応を任せてよいですか
相談員は職業生活全般の相談を受ける重要な役割ですが、すべての判断を一人で行うものではありません。
日常業務は管理職、勤務制度や配慮は人事、健康に関する専門的な内容は産業保健スタッフなど、内容に応じて役割を分けます。
Q:相談員が異動・退職した場合はどうすればよいですか
相談員が不在になる場合は、後任者の資格要件を確認し、新たな相談員を選任する必要があります。
異動や退職が決まってから慌てないよう、複数の有資格者を確保することや、引継ぎ方法を事前に検討しておくとよいでしょう。
まとめ
常時雇用する障害者の実人数が5人以上いる事業所では、資格要件を満たす労働者の中から、障害者職業生活相談員を選任する必要があります。
選任事由が発生した日から3か月以内に選任し、選任後は遅滞なく、事業所を管轄するハローワークへ届け出ます。
2026年度から、資格取得に必要な講習はオンデマンド方式となりました。会場まで移動する必要がなく、指定された受講期間内に事業所などから学習できるため、受講しやすい仕組みになっています。
一方、相談員を選任することと、社内の相談体制が機能することは別です。
相談員が本人から相談を受けた後に、
- 誰が事実を確認するのか
- 誰が配慮や配置を判断するのか
- どの段階で人事や産業保健スタッフへつなぐのか
- 情報を誰まで共有するのか
- 実施した対応をいつ見直すのか
を決めておかなければ、相談員一人へ対応が集中します。
制度上の選任を確実に行うとともに、相談員が組織の中で機能できる役割分担と判断の流れを整えることが重要です。
障害者職業生活相談員を選任していても、管理職、人事、産業保健スタッフとの役割分担が曖昧であれば、相談員だけが問題を抱えることがあります。
制度上の選任だけでなく、相談後に誰が何を確認し、どのように判断するのかを整理したい企業は、障害者雇用コンサルティングの内容をご覧ください。
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