障害者雇用をしている企業が社員向けに行っている研修とその効果とは?

障害者雇用が成功している企業では、多くの場合、障害者雇用に関する研修を上手に行っています。研修の対象者は、障害者と一緒に働く部門や管理部門、人事部のスタッフ、責任者など、障害者と一緒に働くスタッフやマネジメント層に対して行なうものと、障害者当事者に行なうものがあります。

ここでは、障害者雇用に関する研修として、障害者と一緒に働くスタッフ向けにどのようなものがあるのか、企業ではどのように活用しているのか、研修の効果はどのようなことが期待できるのかについて見ていきたいと思います。

特例子会社で活用している研修について聞いてみました

ここで説明している研修については、特例子会社10社の対象の方へヒアリング調査した中で「はじめて障害者雇用に関わる人のための教育、研修を行っているか。行っている場合は、その内容を教えてください。」という質問に対する回答です。

ヒアリング調査の詳細については、こちらもご覧ください。

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研修を活用している、それとも活用していない?

研修については、積極的に活用している会社とそうでない会社に分かれました。割合は、ほぼ同じくらいでした。活用している会社は、外部の障害者職業生活相談員やジョブコーチ研修、障害者雇用を行っている他の企業の見学等を通して学ぶ機会が多かったです。

研修を活用している企業の状況

活用している順番としては、入社して間もない社員向けに【障害者職業生活相談員】、入社して数年経過してから【ジョブコーチ研修】という企業が多かったです。【障害者職業生活相談員】は2日間で、障害者雇用に関するある程度の知識を学べる機会となるため、ほとんどの企業で活用していました。年に数回実施されるのですが、入社して早めに受講するように計画している企業もありました。

一方、【ジョブコーチ研修】のほうは、研修受講に障害者雇用に関わった経験年数にが求められることや、研修日数が長いために社内の調整等が必要なこともあり、年に数人と社員を選定して受講しているところが多かったです。

障害者職業生活相談員、ジョブコーチ研修についての詳細はこちらから

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また、研修を積極的に取り組んでいる会社では、社内でも障害基礎理解の研修や勉強会を実施していました。例えば、社内に定着推進を行うための組織をつくり、その部署が中心となって研修を実施することや、知的障害者と一緒に働く同僚・上司を対象に勉強会を定期的に行なうなどです。

【ジョブコーチ研修】に参加することに意義を感じていると回答したある会社では、多くの同僚・上司が出向者で占められていて、知的障害者と一緒に働いた経験のある社員があまりいない状況でした。そのため、普段の業務を行なう上で、知的障害者との接し方が難しいと感じる場面がしばしばあったそうです。しかし、ある社員がジョブコーチ研修に参加したところ、障害のある社員への接し方や、仕事でつまずいたときに何をすべきなのかが具体的にわかり、対応や話し方に変化が出てきたことが示されていました。

また、別の活用していると回答した企業からは、社内の中で自分たちが接したりしていることが合っているのかどうか自信がなかったものの、他の企業の話を聞くことによって自信をもつことができたことや、社員にとってもいい刺激になることが語られていました。

研修を活用していない企業の状況

一方で、障害に対する多くの知識はないほうが望ましいと感じている企業もありました。その理由は、障害に関する知識や経験があることによって、その障害に対して理解しているという気持ちが強く、「(障害の特性上)これ以上言ってもわからない」、「この業務は難しい」というように、知的障害社員の能力をのばす機会を逃して、決めつけてしまうことが見られるからという答えが返ってきました。

ジョブコーチに求められる資質「技術的・専門的・マネジメント専門能力」に関するところでも触れていますが、障害者に関する障害に関する知識や経験があることによって、それにとらわれてしまうことがあり、障害社員の可能性をつぶしてしまっていると感じている事業所も多かったです。このような回答のあった企業からは、研修に参加するよりも知的障害社員本人たちと一緒の時間を過ごすことやOJTで学ぶことの大切さが強調されていました。

研修の成果は障害に関する理解だけではない

研修に対する考え方は、企業によって異なりますが、研修が有効的と考える企業の中には、研修を受講して知識を習得するだけでなく、知的障害社員へ伝える言葉や指導方法、接し方など、今の言い方で良かったのか、もっと違った形で行なったほうが良かったのではないかと振り返ったり、見直す機会として役立っていると考えている企業もありました。

また、研修を通して、日常の業務から少し離れたところで、自分たちの接し方を振り返る場として活用できると考えるところもありました。日々の業務の中では、なかなか余裕がなく業務をこなしているものの、改めて自分たちが実践している内容について考えたり、他の会社の取り組みを聞くことによって、確証や自信をもって取り組むことができるようになったと話している会社もありました。

このような話を聞くと、研修の機会は知識を得るだけでなく、普段どのように知的障害社員と接しているのかを客観的に振り返る場としても活用することができ、他の参加者からの取組などからも学ぶ機会を得ていることができることがわかります。

一方、障害についての経験や知識は必要ないと回答する企業には、障害に関わってきた人を見ていると障害者との間で一対一の関係になりやすく、業務を行なう上では、組織として、チームとしてどのような影響があるのかを考えながら動いてほしいという思いがあることがうかがえました。また、個々の対応や寄り添いすぎてしまう、手を出しすぎてしまうため、組織全体をみることに加え、人材育成を行なっていくことを求めていることも示されていました。

確かに、多くの障害者雇用に関する研修では、障害理解や障害に関する特性についての内容が中心となっています。障害者がいるからこそ、他のスタッフとのコミュニケーションや連携、チームマネジメントが大切になってくるのですが、その点まで触れている研修が見当たらないのは課題と言えるでしょう。

障害者雇用は、障害福祉から発展してきた経緯があります。そのためどうしても福祉の中での【障害者一人ひとりに対する個別対応や注意を向ける】ことに重きをおいてしまいがちです。しかし、企業の中では組織やチームとしての成果や効率化を目指す場面が多くあります。このような視点を取り入れた障害者もいる組織やチームについての研修が今後必要となってくるでしょう。

まとめ

障害者雇用に関する研修として、障害者と一緒に働くスタッフ向けにどのようなものがあるのか、企業ではどのように活用しているのか、研修の効果はどのようなことが期待できるのかについて見てきました。

障害者雇用を上手に行っている特例子会社10社の回答は、企業によってもカラーが違うものでしたが、研修の受講の有無にかかわらず、障害者雇用をよりよくするために、日々どうしたらよいのかについて考えている企業ばかりでした。障害者雇用に関する研修というと、障害に関することをイメージしがちですが、普段の業務の中で障害社員が理解できるように教えているか、伝えられているか、普段の取り組みを振り返ることや組織やチームとしての障害者雇用について考えることも大切になっていることを感じます。

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