【発達障害】自閉スペクトラム症(ASD)の特性や困難さの感じ方

発達障害のひとつの自閉スペクトラム症(ASD)には、繰り返しを好み、独特のこだわりを持つという特性があります。三つ組の障害と呼ばれる「社会性」「コミュニケーション」「常同性特性(想像力)」の3つの特性は社会生活に困難をきたすと言われています。ここでは、どのような特性があるのか、そしてどのような困難さを感じることがあるのかについて見ていきたいと思います。

自閉スペクトラム症(ASD)の特徴

他人と共感しにくい、場の空気が読めない、思ったことをそのまま発言するなど、対人関係で様々な困難を生じるのが自閉スペクトラム症(ASD)です。また、全体より部分に注目してこだわるといった傾向があります。このほか音やにおいなどの感覚が異常に敏感だった、鈍感だったりする症状が現れることもあります。

自閉スペクトラム症(ASD)の3大特徴として、国際的な診断基準のDSM-5では、次の3つの発達特性が挙げられています。
1.社会性の障害
2.コミュニケーションの障害
3.常同性特性(想像力)の障害

これらは「三つ組の障害」と呼ばれ、幼児期からこのような特性による特徴が見られる場合、自閉スペクトラム症(ASD)と診断されます。かつては広汎性発達障害という診断名で、自閉症やアスペルガー症候群といった細かい分類がありましたが、診断基準がDSM-5 へ改訂されるときに下位分類がなくなり、すべて自閉スペクトラム症という診断名に統合されています。

常同性の特性とは

三つ組の障害が生じる原因として考えられるのが、繰り返しを好んだり、独特のこだわりを持ったりする常同性という特性です。常同性の強い人は関心の幅が狭くなるため、物事の解釈が限定的、部分的、一方的になる傾向があります。

その結果、他者の気持ち、感情、意思などを推察することができず、暗黙の了解が理解できない、表情を読み取るのが苦手、細かいことまで言われないとできないなど、自分や他者の考えや思いを客観的に思考することが苦手です。

社会性の障害とは

呼ばれても返事をしない、人の気持ちを考えない、常識がない、社会的なルールやマナーが理解できない、自分の立場をわきまえないなど、対人関係のトラブルの元となっているのが社会性の障害です。このような問題が生じるのは、自閉スペクトラム症の人が他者や社会への関心が薄いためです。

その結果、他者の考え方や感じ方を理解することが難しく、一方的に自分の話や感情を優先させてしまいます。そして、本人の自覚がないままに人間関係をぎくしゃくさせてしまいます。学生のうちは特性を理解したり、合わせてくれる友人に囲まれて、状況に対応することが可能なことも多いのですが、社会へでると多様な人とのつき合いが始まり、対処できない問題が現れることも少なくありません。

複数のコミュニケーションの難しさ

会話では一対一であれば、相手の言葉を理解し、考えを推察して返答することができるのですが、相手が2人以上になるとコミュニケーションをとることが難しくなります。

例えば、田中さんと自分の会話の内容はわかっても、そこに鈴木さんが加わり、2人を相手に会話をすることになると混乱が生じます。田中さんと鈴木さんの会話の内容や、田中さんが鈴木さんの言葉の意味をどう捉えているのかなど、複数の情報が整理できなくなってしまいます。

このような状況があると、人づき合いがうまくいかず、自分から相手を避けるようになったり、相手が遠ざかったりします。人から離れるため、対人関係のスキルを学ぶ機会が減り、ますます人づき合いがうまくいかなくなるケースもあります。

暗黙の了解や社会的なルールが苦手

社会性の障害がある人は、暗黙の了解や社会的なルール、マナーなど普通なら一般常識として知っているだろうと思われることが抜け落ちている部分があります。そのため自分の立場をわきまえずに、上司や年長者にぞんざいな口を聞いたり、初対面の人に体が接するほど近づいて話しかけたりするなど、常識外れとみなされるような言動が多く見られます。

その一方で、いったん覚えた規則には強くこだわり、一切の例外も認めないなど、杓子定規な部分もあります。また、自分で作った独自のルールを厳守し、人にも強要するといったケースもあります。

自閉スペクトラム症にみられる人づき合いのタイプ

社会性の障害に表れ方は人それぞれです。イギリスの精神科医ローナ・ウイングらの研究によって、対人関係では主に4つのタイプに分けられています。

他者を気にしないタイプ

他者への関心が乏しく、呼ばれても返事をしない、話しかけても答えないなど、周りに人がいても、まるで誰もいないかのように振る舞います。感情を表に出すことが少ない、表情の変化が乏しい、会話などで人と視線をあわせることが少ない、パニックが起きやすいなどの傾向があります。

自分から関わらないタイプ

従順で言われたことに従うなど、人との接触を受け入れますが、自分から関わろうとはしません。会話などでは人と視線を合わせることができます。4つのタイプの中で、子どもでも大人でも最も問題行動が少ないと言われています。

積極的だが一方的なタイプ

人に関わろうとしますが、相手の気持ちや感情に関心がありません。そのため自分の興味や関心があることを一方的に話つづけたり、アイコンタクトや握手などのスキンシップが不適切に長いことがあります。相手が自分の思い通りにならないと、不機嫌になったり、攻撃的になったりすることもあります。

堅苦しいタイプ

知能と言語レベルの高い人の青年期から成人期に現れるタイプです。誰に対しても過度に礼儀正しく、堅苦しい態度や丁寧すぎる対応をします。人とうまくつき合うため非常な努力を続けていることもあります。ルールにこだわり、厳格に従うものの、状況の変化に合わせるのが苦手で、常にマニュアル的な対応になってしまいます。

意思疎通が苦手なコミュニケーションの障害

コミュニケーションは、言葉による言語コミュニケーションと、表情や身振りによる非言語コミュニケーションから成り立っています。自閉スペクトラム症の人は、非言語コミュニケーションが苦手で、言葉の意味をそのまま理解する文字通りにとらえるという特性を持っています。そのため冗談が通じなかったり、発言の意図が理解できないなど、コミュニケーションにいろいろな難しさを抱えています。

言葉を文字通りに受け止める

例えば、相手が失敗をしたときに使う「えらいことをした」という言葉があります。これは、大変なことをしてしまったと、相手の行動を皮肉る言葉ですが、自閉スペクトラム症の人は、「えらい」の文字どおりに自分を褒めた言葉だと受け取ることがあります。

このように言葉を字義どおりに受け取る背景には、相手の語調や表情、態度、非言語コミュニケーションを読み取る力の弱さがあります。そのため相手が言葉に込めた意図や言葉の裏側にある意味を汲み取ることができずに、誤解してしまうことがあります。

また、「結構です」という言葉は、承諾するときの意味でも、拒否するときの意味でも使います。自閉スペクトラム症の人は、このような多様な意味を持つ言葉の理解が一義的になりがちです。そのため自分が知らない意味で使われると、会話が混乱します。また、言葉に独自の意味や定義を持たせることがありますが、これも他者と話が通じにくくなる一因となります。

相手を無視した一方的な会話

自分が話すときに、聞き手の立場に立って話すことも苦手です。自分が関心を持っているこは、情報も語彙も豊富で一方的に熱心に話しますが、相手の理解や反応には無頓着で、話題が変わっているのに同じ話を続けるなど、一方通行な会話になりがちです。

聞き手にわかりやすく話そうという配慮が足りないことも多く、主語が抜けたり、専門用語を羅列したりして、コミュニケーションがうまくいかないことも多くみられます。

コミュニケーションがうまくいかない理由

コミュニケーションとは、言葉の意味と相手の表情や態度、身振りなどの言葉以外の要素での両方で成り立っています。自閉スペクトラム症の人は、そのどちらかが両方がうまく読み取れないためコミュニケーションがうまくいきません。

例えば、自分がつまずいて転びそうになった時、近くにいる友だちが「ドジだな~」と笑っていうことがあるかもしれません。これをどのように受け止めるでしょうか。健常者の場合、相手が「ドジだな~」と自分を非難する言葉を言っても、笑っていることから相手が冗談でその言葉を発していることが理解できます。そのため相手に親しみを感じることがあっても、非難されているとは感じないでしょう。

一方、自閉スペクトラム症(ASD)の人の場合、言葉の意味をそのまま文字通り受け取ってしまいます。また、表情から相手の感情を読み取ることができない特性のため、「ドジだな~」という言葉だけに注目して、自分が非難されたと考え、相手の真意が伝わりにくくなってしまいます。

柔軟な対応が難しい想像力の障害

想像力の障害とは、1つのことにこだわり、物事に臨機応変に対応できない発達特性です。限定的で反復的な関心と行動を示します。

環境や状況の変化が苦手

自閉スペクトラム症の人は、環境や状況の変化に対応することが苦手です。急な出張を命じられたり、いきなり仕事の予定を変更されたりすると、動揺し、ときには混乱してパニックを起こすこともあります。

変化することに臨機応変に対処できないのは、1つの物事に固執する想像力の障害という発達特性があるからです。1つのことにこだわるあまり、想像力を用いて柔軟に考えることが苦手です。

例えば、変化を想定してあらかじめ対応策を用意するようなことができません。そのため、変化の少ない生活を好み、同じ行動パターンを繰り返すことに安心感を覚えます。一度決まったことを繰り返し行うことは得意なため、ルーチンワークなどはしっかりこなすことができます。

曖昧な指示では意図がわからない

想像力の弱さは会話のやりとりにも現れます。職場では「急いでやっておいて」「早めに終わらせて」「適当にすませて」などといったあいまいな指示は日常茶飯事です。しかし、自閉スペクトラム症(ASD)の人は言葉の意図を想像して、広く解釈することができません。そのため「急いで」や「早め」とは、「いつまで」なのか、「適当」とは「どの程度か」を理解することが難しくなります。自閉症スペクトラムの人はよく「気がきかない」と言われます。このように評価されるのも、相手の行動や作業などを想像し、先回りして行動できないことに原因があるからです。

関心の対象の狭さにはメリットとメリットがある

こだわりの強さは、極端な興味や関心の偏りにもつながります。自閉スペクトラム症の人は好きなことには、時間も忘れて没頭するほど徹底的にのめりこみますが、興味のないことには一切目を向けようとしません。そのため特定の分野には精通していても、誰もが知っているような常識的なことを知らないという知識のアンバランスが起こります。

例えば、最近の出来事やファッション、野球やサッカーなど、ごく一般的な話題にも関心を持たないことが少なくありません。そのため共通の話題が乏しく、雑談ができないなど、コミュニケーションに支障をきたすことがあります。その一方、こうした極端な関心の偏りや時間を度外視した集中力は専門的な知識や技術を習得し、発揮できるプラス面もあります。

実際に自閉スペクトラム症(ASD)の人の中には、学問や芸術などの専門分野で能力を発揮し、活躍している人も大勢います。

想像力の障害で起こる問題としては、先を見通した計画が立てられない、手順通りにしかできない、妥協することが難しい、具体的に指示されないと動けない、突然の予定変更で混乱するといったことが挙げられます。そのため周囲からは、「気がきかない人」と「融通がきかない人」と思われてしまいがちです。

音や光に悩まされる

自閉スペクトラム症(ASD)の人の中には、視覚や聴覚といった感覚が過敏な人がいます。また、青年期以降、てんかんの併発が多くなることが知られています。

感覚過敏のつらさ

発達障害の脳機能のアンバランスが、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚といった感覚に生じると、感覚過敏が起こります。普通の人には気にならないような音や光などが、感覚過敏だと耐えられないほどの刺激に感じられ、生活上様々な困難が生じるのです。

例えば、聴覚が過敏な場合、エレベーターの到着を知らせる音が、耳元で鐘を鳴らしているほどの騒音に感じたりします。そのような場合には、職場で座席がエレベーターの近くにあると、人の乗り降りがあるたびに苦痛を感じることになります。

また、周りの音がすべて耳に入ってくるので、外で会話ができないことがあります。外では周囲の車の走行や店舗が流す音楽人の話し声等があります。このような音が混在する中で、普通の人が会話できるのは、無意識のうちに脳が話しての声だけに集中し、それ以外の音量気にならないレベルにまでさげているからです。

このような複数の情報から必要なものを選んで、注意を向けることを選択的注意といいます。この選択的注意がうまく働かない人がいることを覚えておいてください。

感覚過敏の種類や感じ方

定型発達の人には何でもない刺激も、感覚過敏の人には耐えられないものとなります。視覚と聴覚の両方に感覚過敏があるなど、重複して持っている人もいます。

光に対する反応

光がまぶしく感じられます。蛍光灯やLEDの光が目に刺すように強烈に感じたり、また見ようとする対象物が背景に曲げる見えにくいなどの状況があります。人によっては、パソコンのバックライトがまぶしくて画面を見ていられないこともあります。

音に対する反応

ささいなことでも大音量に聞こえます。エアコンや掃除機等の音が耐えられないほどの騒音に聞こえたりします。また、聞きたい音を選択できないため、周囲の音が全て同等のレベルで聞こえてしまいます。

においに対する反応

わずかなにおいでも感じ取れるほど、嗅覚が過敏なことがあります。そのため室外のにおいが入らないように窓を閉め切って換気ができない、外出が苦手などの困難が生じることがあります。

味に対する反応

食べられる食品が限られ、極端な偏食があります。また、ヌルヌルするなど、食品の食感が苦手で偏食を起こしていることもあります。

接触に対する反応

シャワーのお湯や雨粒が体に当たると針が刺さるように痛く感じたりすることがあります。軽くタッチしたつもりでも、本人にとっては叩かれたように感じることもあるようです。また、爪切りや耳かきが苦手です。人に触られることを、極度に嫌がることがあります。また、肌が過敏で、衣服の素材によってはチクチクする、ゴワゴワするなど、着用できないものがあります。

てんかんの併発

自閉スペクトラム症(ASD)では、青年期にてんかんを併発するケースが少なくありません。てんかんは、脳細胞のネットワークに異常な活動が生じ、てんかん放電と呼ばれる電気信号が発生し、けいれんやいきなり気を失うような発作が起こります。通常、脳の発達とともにてんかん発作の頻度は減少しますが、自閉スペクトラム症(ASD)の人の中には、思春期前から頻度が増加し、青年期以降では約25%~30%の人に併発が見られます。

てんかんの症状などについては、こちらから
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てんかんの障害者と一緒に働くときに知っておきたいポイントとは?

まとめ

発達障害のひとつの自閉スペクトラム症(ASD)の特性やどのようなことに困難さを感じるのかについてみてきました。

自閉スペクトラム症(ASD)には、繰り返しを好み、独特のこだわりを持つという特性があります。三つ組の障害と呼ばれる「社会性」「コミュニケーション」「常同性特性(想像力)」の3つは社会生活に困難をきたすと言われていますが、周囲の人がその特性を知っていることによって、環境を整えたり、本人の能力を発揮しやすい状況をつくることもできます。

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