障害者雇用をしたけれど、なかなか思っていた人材と違う、採用がうまくいかない・・・という声を聞くことがあります。採用面接する上で必要なことは、障害があろうとなかろうと、大切なのはその人自身を知ろうとすることです。
面接では、経歴や書類等から会社の求める業務が遂行できそうかどうか、職場でどのような配慮が必要かなどに加え、個人の特性や仕事への意欲も把握することが重要です。入社後のミスマッチを起こさないためにどのように採用面接を行えばよいのかを見ていきましょう。
採用面接でチェックしておきたいポイント
本当に本人が就職したい意欲を持っているか
採用面接に来ているのに、本当に就職したいのか確認するのか?と思われるかもしれません。しかし、障害者雇用の場合、就職枠が一般ほど選べないことや、学校の卒業、就労支援機関の終了時期などの時期的な兼ね合いから、障害者当事者がまだ就職する意欲や気持ちになっていないときでも就職活動をしている場合が少なくありません。
周囲の保護者や就労支援機関のスタッフ、学校の教員などから誘導されて、就職したいと言っているのか、それとも本人が就職したいという意思を持っているのかを必ず確認してください。
この仕事に対する意欲がそもそもないと、職場でちょっとした問題などがあると、就職してからすぐに退職に至るケースもよく見られます。
就労する準備ができているかの確認
就職したい気持ちはあったとしても、それに対する基本的な自己管理ができていないと、職場定着することが難しくなります。健康管理や安全管理、基本的な生活のリズムが整っているか、社会生活ができるか、などについて確認することは大切です。
職場では、仕事をする上での合理的配慮は必要ですが、障害者の健康管理や自己管理までを行う場ではありません。そのことを会社の姿勢として示しつつ、必要な配慮をするつもりがあることを示していきましょう。
なお、合理的配慮とは、全ての企業での雇用現場において、事業主が雇用する障害者へ合理的配慮の提供を行うことが義務化されたもので、平成28年4月の改正障害者雇用促進法から施行されているものです。
本人が仕事をしやすくするための配慮を求めた場合に、合理的であれば会社は応じる必要があります。ただし、合理的配慮とされる措置が事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなる場合を除かれます。
合理的とは、「道理や論理にかなっているさま」や「むだなく能率的であるさま」を指します。ですから、合理的配慮を行なうために、事業活動に多大な影響が出る場合や、過度に社員の負担がかかる、費用負担が非常にかかる場合など明らかに対応することが困難な場合には、該当しません。
また、この合理的配慮は会社側から提案するものではなく、障害者本人から申し出のあった配慮について検討することとなっています。
求めている業務内容ができるかどうかの確認
求人票などで示していると思いますが、記載している業務内容について理解しているか、今までの経験やスキルなどから、また、健康的な面から見ても、その仕事ができるかを確認します。
仕事内容は、できるだけ具体的なものを提示することにより、応募者がその仕事ができるかどうかを判断しやすくなると思います。また、入社時に誰が仕事を教えるのか等についても伝えておくとよいでしょう。
障害者雇用で失敗しないために、面接でできること
障害に関する情報はしっかりと伝えてもらう
企業には合理的配慮を示す義務がありますが、そうは言っても、障害当事者が言うことすべてをそのまま対応するということではありません。どのような配慮が必要なのかについて、採用面接で障害の状況について、次のような点を把握しておくとよいでしょう。
採用面接で確認しておきたい障害の状況のポイント
・障害の状況、通院の頻度、服薬、緊急時の対応等
・通勤手段
・職場で求める合理的配慮の内容
・職種によっては、出張、残業の可否
企業の障害者雇用のスタンスを伝える
最近、当事者の方からの相談で多いのは、障害者雇用で採用されたのでもっと配慮があると思っていたが、違ったというものです。
一言で障害者雇用と言っても、どのような障害者雇用を進めていくかは、企業によって異なります。一般の社員と同じように活躍してほしいという思いを持っている企業もありますし、雇用率を達成することを重要視して、就業時間を一般社員よりも短く設定しているところもあります。
また、スキルアップしていけば正社員登用されるところもあれば、採用しても同じ仕事内容、勤務時間というところもあります。
これは、それぞれの会社の方針に沿って行なうことなのですが、このような会社の障害者雇用のスタンスを伝えておくこともできるでしょう。
応募者の能力を引き出すことを心がける
面接の場では、誰でも緊張しがちです。良いところ・長所を引き出すために、状況によっては応募者の緊張を解きほぐしてあげるような工夫も必要でしょう。大切なことは「応募者の伝えたいことが、伝えられる場」にする雰囲気を作ることです。
また、面接官が1人だけだと、気づかないことや見逃すこともあります。複数人で、さまざまな観点から見ていくようにするとよいでしょう。
はじめて障害者の面接をしますが、気をつけておくべきポイントはありますか?
はじめてのことは、誰でも緊張するものです。しかし、一般の採用と大きく違うことはありません。通常の採用面接と同じように、採用にあたって必要なことである、業務を遂行するにあたって求められる必要なスキルや経験があるか、障害についての情報、企業に求める合理的配慮などを聞いていきましょう。
また、採用担当者も緊張すると思いますが、応募者はもっと緊張していることが多くあります。応募者のことをよく知るためにも、就労支援機関のスタッフや特別支援学校の教員などの普段接している人の同席を許可することによって、多くの情報を得られることもあります。聴覚障害のある場合には、事前にコミュニケーション手段を確認し、手話通訳など、コミュニケーションができる体制を作っておくことが大切です。
動画の解説はこちらから
まとめ
障害者の採用面接で見ておくべきポイントについて考えてきました。 基本的な考え方は、一般的な採用と同じですが、障害者雇用においては、障害への必要な配慮や求めている業務内容ができるかどうかの確認をすること、また、会社の障害者雇用のスタンスを伝えることで、就職後のミスマッチはグッと減らせるでしょう。
とはいえ、面接の場では、誰でも緊張するものです。大切なことは「応募者の伝えたいことが、伝えられる場」にする雰囲気を作ることです。
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