「障害を他の人に知られたくない」と雇用の合理的配慮に対応する

「障害を他の人に知られたくない」と雇用の合理的配慮に対応する

2024年08月29日 | 企業の障害者雇用

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就職を希望する障害者の方には、障害者枠で働きたいものの「障害を他の人に知られたくない」と思っている人もいます。
「障害を他の人に知られたくない」という障害者の希望を尊重しつつ、どのようにして適切な合理的配慮を考えていくとよいのでしょうか。
障害を他の人に知られたくない理由や、組織で合理的配慮を進めていくための3つのポイントについて解説していきます。

企業における個人のプライバシー保護

障害者雇用の促進が進む中、職場における障害者のプライバシー保護の重要性がますます注目されています。障害者枠で働くことを希望する障害者の中には、自身の障害が他の人に知られることを望まないケースもあります。

また、企業側でも個人のプライバシー保護を重視しています。企業におけるプライバシー保護は、従業員や顧客の個人情報を安全に管理し、不正なアクセスや使用、開示から守るために必要な取り組みが含まれます。プライバシー保護は法的義務であると同時に、企業の信頼性や評判を維持するためにも非常に重要です。

プライバシー保護では、次のような基本的な原則があります。

・透明性: 個人情報を収集する際には、その目的や使用方法について明確に説明し、同意を得る必要があります。例えば、従業員の個人情報を人事管理の目的で収集する場合、収集の目的、使用方法、保存期間、第三者への提供の有無などを明示しなければなりません。

・目的限定: 収集した個人情報は、事前に説明した目的の範囲内でのみ使用することが求められます。目的外の利用は、原則として禁じられています。

・最小限の収集: 個人情報の収集は、必要最低限に留めるべきです。例えば、業務上不要な情報(宗教、信条、健康状態など)は収集しないようにすることが重要です。

・データの正確性: 収集した個人情報は正確かつ最新の状態を保つ必要があります。従業員や顧客の個人情報が変更された場合には、迅速に更新する体制が求められます。

・保存期間の制限: 個人情報は、その利用目的が達成された時点で適切に廃棄または削除されるべきです。企業は、情報の保存期間を定め、その期間を過ぎた情報は安全に破棄するプロセスを設ける必要があります。

・セキュリティ対策の実施: 個人情報を不正アクセス、改ざん、漏洩から守るために、適切な技術的および物理的なセキュリティ対策を講じる必要があります。これには、アクセス制御、データ暗号化、ウイルス対策ソフトの導入、定期的なセキュリティ監査などが含まれます。

企業がプライバシーを保護することは、従業員や顧客との信頼関係を築き、長期的な事業の安定と成長を支える基盤を確立する上でも大切です。

一方で、企業では障害者に合理的配慮を示す義務が求められています。例えば、特定の配慮を行うために職場の一部で特別な調整が必要になる場合、それが他の従業員に障害の存在を暗示することになり得ます。こうした状況において、企業はどのようにして障害者のプライバシーを保護しながら、必要な合理的配慮を提供するかを慎重に考える必要があります。

障害を他の人に知られたくない理由

障害者が職場で自身の障害を他の人に知られたくないと感じる理由はさまざまですが、主に以下の3つの要因が挙げられます。

偏見や差別のリスク

多くの障害者の方は、自身の障害が他者に知られることで偏見や差別を受けるのではないかと感じることがあります。職場においても、障害に対する理解が十分でない場合、障害のある従業員に対して誤解や先入観を持たれるのではないか・・・と思うのです。
たとえば、障害のために能力を正当に評価されず、「障害があるからこの仕事は無理だろう」といった偏見に基づいた判断が行われるように感じるかもしれません。また、障害を持つことで昇進や重要なプロジェクトへの参加が制限されるなど、キャリアに不利な影響を及ぼすことを心配しているかもしれません。

職場での不必要な注目や特別扱いの回避

障害が知られることで、職場で不必要な注目を集めることを避けたいということも、障害を他の人に知られたくない理由の一つです。障害が知られることで、「特別な扱い」を受けることへの懸念や、自分だけが注目されることに対するプレッシャーを感じることがあります。
例えば、他の従業員から過度に気を使われたり、逆に同情や不安感を持たれることがあります。これにより、障害者本人が本来の業務に集中できなくなるだけでなく、周囲の従業員との関係が不自然になってしまう可能性もあります。そのため、職場で普通の一員として業務に集中したいと考える障害者は、自分の障害を知られたくないと望むことがあります。

プライバシーの保護を望む個人的な理由

障害者が自身の障害を他者に知られたくない理由として、プライバシーを保護したいという個人的な理由も大きな要因となります。障害はその人の健康状態や身体的な特性に関わる非常にプライベートな情報であり、多くの人はこれを共有するかどうかを自分で決めたいと考えています。
特に、過去の経験からプライバシーが守られないことへの恐れや、無関係な人に自分の障害について知ってほしくないという強い希望を持つ場合があるかもしれません。このような個人的な理由から、障害者は自分の障害を職場で明かすことに対して慎重な姿勢を取ることがあります。

雇用に関する障害者への合理的配慮

障害者雇用促進法は、障害者の雇用機会の増加と職場での安定した就労を目指しており、その中で「合理的配慮」の提供が重要な要素として位置づけられています。

合理的配慮とは、障害者が他の従業員と平等に働くために必要な環境の整備や、業務の遂行に際して必要となる変更や調整を意味します。合理的配慮の目的は、障害者がその障害によって不利益を被らないようにし、就労の機会を均等にすることです。合理的配慮の内容は、障害者の障害の種類や程度、職務内容などに応じて個別に判断されるべきものとしています。

合理的配慮を提供する義務の中には、次のようなものが含まれます。

・就労環境の整備: 障害者が安全かつ健康に働くことができるよう、職場の物理的な環境を整備すること(例:バリアフリーのトイレやエレベーターの設置、作業場所の調整など)。

・業務内容の調整: 障害者の能力に応じて、業務内容や勤務時間の変更、特別な機器の提供など、適切な配慮を行うこと(例:視覚障害者に対してスクリーンリーダーソフトを提供する、聴覚障害者のために会議での手話通訳を手配するなど)。

・人事制度の柔軟性: 障害者が働きやすいように、人事制度を柔軟に運用すること(例:リモートワークやフレックスタイム制の導入、休暇制度の調整など)。

合理的配慮を提供するにあたっては、障害者のプライバシーを保護することも重要です。企業は、障害者の障害に関する情報を適切に管理し、本人の同意なくその情報を他の従業員に開示しないようにする必要があります。そのため本人が希望しないのであれば、その意見を尊重することは大切です。

しかし、現実的に一緒に働く人が知らない場合には、どのような影響があるのでしょうか。

職場での合理的配慮の提供に与える影響

障害を他の人に知られたくないという希望は、職場での合理的配慮の提供に大きな影響を与えることがあります。合理的配慮を提供するためには、企業は障害者のニーズを理解し、適切な対応を行う必要がありますが、障害を知られたくない場合には求める配慮を示すことが難しかったり、また求める配慮を示すことで周囲に障害の存在を明らかにしてしまう可能性があるからです。
例えば、特定の配慮(例:特定の時間帯のみの勤務、特定の設備の使用)が必要な場合、それに対応するときに障害が他の従業員に知られてしまうリスクがあります。

また、障害に対する配慮と思われない場合には、周囲の従業員から「なぜ、あの人だけ特別扱いをするのか」と、逆に周囲から距離をとられたり、人間関係がうまくいかない要因につながってしまったりすることもあります。

そのため職場によっては、当事者の「障害を他の人に知られたくない」という希望を聞くことで、合理的配慮が示しにくくなったり、合理的配慮を示すことで言わなくてもなんとなく雰囲気で伝わってしまうことがあります。

このような時、職場ではどのように対応したらよいのでしょうか。

組織で合理的配慮を進めるための3つのポイント

障害者雇用と一言で言っても、職場によって状況は様々です。そのためこれが正解というものはありませんが、組織として障害者雇用の合理的配慮を考えていくうえで大切にすべき3つのポイントをお伝えしたいと思います。

組織やチームへの影響を考える

合理的配慮を提供する際には、その配慮が組織やチーム全体にどのような影響を与えるかを考えることが重要です。一人の業務で完結できる場合などは別ですが、チームやグループ単位で業務をこなしていく場合には、障害を明らかにしないのに合理的配慮を示すことが求められると、他の従業員の業務に影響が出る場合や、組織の運営が難しくなる場合があります。

ある方は事務職で電話対応が難しいので、配慮として電話対応しないことを合理的配慮として望んでいました。しかし、上司以外には障害について明らかにしていなかったので、周りの人は配慮事項について知りません。そのため上司がいる間は電話を免除されていましたが、上司が席を外しているときには周囲から電話に出るように言われ、それがストレスになったようです。

周囲の人も障害があって配慮してほしいと言われれば、それに応じるかもしれませんが、そうでない場合には、気がきかない人や、仕事のできない人という見方をされかねないでしょう。また、そのような周囲の人の理解が得られないと、職場の雰囲気は悪くなり、ギスギスしがちです。

合理的配慮についての考え方を当事者と確認する

合理的配慮の提供においては、配慮を受ける当事者(障害者)とのコミュニケーションが不可欠です。合理的配慮は、障害者のニーズに基づいて行われるものであり、そのニーズを正確に理解するものだからです。しかし、当事者の希望を尊重することは大切ですが、それによって組織やチームへの影響があるような場合には、その職場はその方にとっては向いていない場合もあるかもしれません。

例えば、聞きながらメモを取るのが苦手なので、何かツールを活用して録音するなどの個人で完結できるような配慮であれば、周囲に伝える必要はないかもしれません。でも、周囲にも影響があるような業務内容や職場環境であれば、障害を開示しないで合理的配慮を受けることが難しいことを事前に伝えておいたほうがよいでしょう。

そのためにも事前に職場実習をすることは、どのような環境の職場なのかや周囲の雰囲気を体験するという大きな意味があります。また、合理的配慮は企業に求められているものですが、「過重な負担」にならない範囲で行うものとされています。

過重な負担には、次のことが含まれます。

・事業活動への影響の程度
・実現困難度
・費用負担の程度
・企業の規模
・企業の財務状況
・公的支援の有無

障害を開示しないで合理的配慮を受けることが難しい職場や業務内容のものであれば、これらの「事業活動への影響の程度」や「実現困難度」に該当するかもしれません。

当事者との対話を通じて、どのような配慮が最も効果的であるかを共に考え、合意形成を図ることが求められます。この際、障害者がどのような支援を望んでいるのか、またどのような配慮が実際に役立つのかを具体的に確認することが重要です。

実施可能な合理的配慮について率直に話し合う

合理的配慮を実施する際には、その実現可能性について率直に話し合うことが重要です。当事者が求めるすべての合理的配慮を企業が必ずしも実行可能であるとは限りません。
組織の規模やリソース、業務の性質によっては、特定の配慮を提供することが難しい場合もあります。このような場合、企業は無理に配慮を提供しようとするのではなく、実施可能な範囲で最善の配慮を提供することを目指すべきです。
「障害を他の人に知られたくない」という目的の意図が、これまでに障害への偏見に悩まされたことであるのであれば、例えば理解がある職場であれば開示することが可能なのかなどの代替案が考えられないか等を率直に話し合うことができるでしょう。

合理的配慮は個別の対応が求められますが、実際の職場環境や一緒に働く従業員に受け入れられないものだと、結局うまくいくことはありません。障害者雇用を進めていくうえでは、組織やチームの理解と協力が必要です。
「障害を他の人に知られたくない」ことが、職場によってどれくらいの影響があるのかを考えてみてください。また、当事者とのコミュニケーションを重視し、実現可能な配慮について率直に話し合うことは、障害者が働きやすい職場環境を整えることに繋がります。

まとめ

「障害を他の人に知られたくない」という障害者の希望は、職場における合理的配慮の提供において難しさが求められることがあります。企業は、障害者のプライバシーを尊重しつつ、適切な合理的配慮を提供するための柔軟な対応を考えていくことが大切です。そのためには、まず障害者が自身の障害を他の人に知られたくないと感じる理由を理解し、組織全体でその意向に沿った対応を考えることが必要です。
合理的配慮を進めるためには、組織やチーム全体への影響を考慮し、当事者とのコミュニケーションを重視し、実施可能な配慮について率直に話し合うようにします。当事者が求める通りの合理的配慮が難しい場合には、代替案がないかを考えていくことが大切です。
また時には、当事者が求めるすべての合理的配慮を企業が必ずしも実行可能であるとは限らないことを伝えておくとよいでしょう。このような取り組みにより、企業は障害者が安心して働ける職場環境を整えることができます。

動画で解説

参考

【完全版】2024年度障害者に関する合理的配慮を徹底解説

障害者採用で失敗しない方法、円滑にする企業実習の効果とメリット

障害者の採用面接で聞いておくべきこと、聞いてはいけないこと

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