2026年8月4日更新
障害者採用の面接を行ったものの、「実際に仕事を任せられるか判断しにくい」「面接での受け答えと業務能力が一致しているのか分からない」と感じることがあります。
そのようなとき、採用前の職場実習を検討する企業もあります。ただし、職場実習を行えば、自動的に採用後のミスマッチを防げるわけではありません。
実習の目的や、確認する仕事、評価する視点が曖昧なままでは、「真面目だった」「挨拶ができた」「作業ができた」といった印象だけで判断することになります。
職場実習で確認したいのは、本人のできること・できないことだけではありません。
予定している仕事と本人の経験・能力が合っているか、指示方法や職場環境を調整すると仕事の進め方がどう変わるか、企業として必要な配慮を継続できるかを確認することが重要です。
- 障害者採用で職場実習を行う目的
- 面接だけでは確認しにくいこと
- 実習前に企業が決めておくこと
- 実習結果を見るときに注意したい点
- 企業ごとに実習内容を設計する必要性
障害者採用で職場実習を行う目的
職場実習は、応募者が「採用できる人か、採用できない人か」を短期間で見極めるためだけのものではありません。
実際の仕事を通じて、次のような点を確認する機会です。
- 予定している仕事と本人の経験・能力が合っているか
- どのような説明や指示が分かりやすいか
- 職場環境が仕事の進め方にどのように影響するか
- 必要な配慮を企業側で実施できるか
- 本人が仕事内容や職場環境をどう感じるか
企業にとっては、面接だけでは見えにくい仕事の進め方を確認する機会になります。
一方、本人にとっても、仕事内容、職場環境、指示の受け方、相談のしやすさなどを確認し、自分が継続して働ける職場かを考える機会になります。
職場実習は、企業だけが応募者を評価する場ではなく、企業と本人の双方が、採用後の働き方を具体的に確認する場です。
面接だけでは確認しにくいことがある
面接で話す力と、実際に仕事をする力は同じではない
採用面接では、応募者の経験や希望、必要な配慮などを確認します。しかし、面接での受け答えが上手だからといって、必ずしも予定している仕事に合っているとは限りません。
反対に、面接ではうまく説明できなくても、決められた手順に沿って正確に作業を進める力を持っている人もいます。
面接でのコミュニケーションだけを重視すると、実際には業務能力を持つ人を見落とす可能性があります。
職場実習では、実際の仕事に近い場面を通じて、本人がどのように説明を理解し、仕事を覚え、確認しながら進めるのかを見ることができます。
同じ職種名でも、職場によって求める働き方は異なる
同じ「事務」「清掃」「軽作業」という職種でも、職場によって求められる仕事の進め方は異なります。
たとえば、同じ清掃業務でも、決められた時間と品質をチームでそろえる職場もあれば、広い範囲を一人で確認しながら進める職場もあります。
必要となる能力や、分かりやすい指示方法、質問のタイミングも変わります。そのため、「支援機関ではこの仕事ができていた」「同じ職種の経験がある」という情報だけで、自社でも同じように働けるとは限りません。
職場実習では、職種名ではなく、実際に自社で任せる予定の仕事との関係を確認する必要があります。
職場実習は企業だけが応募者を評価する場ではない
実習という言葉から、企業が応募者を評価する場という印象を持つことがあります。
しかし、企業側にも確認されることがあります。
たとえば、
- 仕事内容を具体的に説明できているか
- 仕事を教える人が決まっているか
- 質問しやすい環境になっているか
- 必要な配慮を実際に行えるか
- 配属後も継続できる体制になっているか
という点です。
本人が仕事を進めにくかった場合も、本人の能力だけが原因とは限りません。
仕事内容が曖昧だった、複数の人から異なる指示が出ていた、質問する相手が分からなかったなど、企業側の仕事の設計や受け入れ方法が影響している場合もあります。
職場実習では、本人だけでなく、仕事の内容、指示方法、職場環境、受け入れ体制も確認することが重要です。
実習前に会社で決めておくこと
実習で何を確認するのかを明確にする
実習の目的が曖昧なままでは、担当者ごとに見るポイントが変わります。ある担当者は作業速度を重視し、別の担当者は挨拶や受け答えを重視するということもあります。
まず、今回の実習で何を確認したいのかを、会社として整理します。
たとえば、
- 予定している仕事の理解や進め方
- 指示方法を変えたときの変化
- 質問や相談の方法
- 職場環境による影響
- 必要な配慮の実施可能性
などです。
ただし、何を確認すべきかは、企業や職種によって異なります。
一般的な評価項目をそのまま使うのではなく、自社で任せる仕事と採用後に期待する役割に合わせて考える必要があります。
採用後に任せる予定の仕事を用意する
実習のためだけに簡単な仕事を用意すると、採用後に任せる仕事との適合を確認できません。
一方で、初日から通常の社員と同じ業務量や判断を求めることも適切ではありません。
採用後に任せる予定の業務の中から、実習期間や本人の経験に合わせて、一部を切り出して確認します。
重要なのは、「実習中に何か仕事をしてもらうこと」ではなく、採用後の仕事を想定して確認することです。
指示する人と判断する人を決める
実習中に複数の社員が関わる場合でも、誰が仕事を説明し、誰が質問を受け、誰が状況を確認するのかを決めておく必要があります。
担当者ごとに指示内容が変わると、本人の仕事の進め方を適切に確認できません。
また、実習担当者の印象だけで採用判断が決まらないよう、人事と配属予定部署が何を確認するのかを共有することも大切です。
具体的な役割分担や評価項目は、実習する仕事、期間、配属体制に合わせて個別に設計する必要があります。
職場実習で確認したい4つの視点
仕事の理解と進め方
最初から仕事ができるかどうかだけを見るのではなく、どのように説明すると理解しやすいかを確認します。
口頭での説明、文字による手順、見本を示す方法など、説明の仕方によって仕事の進め方が変わることがあります。
指示方法や職場環境を変えたときの変化
最初にうまくできなかったことを、そのまま本人の能力不足と判断しないことが重要です。
仕事の手順を分ける、確認する順番を整理する、質問する相手を明確にするなど、指示や環境を調整すると、仕事を進められる場合があります。
確認したいのは、本人が配慮なしでできるかどうかだけではありません。どのような条件であれば仕事を行えるのか、企業としてその条件を継続できるのかという点です。
質問・相談・報告の方法
「報告・連絡・相談ができるか」という抽象的な評価だけでは、採用後の対応につながりません。
誰に質問するのか、どの状態になったら相談するのか、口頭と文字のどちらが伝えやすいのかなど、実際の仕事の中で確認します。
本人が質問しなかった場合も、「質問する力がない」とすぐに判断するのではなく、質問する相手やタイミングが明確だったかを振り返る必要があります。
長期的に継続できる働き方か
実習期間中は、本人が採用を意識し、通常以上に集中したり、無理をして頑張ったりすることがあります。
短期間で仕事ができたとしても、その業務量や勤務時間を採用後も継続できるとは限りません。
休憩を取らずに頑張っていないか、実習後に強い疲労が残っていないか、本人が無理なく続けられる働き方かを確認します。
採用後も緊張感を維持させるのではなく、通常の状態でも安定して働ける仕事と環境を考えることが重要です。
「できた・できなかった」だけで判断しない
職場実習で仕事ができなかった場合、すぐに「この仕事には向いていない」と判断することがあります。
しかし、実習結果は本人の能力だけで決まるものではありません。
- 仕事の説明方法
- 実習期間
- 業務量
- 職場環境
- 質問のしやすさ
- 指示する人との関係
などの影響を受けます。
そのため、
- どの条件で難しかったのか
- 指示や環境を変えるとどうなったのか
- 採用後も必要となる調整なのか
- 企業として継続できる対応なのか
を分けて確認する必要があります。
反対に、実習でできたからといって、採用後も同じ状態が続くとは限りません。
実習中の結果だけではなく、採用後の業務量、勤務時間、指示方法、受け入れ体制まで含めて判断します。
実習後は企業・本人・支援者で認識を確認する
実習後の振り返りは、企業から一方的に評価を伝える場ではありません。
本人が仕事内容や職場環境をどのように感じたかも確認します。
また、支援機関が関わっている場合には、訓練場面と企業の実習場面で、仕事の進め方にどのような違いがあったかを確認することもできます。
実習後に整理したいのは、
- 本人が取り組みやすかった仕事
- 進めにくかった仕事や場面
- 有効だった指示や環境
- 企業側で継続できる対応
- 採用後にあらためて確認する事項
です。
ただし、実習結果をどのように採用判断へつなげるかは、職務内容、採用基準、配属体制によって異なります。
一般的な評価表だけで決めず、自社の仕事に合わせて判断する必要があります。
職場実習をしてもミスマッチを完全には防げない
職場実習は、面接だけでは分からない仕事の進め方や職場環境との関係を確認するために有効です。しかし、実習を行えば、採用後に起きるすべての問題を予測できるわけではありません。
実習期間は限られており、採用後には仕事内容、業務量、人間関係、本人の状態が変わることもあります。
そのため、実習で問題がなかったことを、長期定着の保証と考えないことが重要です。
職場実習は、採用判断を一度で確定するためのものではなく、採用後に何を確認し、どのように見直す必要があるかを整理する機会でもあります。
- 実習で何を確認するのか決めている
- 採用後に任せる予定の仕事を用意している
- できた・できなかっただけで評価していない
- 指示方法や職場環境による変化を確認している
- 本人にも仕事や職場について確認している
当てはまらない項目がある場合、実習日数や評価項目を増やす前に、自社で何を確認するための実習なのかを整理する必要があります。
職場実習で確認する内容は、企業や職種によって異なります。
同じ職種でも、仕事内容、求める成果、指示方法、職場環境、配属体制が違えば、実習で見るべきポイントも変わります。
「実習を行ったが採用判断につながらない」「担当者によって評価が異なる」「実習中はできていたのに採用後に続かない」と感じている場合は、実習の目的と判断の流れから見直す必要があります。
30分相談では、予定している仕事や現在の受け入れ体制を伺い、自社では何を確認するための実習が必要なのかを一緒に整理します。
障害者採用の職場実習に関するよくある質問
Q:障害者を採用するときは、必ず職場実習を行うべきですか
すべての採用で必ず実施するものではありません。
面接や選考だけでは、予定している仕事との適合や、必要な配慮の実施可能性を判断しにくい場合に、職場実習を検討します。
実習の必要性は、仕事内容、選考方法、応募者の経験、企業側が確認したい事項によって異なります。
Q:職場実習では、どのような仕事を任せればよいですか
採用後に任せる予定の仕事との関係を確認できる業務を選ぶことが基本です。
ただし、実習期間や本人の経験に応じて、業務の一部を切り出すなどの調整が必要です。
どの業務を用いるかは、自社の採用目的や評価基準に合わせて考えます。
Q:実習中にできなかった仕事があれば、不採用にしてよいですか
できなかったという結果だけで判断するのではなく、どの条件で難しかったのかを確認します。
指示方法や環境を変えた場合の変化、職務上必ず必要な能力か、企業として調整を継続できるかなどを整理したうえで判断する必要があります。
Q:実習中はできていたのに、採用後にできなくなることはありますか
実習中は、採用を意識して通常以上に集中したり、無理をして頑張ったりすることがあります。
また、採用後には業務量や人間関係が変わることもあります。
実習時の状態だけを標準にせず、長期的に継続できる働き方かを確認することが重要です。
Q:職場実習は本人にとって、どのような意味がありますか
本人にとっても、仕事内容、職場環境、指示方法、相談のしやすさを確認し、自分が継続して働ける職場かを考える機会です。
企業から評価されるだけの場にせず、本人が職場を選ぶための情報を得られる実習にする必要があります。
まとめ
障害者採用で職場実習を行う目的は、本人のできること・できないことを一方的に評価することではありません。
実際に任せる予定の仕事を通じて、
- 仕事の理解と進め方
- 指示方法や職場環境による変化
- 質問や相談の方法
- 必要な配慮の実施可能性
- 長期的に継続できる働き方か
を、企業と本人の双方で確認します。
同じ職種であっても、企業ごとに仕事内容、求める成果、指示方法、配属体制は異なります。
そのため、一般的な実習プログラムや評価表をそのまま使用するだけでは、自社に必要な採用判断につながらないことがあります。
職場実習を採用判断へ活かすためには、実習を始める前に、自社では何を確認し、誰が判断し、採用後の仕事へどうつなげるのかを整理することが重要です。
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これから職場実習するにあたり、検索し大変参考になりました。私は、一度見学に行ったのですが、本当に働きたいと思い応募し実習する運びとなりました。ただ、常勤してるなかで実習のために連続して休むことで保険に関わる事と、体調悪くても今月は休めない事、また交通費の負担が大きく憂鬱です。今後の為ですが無理がいっぱいで悩む日々です。
コメントいただきありがとうございます。
これから実習をされるんですね。
実習は、仕事内容はもちろんですが、職場の雰囲気を知る上でとても大切だと思います。
どんなによい職場と言われても
すださんにとって、よい職場とは限りませんので、
その見極めをするために、ぜひ実習を有効的に活用されてください。
また、実習を始める前に、無理がいっぱいと感じておられるのであれば、
すでに働いていらっしゃるようですので、
そのことも率直にお話して、実習期間を短くしてもらうことを
これから実習を受け入れる企業の方にご検討いただくこともできるかもしれません。