若年性認知症の就労継続をするためにできること

若年性認知症については、最近知られる機会が増えてきましたが、まだ社会的認知度は低く、正しく理解されているとはいえません。そのため支援や援助を望んでいる本人やその家族も、情報が少ないため戸惑うことが多く見られます。

特に働き盛りに発症するため、失職した場合の経済的な問題や家族の介助等の負担が大きな課題となっています。就労している場合は、わずかな認知機能の低下でも仕事の支障となることがありますが、早めの発見や、フォロー体制によって就労継続することも可能です。

また、雇用継続や社会活動に参加することで症状の進行を遅らせることができるとの研究結果もあり、実際に医療、福祉、事業所、家族の適切な連携により、就労の継続が可能になっている例も見られます。

ここでは、若年性認知症とはどのような障害なのか、働き続けるために職場、本人、家族が何ができるのかについて見ていきます。

若年性認知症とは

認知症とは「正常に発達した知的機能が脳の神経細胞の障害により持続的に低下し、記憶障害などの認知機能障害により、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態」と定義されます。

病理学的には認知症と若年性認知症の間に大きな違いはありませんが、若年性認知症とは「18歳以上~65歳未満で発症する認知症」のことを指します。若年性認知症の場合、発症年齢が若く、働き盛りのため、本人の就労継続の問題、さらに家族の生活への影響が大きいのが特徴となっています。就労している場合は、わずかな認知機能の低下でも仕事の支障となることがありますが、早めの発見や、フォロー体制によって就労継続することも可能です。

認知症の症状としては、意欲・発動性の低下、抑うつ、作業能率の低下、性格変化、行動様式の変化などがあります。これらの症状はうつ病の症状とも共通する部分があります。発症早期には、専門医でもその鑑別が難しいと言われています。

精神障害者保健福祉手帳の申請が可能

精神疾患のため、一定レベル以上の能力障害がある場合、精神障害者保健福祉手帳の申請(初診日から6ヶ月以上経過した時点で)を行えば、手帳の交付に該当するかどうかの審査を経た後、精神障害者保健福祉手帳(1級~3級まで)が交付されます。

障害者手帳を所持することにより、いろいろな支援が受けることができます。例えば、企業の障害者雇用枠として働き続けやすくなったり、障害者の就労支援が受けやすくなったりします。

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働き続ける上で重要なこと

早期発見の重要性

若年性認知症は、早期発見・早期診断・早期治療により、一部の治療可能な認知症への対応が可能となります。

また、早く発見、診断されることにより、職務遂行上のトラブルを回避し、会社内の混乱を未然に防ぐことができます。そして、何よりも本人が障害を自覚するとともに、家族が将来の予定を考える猶予期間がもてることが大きいでしょう。そのために一緒に働く上司や同僚、産業医、家族、そして本人が早く気づくことが必要です。

若年性認知症の発症早期には、日常生活上は問題がなくても、職務遂行上の問題が生じる可能性があります。家族よりも一緒に働いている同僚や上司が早期の異変に気づく可能性が高いことがあります。何かおかしいかも・・・と感じたら、産業医や産業保健師につなげることができるでしょう。

産業医に求められている役割は、当事者の職務遂行上の問題を、客観的に把握するとともに、若年性認知症の疑いがある場合には専門医の受診を勧めることです。職場の上司や同僚が直接話すことは難しいかもしれませんが、産業医を通して伝えてもらうことができるでしょう。また、職場での適切な対応の助言を求めるとともに、家族への情報の共有化を図ってもらうことも大切です。

日常生活上は、何ら問題がないように見えても、仕事の上で問題を抱えている場合があります。家族の中で困っていることがあれば、話し合える場や雰囲気を作っておくことができるでしょう。また、当事者も何かいつもと調子が違う、おかしいと感じたら、一人で抱え込まず家族や職場の同僚、上司に相談することができます。

仕事内容の再設計

若年性認知症と診断されたからといって、すぐに仕事が全くできなくなるわけではありません。しかし、何ができないのか、どのようにすればできるのかを見ていくことは必要になり、仕事内容の再設計をすることが求められます。そのため次のようなアセスメント、職務分析、課題分析をすることができるでしょう。

アセスメント

若年性認知症の発症により、それまでの仕事が上手くできなくなってしまった人に対して、「どのような環境で」「どのような支援を行えば」「どのような職業的能力が発揮できるか」という視点に立ち仕事内容を見ていくことが必要です。そのためにも本人の能力をアセスメントします。

職務分析

職務分析とは「職場での仕事の流れを、時系列に表したもの」です。スケジュールのようなイメージで、いつ、どこで、誰と、何をするのかがわかるようにするとともに、求められる知識やスキルについても一緒に把握します。

課題分析

課題分析とは、仕事の具体的なやり方について「仕事の手順を、いくつかの小さな行動単位に分けて、時系列に並べたもの」です。仕事を教えるときに、同じ言葉で、同じ手順で、最小限の指示で伝えるために使います。

このようにすることで、仕事を教える相手への要求を明確にすることができますし、仕事や行動の段取りをわかりやすく定型化することができます。教える方も教えられる方もわかりやすくなります。また、課題分析を行うときには、定型化した段取りを紙に書いたり、絵や写真で示すなど、視覚化することによってさらに有効的に活用することができます。

環境整備と社内における情報共有

働きやすい環境の整備

若年性認知症を発症した人にとっては、作業の目的と流れのわかりやすさ、シンプルな作業動作、試行錯誤の時間の確保、上司や同僚等と作業結果の評価を共有することなどが重要になります。

職務分析や課題分析等により、作業手順書の作成、定期的な個別相談の設定、作業に使用する物品の整理整頓、表示の工夫等を行うことによって働きやすい環境を作ることができます。また、これらの工夫は、若年性認知症を発症した人だけでなく、一緒に働く従業員の生産管理、安全管理の向上にもつながります。

社内での情報共有

障害者雇用で課題になることは、障害者の担当者に依存しすぎてしまうことです。誰か担当の人が人事異動や退職すると、それと同時に障害者も雇用が継続できなくなることは珍しいことではありません。

若年性認知症を発症した人に対しても同じです。それまで適切な雇用管理をしていた上司等が、人事異動等により、いなくなることがあります。このような場合、新たに上司になる者に対して、適切な引継ぎを行う必要があります。そのための社内の情報共有は大切です。必要に応じて、本人の障害特性(得意なことや苦手なこと)や必要な配慮事項等を、記録(文書化)しておくことによって、この引継ぎがスムーズにいくでしょう。

まとめ

若年性認知症の就労継続をするために何ができるのかを、若年性認知症とはどのような障害なのか、働き続けるために職場、本人、家族が何ができるのかという点から見てきました。

まず、働き続ける上で重要なことは、早期発見と仕事の再設計です。若年性認知症は、早期発見・早期診断・早期治療により、一部の治療可能な認知症への対応が可能となるからです。若年性認知症と診断されたからといって、すぐに仕事が全くできなくなるわけではありません。しかし、何ができないのか、どのようにすればできるのかを見ていくことは必要になり、仕事内容の再設計をすることが求められます。

また、環境整備と社内における情報共有も大切です。作業の目的と流れのわかりやすさ、シンプルな作業動作、試行錯誤の時間の確保、上司や同僚等と作業結果の評価を共有することなどが重要になります。そして、担当者が変わっても本人の障害特性(得意なことや苦手なこと)や必要な配慮事項等を、記録(文書化)しておくことによって、適切な引継ぎができるような体制を整えておくことも必要です。

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