精神障害者とは?企業が知っておきたい特性・配慮と雇用のポイント

精神障害者とは?企業が知っておきたい特性・配慮と雇用のポイント

2025年01月31日 | 障害別の特性・配慮

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

登録者限定レポート
「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年8月17日更新
精神障害のある人を採用するとき、「どんな仕事が向いているのか」「どこまで配慮すればよいのか」「体調を崩さないよう、負担の少ない仕事にした方がよいのか」と迷う企業は少なくありません。

精神障害について基本的な知識を持つことは大切です。しかし、うつ病、双極性障害、統合失調症など、精神障害にはさまざまな疾患や状態があり、同じ診断名であっても、仕事への影響は一人ひとり異なります。

そのため、企業が考えたいのは、「精神障害者はどんな人なのか」という一つの人物像をつくることではありません。

その人の状態が、仕事のどこに影響しているのか。どのような条件があれば仕事を進めやすいのか。

ここを見ることが重要です。

そして、本人への配慮だけでなく、仕事の任せ方、必要な情報の共有、対応を決める判断基準、誰がどこまで決めるのかといった会社側の仕組みも、あわせて確認する必要があります。

この記事でわかること

・精神障害について企業が知っておきたい基本的な考え方
・「精神障害者=こういう人」と一括りにできない理由
・精神障害が仕事に影響するとき、何を確認すればよいのか
・障害特性を知るだけでは職場対応が決まらない理由
・精神障害者雇用を考えるときの「仕事・情報・判断・役割」の4つの視点

まず、自社では何を確認すればよいのかを見たい方へ
精神障害のある社員への対応を考えるときは、本人の障害特性だけでなく、会社側の「仕事・情報共有・判断基準・役割」を見ることが大切です。
→ 精神障害者を雇用するとき、企業が確認したい4つの視点を見る

精神障害とは|企業が知っておきたい基本

精神障害には、うつ病、双極性障害、統合失調症、不安障害など、さまざまな疾患や状態があります。

気分や意欲、集中力、思考、睡眠などに変化が生じ、それが日常生活や仕事に影響することもあります。しかし、どのような影響が出るか、その程度がどのくらいなのかは一律ではありません。

また、「精神障害があること」と「仕事ができるかどうか」は同じ話ではありません。

治療を続けながら安定して働いている人もいますし、体調によって一時的に仕事の進め方を調整する必要がある人もいます。

企業では、診断名だけを見るのではなく、現在の状態と実際の仕事との関係を確認することが重要です。

「精神障害者=こういう人」と考えない

同じ診断名であっても、症状の現れ方、治療状況、これまでの職務経験、得意なことや苦手なこと、働く環境は異なります。

例えば、同じうつ病という診断であっても、集中力への影響が大きい人もいれば、疲労がたまりやすい人もいます。ある時期には勤務時間の調整が必要でも、その後は通常の勤務ができることもあります。

そのため、

「精神障害なら単純な仕事がよい」
「精神障害なら責任のある仕事を任せない方がよい」
「精神障害なら変更の少ない仕事にした方がよい」

と、障害名から仕事内容や対応を決めてしまうことには注意が必要です。

障害特性についての知識は、本人を理解するための参考になります。しかし、それだけで「この人には何ができるのか」「どのような配慮が必要なのか」まで決めることはできません。

精神障害が仕事に影響するとき、企業は何を見るのか

精神障害について調べると、疾患ごとの症状や特徴について多くの情報が出てきます。

もちろん、基本的な知識を持つことは必要です。しかし、企業が職場で確認するのは医学的な診断ではありません。

見る必要があるのは、実際の仕事の中で何が起きているのかです。

体調や集中力に変化が出ることがある

体調によって、集中し続けることが難しい、疲れやすい、判断に時間がかかるなど、仕事の進め方に変化が見られる場合があります。

このとき、「精神障害だから仕方がない」と考えるのでも、「本人にもっと頑張ってもらえばよい」と考えるのでもありません。

どの業務で負担が大きくなっているのか。
仕事の量や時間帯との関係はあるのか。
進め方を変えることで対応できるのか。

こうした仕事との関係を具体的に確認します。

業務量だけでなく、仕事の持たせ方が負荷になることもある

仕事の負担というと、業務量そのものに目が向きやすくなります。

しかし、複数の仕事が同時に入る、締切が重なる、優先順位が頻繁に変わる、急な依頼が続くといった「仕事の持たせ方」が負担になっている場合もあります。

だからといって、すべての仕事を減らせばよいとは限りません。

何を担当するのか。
どの順番で進めるのか。
優先順位は誰が決めるのか。
迷ったときは誰に確認するのか。

こうした部分を明確にすることで、仕事が進めやすくなることがあります。

曖昧な指示や変更で仕事が止まることがある

「適宜対応してください」「状況を見ながらお願いします」「できる範囲でやってください」こうした指示は、一見すると柔軟に見えます。

しかし、何をどこまで判断してよいのかが分からなければ、本人が迷ったまま仕事が止まることがあります。

この場合も、本人の能力だけを見るのではなく、指示する側が、仕事の目的、期限、優先順位、判断してよい範囲を十分に伝えているかを確認する必要があります。

困りごとが周囲から見えにくいことがある

精神障害による困りごとは、外から見えにくいことがあります。

一見すると問題なく仕事をしているように見えても、本人の中では大きな負荷がかかっている場合があります。

一方で、周囲が必要以上に心配し、本人ができる仕事まで外してしまうこともあります。

「大丈夫そうに見える」「つらそうに見える」といった周囲の印象だけではなく、本人との対話と実際の仕事の状況を合わせて確認することが大切です。

障害特性を知るだけでは、精神障害者雇用がうまくいかない

精神障害者雇用について学ぶとき、障害特性や配慮事例を知ることには意味があります。

しかし、知識が増えても、実際の職場で判断できるとは限りません。

例えば、

「体調が不安定そうなので、仕事を減らした方がよいのではないか」
「注意すると負担になるかもしれない」
「本人から希望が出るまで待った方がよいのではないか」

と迷ったとします。

このとき必要になるのは、「精神障害の人にはどう対応するのが正しいか」という知識だけではありません。

誰が仕事量を決めるのか。
何を見て負荷が高いと判断するのか。
本人から相談があったとき、誰が対応を考えるのか。
現場だけで決めてよい範囲はどこまでなのか。

こうした会社側の判断が決まっていなければ、対応は担当者や管理職個人の経験に依存します。

精神障害者雇用で起きる問題のすべてが、本人の障害特性から生じているわけではありません。

会社側の仕事の設計や判断の仕組みが曖昧なために、対応が止まっていることもあります。

精神障害者を雇用するとき、企業が確認したい4つの視点

精神障害のある社員への対応に迷ったときは、本人だけを見るのではなく、会社側も確認してみてください。

まず、次の4つの問いで考えてみます。

自社では、どこが曖昧になっていますか

仕事・入口:何を任せ、どこまでできればよいのかが明確になっていますか。

情報共有:仕事や配慮を判断するために必要な情報が、必要な人へ届いていますか。

判断基準:仕事量や勤務時間、配慮を変えるとき、何を基準に決めるかがありますか。

役割・権限:相談があったとき、誰がどこまで判断するのか決まっていますか。

4つのうち、どこかで「誰が決めるのだろう」「何を基準にすればよいのだろう」と迷うのであれば、本人への対応だけでなく、会社側の仕組みを確認する必要があるかもしれません。

1.仕事・入口|何を任せ、何を期待するのか

最初に確認したいのは、本人の障害ではなく、仕事です。

何のための仕事なのか。
何を担当するのか。
どこまでできれば役割を果たしたことになるのか。
何を本人が判断し、何を上司に確認するのか。

こうした仕事の入口が曖昧なままだと、本人も周囲も「どこまでやればよいのか」が分からなくなります。

「精神障害があるから何を任せるか」を考える前に、会社側がその仕事をどのように定義しているのかを確認することが必要です。

2.情報共有|必要な情報が必要な人に届いているか

本人から配慮事項や仕事上の困りごとを聞いても、その情報が障害者雇用担当者だけに留まっていれば、日常的に仕事を管理する上司が必要な対応を判断できないことがあります。

一方で、診断名や通院状況など、本人の情報を職場全体に広く共有すればよいわけでもありません。

重要なのは、

何の判断に必要な情報なのか。
その判断をする人は誰なのか。
その人には何を共有する必要があるのか。

を整理することです。

情報は、集めることよりも、仕事や判断に使える形になっているかが重要です。

3.判断基準|何を基準に対応を決めるのか

仕事量を減らすのか。
勤務時間を変更するのか。
担当業務を変えるのか。
配慮を見直すのか。

こうした判断を、「本人が希望したから」「上司が心配だから」だけで決めると、対応が人によって変わってしまいます。

もちろん、本人の希望や上司の気づきは重要な情報です。

ただし、それをそのまま結論にするのではなく、仕事として何が必要なのか、実際にどのような支障が生じているのか、何を変えれば仕事が成立するのかという視点から考える必要があります。

4.役割・権限|誰が、どこまで決めるのか

精神障害者雇用では、直属の上司、人事、障害者雇用担当者、産業保健スタッフ、支援機関など、複数の人が関わることがあります。

関係者が増えること自体が問題なのではありません。

問題になるのは、「相談する人はたくさんいるのに、誰も決められない」という状態です。

日常的な業務調整は誰が決めるのか。
配慮内容は誰と検討するのか。
勤務条件や配置変更は誰が判断するのか。
医療的な判断が必要なときは、誰につなぐのか。

判断する内容ごとに、役割と権限を整理しておく必要があります。

配慮とは「負担を減らすこと」だけではない

精神障害のある社員への配慮というと、仕事を減らす、休憩を増やす、責任を軽くするといった対応が思い浮かぶかもしれません。

もちろん、本人の状態と仕事との関係によって、勤務時間や業務量を調整する必要がある場合もあります。

しかし、配慮は「できるだけ仕事をさせないこと」ではありません。

例えば、

・仕事の目的や優先順位を明確にする
・指示を後から確認できるようにする
・相談する相手を決めておく
・業務変更をできるだけ早めに伝える
・本人が判断する範囲と、上司へ確認する範囲を分ける

といった調整も、仕事を進めやすくするための配慮です。

大切なのは、一般的な「精神障害者への配慮」をそのまま当てはめることではありません。

本人の状況と仕事内容を確認しながら、仕事を進めるために何が必要なのかを考えることです。

精神障害者雇用では「本人を見ること」と「組織を整えること」の両方が必要

精神障害者雇用では、本人の状態や希望を丁寧に確認することが必要です。

しかし、それだけで安定した雇用が実現するわけではありません。

本人に「困ったら相談してください」と伝えていても、相談を受けた人が何を判断してよいのか分からなければ、対応は止まります。

本人から配慮事項を聞いていても、日常的に仕事を管理する人へ必要な情報が届いていなければ、現場では活かせません。

本人の障害について詳しく理解していても、担当する仕事の目的や役割が曖昧であれば、本人も上司も「できているのか」「何を変えるべきなのか」を判断できません。

だからこそ、

本人の状態を見ることと、会社側の仕事・情報・判断・役割を見ること。

この両方が必要です。

障害者雇用を、特定の担当者の経験や善意だけに任せないためにも、会社として判断できる状態をつくっておくことが重要です。

自社では、どこから見直すとよさそうか迷っている方へ
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よくある質問

Q:精神障害者には、どのような仕事が向いていますか

「精神障害だからこの仕事が向いている」と、一律に決めることはできません。

本人の経験や得意なこと、現在の状態と、仕事で求められる役割を合わせて考えます。

また、仕事内容そのものだけでなく、指示方法、優先順位の示し方、勤務時間、周囲との役割分担などを調整することで、できる仕事の範囲が変わることもあります。

Q:精神障害がある人には、仕事の負担を減らした方がよいですか

必ずしも、仕事を減らすことが配慮になるとは限りません。

何が負担になっているのかを確認し、仕事量、優先順位、進め方、勤務時間、環境など、どこを調整すると仕事が成立しやすいのかを考えます。

「負担を減らす」ことではなく、「仕事を進めるために何が必要か」という視点で考えることが大切です。

Q:精神障害について、上司や同僚にどこまで伝えてよいですか

障害に関する情報を広く共有すればよいわけではありません。

何のためにその情報が必要なのかを整理し、仕事や配慮の実施に必要な人へ、必要な範囲で共有することが基本です。

本人とも、何を誰へ共有するのかを確認しておくことが重要です。

Q:体調が悪化したとき、会社が判断してよいのでしょうか

病名や治療方法などの医学的な判断は、企業の役割ではありません。

一方で、勤務を続けられるのか、仕事量を調整するのか、勤務時間や配置をどうするのかといった就業上の判断は、必要に応じて医療等から得た情報も踏まえながら、会社として考える必要があります。

医療側に判断をすべて委ねるのでも、会社だけで医学的な判断をするのでもなく、それぞれの役割を分けて考えることが大切です。

Q:精神障害のある社員には、注意やフィードバックを控えた方がよいですか

精神障害があるからといって、仕事上必要なフィードバックをすべて避ける必要はありません。

むしろ、何を期待しているのか、どこを修正してほしいのかが伝わらなければ、本人も仕事の改善ができません。

必要なのは「注意しないこと」ではなく、仕事上必要な内容を、分かりやすく伝えられる状態をつくることです。

まとめ|精神障害を知ることから、仕事との関係を見ることへ

精神障害について基本的な知識を持つことは、企業が障害者雇用を進めるうえで大切です。

しかし、「精神障害者はこういう人」「この障害にはこの配慮」と覚えるだけでは、実際の職場で起きる問題に対応することはできません。

確認したいのは、その人の状態が、現在の仕事のどこに影響しているのかです。

そのうえで、

・何を任せ、何を期待するのか
・必要な情報を誰と共有するのか
・何を基準に対応を判断するのか
・誰がどこまで決めるのか

を会社側でも整理します。

本人を見ることと、組織を整えること。

この二つを分けずに考えることが、精神障害のある社員が働き続けられる職場をつくるための土台になります。

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