体調を崩した社員の仕事量を、一時的に減らした。
その後、少しずつ状態は安定してきたものの、「仕事を戻して、また体調を崩したらどうしよう」「本人が不安だと言っているのに、増やしてよいのだろうか」「一度配慮したことを、会社側から変えてよいのだろうか」と迷うことはありませんか。
障害者雇用では、配慮を「始める」ときには検討していても、その配慮をいつ、どのように見直すのかまでは決めていないことがあります。
その結果、一時的に減らしたはずの仕事が、そのまま半年、1年と続いてしまうこともあります。
ここで大切なのは、単純に「いつ仕事を戻すか」を決めることではありません。
そもそも、何のためにその配慮を始めたのか。そこに戻って考えることです。
この記事では、合理的配慮を固定化させず、状況に合わせて見直していくための考え方を整理します。
・一度減らした仕事を戻しにくくなる理由
・「いつ戻すか」より先に確認したいこと
・合理的配慮を固定化しないための考え方
・仕事を増やすことと、配慮をやめることの違い
なぜ一度減らした仕事は戻しにくくなるのか
社員が体調を崩したとき、業務量を減らしたり、一部の仕事を外したりすることがあります。
その時点では、「まずは体調を安定させよう」「負担を少なくして様子を見よう」という判断だったかもしれません。
ところが、数か月後に状態が落ち着いてきても、仕事を戻す段階になると判断が難しくなります。
「また不調になったらどうしよう」「仕事を増やして悪化したら、会社の対応が悪かったことになるのでは」「本人が今のままを希望している」こうした不安があると、現状を変えない方が安全に見えるからです。
しかし、何も変えないことも、一つの判断です。一時的な対応だったはずのものが、そのまま固定化していないかは、ときどき見直す必要があります。
合理的配慮は「一度決めたら、そのまま」ではない
合理的配慮というと、「本人に必要な配慮を決め、それを継続するもの」というイメージを持つことがあります。
しかし、本人の状態も、仕事の状況も、職場環境も変わります。そのため、以前は必要だった調整が、現在も同じ形で必要とは限りません。
逆に、以前とは違う調整が必要になることもあります。
大切なのは、「配慮を続けるか、やめるか」ではなく、今の状況に合っているかを考えることです。
「いつ戻すか」の前に、「なぜ減らしたか」に戻る
仕事を戻すとき、「3か月経ったから」「最近、元気そうだから」と期間や印象だけで考えると、判断しにくくなります。
その前に確認したいのは、そもそも、何のために仕事を減らしたのかということです。
たとえば、
・体調を安定させるためだったのか
・特定の業務負荷を一時的に下げるためだったのか
・仕事の進め方そのものを整理する必要があったのか
によって、その後に見るべきことは変わります。
配慮の目的が曖昧なままだと、後になって、「何をもって見直せばよいのか」も分からなくなります。
見直しに迷っているときは、最初の判断に戻ってみる。それだけでも、考えやすくなることがあります。
配慮は「始めるとき」から見直しまで考える
配慮が固定化しやすいのは、見直す段階だけに問題があるとは限りません。
最初に、「とりあえず仕事を減らして様子を見ましょう」で終わってしまうと、その後に誰も判断しにくくなります。
そのため、配慮を考えるときには、「今、何を変えるか」だけではなく、「この後どう考えていくか」まで意識しておくことが重要です。
もちろん、先の状態をすべて予測することはできません。だからこそ、一度決めた対応を固定するのではなく、状況が変わったら改めて考えるという前提を持っておくことが大切です。
見るのは「本人の体調」だけではない
仕事を戻すかどうかを考えるとき、本人の体調は重要な情報です。
ただし、「元気そうだから戻す」だけで判断するものでもありません。
反対に、「本人がまだ不安と言っているから戻さない」だけで決めるものでもありません。
実際には、本人の状態だけでなく、仕事がどのように進んでいるのか、以前と何が変わったのか、職場でどのような状況になっているのかなど、複数の条件が関係します。
一つの情報だけで決めない。
これも、合理的配慮を見直すときに持っておきたい視点です。
仕事を戻すことは「配慮をやめること」ではない
ここで、もう一つ整理しておきたいことがあります。仕事量を増やすことと、合理的配慮をなくすことは同じではありません。
たとえば、仕事量は少し増やすけれど、指示方法は分かりやすい形を続ける。担当業務は戻すけれど、相談するタイミングは明確にしておく。このような考え方もあります。
つまり、「配慮あり」と「配慮なし」の二択で考える必要はありません。状況に応じて、必要な部分を調整していくという考え方ができます。
ケース|減らした仕事を戻せず、そのままになっている
ある社員が体調を崩し、一時的に担当業務を減らしました。数か月後には状態も落ち着き、欠勤も減っています。
しかし、上司は、「仕事を戻して、また不調になったら困る」と考え、業務量をそのままにしています。本人も、「今はこのくらいが安心です」と話しています。
この場面で、「では仕事を戻しましょう」とすぐに結論を出す必要はありません。一方で、「本人が不安だから、このままにしておこう」だけで終わる必要もありません。
ここで考えたいのは、何のために仕事を減らしたのか。そのときと比べて、今は何が変わっているのか。ということです。
実際には、本人の状態、仕事の内容、これまでの経緯、職場の状況によって判断は変わります。
だからこそ、合理的配慮では「正解を知っていること」以上に、何を確認して考えるかが重要になります。
迷ったときに確認したい3つの問い
一度始めた配慮を見直すか迷ったときには、次の3つから考えてみてください。
この3つの問いだけで、具体的な結論が決まるわけではありません。
しかし、「戻すか、戻さないか」という二択だけで考えるよりも、状況を整理しやすくなります。
一部の仕事はできていても、別の仕事では負担が大きい場合はどう考えるのか。
本人と上司で「戻せる状態」の認識が違うとき、何を確認するのか。
よくある質問
Q:一度減らした仕事は、本人が希望しなくても戻してよいですか
本人の希望だけで決めるのではなく、なぜ業務を減らしたのか、現在どのような状況なのかを確認しながら話し合うことが必要です。
一方的に戻す、本人が希望する限り変更しない、という二択で考えないことが大切です。
Q:体調が安定したら仕事を戻してよいですか
体調の安定は重要な情報ですが、それだけで判断するものではありません。
仕事の状況や、配慮を始めたときから何が変わったのかなども合わせて考えます。
Q:合理的配慮は一度決めたら継続しなければいけませんか
本人や仕事、職場の状況は変化します。
そのため、一度決めた内容をそのまま固定するのではなく、現在の状況に合っているかを見直す視点が必要です。
Q:仕事を増やすことは合理的配慮をやめることになりますか
必ずしもそうではありません。
業務量を変えながら、指示方法や相談方法など必要な調整を続けることもあります。
配慮を「ある・ない」の二択だけで考えないことが重要です。
Q:仕事量を見直すとき、本人とはどのように話し合えばよいですか
まず、配慮を始めた目的と現在の状況について認識を共有することが大切です。
具体的に何を確認し、どのように進めるかは、本人の状態や仕事内容によっても変わります。
まとめ|配慮は「始める判断」だけで終わらない
合理的配慮というと、どうしても、「何を配慮するか」に目が向きます。
しかし、一度始めた配慮が現在も必要なのか、同じ形でよいのかを考えることも重要です。
仕事を減らしたあとに迷ったときは、「いつ戻すか」から考えるのではなく、「何のために減らしたのか」に戻る。そして、配慮は固定するものではなく、状況に合わせて見直していくもの。という視点を持ってみてください。
配慮を始めることだけでなく、見直すことまで含めて考えられるようになると、合理的配慮の捉え方も変わってきます。
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