精神・発達障害のある社員への対応|3つの判断軸

精神・発達障害のある社員への対応|職場・本人・外部支援を分ける3つの判断軸

2026年08月20日 | 判断とマネジメントの構造

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

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「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

精神障害や発達障害のある社員への対応で、「どこまで配慮すればいいのだろう」「本人に改善を求めてもいいのだろうか」「相談されたことを、どこまで会社で受け止めればいいのだろう」と迷うことはありませんか。

障害について学び、本人の特性を理解しようとしている企業ほど、「できるだけ分かってあげたい」「困っているなら支援したい」と考えることがあります。

もちろん、特性を理解することは大切です。ただし、特性を理解することと、起きている問題をすべて職場が引き受けることは同じではありません。

精神障害・発達障害のある社員への対応で迷ったときには、「もっと障害について理解しなければ」と考えるだけではなく、

①職場が調整すること
②本人に担ってもらうこと
③職場だけで抱えず、外部支援につなぐこと

に分けて考えてみると、状況を整理しやすくなります。

この記事では、障害者雇用の現場で対応に迷ったときの「考え方」を整理します。

この記事でわかること
・なぜ特性を理解していても対応に迷うのか
・「職場・本人・外部支援」の3つに分けて考える視点
・相談、仕事量の調整、注意・指導で迷ったときの考え方
・担当者や管理職が抱え込みすぎないために見るべきポイント

精神・発達障害のある社員への対応は、なぜ迷いやすいのか

障害者雇用について学ぶと、「本人の特性を理解しましょう」「できない理由を考えましょう」「必要な配慮をしましょう」といったことを知る機会が増えます。

これらは大切な考え方です。一方で、実際の職場では、それだけでは判断できない場面が出てきます。

たとえば、

・遅刻が続いている
・仕事の締切が守れない
・面談のたびに長時間の相談になる
・一時的に減らした仕事を戻せない
・上司が毎回細かく指示しなければ仕事が進まない

といった状況です。

こうしたとき、「障害特性があるから仕方がないのでは」と考え始めると、どこまで職場が対応すべきなのか分からなくなることがあります。

特性を理解しても、「どこまで対応するか」は決まらない

たとえば、「不安が強い」という特性が分かったとしても、それだけで、「上司が毎日相談を聞くべきなのか」「仕事を減らすべきなのか」「本人に何を求めるのか」まで自動的に決まるわけではありません。

大切なのは、診断名や特性だけを見るのではなく、そのことが仕事にどのような影響を与えているのかを見ることです。

同じ診断名であっても、担当している仕事、職場環境、本人の経験、周囲との関係によって必要な対応は変わります。

そのため、「発達障害だからこうする」「精神障害だからここまで配慮する」という考え方だけでは、実際の職場では判断しにくいのです。

迷ったら「職場・本人・外部支援」の3つに分けて考える

問題が起きたとき、最初から「会社は何をしてあげればよいか」と考えると、対応範囲が広がりやすくなります。

そこで一度、次の3つに分けて考えてみます。

① 職場が調整すること
仕事の進め方、指示方法、役割、業務量、勤務方法など
② 本人に担ってもらうこと
報告する、相談する、合意したことを実行する、自分の状態を伝えるなど
③ 職場だけで抱えず外部支援につなぐこと
治療、生活、家庭、福祉的支援など、職場だけでは扱いにくい領域

これは、「どれか一つに決める」という意味ではありません。一つの問題に、職場の調整と本人の行動、外部支援のすべてが関係することもあります。

重要なのは、誰か一人が全部を抱える状態にしないことです。

① 職場が調整すること

仕事をするために、

・指示を分かりやすくする
・業務量を調整する
・役割を明確にする
・相談先を決める

といったことは、職場側で検討する領域です。

ただし、「配慮する」という言葉だけで考えると、何をどこまで変えるのかが曖昧になりやすくなります。

まず見るべきなのは、本人が仕事を進めるうえで、何が障壁になっているのかです。

② 本人に担ってもらうこと

障害があるからといって、仕事上必要なことをすべて職場が代わるわけではありません。

たとえば、

・困ったときに相談する
・決めた方法で報告する
・体調変化を伝える
・仕事上の約束について一緒に確認する

など、本人にも担ってもらう部分があります。

ここを曖昧にしたまま支援を増やしていくと、いつの間にか上司や担当者が、本人の判断まで代わっていることがあります。

支援することと、判断を代わることは同じではありません。

③ 職場だけで抱えず、外部支援につなぐこと

仕事上の問題に見えても、その背景に、

・治療
・生活リズム
・家庭の問題
・福祉的な支援

などが関係していることがあります。

職場が本人の話を聞くことはできます。

しかし、話を聞くことと、その問題自体を会社が解決することは別です。

必要に応じて、本人と相談しながら外部の専門家や支援機関の力を借りることも考えます。

ただし、外部につないだからといって、会社が仕事上の判断まで外部に任せるわけではありません。外部の意見を参考にしながら、仕事や職場でどう対応するかを考えるのは企業側です。

3つのケースから「誰が担うか」を考えてみる

実際の職場では、3つの領域がきれいに分かれないことも少なくありません。

ここでは、よく迷いやすい場面を見てみます。

ケース1|面談で相談を聞き続けてしまう

本人の不安や体調について話を聞いているうちに、毎回30分、1時間と面談が長くなっていく。

こうしたとき、「困っているのだから聞かなければ」と感じる担当者もいます。

しかし、話を聞くことと、その問題を職場が解決することは分けて考える必要があります。

仕事に関係する部分は職場で確認する。

本人が取り組むこともある。

職場だけでは扱えないことは、別の支援につなぐ。

このように分けて考えるだけでも、面談の意味は変わってきます。

では、実際にはどこまでを職場で扱うのか。

これは相談内容や仕事への影響によっても変わります。

ケース2|配慮で減らした仕事を戻せない

体調を崩したため、一時的に業務量を減らした。

その後、状態は安定してきたものの、いつ仕事を戻せばよいのか分からない。

「また体調が悪くなったらどうしよう」と考え、結果的に少ない仕事量がそのまま続いてしまうことがあります。

この場合、考えたいのは、「配慮を続けるべきか」だけではなく、「何のためにその調整を始めたのか」ということです。

配慮は、一度決めたら固定するものとは限りません。

状況を見ながら考え直すという視点も必要になります。

ケース3|「特性だから」と注意できない

遅刻、報告漏れ、期限遅れなどがあっても、「障害特性が関係しているなら、注意してはいけないのでは」と感じることがあります。

ここでは、特性を理解することと、仕事として必要なことを確認することを分けて考えることが重要です。

必要であれば、伝え方や仕事の条件を調整します。しかし、それと「何も求めないこと」は同じではありません。

担当者や管理職が疲れていることも、見直しのサイン

障害者雇用では、本人の状態に注目しがちです。

しかし、「毎日、担当者が相談を聞いている」「上司がすべて細かく指示している」「何かあるたびに特定の担当者しか判断できない」という状態になっているなら、本人への対応だけでなく、職場側の仕組みも見てみる必要があります。

担当者が疲れているからといって、支援をやめるという意味ではありません。

本来、誰が担うことなのか。

一人の担当者が、本来持たなくてもよい判断まで抱えていないか。

そこを見直すサインとして考えることができます。

迷ったときに戻りたい3つの問い

精神障害・発達障害のある社員への対応で迷ったときには、すぐに答えを出そうとせず、次の3つから考えてみてください。

これは、職場が調整することだろうか。
本人に担ってもらうことは何だろうか。
職場だけで抱えず、外部の力を借りる部分はないだろうか。

この3つの問いだけで、すぐに正解が出るわけではありません。

実際の職場では、本人の状態、仕事内容、これまでの経緯、現場の状況など、いくつもの条件が重なっています。

だからこそ、特性の知識だけではなく、状況を整理して判断する力が必要になります。

実際のケースで「どう考えるか」を学びたい方へ
考え方を知ることと、実際の職場で判断できることは同じではありません。
本人の体調が変わったらどうするのか。
現場の状況が違えば判断は変わるのか。
本人と上司の認識が違ったとき、何を確認するのか。
オンライン講座では、障害特性の知識を覚えるだけではなく、実際のケースをもとに「何を確認し、どう考えるか」を一緒に整理しています。
正解を覚えるのではなく、障害者雇用の現場で迷ったときに、自分で考えられる判断軸を身につけたい方に向けた講座です。

よくある質問

Q:精神障害・発達障害がある場合、どこまで配慮すればよいですか

障害名だけで配慮の範囲を決めるのではなく、仕事への影響や本人の状況、職場で調整できることを確認して考えます。

「配慮するか、しないか」という二択ではなく、何を調整する必要があるのかを見ることが大切です。

Q:障害特性が関係していても、仕事上の注意や改善を求めてよいですか

特性を理解することと、仕事として必要なことを伝えることは別です。

必要に応じて伝え方や仕事の条件を調整しながら、仕事として確認する必要があることは本人と共有していきます。

Q:本人の相談は、どこまで職場で聞けばよいですか

仕事への影響や職場で調整する必要があることを確認することは重要です。

一方、相談内容すべてを職場が解決する必要があるわけではありません。職場だけでは扱いにくい領域については、本人と相談しながら外部支援につなぐことも考えます。

Q:一度減らした仕事を増やしてもよいですか

一時的な調整であれば、その目的や本人の状態を確認しながら見直すことが必要です。

重要なのは、「一度配慮したからそのまま続ける」と考えないことです。

Q:生活や家庭の問題が仕事に影響している場合、会社はどこまで関わりますか

仕事への影響について確認し、職場でできる調整を考えることはできます。

一方で、生活や家庭そのものの問題を職場がすべて解決することは難しいため、必要に応じて外部支援との連携を検討します。

Q:支援機関や主治医に相談した場合、最終的な判断は誰がしますか

外部の専門家から意見や情報を得ることはできますが、実際の仕事内容や職場での対応については、それらの情報を参考に企業側で考える必要があります。

まとめ|「何をしてあげるか」より「誰が何を担うか」を考える

精神障害・発達障害のある社員への対応で迷うと、「もっと本人を理解しなければ」「もっと配慮しなければ」と考えがちです。

しかし、職場がすべてを抱えることが、必ずしも本人にとっても職場にとってもよい支援になるとは限りません。

迷ったときには、職場が調整すること
本人に担ってもらうこと
外部支援につなぐことに分けて見てみる。

そして、「誰が悪いのか」ではなく、「誰が何を担う問題なのか」と考えてみる。

それだけでも、これまで複雑に見えていた問題の見え方が変わることがあります。

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