中央省庁の障害者雇用水増し問題から見る障害者雇用の考え方

障害者雇用水増し問題が明らかになりました。国土交通省や総務省などの中央省庁が義務付けられた障害者の雇用割合を42年間にわたり水増しし、定められた目標を大幅に下回っていたとして、政府が調査を始めたことが報告されました。

民間企業に障害者雇用の厳しいルールを課している一方で、中央省庁がずさんな取り組みをしていることに対する怒りの声も大きくなっています。なぜ、障害者雇用のカウントが水増しされていたのか、官庁と民間企業の運用の違いなどについて、説明していきます。

複数の省庁において障害者雇用が水増し

中央省庁や地方自治体で、障害者の雇用者数を水増しして計上していたとの疑いについて、農水省や環境省、防衛省など、少なくとも9つの省などや23の道県で、水増しの可能性があることが報道されました。

一定数の障害者を雇用することが法律で義務づけられている中、中央省庁などが障害者の雇用数を水増ししていた問題で、FNNの取材で、総務省、農水省、環境省、防衛省、国交省、経産省、文科省、法務省、内閣府の少なくとも9つの省などで、水増しや水増しの疑いがあることがわかった。

また、地方自治体では、少なくとも1道22県にのぼる。

出所:FNNニュース

このような状況を受けて、障害がある地方議員らが厚生労働省を訪れ、「障害者の存在を根底から否定するような悪質極まりない国家的な不祥事だ」などと抗議しました。厚労省は今後、各省庁の実態について調査結果を公表することを予定しています。

なぜ、障害者雇用のカウントが水増しされていたのか

障害者雇用率設定のはじまり

そもそも国や自治体に一定割合以上の障害者の雇用を求める障害者雇用率の制度ができたのは1960年でした。そして、1976年に民間企業にも障害者雇用が義務づけられました。企業における障害者雇用は、はじめ傷痍軍人などの身体障害者の雇用目的が中心となっていましたが、障害者雇用が進むにつれて、知的障害、精神障害の雇用へと広がってきました。

障害者を雇用することは、心身に何らかの障害を持つ人たちの働く権利を保障し、それぞれの人が能力を発揮し、生きがいを持って働ける社会を目指すことを目的としています。現在、民間企業の障害者雇用率は2.2%(3年以内に2.3%)、国や地方公共団体は2.5%(3年以内に2.6%)となっています。

国の機関や自治体には、民間企業より高い目標が設定されてきましたが、これは障害者雇用を率先して取り組む姿勢を示すためとされてきました。

障害者雇用率は、平成30年度から雇用率が引き上げられています。詳細は、こちらから
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平成30年4月からの障害者法定雇用率の引き上げ

 

厚労省は、昨年の国の行政機関の平均雇用率は2.49%で、当時の法定雇用率2.3%をほとんどが達成していると公表していましたが、その公表されてきた数字自体が怪しくなったことを示しています。目指す社会の1つとして、「共生社会」の理念を掲げる行政機関はおおいものの、理想と現実はだいぶ異なる現実が見られます。

障害者雇用の水増しは、官庁と民間企業の運用の違い?

障害者雇用のカウントとして認められるには、厚生労働省の指針に定められた障害者手帳や医師の診断書などによる確認が必要になってきます。障害者雇用のカウントについては、毎年6月1日現在に雇用している障害者を報告する(ロクイチ調査)ことが課されており、資料にも障害者手帳のコピーを添付するなど、しっかりしたチェックが行われています。一方で、このような仕組みは、民間企業だけに適用されており、公的機関にはありません。

また、民間企業では、従業員100人以上の企業が法定雇用率に達しない場合には、その人数に応じて納付金が課せられ、雇用人数が大幅に未達の場合にはハローワークの雇用指導官が企業へ訪問して指導を行ったりしています。そして、民間企業では、雇用すべき障害者の人数に不足している人数に対して、1人月額50,000円の障害者雇用納付金が課されていますが、行政にはこれもありませんでした。

障害者の法定雇用率をめぐっては、2014年に厚労省所管の独立行政法人で、障害者を多く雇ったように装う虚偽報告が発覚したことがありました。厚労省はこれを受けて独立行政法人の検査を進めましたが、国や自治体は対象から外したようです。

厚労省は全省庁を対象に調査し、近く結果を公表するとしていますが、自治体も含めて、実態を明らかにすることとともに、チェック体制の整備を行い、再発防止策も講じる必要があるでしょう。

障害者雇用の水増しの実際

今回の中央省庁における障害者雇用の水増し問題では、糖尿病の職員も障害者として計上していたことが分かっています。障害者雇用促進法では、障害があることが障害者として雇用しているとカウントできるわけではなく、「障害者手帳を持っている者がカウントの対象」となっています。

厚生労働省のWEBサイトでは、次のように説明されています。

《「障害者」の範囲》
障害者雇用率制度の上では、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所有者を実雇用率の算定対象としています(短時間労働者は原則0.5人カウント)。

ただし、障害者雇用に関する助成金については、手帳を持たない統合失調症、そううつ病(そう病、うつ病を含む)、てんかんの方も対象となり、またハローワークや地域障害者職業センターなどによる支援においては、「心身の障害があるために長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な方」が対象となります。

出所:障害者の雇用 雇用する上でのルール(厚生労働省)

“水増し”2000人超か 中央省庁の障害者雇用(18/08/22)
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【大竹まこと×深澤真紀×はるな愛】 障害者雇用を水増し! 民間だけでなく中央省庁42年間も
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今回の障害者雇用水増しからみる障害者雇用への考え方

障害者雇用をすることに対して、いろいろな考え方がありますが、今回の水増し問題からみると、とりあえず障害者雇用しているという数字だけを合わせればよいという雰囲気が伝わってきます。企業の中には、さまざまな障害者がいる中で、どのように活躍できるかを考えている企業が多い中で、このような問題が起こることは残念なことです。

 

性善説として制度が成り立っていたり、制度発足当時に体制が整っていなかったとしても、40数年間行政の障害者雇用がそのままにされてきていたことは、企業の障害者雇用のカウントや指導がかなり厳しく行っている一方で、外には厳しく内には甘いという現実を見ているような感じがしました。また、総論賛成、各論反対で、キレイ事ばかり言っているようにも聞こえてきてしまいます。

まとめ

官公庁の障害者雇用水増し問題によって、民間企業に障害者雇用の厳しいルールを課している一方で、中央省庁がずさんな取り組みをしていることが明らかになりました。なぜ、障害者雇用のカウントが水増しされていたのか、官庁と民間企業の運用の違いなどについて、説明してきました。

厚労省は全省庁を対象に調査し、近く結果を公表するとしていますが、自治体も含めて、実態を明らかにすることとともに、チェック体制の整備を行い、再発防止策も講じる必要があるでしょう。

また、障害者雇用をしている企業の中には、さまざまな障害者がいる中で、どのように活躍できるかを考えている企業もたくさんあります。ぜひ、障害の有無に関係なく、それぞれの社員の活躍を考えている企業の事例を参考にしてください。

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