大人の発達障害と精神障害、どのように違う?症状や特徴について解説

大人の発達障害と精神障害、どのように違う?症状や特徴について解説

2024年07月11日 | 障害関連の情報

障害者雇用にすぐに役立つ無料動画をプレゼント!

期間限定で障害者雇用にすぐに役立つ無料講義をプレゼントしています。ぜひお役立てください。※こちらは、無料講義となっています。料金は必要ありません。

日本の障害者手帳の種別では、発達障害と精神障害は同じ精神障害者保健福祉手帳となっていますが、発達障害と精神障害は別のものです。似たような症状が現れることがあるためわかりにくいと感じる事があるかもしれませんが、発達障害は先天的なもので、精神障害は後天的なものです。

今回は、発達障害と精神障害との違いとして、それぞれの症状や特徴について解説していきます。

発達障害とは何か

発達障害の区分

発達障害は、生まれつきの脳機能の発達に偏りがあるために生じる障害で、成長と共にその特性が現れることが多いです。発達障害には以下の主要なカテゴリーがあります。

自閉症スペクトラム(ASD):社会的なコミュニケーションや対人関係に困難があり、興味や行動の範囲が限定的であることが特徴です。
注意欠陥・多動性障害(ADHD):注意の持続や集中が難しく、過度の活動や衝動的な行動が見られる障害です。
学習障害(LD):読み書きや計算など、特定の学習領域において著しい困難を抱える障害です。

発達障害には共通する主要な症状や特徴があります。これらの特徴は、障害の種類や個人の特性によって異なりますが、次のようなものが一般的です。

・社会的コミュニケーションの困難
他人との適切なコミュニケーションが難しい、非言語的なサイン(表情やジェスチャー)の理解が苦手など。

・行動の柔軟性の欠如
特定のルーチンや活動に固執し、変更に対する適応が難しい。

・注意力の問題
長時間の集中が難しい、注意が散漫になることが多い。

・学習困難
読み書きや計算など、特定の学習領域で著しい困難を感じる。

発達障害の診断基準

発達障害の診断には、専門的な評価が必要です。最も一般的に使用される診断基準の一つに、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)があります。DSM-5は、次のような基準を用いて発達障害を診断します。

自閉症スペクトラム(ASD)

・社会的コミュニケーションと相互作用の持続的な欠陥が見られる。
・限定的で反復的な行動、興味、または活動のパターンがある。
・症状は幼少期に発現し、社会的、職業的、またはその他の重要な機能領域において臨床的に顕著な障害を引き起こす。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)

・注意欠陥、不注意、過活動、衝動性の持続的なパターンの存在。
・症状が複数の環境(例:家庭、学校、職場)で見られる。
・症状は12歳までに存在し、社会的、学業的、または職業的な機能において臨床的に顕著な障害を引き起こす。

学習障害(LD)

・読み書きや計算の学習および使用における困難が6ヶ月以上持続。
・学業の成績が年齢に期待される水準に達していない。
・学習困難は他の知的障害や感覚障害では説明できない。

発達障害の診断には、医師や心理士などの専門家による評価が必要となります。DSM-5をはじめとする診断基準を用いて、個別の症状や特徴を詳細に評価し、適切な診断と支援を提供します。

発達障害は現在の医学では根本的な完治は難しく、発達障害は症状とうまく付き合いながら、円滑な社会生活を送るスキルを習得することが必要となります。また、発達障害そのものを治療することはできませんが、それぞれの症状を改善するための薬物療法を行うことがあります。例えば、脳のはたらきを活性化させたり、併発した不眠症に対する睡眠薬、うつ症状に対する抗うつ薬などを用いることがあります。

精神障害とは何か

精神障害は、心理的または行動的な機能において異常な変化が生じ、日常生活に重大な影響を与える状態を指します。これらの障害は、個人の感情、思考、行動に深刻な影響を及ぼし、社会的、職業的、またはその他の重要な機能領域において障害を引き起こすことがあります。精神障害には、以下のような主要なカテゴリーがあります。

統合失調症: 現実との接触が失われ、幻覚や妄想、思考の混乱などが特徴的です。
うつ病: 長期間にわたる深い悲しみや興味喪失、エネルギーの低下などが見られます。
双極性障害: 気分の極端な変動(躁状態と抑うつ状態)が繰り返される障害です。

精神障害には共通する主要な症状や特徴がありますが、これらは障害の種類や個人によって異なります。一般的な特徴として、次のような症状があります。
・感情の変動: 極端な悲しみ、喜び、怒りなどの感情の変動が頻繁に起こる。
・思考の歪み: 非現実的な思考や妄想、思考の混乱が見られる。
・行動の変化: 行動の急激な変化や、以前は楽しめていた活動に対する興味喪失。
・身体症状: 睡眠障害、食欲の変動、エネルギーの低下などの身体的症状が現れる。

精神障害の診断基準

精神障害の診断には、専門的な評価が必要です。最も一般的に使用される診断基準の一つに、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)があります。DSM-5は、以下のような基準を用いて精神障害を診断します。

統合失調症

・幻覚、妄想、無秩序な思考や行動、陰性症状(感情の平板化、意欲の低下など)が1ヶ月以上持続する。
・社会的または職業的機能の低下が6ヶ月以上にわたって持続する。

うつ病

・2週間以上にわたり、ほぼ毎日、ほとんどの時間において抑うつ気分や興味の喪失が見られる。
・食欲や体重の変化、睡眠障害、エネルギーの低下、無価値感、集中力の低下、自殺念慮などの症状が存在する。

双極性障害

・躁状態と抑うつ状態のエピソードが交互に現れる。
・躁状態では、異常な高揚感、エネルギーの増加、過活動、無謀な行動が見られる。
・抑うつ状態では、うつ病と同様の症状が見られる。

精神障害の診断には、医師や臨床心理士などの専門家による詳細な評価が必要になります。精神障害はDSM-5をはじめとする診断基準を用いて、個々の症状や特徴を詳細に評価し、適切な診断と治療により、症状の管理や生活の質の向上が可能です。

発達障害と精神障害の違いとは?

発達障害と精神障害は根本的に異なる障害です。発症時期、発症原因、治療法などの基本的な違いについて見ていきましょう。

発症時期

・発達障害: 通常、幼少期に発症し、早期の発達段階で見られることが多いです。症状は生まれつき存在し、成長と共に明らかになることが一般的です。
・精神障害: どの年齢でも発症する可能性がありますが、多くは思春期から成人期にかけて発症します。外的要因や環境ストレス、遺伝的要因などが関与することがあります。

発症原因

・発達障害: 脳の構造や機能の先天的な違いに起因します。遺伝的要因や脳の発達に関する問題が主な原因とされています。
・精神障害: 多因子性で、遺伝的要因、環境要因、ストレス、トラウマ、神経化学的要因などが複雑に絡み合って発症します。

治療法

・発達障害: 発達障害そのものを治療するのは、現在の医療では困難です。ただ、発達障害の特性や症状に関しては、支援や教育プログラム、行動療法、言語療法、職業訓練などを通してスキルを習得していくことが可能です。薬物療法は補助的に用いられることがありますが、それぞれの症状を抑えるためのものであり、発達障害そのものの治療法ではありません。
・精神障害: 薬物療法、心理療法(認知行動療法、精神分析療法など)、入院治療などが主な治療法です。症状の軽減や再発防止を目指します。

症状の違い

発達障害と精神障害は、それぞれ特有の症状を持っています。次のような症状の違いがあります。

発達障害

・自閉症スペクトラム(ASD): 社会的コミュニケーションの困難、反復的な行動、限られた興味の範囲、感覚過敏。
・注意欠陥・多動性障害(ADHD): 注意力の欠如、多動性、衝動性。
・学習障害(LD): 読み書きや計算における著しい困難。

精神障害

・統合失調症: 幻覚、妄想、思考の混乱、社会的機能の低下。
・うつ病: 長期間の抑うつ気分、興味喪失、エネルギーの低下、自殺念慮。
・双極性障害: 躁状態(異常な高揚感、エネルギーの増加、無謀な行動)と抑うつ状態(うつ病と同様の症状)の反復。

診断プロセスの違い

発達障害と精神障害の診断方法や評価は異なります。次のような診断プロセスがあります。

発達障害の診断プロセス

・行動観察: 幼少期からの行動パターンや社会的相互作用の観察。
・発達検査: 言語、運動、社会的スキルの評価。
・心理検査: 知能検査や発達評価ツールを用いた詳細な評価。
・専門医の診断: 小児科医、発達心理士、神経科医などの専門家による診断。

精神障害の診断プロセス

・問診: 患者や家族からの詳細な病歴の聞き取り。
・心理検査: 質問紙やインタビュー形式の評価ツールを用いた心理評価。
・医師の診断: 精神科医や臨床心理士による診断。DSM-5などの診断基準を使用。
・身体検査: 身体的要因や他の疾患の排除のための検査(血液検査、脳波検査など)。

発達障害と精神障害の診断には、いずれも専門家の詳細な評価と診断が不可欠です。症状が似ている場合もありますが、それぞれの障害には特有の特徴があるため、正確な診断が重要です。適切な診断を受けることで、個々のニーズに応じた支援や治療が提供されることが期待されます。

発達障害と精神障害の共存

発達障害と精神障害が同時に存在することは珍しいことではありません。このように発達障害と精神障害が同時に存在することを「併存症」と呼びます。発達障害と精神障害が同時に存在する例をいくつか見ていきます。

自閉症スペクトラム(ASD)とうつ病

ASDの特性である社会的な孤立感やコミュニケーションの困難さが、長期間続くことにより、二次的にうつ病を引き起こすことがあります。ASDの人は、他者との交流がうまくいかないために自己評価が低くなり、抑うつ状態に陥りやすい傾向があります。ASDとうつ病が併存する場合、以下のような問題が生じることがあります。
・孤立感の増大: ASDの特性により、他者との関係が希薄になりがちで、その結果として孤独感が強まり、うつ病を引き起こすことがある。
・ストレスへの脆弱性: 環境の変化や対人関係のストレスがうつ病の発症を誘発しやすくなる。
・症状の重症化: うつ病の症状が重くなると、ASDの特性がさらに悪化し、社会的な機能が著しく低下する可能性がある。

ADHDと不安障害

ADHDの症状である注意力の欠如や衝動性が、日常生活や学業、職業においてストレスや不安を引き起こすことがあります。日常生活の中で多くの課題を同時に処理しなければならなかったり、注意力の欠如や衝動性が原因で物事がうまく進まないなどが原因で、結果的に不安を増大させてしまうからです。

また、日常生活でのミスや失敗が続くと、自信喪失や不安感が強まり、不安障害を併発することがあります。ADHDと不安障害が併存する場合、以下のような問題が生じることがあります。

・集中力の低下: ADHDの注意欠如が不安感を増幅させ、さらに集中力が低下する。
・過度な心配: 日常生活や仕事のミスに対する過度な心配や恐怖が常に付きまとい、不安感が持続する。
・身体症状: 不安障害により、頻繁な緊張やパニック発作などの身体症状が現れることがある。

学習障害(LD)とうつ病

学習障害(LD)は、特定の学習領域において著しい困難を抱える障害であり、これが原因で自己評価の低下やストレスが蓄積しやすくなります。これにより、うつ病を発症するケースが見られます。

うつ病は、長期間にわたる深い悲しみや興味喪失、エネルギーの低下などが特徴的です。学習障害(LD)とうつ病が併存する場合、以下のような問題が生じることがあります。

・自己評価の低下: LDによる学習困難が続くことで、自己評価が低下し、それが抑うつ状態を引き起こすことがあります。学業や仕事における失敗経験が増えると、自己肯定感がさらに低くなります。
・興味喪失: うつ病の症状として、以前は楽しんでいた活動や学習への興味が失われ、学習障害の特性が悪化することがあります。
・エネルギーの低下: うつ病のエネルギー低下や疲労感が、学習活動や日常生活において著しい困難をもたらします。

もしかして・・・と思ったら?

最近では、発達障害や精神障害への関心が高まり、インターネット上にはたくさんのチェックリストがあります。これらのチェックは、チェックリストを通じて、自分の症状や行動パターンに気づくことができたり、手軽に時間や場所に関係なく自己評価ができる、発達障害や精神障害に関する理解を深める手助けとなることがあります。

一方で、チェックリストはあくまで参考であり、正式な診断を提供するものではありません。自己判断は誤診のリスクがあります。また、チェックリストは一般的な質問に基づいており、個々の背景や特性を考慮していません。精神的な健康状態や発達障害は複雑であり、専門的な知識と経験が必要な評価や診断が求められるものです。正確な診断と適切な治療には、医療機関で専門家による評価が不可欠です。

動画で解説

まとめ

発達障害と精神障害は、根本的に異なるものですが、時には似た症状が見られるため、混同されがちです。発達障害は先天的な脳の発達の偏りに起因し、幼少期から症状が現れます。一方、精神障害は後天的な要因によって発症し、思春期や成人期に現れます。

また、発達障害と精神障害が同時に存在することも珍しいことではなく、併存症と呼ばれています。発達障害と精神障害には、発症時期、発症原因、治療法、症状や診断プロセスにも違いがあり、正確な診断と適切な支援が必要となります。

インターネット上のチェックリストは自己認識の一助となるかもしれませんが、最終的には専門家の診断とサポートが必要です。正確な診断を受けることで、適切な治療や支援を受けることができ、生活の質を向上させることができます。

参考

精神障害者保健福祉手帳の取得方法や判断基準とは?

障害者手帳の種類と等級をわかりやすく解説

社内で障害者手帳を持っているのか把握するための方法

スポンサードリンク

障害者雇用にすぐに役立つ無料動画をプレゼント!

期間限定で障害者雇用にすぐに役立つ無料講義をプレゼントしています。ぜひお役立てください。

障害者雇用オンライン講座

今までなかった障害者雇用をゼロから学べるオンライン講座の内容を是非ご覧ください。

0コメント

コメントを提出

メールアドレスが公開されることはありません。

障害者雇用支援サービス

お客様の声

YouTube

Podcast 障害者雇用相談室

書籍

無料メルマガ【企業向け】

無料メルマガ【障害者枠で働く】