特例子会社のメリット・デメリット|設立前に企業が確認すべき判断基準 - 障害者雇用ドットコム

特例子会社のメリット・デメリット|設立前に企業が確認すべき判断基準

2016年04月23日 | 判断とマネジメントの構造

担当者が頑張るほど、 組織が止まる

 

障害者雇用を組織の力に変える5日間

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「障害者雇用は、配慮の話ではなく、設計の話だ。」

2026年8月2日更新

法定雇用率への対応や、障害者雇用を計画的に進める方法として、特例子会社の設立を検討する企業があります。

「各部門で障害者雇用が進まない」
「障害者が担当する業務を集約したい」
「採用や雇用管理のノウハウを一か所に蓄積したい」

こうした課題に対して、特例子会社は有力な選択肢の一つです。

ただし、特例子会社は、障害者を雇用する場所をつくれば終わりではありません。一つの会社として、継続的に業務を確保し、人材を育て、親会社との関係を築いていく必要があります。

特例子会社には、障害者雇用に必要な業務、職場環境、雇用管理の人材やノウハウを集約しやすいメリットがあります。一方で、そのメリットを機能させるには、設立目的、業務の継続性、経営や雇用管理を担う人材、親会社との役割分担まで設計することが必要です。

筆者は、企業における特例子会社の設立に実務として関わり、その後も複数の特例子会社を見学・取材してきました。その経験からも、制度上のメリットだけでなく、設立後の業務、人材育成、親会社との関係まで見通して判断することが重要だと考えています。

この記事でわかること

  • 特例子会社を設立する企業側のメリット
  • 設立前に想定しておきたいデメリットとリスク
  • 一般企業内で直接雇用を進める場合との違い
  • 特例子会社の設立が選択肢になりやすい企業の特徴
  • 設立前に会社として確認しておきたい判断事項

特例子会社のメリット・デメリットは、設立目的によって変わる

特例子会社とは、障害者の雇用に特別な配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たして認定を受けることで、その子会社に雇用されている障害者を親会社に雇用されているものとみなし、実雇用率を算定できる制度です。

民間企業の法定雇用率は、2026年7月から2.7%となりました。雇用すべき障害者数が増えるなかで、特例子会社を障害者雇用拡大の選択肢として検討する企業もあるでしょう。

ただし、雇用率への対応だけを目的に設立すると、設立後に「業務が足りない」「運営を担う人がいない」「親会社との役割が曖昧」といった問題が起こりやすくなります。

特例子会社のメリットは、企業が何を目的として設立し、その後どのように運営するかによって変わります。

雇用率への対応に加えて、次のような目的を整理しておくことが必要です。

  • 障害者雇用を計画的に拡大する
  • グループ内の業務を集約し、職域を開発する
  • 採用、育成、配慮に関するノウハウを蓄積する
  • 障害者が能力を発揮できる業務や職場環境をつくる
  • 将来のリーダーや専門人材を育成する
  • 親会社やグループ会社の障害者雇用を支援する

目的が曖昧なままでは、設立後に特例子会社の存在意義や、親会社が負担する費用への評価が揺らぎやすくなります。

特例子会社を設立する企業側のメリット

障害者雇用を計画的に進めやすい

特例子会社では、採用人数、採用時期、担当業務、育成方法などをまとめて検討しやすくなります。

一般企業の各部門で個別に雇用を進める場合、配属先の業務や受け入れ体制によって採用の進み方に差が生じることがあります。特例子会社に一定の機能を集約することで、中長期的な採用計画を立てやすくなる可能性があります。

ただし、特例子会社に雇用を集約することは、親会社やグループ会社が障害者雇用について考えなくてよくなることを意味しません。グループ全体として、特例子会社と直接雇用をどのように組み合わせるかを考える必要があります。

業務や職場環境を設計しやすい

親会社とは異なる業務内容、勤務時間、評価制度、職場環境を設計できる点も、特例子会社のメリットです。

たとえば、業務工程を整理する、指示方法を統一する、利用する設備やツールを見直す、チームで業務を担当するといった工夫を行いやすくなります。

ここで大切なのは、障害特性に合わせることだけを目的にしないことです。本人の希望や困りごとを確認したうえで、会社側も実施可能な方法を整理し、業務品質や生産性を確保できる形にする必要があります。

雇用管理の人材とノウハウを集約できる

採用、定着支援、合理的配慮、外部支援機関との連携など、障害者雇用に関する経験を一か所に蓄積しやすくなります。

複数の社員を雇用するなかで、どのような指示が伝わりやすいのか、体調変化があったときに何を確認するのか、配慮をどのように見直すのかといった知見を蓄積できます。

ただし、知識や判断が特定の支援担当者だけに集中すると、その担当者の異動や退職によって対応が止まる可能性があります。個人の経験にとどめず、会社の仕組みとして共有することが必要です。

親会社やグループ会社の業務を見直す機会になる

特例子会社の設立を検討する過程では、親会社やグループ会社にある業務を洗い出すことになります。

  • 複数の部署で重複している業務
  • 外部へ委託している業務
  • 担当者が本来業務の合間に行っている定型業務
  • 一か所へ集約したほうが効率的な業務
  • 手順を整理すれば新たな職域にできる業務

この検討は、障害者に任せる仕事を探すだけではありません。組織全体の業務分担や生産性を見直す機会にもなります。

障害者が継続的に働ける環境をつくりやすい

一定規模で障害者を雇用することで、採用後の育成、役割の拡大、リーダーの配置、キャリア形成などを計画的に考えやすくなります。

ただし、働きやすい職場をつくるだけでは、長期的な活躍にはつながりません。

本人が何をできるようになったのか、今後どのような役割を担えるのか、どのように評価や処遇へ反映するのかまで設計することが重要です。

特例子会社を設立するデメリットとリスク

設立費用だけでなく、継続的な運営コストがかかる

特例子会社には、会社設立や設備整備などの初期費用だけでなく、設立後も継続的な費用が発生します。

経営管理、採用、教育、雇用管理、支援人材、設備更新、間接部門など、会社を運営するための体制が必要です。

特例子会社単体の売上や利益だけでは測れない価値もありますが、親会社として何を成果とみなし、どの費用をどのように評価するかを整理しておかないと、設立後に経営上の位置づけが不安定になります。

雇用人数に見合う業務を確保し続ける必要がある

設立時に業務を確保できていても、その業務が数年後まで続くとは限りません。

業務の自動化、システム変更、組織再編、外部委託方針の変更などによって、特例子会社が担当していた業務が減少することがあります。

採用人数を増やすのであれば、その人数に見合う業務量と、社員の成長に応じて難易度を広げられる業務が必要です。

設立前には、現在用意できる業務だけでなく、3年後、5年後にどのような業務を担う会社にするのかを考えておく必要があります。

親会社への依存が強くなりやすい

特例子会社は、親会社からの業務発注、人材派遣、経営支援などに依存しやすい構造があります。

親会社の方針や担当者が変わったときに、設立時の目的や合意が十分に引き継がれないこともあります。

親会社が何を担い、特例子会社が何を判断するのか、業務や費用について誰が決定するのかを明確にしておくことが重要です。

障害者雇用が特例子会社だけの役割になりやすい

特例子会社を設立すると、親会社側で「障害者雇用は特例子会社が担当するもの」という認識が生まれることがあります。

その結果、親会社やグループ会社での直接雇用が進まなくなったり、管理職が障害者雇用について考える機会が減ったりする可能性があります。

特例子会社は、障害者雇用を親会社から切り離すための組織ではありません。特例子会社が蓄積した知見を、親会社やグループ会社へどのように還元するのかも検討する必要があります。

評価・育成・キャリアが固定化しやすい

担当業務を限定しすぎると、社員が仕事に習熟した後も、同じ業務を続けるだけになりやすくなります。

また、親会社とは異なる人事制度を設けられることはメリットである一方、評価、昇給、役割拡大、リーダー育成、親会社への転籍などの仕組みが整っていなければ、キャリアの選択肢が限定される可能性があります。

設立時からすべてを決めることは難しくても、社員の成長に応じて仕事内容や役割を見直す考え方は必要です。

管理職や支援担当者へ判断が集中しやすい

特例子会社だからといって、障害者雇用に関する対応が自動的にうまくいくわけではありません。

  • 配慮をどこまで実施するのか
  • 業務上の注意やフィードバックをどう伝えるのか
  • 体調変化があったときに誰が対応するのか
  • 人事上の判断が必要な場合に誰へつなぐのか
  • 本人、現場、親会社の意見が異なるときに誰が決めるのか

こうした判断基準や役割分担が曖昧だと、現場の管理職や支援担当者に相談と判断が集中します。

特定の担当者の経験や善意に頼らず、会社として確認する事項と判断する人を整理する必要があります。

特例子会社と一般企業内での直接雇用は、どちらがよいのか

特例子会社と親会社・グループ会社内での直接雇用は、どちらか一方が常に優れているわけではありません。

それぞれに異なる特徴があります。

確認項目 特例子会社 一般企業内での直接雇用
雇用管理 専門人材やノウハウを集約しやすい 各部門や管理職の対応力が必要
業務 業務を集約・標準化しやすい 本業に近い業務を担いやすい
職場環境 独自の制度や環境を設計しやすい 既存の制度や職場環境との調整が必要
組織との接点 親会社との接点が限定される場合がある 同じ組織の一員として関係をつくりやすい
キャリア 独自の評価・育成制度を設計できる 既存の人事制度や職種と接続しやすい
経営責任 別会社として継続的な経営が必要 新しい会社を経営する必要はない

特例子会社を設立するか、親会社やグループ会社での直接雇用を拡大するかは、雇用率だけでは判断できません。

自社の業務、組織体制、人材、将来の雇用方針を踏まえ、両方をどのように組み合わせるかを検討することが大切です。

特例子会社の設立が選択肢になりやすい企業

次のような企業では、特例子会社が障害者雇用を進める有力な選択肢になる可能性があります。

  • グループ内に集約可能な業務が継続的にある
  • 一定人数の障害者を計画的に採用・育成する方針がある
  • 経営、業務管理、雇用管理を担う人材を配置できる
  • 親会社が中長期的に経営と業務を支える意思を持っている
  • 雇用率だけでなく、事業や人材育成の目的がある
  • 親会社と特例子会社の役割を整理できる
  • 蓄積した障害者雇用の知見をグループ内へ還元する方針がある

特例子会社の設立を慎重に検討したい企業

一方で、次のような状態で設立を急ぐと、設立後の運営が難しくなる可能性があります。

  • 設立目的が法定雇用率の短期的な達成だけになっている
  • 継続的に確保できる業務が明確になっていない
  • 経営や雇用管理を担う人材の配置計画がない
  • 親会社から継続的な業務や協力を得られる見通しがない
  • 設立や運営の費用を人事部だけの課題として考えている
  • 親会社やグループ会社での直接雇用を十分に検討していない
  • 設立後の評価、育成、キャリアを考えていない

特例子会社を設立できることと、設立後に安定して経営・運営できることは別の問題です。

特例子会社を設立する前に確認したい7つの質問

設立のメリット・デメリットを比較するときは、次の点を会社として確認してみてください。

  1. 特例子会社を設立する目的は何か
    雇用率への対応以外に、業務、雇用、人材育成の目的が言語化されているでしょうか。
  2. 3年後、5年後にも継続できる業務があるか
    設立時に用意できる業務だけでなく、将来の事業や職域まで検討されているでしょうか。
  3. どのような人を雇用し、どのように育成するか
    採用人数だけでなく、担当業務、育成、評価、役割拡大まで考えられているでしょうか。
  4. 経営・管理・支援を担う人材を配置できるか
    特定の担当者だけに対応を任せず、必要な役割を分担できるでしょうか。
  5. 親会社と特例子会社の役割をどう分けるか
    業務、費用、人事、配慮、問題発生時の判断について、誰が決めるのか整理されているでしょうか。
  6. 特例子会社の価値をどのように評価するか
    売上や利益だけでなく、業務改善、人材育成、グループへの貢献をどのように評価するでしょうか。
  7. 親会社内での直接雇用と比較したか
    特例子会社を設立する以外の方法も含め、自社に適した雇用の形を検討したでしょうか。
自社の状況を確認してみてください

自社では、特例子会社を設立した後に必要となる業務、経営、人材、親会社との役割について、誰がどこまで検討しているでしょうか。

認定要件や設立手続きだけが先に進み、設立後の運営を人事担当者や特定の支援担当者へ任せる計画になっていないか、確認することが大切です。

よくある質問

Q:特例子会社を設立すれば、法定雇用率を達成できますか

特例子会社が認定を受けると、その子会社に雇用されている障害者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できます。

ただし、特例子会社を設立するだけで法定雇用率を達成できるわけではありません。雇用人数、対象となる労働者数、グループ適用の状況などを確認する必要があります。

また、雇用率を達成できるかだけでなく、採用した社員が継続的に働き、組織に貢献できる業務や体制をつくれるかを検討することが重要です。

Q:特例子会社を設立する一番のメリットは何ですか

企業によって異なりますが、障害者雇用に必要な業務、職場環境、人材、ノウハウを一か所に集約し、計画的に雇用を進めやすくなることが大きなメリットです。

ただし、そのメリットを機能させるには、親会社から継続的に業務を確保し、経営や雇用管理を担う人材を配置する必要があります。

Q:特例子会社の設立には、どのような費用がかかりますか

会社設立、事業所、設備、採用などの初期費用に加え、設立後には経営管理、雇用管理、教育、採用、支援人材、設備更新などの費用が発生します。

必要な費用は、事業内容、雇用人数、職場環境、親会社から提供される機能などによって異なります。設立費用だけでなく、数年間の運営を見据えて検討する必要があります。

Q:特例子会社と一般企業での直接雇用は、どちらがよいですか

一律にどちらがよいとはいえません。

特例子会社は、業務や雇用管理を集約しやすい一方、別会社として継続的に経営する必要があります。一般企業内での直接雇用は、本業や既存の人事制度と接続しやすい一方、各部門や管理職に一定の対応力が求められます。

自社の業務、組織体制、雇用方針に合わせて、両方を組み合わせることも選択肢になります。

Q:特例子会社は、障害者を一般社員から分ける仕組みなのでしょうか

特例子会社については、障害のある社員を親会社や一般社員から分けて雇用する仕組みではないか、という見方もあります。

一方で、一般の職場では働く機会を得にくかった人に対して、業務、職場環境、雇用管理を整え、雇用機会を広げてきた役割もあります。

重要なのは、特例子会社という形を選ぶこと自体をよい、悪いと一律に判断することではありません。

本人が担える業務や成長の機会があるか、親会社やグループ会社との接点があるか、将来のキャリアをどのように考えるかまで含めて設計する必要があります。

Q:特例子会社を設立すれば、親会社で障害者を雇用しなくてもよいですか

特例子会社制度を利用することで、特例子会社に雇用されている障害者を親会社に雇用されているものとみなして実雇用率を算定できます。

しかし、障害者雇用を特例子会社だけの役割にしてしまうと、親会社やグループ会社での職域拡大や、管理職の対応力向上が進みにくくなる可能性があります。

特例子会社と親会社での直接雇用を、グループの方針としてどのように組み合わせるかを考えることが大切です。

Q:特例子会社が向いている企業には、どのような特徴がありますか

継続的に確保できる業務があり、一定人数の採用と育成を計画し、経営や雇用管理を担う人材を配置できる企業では、特例子会社が有力な選択肢になります。

一方で、雇用率の短期的な達成だけを目的としている場合や、設立後の業務・人材・費用が明確でない場合は、慎重な検討が必要です。

まとめ

特例子会社には、障害者雇用を計画的に進めやすい、業務や職場環境を設計しやすい、雇用管理の人材やノウハウを集約しやすいといったメリットがあります。

一方で、別会社としての運営コスト、継続的な業務の確保、親会社への依存、評価やキャリアの固定化、管理職や支援担当者への判断集中といった課題もあります。

重要なのは、一般的なメリットとデメリットを比較して設立を決めることではありません。

自社がなぜ特例子会社を必要としているのか、どのような業務と人材を育てる会社にするのか、親会社とどのように役割を分けるのかを整理したうえで、設立を判断することが必要です。

特例子会社を設立する前に、自社に適した障害者雇用の形を整理しませんか

特例子会社を設立するかどうかは、認定要件や雇用率だけでは判断できません。

継続的に確保できる業務、必要な人員、親会社との役割分担、設立後の経営・運営まで含めて検討する必要があります。

障害者雇用ドットコムでは、企業の状況や目的を伺い、特例子会社の設立を含めた障害者雇用の進め方を整理しています。

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