特例子会社の設立・運営に関するQ&A~認定要件、グループ適用、業務内容など~

障害者雇用が社会に広がるにつれて、特例子会社の設立を検討する企業も増えています。ここでは、特例子会社を設立・運営していくことを検討するときに、多くの企業で質問に感じる点についてQ&A方式で説明していきます。

特例子会社の概要について

特例子会社は全国にどれくらいあるのか

厚生労働省の発表によると、平成29年6月時点で全国に464社あります。前年度から16社増えています。現時点では、平成29年度版はまだアップされていませんが、平成28年度のものが下記から見ることができます。

企業の本社が東京や大阪に多いことから、東京を中心とした関東近辺、大阪に多くなっていますが、他の地域でも特例子会社が設立されており、親会社も一般企業だけでなく、学校法人や監査法人等も含まれています。特例子会社が障害者雇用を促進する上で有効な手段として認められている証拠とも言えるかもしれません。

特例子会社一覧はこちらから
↓  ↓  ↓
特例子会社一覧(平成28年6月1日現在)
※ 平成29年度版はまだアップされていません。

特例子会社制度やそのグループ適用は、ノーマライゼーションの理念に反するのではないか

障害者の雇用が障害のない者と同じように行われることが理想ですが、そのためにも、まず、障害者の働く場を拡大していくことが大切でしょう。このような視点に立つと、特例子会社制度は、障害者に配慮した職場環境の設定、障害特性に対応した業務の再編成等を行ないやすく、特に知的障害者、重度障害者の職域が拡大する等、障害者本人にとってのメリットがあります。

また、障害者雇用を進める上で有効な方法であり、障害者の雇用を確保し、雇用の分野におけるノーマライゼーションを進める方法として評価できるものと考えています。ただし、会社としての理念や方針、社風なども大きく影響しますので、全ての企業にとってよいとは限らないかもしれません。

特例子会社の認定に関して

特例子会社の認定要件である「支配力基準」とは何か、連結決算の対象となる子会社の範囲はどのようになっているのか

A社がB社の意思決定機関(株主総会等)を支配している場合に、A社とB社が親子会社の関係にあるとみなすもので、議決権の保有比率という形式的な側面だけでなく、実質的な支配状態に着目して親子関係の有無を判断する考え方をいいます。

A社がB社の議決権の過半数を所有しているという基本的なケースのほか、出資、人事、取引等においてA社と緊密な関係にある者と合わせて、B社の議決権の過半数を所有している場合や、A社の役員等がB社の取締役会のメンバーの過半数を占めている場合などには、親子会社の関係にあるものとみなされます。

支配力基準は、連結決算の対象とすべき子会社を判断する際の基準と一致するものであるため、 原則として「連結決算の対象である連結子会社」=「特例子会社又は関係会社となりうる子会社」となります。

なぜ、特例子会社の雇用率をグループ企業単位で算定することを可能としているのか

特例子会社制度は、障害者に配慮した職場環境の設定、障害特性に対応した業務の再編成等を可能とし、特に知的障害者、重度障害者、最近では精神障害者の職域が拡大する等、障害者本人にとってのメリットが大きく障害者雇用を進める有効な方法となっています。

また、企業の組織の再編の活発化にも対応し、親会社の責任の下で、企業グループ全体で特例子会社における障害者雇用に貢献する仕組みを構築して、特例子会社の経営の安定と発展、設立促進を図ることが必要となっています。

このようにグループで特例子会社を設立することによって、親会社は関係する企業グループ全体で特例子会社における障害者雇用の促進を図るとともに、障害者本人にとってより適した職場への就職も可能となる等、障害者の職域拡大につながっていくことができます。

特例子会社の認定を受ける場合には、新たに障害者を雇用しなければならないのか

特例子会社の認定に際しては、認定の申請時点で以下の要件を満たしていることが必要になります。認定申請時点での要件を満たしていれば、新たに障害者を雇用する必要はありません。

・雇用されている障害者が5人以上
・全従業員に占める割合が20%以上
・雇用されている障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上

子会社の子会社(孫会社)はグループ適用の対象になるか

特例子会社をもつ親会社は、関係する孫会社も含めて「支配力基準」に基づいて企業グループ全体として実雇用率を算定することができます。しかし、「支配力基準」を満たしている場合は全ての会社についてグループ適用しなければならないというわけではなく、どこまで含めるかについては任意に選択することが可能です。

関係会社の認定を受けた後、その取消しを求めることは可能か

関係会社の認定の取消しは、特殊の関係についての要件を満たさなくなったとき、事業を廃止したとき、または認定基準に適合しなくなったときに厚生労働大臣が取り消すことができるとされています(障害者雇用促進法第45条第2項)。

そのため認定を受けた事業主から任意にその認定の取消しを求めることはできません。もし仮に、親会社が特殊の関係についての要件を満たさなくなったり、当該認定に係る関係 会社についての基準に適合しなくなったりした場合であっても、認定の取消しを安易に認めることは障害者の雇用の安定を損なうおそれがあるため、直ちに認定の取消しを行うのではなく、 親会社に対し、特殊の関係についての要件や認定基準を満たすよう要請することになります。

このような理由から、毎年の障害者の雇用状況によってグループ適用の対象としたり、しなかったりすることは認められていません。関係会社が他企業に買収された場合、事業を廃止した場合などやむを得ない場合には、 関係会社の認定を取り消すことができます。

特例子会社設立後の報告等について

毎年の障害者雇用状況報告はどのように行うのか

障害者雇用状況報告書については、以下の2種類の報告書を親会社がまとめて提出することになります。

・グループ内の各企業の報告書
・グループ全体の報告書

グループ適用の対象となった場合、納付金や調整金、報奨金の額はどのように計算するか

特例子会社制度では、親会社と特例子会社の労働者を合算して雇用率制度を適用し、納付金や調整金、報奨金の額を計算しています。グループ適用の対象となった場合も、同じように対象となった企業グループ全体を合算して雇用率制度を適用し、納付金や調整金、報奨金の額を計算することになります。

特例子会社制度では、企業グループの労働者は、親会社が雇用する労働者とみなされるため、納付金の支払及び調整金又は報奨金の受取は親会社が担うことになります。

グループ適用の認定を受けた場合、障害者雇用納付金制度は、いつからグループ適用の特例が受けられるのか

グループ適用の特例認定が行われたときの障害者雇用納付金制度の適用は、特例認定の申請をした年度の初め(4月1日)までさかのぼってグループ適用されます。

障害者雇用納付金の申告期間中(4月1日から45日間)に特例認定の申請、認定を受けた場合には、当該認定を受けた日の属する年度の前の年度の初めまでさかのぼって適用されます。

そのため、特例認定の申請を行い、特例が認められた年度から、納付金・調整金・報奨金・在宅就業障害者特例調整金の額については、親会社・特例子会社・関係会社の労働者数を合算して計算することとなります。また、申告・申請手続等は親会社が行うこととなります。

特例子会社の設立・採用・運営について

特例子会社では、どのような業務内容にすればよいか

特例子会社では、名刺や印刷、Web制作のようなグループ企業の業務を請け負うことや、これまで外注していた業務や人材派遣会社に依頼していた総務的業務を行なうこと、独自に営業ルートを構築してグループ外からの製造業務を受託するなど、いろいろな業務を行なっています。

また最近では、農業分野での事業展開も注目を集めていますし、店舗に出て接客補助的な業務を行っている特例子会社もあります。

事業内容を選ぶ際には、グループとしてどのような業務を受け負わせることが可能かという点に加え、会社として将来的に自立できることも視野に入れることが大切です。特例子会社の多くはサポート的な業務が中心となっていますが、今後はグループ企業の1つとして、グループ企業に貢献する新たな価値を創造していく特例子会社も求められてくるでしょう。

特例子会社で雇用する障害者はどのような障害種別が多いのか

厚生労働省の発表によると、障害者雇用全体の割合としては身体障害が最も多くなっていますが、特例子会社の障害種別をみると、知的障害者の雇用割合や重度障害者の雇用が多いことが特徴となっています。

また、最近では知的障害に加え、精神障害者(発達障害を含む)を雇用する特例子会社が増えています。特例子会社を設立することにより、障害者を受け入れるための設備投資と集中化を行ない、障害特性に配慮した職場環境を整備することによって、障害者の能力を十分に引き出そうとするところが増えています。

障害者を採用する場合、募集活動はどのように行えばよいのか

ハローワークには、障害者専門の職業相談・職業紹介窓口(専門援助部門)があり、就職を希望している障害者の多くがハローワークに求職登録をしています。そのためまずハローワークに相談するとよいでしょう。ハローワークでは、毎年数回、障害者合同就職面接会を開催していますので、こちらの活用もおすすめします。

また、ハローワーク以外にも就職したい障害者が職業訓練やスキルアップを学んでいる障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所、障害者職業能力開発校や特別支援学校と連携をとることもできます。

これらの機関に在籍している障害者の特性を把握しているスタッフや教員は、障害者本人の職務遂行能力やその能力を活かす方法を理解しているので、採用にあたり助言や協力を得るとよいでしょう。

障害者を採用するときに、どのような方法で選考したらよいか

基本的には、各企業で行っている一般的な方法で行えばよいでしょう。しかし、障害種別によっては、書類選考や面接だけでわからないことも多くあります。知的障害や精神障害の雇用を多く行っている特例子会社では、採用する前に実習期間を設けることが多くなっています。

2週間程度の実習を行なうことで、書類や面接では見えてこなかった部分がわかりますし、実際の実務のレベルを確認することができます。本人にとっても、その企業で本当に働けそうなのかを判断する機会にもなりますので、状況が許すのであれば、実習を行なうことをおすすめします。

また、身体障害者の採用試験などを行う場合には、点字や拡大読書器の使用、試験会場のバリアフリー対応など、それぞれの障害特性や個別の障害状況に応じた配慮も必要となってきます。

障害者の職場実習については、こちらをご覧ください
↓   ↓   ↓
障害者雇用で現場実習を行うメリット

採用面接ではどのようなことを確認したらよいか

採用面接では、スキルや能力、働く意欲、協調性など、一般的な事柄を確認するとともに、職務遂行に関係した障害状況や職場での配慮事項について確認します。

その際には、障害程度などを確認する理由をきちんと伝え、本人の了承を得てください。実際に職場に就職することをイメージして、職務遂行や職場生活においてできること、制限があること、サポートや配慮が必要なことなどの視点から確認するとよいでしょう。

また、状況が許すのであれば、障害者本人が職業訓練している就労支援機関や学校等のスタッフ、教員が同席すると、よりいろいろな情報を得ることができるでしょう。

障害者の採用面接については、こちらをご参考にしてください
↓   ↓   ↓
精神障害者の職場定着するためのポイント~採用するときに確認しておくべきこと~

 

障害者の雇用形態はどのようにすればよいか

労働者を雇用するときには、職務内容やその責任の範囲、勤務時間等の労働条件、本人の希望などを考慮して正社員、契約社員、パート、アルバイト等の決定するのが一般的ですが、障害者雇用の場合も同様です。障害者を雇用する場合、その雇用形態は正社員に限る必要はありません。障害の有無によって雇用形態を決めるのではなく、あくまでも職務内容や責任の範囲等によって決めていく必要があります。

それでも、何か目安になるものがほしいと思われる場合には、厚生労働省が5年に1度調査している結果を参考にしていただければと思います。この調査は、企業の障害者の雇用の実態を把握し、今後の障害者の雇用施策の検討や立案に役立てることを目的に、事業所調査と個人調査の2種類の調査を、5年ごとに実施されているものです(調査結果は特例子会社に限られてはいません)。障害種別ごとに仕事内容や、賃金、勤務形態などについて、調査結果がまとめられています。

障害者雇用の雇用実態については、こちらをご覧ください
↓   ↓   ↓
平成25年度障害者雇用実態調査結果(厚生労働省)

障害者の賃金体系はどうすべきか

特例子会社は親会社と異なる労働条件の設定が可能であり、弾力的な雇用管理ができるというメリットがあります。それでも基本的には、障害者の賃金の一般労働者と同じ最低賃金が適用されることになります。

仕事内容や特例子会社の業務量、親会社とのバランスなどを検討しながら、決めていくとよいでしょう。

障害者雇用の雇用条件については、こちらをご覧ください
↓   ↓   ↓
障害者雇用の給与等の雇用条件をどのように決めたらよいか障害者雇用するときに考えたい雇用条件とは

 

障害者雇用についての支援制度はどのようなものがあるか

障害者職業センターが行うジョブコーチによる専門的な支援があります。障害者が職場に適応できるように支援計画に基づいて、ジョブコーチが職場に出向いて直接サポートを行います。また、事業主や職場の従業員に対して、障害者の職場適応に必要なアドバイスや、必要に応じて職務の再設計や職場環境の改善を提案します。

障害者本人への支援例として、仕事に適応する(作業能力を上げる、作業のミスを減らす)ための支援、人間関係や職場でのコミュニケーションを改善するための支援などがあります。

事業主の支援には、対象となる障害者を適切に理解し配慮するためのアドバイス、仕事の内容や指導方法を改善するためのアドバイスや提案など、家族への支援には、対象障害者の職業生活を支えるためのアドバイスなどがあります。

また、対象障害者が所属している就労支援機関や学校等のスタッフ、教員からのアドバイスやサポートを受けることもできるでしょう。

障害者職業センターの詳細については、こちらをご覧ください
↓   ↓   ↓
障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターの違いとは?

 

まとめ

特例子会社の設立に関する質問事項について、Q&Aで説明してきました。大きくは3つのポイントである特例子会社の概要について、特例子会社設立後の報告等について、特例子会社の設立・採用・運営について、お伝えしてきました。

実際に特例子会社を設立するときには、ハローワークとの連携が必要になります。雇用指導官をはじめとして、特例子会社設立にむけた状況を報告したり、採用に関する協力依頼を行なったりと、企業の方から連絡を積極的に行なうことをおすすめします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です