2026年8月2日更新
「特例子会社とは、どのような会社なのか」
「子会社を設立すれば、自動的に特例子会社になるのか」
「特例子会社で雇用した障害者は、親会社の雇用率にどのように算入されるのか」
特例子会社という言葉は知られていても、制度の仕組みや認定要件まで正確に理解するのは簡単ではありません。
特例子会社とは、単に障害者を多く雇用する子会社ではありません。障害者の雇用に特別な配慮をした子会社が一定の要件を満たし、認定を受けることで、その子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなし、親会社と合算して実雇用率を算定できる制度です。
子会社を設立しただけでは、特例子会社として扱われません。親会社との関係、障害者の雇用人数と割合、雇用管理体制などの要件を満たし、認定を受ける必要があります。
また、認定要件を満たせることと、自社にとって特例子会社の設立が適切であること、設立後に安定した経営・運営ができることは別の問題です。
この記事では、特例子会社制度の基本的な仕組み、認定要件、雇用率への算入方法、グループで利用できる関連制度について整理します。
- 特例子会社制度の基本的な仕組み
- 特例子会社で雇用した障害者が親会社の雇用率へ算入される考え方
- 特例子会社として認定されるための主な要件
- 関係会社特例と企業グループ算定特例との違い
- 特例子会社を検討するときに確認しておきたい注意点
特例子会社とは
特例子会社とは、障害者の雇用の促進と安定を図るため、障害者の雇用に特別な配慮をして設立された子会社のうち、一定の要件を満たして認定を受けた会社です。
障害者雇用率制度では、原則として、企業ごとに法定雇用率以上の障害者を雇用する義務があります。
一方、特例子会社として認定されると、その子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなし、親会社と特例子会社を合算して実雇用率を算定できます。
障害者を雇用する子会社が、すべて特例子会社になるわけではない
子会社が障害者を雇用していても、それだけで特例子会社になるわけではありません。
特例子会社として扱われるには、親会社が子会社の意思決定機関を支配していること、一定人数以上の障害者を雇用していること、適切な雇用管理体制を備えていることなどの要件を満たし、認定を受ける必要があります。
そのため、次の二つは区別して考える必要があります。
- 障害者を雇用している一般的な子会社
- 認定を受け、雇用率算定の特例が適用される特例子会社
特例子会社は、親会社とは別の法人である
特例子会社は親会社と合算して実雇用率を算定しますが、会社としては親会社と別の法人です。
そのため、特例子会社には、事業、組織、人員、雇用管理、費用などを継続的に管理する責任があります。
雇用率制度上は親会社と一体として扱われる部分があっても、経営や日常の運営まで自動的に一体になるわけではありません。
特例子会社の雇用率はどのように算定されるのか
2026年7月1日から、民間企業の法定雇用率は2.7%です。常用労働者を37.5人以上雇用する事業主には、障害者を1人以上雇用する義務があります。
特例子会社の認定を受けると、親会社と特例子会社を一つの事業主として取り扱い、両社の労働者数と障害者数を合算して実雇用率を算定します。
親会社と特例子会社を合算して算定する
考え方は、次のとおりです。
- 親会社と特例子会社の算定対象となる労働者数を合算する
- 親会社と特例子会社で雇用する算定対象の障害者数を合算する
- 合算した数字をもとに、実雇用率を算定する
つまり、特例子会社だけの雇用率を親会社へ加えるのではなく、親会社と特例子会社を一体として計算します。
なお、実際の雇用率算定では、短時間労働者、特定短時間労働者、重度障害者のダブルカウント、除外率なども関係します。
特例子会社を設立しても、法定雇用率の達成が保証されるわけではない
特例子会社を設立し、認定を受けても、親会社と特例子会社を合算した実雇用率が法定雇用率を下回れば、未達成となります。
特例子会社の設立自体が、法定雇用率の達成を保証するものではありません。
現在の労働者数、雇用障害者数、今後の採用計画などを踏まえて、グループ全体で確認する必要があります。
特例子会社として認定されるための主な要件
特例子会社の認定要件は、大きく分けると、親会社に関する要件と子会社に関する要件があります。
親会社が子会社の意思決定機関を支配している
親会社が、子会社の株主総会などの意思決定機関を支配している必要があります。
具体的には、親会社が子会社の議決権の過半数を保有している場合などが該当します。
この「意思決定機関を支配しているか」の判断には、連結決算の対象となる子会社の判定基準と同様の、いわゆる「支配力基準」が用いられます。
議決権の保有割合だけでなく、役員構成や契約関係なども含め、親会社が子会社の意思決定機関を実質的に支配しているかが確認されます。
単に取引関係がある、業務を委託しているというだけでは、親会社と特例子会社の関係にはなりません。
親会社と子会社の人的関係が緊密である
親会社と子会社の間には、人的に緊密な関係が求められます。
たとえば、親会社から子会社へ役員を派遣していることなどが挙げられます。
形式的な出資関係だけでなく、親会社が特例子会社の経営や運営に関与する関係が必要です。
障害者を5人以上雇用している
特例子会社では、障害者を5人以上雇用している必要があります。
ここでいう障害者数は、障害者雇用率制度の算定対象となる障害者について、制度上のカウント方法に基づいて判断されます。
採用予定だけで認定されるわけではなく、申請時点の雇用状況などが確認されます。
全従業員に占める障害者の割合が20%以上である
特例子会社で雇用する全従業員のうち、障害者が20%以上を占めている必要があります。
人数の要件だけでなく、従業員全体に対する割合も確認されます。
一定の障害者区分が、雇用障害者の30%以上を占めている
特例子会社で雇用する障害者のうち、次の人の合計が30%以上であることが求められます。
- 重度身体障害者
- 知的障害者
- 精神障害者
単に障害者の人数が5人以上、従業員の20%以上であれば認定されるわけではありません。
障害者の雇用管理を適切に行える体制がある
人数や割合の要件に加えて、障害者の雇用管理を適切に行える能力も必要です。
具体的には、次のような点が確認されます。
- 障害者が働くために必要な施設や設備が整えられているか
- 業務上の指導や雇用管理を行う人材が配置されているか
- 障害者の雇用促進と雇用の安定を図れる体制があるか
大切なのは、設備や担当者を形式的に置くことではありません。
本人の希望や困りごとを確認したうえで、会社側も実施可能な方法を整理し、継続して働ける業務と雇用管理体制を整える必要があります。
| 区分 | 主な要件 |
|---|---|
| 親会社との関係 | 親会社が子会社の意思決定機関を支配している |
| 人的関係 | 親会社からの役員派遣など、人的関係が緊密である |
| 障害者数 | 障害者を5人以上雇用している |
| 障害者の割合 | 全従業員に占める障害者の割合が20%以上 |
| 障害者区分 | 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者の合計が、雇用障害者の30%以上 |
| 雇用管理 | 施設・設備、人材配置など、適切な雇用管理を行える体制がある |
認定にあたっては、これら以外の事項や提出書類も確認されます。自社が認定要件を満たすかどうかは、最寄りのハローワークまたは労働局へ確認してください。
特例子会社とグループで利用できる関連制度
障害者雇用率を企業グループで算定できる仕組みには、特例子会社制度以外にも制度があります。
名称が似ているため、それぞれの違いを整理しておきましょう。
特例子会社制度
特例子会社制度は、親会社と認定を受けた特例子会社を合算して、実雇用率を算定する制度です。
基本となる範囲は、親会社と特例子会社です。
関係会社特例制度
関係会社特例制度は、特例子会社を持つ親会社が、一定の要件を満たすほかの子会社も「関係会社」として認定を受け、グループの雇用率算定へ含める制度です。
認定されると、次の会社を同一の事業主として取り扱います。
- 親会社
- 特例子会社
- 認定された関係会社
特例子会社以外の子会社も含め、グループ全体で障害者雇用を進めたい場合に関係する制度です。
企業グループ算定特例制度
企業グループ算定特例制度は、特例子会社がない企業グループでも、一定の要件を満たして認定を受けることで、親会社と関係子会社を合算して実雇用率を算定できる制度です。
特例子会社の設立を前提としない点が、特例子会社制度や関係会社特例制度との大きな違いです。
| 制度 | 特例子会社 | 実雇用率を通算する主な範囲 |
|---|---|---|
| 特例子会社制度 | 必要 | 親会社+特例子会社 |
| 関係会社特例制度 | 必要 | 親会社+特例子会社+認定された関係会社 |
| 企業グループ算定特例制度 | 不要 | 親会社+認定された関係子会社 |
制度ごとに認定要件や申請書類が異なります。グループの状況に応じて、どの制度が該当するのかを確認する必要があります。
事業協同組合等算定特例制度
事業協同組合等算定特例制度は、中小企業が事業協同組合などを活用して共同で障害者雇用に取り組み、一定の要件を満たして認定を受けた場合に、組合と参加企業の実雇用率を通算できる制度です。
特例子会社制度や企業グループ算定特例制度とは対象となる企業や仕組みが異なるため、詳しい要件は厚生労働省の公式資料やハローワークで確認してください。
特例子会社は現在どのくらいあるのか
厚生労働省の集計によると、2025年6月1日時点で、特例子会社の認定を受けている企業は631社です。
特例子会社で雇用されている障害者数は、雇用率制度上のカウントで53,710.5人となっています。
内訳は、次のとおりです。
- 身体障害者:12,920.0人
- 知的障害者:26,739.5人
- 精神障害者:14,051.0人
特例子会社数と雇用障害者数は増加しており、特例子会社は、企業における障害者雇用の一つの形として一定の役割を担っています。
ただし、社数や雇用人数が増えていることと、すべての特例子会社で業務、人材育成、経営が順調に進んでいることは同じではありません。
制度を利用できるかだけでなく、設立後にどのような会社をつくるのかまで考える必要があります。
特例子会社制度を理解するときの注意点
特例子会社は、雇用率を達成するためだけの制度ではない
特例子会社制度は、子会社で雇用する障害者を親会社の実雇用率へ算入できる制度です。
しかし、制度の目的は、単に算定上の人数を増やすことではありません。障害者の雇用機会を広げ、雇用を安定させることにあります。
雇用人数だけでなく、担当する業務、職場環境、育成、評価などを継続的に考える必要があります。
特例子会社を設立すれば、親会社が関わらなくてよいわけではない
特例子会社は親会社と別法人ですが、認定要件では、親会社が子会社の意思決定機関を支配し、人的にも緊密な関係を持つことが求められています。
親会社が業務、経営、人材配置などに関与せず、特例子会社へ障害者雇用をすべて任せる制度ではありません。
また、親会社やグループ会社での直接雇用をどのように進めるのかも、グループ全体で考える必要があります。
認定要件を満たすことと、設立後の運営が機能することは別
認定要件を満たせるかどうかは、制度上の判断です。
一方、次の問題は、認定後の経営・組織運営に関する判断です。
- 雇用人数に見合う業務を確保できるか
- 経営や雇用管理を担う人材を配置できるか
- 親会社と特例子会社の役割を整理できるか
- 障害者社員の評価やキャリアを設計できるか
- 3年後、5年後も事業を継続できるか
制度上、設立できることだけをもって、特例子会社が自社に適した方法であるとは限りません。
特例子会社を検討するときは、段階を分けて考える
特例子会社を検討するときは、次の四つの段階を分けて考えると整理しやすくなります。
- 制度を理解する
特例子会社の仕組み、認定要件、雇用率への算入方法を確認します。 - 自社が設立すべきか判断する
メリット・デメリット、直接雇用との違い、業務や費用を踏まえて判断します。 - 設立準備と認定申請を進める
人員体制、業務、必要書類、申請までの流れを整理します。 - 設立後の経営・運営を考える
業務創出、人材育成、評価、親会社との関係を継続して見直します。
この四つを混同すると、認定要件や申請手続きだけが先に進み、設立後の業務や組織体制が十分に検討されない可能性があります。
自社では、特例子会社制度の認定要件と、設立後の経営・運営条件を分けて検討できているでしょうか。
制度上の人数や割合だけでなく、親会社との関係、雇用管理を担う人材、継続的な業務まで、誰が確認し、誰が判断するのかを整理することが大切です。
よくある質問
Q:障害者を多く雇用する子会社は、すべて特例子会社ですか
いいえ。障害者を多く雇用していても、認定を受けていなければ特例子会社ではありません。
親会社との関係、障害者の人数と割合、雇用管理体制などの要件を満たし、特例子会社として認定を受ける必要があります。
Q:特例子会社を設立すると、親会社の雇用率へどのように算入されますか
特例子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなし、親会社と特例子会社の労働者数および障害者数を合算して、実雇用率を算定します。
特例子会社の障害者数だけを親会社へ加える仕組みではなく、親会社と特例子会社を一体として計算します。
Q:特例子会社として認定されるには、障害者を何人雇用する必要がありますか
主な認定要件の一つとして、障害者を5人以上雇用していることが求められます。
加えて、全従業員に占める障害者の割合が20%以上であることや、重度身体障害者、知的障害者、精神障害者の合計が雇用障害者の30%以上であることなどの要件があります。
Q:特例子会社を設立すれば、法定雇用率を必ず達成できますか
いいえ。特例子会社を設立して認定を受けても、親会社と特例子会社を合算した実雇用率が法定雇用率を下回れば、未達成となります。
設立前に、親会社と特例子会社の労働者数、現在の障害者数、今後の採用計画を確認する必要があります。
Q:親会社以外のグループ会社も雇用率へ合算できますか
一定の要件を満たし、関係会社特例制度の認定を受けた場合は、親会社、特例子会社、認定された関係会社を合算して実雇用率を算定できます。
対象となる関係会社には、親会社がその会社の意思決定機関を支配していることや、特例子会社との人的関係、営業上の関係、出資関係など、所定の要件があります。
すべてのグループ会社が自動的に合算されるわけではなく、対象とする会社について認定を受ける必要があります。具体的な対象範囲は、ハローワークまたは労働局へ確認してください。
Q:特例子会社と企業グループ算定特例は何が違いますか
特例子会社制度は、特例子会社に雇用される労働者を親会社に雇用されているものとみなし、親会社と特例子会社を通算して実雇用率を算定できる制度です。
企業グループ算定特例制度は、特例子会社がない場合でも、一定の要件を満たす企業グループとして認定を受けることで、親会社と関係子会社を含むグループ全体で実雇用率を通算できる制度です。
企業グループ算定特例制度では、原則としてすべての子会社が認定の対象となり、対象とする会社を任意に選ぶことはできません。
孫会社は原則として対象に含まれません。ただし、親事業主が障害者雇用について孫会社に具体的な影響を及ぼすなど、一定の要件を満たす場合には、孫会社を関係子会社として認定の対象に含められることがあります。
Q:特例子会社の認定申請は、どこへ相談すればよいですか
認定要件や申請書類については、最寄りのハローワークまたは労働局へ相談します。
厚生労働省の公式ページには、制度概要、特例子会社一覧、申請書類などが掲載されています。申請前には、最新の書類と要件を必ず確認してください。
まとめ
特例子会社とは、単に障害者を多く雇用する子会社ではありません。
障害者の雇用に特別な配慮をした子会社が、親会社との関係、障害者の雇用人数と割合、雇用管理体制などの要件を満たし、認定を受けることで、親会社と合算して実雇用率を算定できる制度です。
子会社を設立するだけでは、特例子会社として扱われません。また、特例子会社を設立すれば、法定雇用率の達成や設立後の安定した運営が自動的に実現するわけでもありません。
まずは制度と認定要件を正しく理解し、そのうえで、自社が特例子会社を設立すべきか、継続的な業務や人材を確保できるかを段階的に検討することが重要です。
特例子会社の認定要件、制度概要、特例子会社一覧、申請書類は、厚生労働省の公式ページで確認できます。
認定要件の確認には、公式ページに掲載された書類以外の提出を求められる場合もあります。具体的な認定可能性や申請方法については、最寄りのハローワークまたは労働局へお問い合わせください。
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